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オエッ、オエエェェ


 うー、何か出た…。気持ち悪い。何だこれ?形から見ると種…かな?

 しっかし見れば見るほど毒々しい見た目だな。じっくりと見ていると段々人の顔に見えて来る。何だっけあれ、三つ点があると顔に見える現象。シ、シミュなんとか…現象? まあその現象の名前はどうでもいい。そうじゃなくてこんなのが体の中に入ってたってのは結構ヤバい事なんじゃあないか?

 まあ実際はヤバくないから今俺がこうしている訳何だが…。さてこれは一体どんな物なのかな。きっと普通の種子何かじゃあないはず…。

 よし!食べよう。毒なら毒で使い道がある。こんな小さな種一個で死ぬこたないだろう。自分の体で試すのが一番手っ取り早い。

 いくつかある中から一つ取って口に運び…

ボリッ、ボリボリ

 普通に豆みたいな食感だな。食っても何もかも起こらないのか…。と思ったのも束の間、視界が何度も下から上に繰り返し動き、頭に急速に血が集まっていき、視界が真っ暗になった。脳がグラグラと揺れ体が固まり、前方に倒れ込み四つん這いになった。

 一瞬なんともないと思う事が多いな、その一拍は何なんだよ。段々頭から血が降りていく感覚があり、視界が明るくなっていった。そのまま頭を上げ、辺りを見回すと紫色の空、ピンクの木々に黄色の地面。

 そんな一面蛍光色で目に優しくない光景が広がっていた。普段見ている景色が普通とはかけ離れた色彩に変化している。

 急に色盲になった?学校の検査では引っ掛かった事無かったけどな。多少人と違う色彩感覚に憧れはあったけど…。まあ違うか、こんな鮮やかな色だけになる事は無いだろう。

 アッハッハ…オエッ。気持ち悪っ、酔った。

 こんな状態が続いたら不味いなぁと考えていると、視界に入った花畑が蠢いている。注意深く見てみると、花に見える程の蛾とも蝶とも分からない大量の虫が集まっていた。

 内心ヒイィィィ!と叫び声を上げるも実際は一言も洩らさず、静かに全力ランナウェイしようと思った所で、やっぱり一拍置いた後にこちらに向かって大量の虫が飛んできていた。

 ワァーー!!と声を出したら口に入って来るので条件反射的に腕で顔を庇って身を縮こまらせる。


 しばらく立ってようやく目を開けて虫が居なくなったかどうか確認する。うわー、鳥肌が凄い事になってる。

 ビクッ

 一瞬首筋に何か触ったように感じ、焦りながら手ではたく。

 ……何だ、髪の毛か。ハァー焦った。もう一匹も見える範囲にはいないみたいだ。

 ふぅ、さてここは何処だ?大量の虫に囲まれたと思ったら今度は雲一つ無い真っ青な空、地平線の先まで果てしなく続く真っ白な大地。いやー絶景かな、絶景かな。遮蔽物も何一つ無く見渡す限り地平線。塩湖みたいだな、いや本当に塩湖なのかな?

 よし!地面を舐めてみよう!


 よし!地面はただの土!というか味覚戻った?土の味がする。

 …………?

 ん?何だ?

 ………ォォン

 揺れてる?というか何か近づいてきてる?ひょっとしてヤバい奴?

 ドオォォォン!!

 あ、これひょっとしなくてもヤバい奴だ。急に今いる場所が日陰になったし、揺れで立ってられないし、逃げられる?俺。


 ―――キィーーーン

 あまりの轟音による一瞬の静寂の後、地面に倒れ起き上がれずに空を見上げ、絶句する。

 頭上遥か上を通っているのは、空の半分を占める程太く、地平線の先まで続く胴体を持った、地竜つまり蚯蚓(ミミズ)だった。微かに見える口にはとてつもない大きさの鋭い歯が隙間無く何列も並び、胴体からは所々真っ赤な溶岩が流れ出している。

 うわー、蚯蚓に小便掛けちゃいけないんだっけー?やっべーな、こっちに落ちて来てるっていうか地面に潜るのか向かって来てるし、これ死ぬわ。見た目積乱雲みたいなサイズだし逃げよう無いな。

 ハハッ、うわーー!!!超怖い!死にたくない死にたくない!

 逃げられなくても最後まで足掻く!とにかく走れ!なんて実行に移す間も無くあっという間に蚯蚓の山の巨大な口に呑まれた。



 丸飲みじゃあ即死はしないか、まだ痛みは無いな、というか寒い。いつの間にか閉じていた目を開けると、ヒッ!また別の場所。

 今度は空の上!すでに落ちてる落下中!スカイダイビング初体験だよ、パラシュート無いけど。ヤバいヤバいヤバい!というかまだまだ地面まで遠い。何処から落ちたの?!

 空中で何度か失敗しながら仰向けになると、おー空に島が浮いてる。何で浮いてんだろ?浮遊石とかあるのかな?あそこから落ちたのか、瞬間移動的に空中に突然現れて落下したのか、分からないけど大分高い所から落ちたんだな、雲が同じ位の高さにあるし。

 …良い景色だなぁ。遠くの方には富士山より高そうな山脈が延々と真下には大草原が広がり、大小様々な街が所々に有ったり、砂漠や森林、海が僅かに見える。大陸の中心って感じがする。

 何時まで落ちてるのこれ、落ち始めてからしばらく立ったけどまだ地面は遥か眼下遠く一体どんな高さから落ちたのか。実際に落下しているのではなく、また幻覚なのか、きっとそうだろう。

 考えを纏めた所で雷鳴と共に真っ黒な雲が空を覆い隠し、さっき見た蚯蚓を越える大きさの龍が現れた。

 …幻覚にしてもこんなに同じパターンの事が起きるなんて何かしら意味があるんじゃないか?自分の上にでかくて長い物が現れる、そんな状況あったっけ。

 というか毒みたいなので気を失って幻覚を見るみたいなのも既に有った気がする。なんかそういう同じ事を繰り返す地獄にでも落ちたのか?なんかリンボみたいだ。辺獄辺獄、キリスト教というか一神教は嫌いだけど。

 格好いい龍だな、東洋の龍って感じで黒っぽい色が合ってる。と思ったらもう違う場所に立ってる。やっぱり幻覚だ、それがどんな意味を持ってるかが大事だけどな。その意味を見つける事に注力しよう。

 で、次の幻覚は目の前に身の丈程の大剣を持った緑色の大男、二メートル位かな?その斜め後方離れて木の上に弓を構えた同じく緑色の大男。

 ゆっくり動いてるな、サイボーグになって奥歯のスイッチ押したみたい。お、すり抜けた。

 剣を振り下ろしている脇を通り抜けると矢が飛んで来た。避けた所を狙ったのか、危ないなあ。矢を避けたら最初の奴は回転しながら剣を振り回してるしで、ガッチリ連携取ってるじゃん。


 あら?戻った。地面に倒れてるし、時間立ってもう夜じゃん。まあよく分からなかったけど幻覚作用があるのか、気絶させられるなら使い道はある。

 これで修行が出来るかな。




 という事で他の生物に種が効くのか実験も兼ねて修行の準備に来ています。

 毎度便利なゴブリン達を隠れながらつけています。狩りに出ている三匹組ですね。川の近くまで来たし、そろそろ実行と行きますか。


 手の中に一つ種を握って少し距離を取る。そして一気に走り出し、最後尾のゴブリン目掛けて飛び足す!突然の襲撃に驚きこちらを向いたゴブリンの口に種を叩き込む。そのまま頭を押さえ、種を飲み込ませる。


「ギャアアアアアア!!」


 よし!飲み込んだ!じゃあ後はさっさと始末しよう。

 ナイフを構える前に武器を持った手を掴みながら踏み込み、空いた手で鼻を正面から潰すように殴り、踏み込んだ足を軸に回し蹴りを放つ。


「ギャアアアァァァ!」


 掴んだ腕を引き寄せ、もう一匹の方にゴブリンを突き飛ばす。そのまま二匹共に最初のゴブリンを確認しながら後ろ回し蹴りを食らわせる。

 ゴブリンが地面に倒れた隙に、一匹の首を踏み折る。もう一匹が立ち上がる前にサッカーボールを蹴るように思いっきり蹴る。転がって行くゴブリンを追いかけ立ち上がる前に蹴り飛ばす立ち上がる前に蹴り飛ばすを何度か繰り返し、持っていた小剣を蹴り飛ばす。


「ギャッ、グプッ…」


 そして木に寄りかかりながら立ち上がったゴブリンを追い詰め、後ろの木で衝撃が逃げないようにしながら、肋骨を折るように意識しながら殴り続ける。

 何度かボキッという手応えを感じて、ゴブリンの動きが無くなったのを確認し、手を止める。


 ふぅ、疲れた。手が痛い。あー結構血がついて汚れちゃったな。もう何ヵ所か黒い所は有ったけど今ので大分汚くなっちゃった。ずっと着続けてるからボロボロだ。代わりの服もないし、気をつけないとな。毛皮でもあればいいんだけどなぁ。

 さてゴブリンには種は効くみたいだね、元は緑っぽい色だったけど顔真っ青にして口から泡吹きながら倒れてる。これ大丈夫かな。死んでないよね。ゴブリンには強すぎたのかなぁ?そしたら何で俺が無事だったのかが不思議になってくるし…。

 良かった生きてるみたいだ。これでちゃんと修行が出来る。二匹の死体は川を渡った所に捨ててこよう。筋トレになるし、川で身体も洗える。



 ふぅー、疲れたー。流石に重い!途中で血を飲んだり、肉を齧ったりしたけど二匹同時に運ぶのは無理があった。絶対一匹ずつ運んだ方が早かったな。

 はぁー、これから生きてるコイツも運ばないと。もしゴブリンの仲間が来るなら二匹の死体をまず追いかけるように血痕を残したし、真逆の方向で出来るだけ離れないと。何時まで意識を失ったままかは分からないしな。

 気絶したゴブリンを背負って無理をしない程度に歩いて行く。




 よし、ここまで来ればもう大丈夫だろう。ギリギリ川まで戻れるかどうか分からなくなるまで歩いて来たぞ、ゴブリンが目を覚ます様子もないし、修行の準備をしよう。


 まずは目覚める様子の無いゴブリンの両腕を木の丸みに合うように関節を反対側に曲げる。

バキッ!

 うお、結構大きな音がしたな。これでも目覚めないか…。じゃあもうちょい行けそうだな。

 殺したゴブリンから回収したナイフを使って、ゴブリンを木にくっついて立っている状態で磔にする。折った腕を伸ばしててのひらにナイフを突き刺し、石でナイフの柄を叩いて木の幹に食い込ませる。両手のひらをナイフが貫通し、木にしっかりと刺さり簡単に抜けない事を確認する。

 よーし完成だー。これでサンドバッグの代用品が出来た。これでどこをどのくらいの力で殴れば骨が折れるのか、どこをどんな風に殴れば意識を無くせるのかじっくりと確認できる。

 このサンドバッグを使って戦う練習をすれば少しは強くなれるだろう。

 試しに一発!

ドスッ!

 うん、良い感じ!



シミュラクラ現象


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