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川を越え、道なりにしばらく歩き続けていると森の境目が見えてきた。
異世界転移?をしてから長く暮らした森を抜けることへの、期待と不安を胸に抱きながら森を抜ける。
段々と木がまばらになって行き、その先には平原が広がっている。視線の先に山が映らず地平線が見えることに異国感を感じて、はたと立ち尽くす。
…なんも無ぇな。見渡す限りの平原だ、後ろを振り返れば異質な感じのする森に、奥には山が見える。
山脈だったのか、あまり標高は高くなさそうだけど。ここからは街があるようには見えんが、川沿いに何か集落でもあるといいが。
行き先のあてもなくダラダラと歩き続けてえ、道なりにしばらく歩き続けていると森の境目が見えてきた。
異世界転移?をしてから長く暮らした森を抜けることへの、期待と不安を胸に抱きながら森を抜ける。
段々と木がまばらになって行き、その先には平原が広がっている。視線の先に山が映らず地平線が見えることに異国感を感じて、はたと立ち尽くす。
…なんも無ぇな。見渡す限りの平原だ、後ろを振り返れば異質な感じのする森に、奥には山が見える。
山脈だったのか、あまり標高は高くなさそうだけど。ここからは街があるようには見えんが、川沿いに何か集落でもあるといいが。
行き先のあてもなくダラダラと歩き続けていると、あっと言う間に日が暮れて暗くなってきた。
あっと言う間とは言ってもそれなりに歩いてきたので少し疲れていた。
肩にかけている鞄から、火打石を取り出し、周囲から石をほじくり出して囲いを作り、枯草や燃えさしになりそうなものを集め、火打石で指を挟んだりの格闘の末、ようやく火を着けることが出来た。
森の中では自分で火も起こせなかった時からすると、感動ものだな。
感動してないけど。まあ大きな変化であることは確かだ。
火に当たりながら持ってきた干し肉を齧る。
柔らかい革製品を感出るような食感だ、味が分からないから特にね。腰に下げた水筒の中身も少なくなってきた、水分を自由に取れないってのは不便だ、一応川の近くで好きなだけ水は飲めたからな、今までは。
しばらくすると、何か獣が近づいてくるような物音がして、振り返るが星明りに照らされた程度じゃあ姿は見えてこない。
立ち上がって、剣を構えて周囲を見回しながら警戒する。
またなんか来たのか、まあいい魔法を試す機会だ、十分にいたぶってやろう。
精神集中しながら体(特に骨)の中の魔力を引きずり出し、自身の周りに漂わせる。
するとどこかで見たのと似た、小柄な狼のような獣が3匹、焚き火の明かりに照らされて現れた。
なんだまた狼か、怪我はしたくないがそうもいかないだろうなあ、動物が強いことは実感してるからなあ、楽にぶち殺したい。
じりじりと近づいては離れて、焚き火の周りを囲いながらもじっと視線は外さず獲物の集中を削ろうとしてくる狼たち。
あ゛~~~~面倒い、ちゃっちゃと殺す。
自分の周りの魔力を1匹の狼の方へ送り、後を追うように突然飛び出して距離を詰める。
当然詰めてきた分の距離を退こうとする狼だが
「止まれ!!」
声を発しながら、狼の前足のところで魔力を固めて、逃げられなくする。
その分姿勢が崩れ、引き戻された脳天目掛けて渾身の力で剣を振り下ろす。
残りの狼はその隙に二方向から襲ってきたが、飛び掛かってきた1匹は「止まれ!」といいながら、位置も固定するように空中で魔力で固める。
もう1匹の噛みつきに合わせて魔力で壁を作り、衝突させて勢いを殺し、襲い来る爪を飛びのいて躱し、剣を振って迎撃する。
横なぎの一撃を狼が躱した所で、両方の前足を位置は固定せずに魔力で固める。
そして思うように前足が動かせず、うまく着地できず転んだところに詰め寄り、剣を何度も振り下ろし、手ごたえを感じて振り返った時、最初の狼が魔力による固定を力ずくで振り払ったところだった。
とはいえ最初に一撃入っていたため時間をかけずに、斬り倒せた。
空中に固定した狼は、力が入れにくい体勢だった為か『箱』から逃げ出せずにいたため、首を切って殺すことが出来た。
はぁはぁはぁ、疲れた。魔力の消耗が激しい。元々魔力も多くなさそうだし、出力も大きなわけじゃあないみたいだからな。
ただ強いな、力の強い相手には通じないだろうが戦い方の幅が広がった。
ははっ、楽しいぃぃ!!魔法使いじゃん、魔法楽しい!
いやー、気分がいいな。このまま毛皮でも杯で肉焼いて食うか。
爺さんにもらった小さなナイフで狼を解体し、肉を焼いて食った後、意識を無くして突っ伏すように眠り、目を覚ますと空が白み始めていた。
――――――――
その後しばらく歩き、太陽が中天に達した頃、畑と城壁のようなものが見えてきた。
街にいよいよ近づき、入り口の門と、そこに並ぶ数人の人影見えてきた。
素知らぬ顔をして、列に並び、街の外壁を観察する。
立派なもんだな、3メートルくらいはあるんじゃないか?魔法もあるんだから建築技術もまた発展してんだろうな。石を組んで作ったように見えるが、切って形を整えられてるんだろうな、何で固めてるかは知識がないが、漆喰的な何かがあるんだろう。
そんなことを考えていると、自分の番が来た。自分より少し背の高い30後半くらいの男の衛兵に呼ばれている。
やべっ、名前どうしよう。ステータスじゃあ名前は無いし、ホントの名前を言っても怪しいだろうし、あーそういや自分の出自にクローン疑惑を出したんだった。
クーロンで行こう。漢字で書いたら九龍、有名な香港のスラムだ。
「おい、お前名前は?見ない顔だな、旅人か?」
「クーロンと言います。世話になっていた人物が高齢で亡くなってしまって、行く当てを無くしてしまったので旅をしています。」
「そうか…それは大変だったな、この街には何をしに来たんだ?」
「いえ特に用というほどではないのですが、何か職にありつければと思っています。」
出来る限り愛想良く、
「職というが何かできることはあるのか?冒険者にでもなるつもりか?」
「うーん、そうですね。伝手もないのでそうするしかないですかね。そこまで変ですか?」
少し微笑みながら、自然に情報を引きだす
「いや変なことはないだろう、食い扶持にありつけない農家の子供が冒険者として村を出ることくらいよくあるだろう?」
「まあそうですよね、変なことを聞きました。すいません。」
よし、そこまで目立たずに済みそうだ。
「まあいい指名手配されている訳でもなさそうだ、通っていいぞ。」
「ありがと「銀貨3枚だ」…(え!)すいません。」
「もともと住んでいたところが、すごく田舎だったこともあって、手持ちの持ち金が無いんです。」
「何だと…。」
「代わりと言っては何ですが、ここまでの道中で狼の死体があったんです、魔物にでも襲われたんですかね?まあその毛皮とかをはいできたのでそれで代わりにはならないですか?」
「ここは買取所じゃないぞ。まあその不幸な身の上には同情する、今回だけ見逃そう…。実際魔物や獣が出てここで狩ることもあるからな。私が個人的に買い取る形としてやろう。」
そう言って衛兵は、硬貨を数枚手渡し、道を開けた。
「ありがとうございます!!この恩は忘れません!」
「ああ、頑張れよ」
ちっ、面倒くさえな。まあ適当にでっち上げたその場の嘘で何とかなるもんだな。
さてこっからどうすっぺかな。




