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「私の名前はキーヴァ よろしくね!」


「ああ、僕の名前はクーロンだ。よろしく」


 慣れない名前に違和感を覚えながらも、自己紹介をする。


 ギルドを出てから街の門に向かう道中、一緒に依頼を受けることになった少女と言葉を交わす。


「クーロンはなんで冒険者になったの?」


「なんで…か、うーん行くところがなくて仕方なくって感じもするけど憧れもあったかな?

 そっちは?」

(あってる?あってるのか?変な答えじゃないか?)

「私?私はねえ…

(お、話を掘り下げられなくて良かった)

 お婆ちゃんに言われて一人前になるための修行なの」


「修行って魔女の?」


「そう!良く分かったね!?」


「杖持ってるからそうかなって」


「世界を見て回って見識を広めて来いって決まりなの」

 端正な顔立ちをしわくちゃにしながら物真似をしているようで、声をしゃがれさせて話している。


 そう話している内に街の端まで来たらしく、農民や冒険者に交じって列に並ぶ。


 さっと門で出入りを管理している兵士を見て、街に入る時にあった人物でないことを確認する。


 すぐに自分たちの番まで回ってきたので、前にいた冒険者を真似してギルドで貰ったカードを見せて応対する。

 なんかいろいろできるカードらしい、預金とかステータスも見れるらしいまだ使ってないけど。


 普段から冒険者が多いためか、こちらをちらりと確認しただけでそのまま門を通ることが出来た。


「いやーなんか緊張したな、初めてカード見せたし」


「確かに、私も緊張した」

 キーヴァは笑いながら答えた。

 よく笑っており、実際に明るい性格なのだろう。


「じゃあこっからどうする?僕は冒険者になったばかりだし、ここら辺の地理にも詳しくないからどこへ行ったら薬草があるかとかも分からないんだけど」

(僕なんて自称すんのめんどくさいなあ、違和感あるぜ)

「任せて!依頼にあった薬草がどのあたりにあるかはもう目星をつけてあるの」


「それは凄いね、心強いよ」


 そう言うキーヴァに先導されて少し歩き、街の近くの森に踏み入ってゆく。


 キーヴァは森の中を勝手知ったるように森の中を歩いて行き、所々で生えている植物についての説明をしてくれる。


 暗い場所に生える袋状の花の植物を指し、

「この植物は切り傷とか打ち身に効く薬になるの、でも摂り過ぎると吐いたり頭痛がしたりするようになるから気を付けて」

 四角い茎に、白く密集した白い花の、清涼感のある香りがする草を指し、

「これはいろんな毒の解毒剤になるんだけど、ビックリするほど苦いんだ

 前に飲まされたけどもう飲みたくないよ」

 ギザギザの葉で、まっすぐの茎に半円状に丸く集まった花の植物を指し、

「これはお茶にしたり、眠るための薬とかに使うんだ。ケットシーがすっごく好きなんだって」


「いやーよく知ってるね、凄いね!」

 そうして必要な薬草について説明を受けながら薬草採取をしていた時、


 ガサガサと茂みから音を立てて、ゴブリンが3匹現れた。


 視界に入って瞬間殺そうと動き出そうとしたが、キーヴァの実力を見ようと思い踏みとどまる。


「っ…!」

(ゴブリンって呼び名合ってんのか?)

 叫び声を上げようとしたが既の所で踏みとどまる

「ゴブリンだ!」


 叫び声が聞こえてゴブリンで良いとひとまず安心する。


「どうする!?戦う!?」

(魔法が見られるか…、それと俺はどう戦うべきか、…剣のみだな今んとこは)

「魔法を撃つからゴブリンから離れて!!」

(お、やるか)


 ゴブリンから離れると、彼女が何か詠唱をしているのが見え、そのすぐ後に杖をゴブリンに向けて叫ぶ。

火球(ファイヤーボール)

(うおっ、魔法だすげぇ)


 と思ったのもつかの間、杖の先から現れた火球の想像以上の威力と速度に驚かされる。


 5メートル近い距離を瞬く間に詰めると、ゴブリンに着弾し、一瞬で燃焼させ黒焦げにさせた。


 途中で近くを通った時の熱量を肌で感じ、彼女への脅威度の認識を大幅に改める。

(護摩行みたいな熱さだ、いや全く人は見た目によらないな

 まともじゃないな、あれが普通ってこともないだろう。冒険者になる理由も決まりと口にしていたし、魔法を教える特殊な教育機関でもあるんだろう。

 そんでもって若い少女一人でも旅をさせる決まりがあるってこと大抵の事じゃ害されないほどの実力を確保させているのか、各地で身辺の保護をさせる出先機関でもあるのか

 何とか殺す方法を考えておかないと、流石の俺様でも無事ではすまねえだろうな。ああ怖い怖い)


 魔法を撃ち終わったキーヴァの方へと歩いて行くと、隠れていたのか1匹のゴブリンが彼女に襲い掛かろうとしていた。

 腰から剣を抜き放ち、横合いから頭に叩きつける。

(絶好の恩を売るチャンス兼弱く印象付けるチャンス!)

 そのまま横なぎで首を傷つけ、右からの袈裟切りでゴブリンが倒れる。

 倒れたゴブリンの首を踏みつけ、胸に剣を差し込みとどめを刺す。


 一連の流れでほんの少し剣のふりを遅く、力を弱くしたがちゃんと倒せて一息つく。


 横目で彼女の様子をうかがうと杖をゴブリンの方向に向けていたのが分かった。


「ありがとう、助かったよ!」

(嘘つけ、気付いてたし、倒せたろ)

「いやいや、こちらこそありがとう。魔法って凄いんだね。一気に3匹も倒しちゃった」


「それで…ゴブリンはどうすればいいのかな?

依頼とかは受けてないけど報酬とかあるのかな?」


「う~ん、どうなんだろう、魔石は売れるかもしれないし取っておこうよ」


「なるほど、じゃあそうしよう」

(魔石!魔石?分からん前にぶっ殺した時に見た記憶がない)


「魔石ってどうやって取るの?」


「あ!ごめん心臓の横にあるはずだよ」


「そうなんだ!ゴブリンなんて倒したのは初めてだから」


「言うの忘れててごめんね」


「気にしないで!わざわざ教えてくれてありがとう」

(こいつも大して常識を知らない気がするな、そこんとこ気を付けないと)


 ゴブリンの死体をさばいて暗いガラスのような石を取り出して、薬草とは別に布で包んで鞄に入れる。


「じゃあ薬草も十分採れたしそろそろ戻ろうか」

 そう言ったキーヴァに付いていき、街へと戻って行く。


 街へ帰る道中も、魔法やゴブリン退治に興奮冷めやらぬ様子で同じ話を繰り返したりまとまっていない話をするようにして、会話をやり過ごした。

 彼女は魔法について自慢げな表情をしていたが、それが演技なのか本当に乗せられていたのかは判別できなかった。




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