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パチパチという音が聞こえてくる。
「生…ぎでる!」
辺りにはまだ雨が降り続き、地面を濡らしている。所々にぬかるんだ地面が現れている。
上体を起こそうとして体を満足に動かせない事に気付く。未だに痺れが残っている下半身を引きずりながら体を起こす。
生きてたみたいだ。木が倒れて来たと思ったんだけど、こっちまで全然届いてなかった。倒れて来るのにあまりにビビって見間違えたみたい。倒れた木の先まで数メートルはある。
軽く感電したのかな?それでもほとんど電気は届かなかったんだろう、俺が死んでないからな。でも脛毛が全部チリチリになってる。うわー、面白い。
さて一体どのくらい気を失ってたんだ?体温があまり下がってないみたいだし、ほんの一瞬気を失った程度かな?
雨に打たれ続ければ体温が下がるから寒気を感じたり、指先が冷たくなったりすると思うんだけどそこまで寒くない。…と言うか何だか暑くなってきた…?
周りを注意深く見回すと、木々の奥が明るく、オレンジがかった赤色の光が見えた。
…え?…え…燃え…ヤバ…え?!森林火災!?逃げろ逃げろ!川まで走…れない。
うわーーーーー!!!何で雨で火が消えないんだよ!?
地面を掴んで匍匐前進で元来た方に急いで戻る。少し進み、木の幹に体重を預けながら立ち上がる。
あんま痛くないけど、ビリビリ痺れた感じと皮膚がピリピリして歩きにくい。くそっ、動かし続ければ動くようになるだろう。急がないと、あっという間に燃え広がってる。さっきより火が近い。
火事に遭った人が一生トラウマ抱えるのも解る気がするな。離れていても伝わってくる熱量に強い光。凄い速さで広がって気付いたら囲まれている。巨大な怪物に追いかけられているみたいだ。
そんなこんなで川辺までたどり着いた。
もうすぐ後ろにまで火が迫ってきている。ジリジリと肌を焼く火の熱から離れるために水に入る。
水の中に入ると、周りの水が赤くなっていく。体に多く残る傷から血が染みだしていく。傷に冷たい水が染みるが構わず川を渡る。
雨が降った影響で増水し、流れが速くなっている。以前は膝まで歩かないか位の深さだったが今では腰に届きそうな程に増水している。
疲れた体に鞭を打ち、川に流されないようにゆっくりと渡る。
川を渡り終え、水から上がるとそのまま倒れ混む。荒い呼吸で胸が大きく上下する。地面に大の字に寝転がり、対岸に目をやると、木々は激しく燃えてパチパチと音を立てている。
うーん、正に対岸の火事だな。…もう動けないな。こっちに飛び火しなければ良いんだが…、怖いな。そういや残った肉はどうなったかな?焼き肉になってるのかな?焼き肉食いたいな。
…はぁ。こんな時こそ現実逃避しないとな。ある程度物事を気にしないようにしないと生きてけないよな。大きい事こそ気にするなって所だ。
生き物はどうなったか。川まで逃げてくるか別方向に逃げるか。川まで逃げてくるなら、今日?今日じゃないか?今回は火事が収まるまで寝れないな…。
もう疲れて疲れて気を抜くとすぐに寝落ちしそうだ。でも寝てる間に火が移ったり、あの熊みたいなのが来るかも知れないからな。
木に背中を預けて寄りかかり、ぼんやりと対岸の火事を眺め続ける。




