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ゴブリンの観察を初めて一週間位?まだ生きてるよ。幸運な事にね。だーいぶヤバめだけど。
何がヤバいかって凄い腹筋がバキバキになってきた。もうシックスパックだよ、板チョコみたいだよ板チョコ。
実際にはそんなに筋肉無いのに。つまりあんなに蓄えてた脂肪がもうほとんど無いって事だ。腹筋の割れ方で限界までどれくらいか見極めるって何だか面白いな。いや何処が面白いんだよ。ははははは!
エイトパックになったらもっとヤバい。その後腹筋が無くなったらいよいよ終わりが近い。
その前に現状を打破したいもんだなー、となんとなーく考えて見る、うん。
ゴブリンの観察して分かった事は俺より遥かに文明的な暮らしをしてる事だね。
胡椒みたいな奴を集めてたみたいな三匹から十匹位で色んな方向に探索をしてるようだったね。
あの後石とか木の枝を投げる練習して時間潰ししてたら別方向に向かうゴブリンを見かけて追いかけたりして、何度もゴブリン集落の周辺に戻って来ては気配を消したり察知する練習をして時間を潰し、ゴブリンを追跡する日々が続いてた。
いやー結構石を投げるの上手くなったなー。百発六十三中位はするんじゃなかろうか、ははっ大した確率じゃねーや。
ゴブリンは狩りに行く前に川に寄って体を洗ってから行くみたい。川岸で何か採ってきたかと思ったら繊維を潰して水中で揉んでたら泡立って来てそれで体洗ってんだもん驚いたー。
それで俺も体を洗えるようになったからその点に関しては良かったと思う。
ゴブリンの食料確保の狩りで狙う獲物は、王道の角のある兎とかあの角が剣みたいになる鹿とかがいるみたい。
そして猪も居たんだけど、俺の想像したサイズの奴からトラックみたいな奴も居て俺まで死ぬかと思った。まあそのサイズの奴にはゴブリンがボッコボコにされてて見てて面白かったな。
そういう少数だと勝てないような敵には一匹が逃げながら時間稼ぎして他が仲間を呼びに行ってた。
色々工夫してるんだな、落とし穴とかかなり分かりやすいけど作ってたし…、ゴブリンが何匹か落ちながら猪とか鹿落としてた。
兎は普通に向かって来るのをナイフとか棍棒で倒してた。
さて俺がどうやって生き延びて来たかと言うとデカイ猪に殺されたゴブリンの死体とかゴブリンが捕った獲物を隙を突いて盗んだりして何とか命を繋いで来たんだ!凄いだろ!
どうした?反応が薄いぞ!もっとリアクションしろよー。話しててつまらないだろ。お前は最近変わった事あった?
え?特に無い?話のタネ位幾つか用意しとけよな!
まあいいや、話を続けるから取り敢えず聞いとけ!
そんなこんなでゴブリンを追いかけてたら、ゴブリンが川の上流の方に向かって行ったんだよ。付いていったら、滝になってる所があってなんと洞窟があったんだよ。そこにゴブリン達が入っていって、中までは追いかけなかったんだけど多分集落にあった洞窟と元からなのか繋げたのか中で繋がってるんだと思う。道理でたまに川が茶色く汚れてる訳だ。
まあそんな風に日中は活動的に過ごして日が暮れると神経を研ぎ澄まして気配を探る練習をして恐怖に震えていたら、眠れなくなったまま一週間動いていたからかバタンと気を失うように眠っちゃったんだよねー。そのまま多分丸一日以上眠ってたみたいでさ、何日たったか分からないんだよ。だから最初に一週間位って言ったんだ。
そうそう気になってるだろうからあの不思議な果実について話すよ。
あの痛みを消してくれる凄い果実だよ。かじつとくだものでどっちで話すかは決まってないけどまあその都度言いやすい言い方で言うよ。
あの果物がある場所を覚えて無かったもんだから持ってる果実を食べきった時は焦って頭がおかしくなりそうだったけど何となくで森をさ迷ってる内に何となく何処に何が有るかが分かって来たよ。川の周辺だけだけどね!
それで痛みが戻って来る前に果実の補給が間に合ったから良かったよ。痛みが無くなる分傷に気付きづらいから生傷が増える増える。枝に引っ掛かって皮膚が軽く切れたり、木を殴ってると拳の皮膚が破れちゃって血がよく出るからもう手放せない。
傷が増えやすくなるけど傷が増える程無くてはならない物になっていくよ。最初は一日二個弱で足りてたのに今では両手で数える程必要だよー。
手近な所から採っていったから段々採りにくい位置の果実を採るようになるに連れて木登りの腕もガンガン上がって行った。今では木のてっぺんまで登れるよ。
さて、今日の分はもう食べきっちゃってるから今から採りに行くわ。じゃあ、またね。
あっ、そうだ。じゃあって何の言葉の略何だろう?お前分か…る…?
あれ?居ない?誰だか分からないけど話相手が居た筈なのに?さっきまでそこに座ってた筈…。座ってた?立ってた?こっちに居たんだっけ?あっちだっけ?そもそも居たっけ?頭の中で造ったんだっけ?
アッハハ!まあいいや、居ても居なくても。早く果物採りに行こーう♪
さーて果物を採りに来たが、木登り頑張りますかー。今回はどの位高い所にあるかな?
うーん?ん?!んー?!!無い!?無い!一つも!残って無い!
「アハッ。アハハハハハ!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁーー!!!あ"あ"あ"あ"ぁぁあああああ!!!!ぎぃ"ぃ"ーーーやぁーー!!!嫌だ嫌だ嫌だぁーー!ぁぁぁ……」
無い訳が無い!嘘だ!絶対に有る筈だぁ…クソクソくそ糞がぁあああ。
木に登り血眼になって果実が無いか探し、力任せに木の枝を叩き折り幹に体当たりし殴りかかる。
「痛だぁあああいぃぃぃい!!!痛い痛い痛い痛ぃーー!!」
半狂乱になりながら幹を掴みかかり齧りつく。皮が破れながらも殴り続け、樹皮が剥がれた所から甘い匂いが漂ってきた。
匂いのした部分に瞬間的に飛び付いて顔を寄せて剥き出しになった木の肌を一心不乱に舐め続ける。
しばらく舐め続けると段々と動きが落ち着き始め、満足したのか木から離れた。
ヒヒヒヒヒヒクスクスクスアハッウフフフフフフキャッキャキャ
木から一度離れた後、地面をのたうち回り仰向けに寝転んだ。それからとても可笑しそうに笑い続けた。
そしてその笑い声も暫くすると止み、ビクンビクンと手足が痙攣し、泡を吹いて動かなくなった。




