14話
「…ぁ…あ゛ぁ゛ー……」
み、水。喉が渇いて声が出ない。息が……し、死ぬ。
ぐっ、体が重いし頭がガンガンする。うー、寒い。寒気がする。
蜂に刺された痕がズキズキして痛い。身体を動かす度にどこかが必ず痛むし動きたくないわー。
足を引き摺るようにして川まで歩いていき水を飲む。
はーっ、大分喉が渇いてたな。水飲んだけどまだ喉が痛い。これは結構辛いな。やっぱ体調悪い。
あぁー腫れてる部分を冷やすと気持ちいいなー。
体が熱を持ってる気がする。おでこを触ると温かいな。頭フラフラだし、一度立ち止まったらまた動き始めるのが辛くなる。もうここから動きたく無い、けどそれは危険な気がするからやめとこ。
もう今日は帰って寝よう。とりあえず寝たら治る…だろう!野性動物みたいな感じで。
ハァー、疲れる。ちょっとしか歩いて無いけど怠さが止まらない。
あーー、そうだ。喉渇く度に歩かなきゃいけないのか?何か器みたいなのないかなー。
あ!有ったわ、頭ー蓋ー頭蓋骨。一個は壊したけどまだ二個有る。ゴブリンの頭蓋骨使えんじゃないか?水汲んで来よう。
アッハッハッハ、こーんぐらいなら全然楽だ。はー、可笑しい。
フンフフンフフーン♪
鼻歌混じりに川まで歩き、骨に川の水を汲んだ。そしてその骨を置き、元来た道を引き返して行った。
あっ!せっかく水汲んだのに水入れた骨忘れてきた。チッ、糞めんどくさい!!あーー!!クソッ!クソックソックソ!!
地団駄を踏んで、周りの木々に当たり散らしながらももう一度川に向かって歩いて取りに戻った。
そして洞窟に戻って一度腰を落ち着かせると
あっれー?すーごい情緒不安定だな。熱のせいかな?
うーん。まあ昔から熱が出た時はハイテンションになるタイプだったから。仕方無いね。熱せん妄かも知れないけど。
そういや日本人の言うテンションは英語の意味に合ってないんだっけ?確か電圧とか言う意味が有ったような無かったような…。今関係無いか。
まあ、なんにしろ体調が悪い事に変わりはない。今日は休んで体調回復!不味くても食い物を腹に入れる!
…と決意して残っている肉をなんとか腹に入れて身体を横たえ休ませた。
なんて事があってから早一週間。これで異世界生活二週間が経ちました。イヤー長いようで短く、短いようで長かった二週間でしたね。こんなに長く生きているとは誰が予想しただろうか!
あっ予想何かするほど興味が無い…そうですか…。まあ俺もそう思う!俺も全く興味無いもん。
ハイ、一週間とは言ってもなかなか変化があったと思います。そんなに数は多く無いんだけど…。
まずあの風邪の日はですね、あの後いつの間にか眠っていて、起きたら肉を食べて水を飲んで寝るを繰り返してたね。意外とゴブリンの頭蓋骨が器として使えるっていう事が判明した。
その次の日には結構体調が良くなってた感じがしたから川に沈めた狼を見に行ったんだ。
そしたら…何と…何と!ってそれほど引っ張るような事でもない。そんな大した事でもないんだけど、まだ死体が残っていた。その死体は多少魚に食われた穴があったけど大体はそのままだった。
ここら辺生き物少ないのかなぁ。血の痕とか残ってるけど肉食動物が来たのはこの狼しか見てないし…。タイミングが合わなかったのかね。
脱線したから話を戻そう…話す相手の居ない一人語りだけど…。
まあ毛皮が欲しかったから良かったと思って引き上げようとしたんだけど引き摺って川から出そうとしたんだけど重くってね。仰向けに転んじゃって頭を打ってね、凄い痛かった……て言う話。
…でその後何でか身体が動かせなくなって、川の中で暫く仰向けに倒れたままだった。いやー怖かった!仰向けだから良かったけど水が耳の所まで来てて、もう少し水深が高かったら溺死してたね。10cmも水深が無いのに溺れるって本当にあるんだね。溺れた訳じゃないけど実感したよ。
自分では気付かないけど身体にダメージが残ってたんだろう。その身体が動かない時に考えてみたら、川で流された時いつの間にか頭を岩かなんかにぶつけて気を失ってたんじゃないかと思って…。気を失ってたから川で流されても生きてたんだー。
いやーそう考えると俺ってツいてるなーツキまくってる。
このツいてるって言葉のツキは憑きの事なんだったよね、その影響を及ぼす何かが憑いてるって事で、管狐だったり犬神だったり。でもそういうのは家系が関係有るって聞くけどねー?羨ましいわー。狐憑きとかそういう家系も元々は忌むべき物でもなく神聖な物に近いんだったかな。
また話が逸れた。こーんな風に自分の知識をひけらかすような奴は嫌いだ!俺の事だ!だから自分の事が嫌いなんだ。
まあ大目に見てやってくれよ、こういうのは後々ボコボコにされる盛大な前フリのような物なんだ。
ええと、どこまで話したんだったかな?
ああそうだ、で結局あの後しばらくしたら動けるまでに回復したからそのまま引き摺って帰ったんだった。
その後判明した良い事と言うか悪い事と言うか分からない事が有る。どんな事かと言うと洞窟に戻った後若干慣れてきた肉を食べてみると……味がしなかったんだよね。なんか風邪のせいなのかストレスなのかは分からないけど味覚が無くなったのかおかしくなったのか味を感じなくなった。
これヤバいんじゃないの?と思ったけど味覚が無い方が不味い物でも食えるから良いんじゃね?と思って気にしない事にした。
その後五日間は葉っぱを食ってみたりしてたけど暇だったので色々検証したり考察してみた訳ですよ。
その結果分かったのがステータスが口に出さなくても思うだけで出せるっていう事と動かない事。
動かないっていうのはステータスを出すと半透明の板みたいなのが出るのは簡単に想像がつくと思うんだけど、出したまま自分が動くと、そのステータスプレートは動かないでその場に残ったままだった。後ろに回ると字が読めないし結構不便だよ。消そうと思えば直ぐに消えるんだけどそれを忘れたら出しっぱになって個人情報垂れ流しだ!と言う事に気付いてハッとした。酷い情報漏洩だからな。
その他にも何で自分が骨を食べるなんて頭のおかしな事をしようと思ったのかについて考えてみたらスキルの影響があるんじゃないかという結論に行き着いた。結論ではなく仮定かな?まあ固有スキルがあるからなのか、今思えば程度だけどなんとなーく骨食えるんじゃあないかって感覚があったんだよね。
まあ、興味無いよね。うん。
それで色々考えてて何で俺が異世界来たのかな?とずっと考えてたら分かっちゃったと思う。正解に程近いんじゃないかっていう仮説に過ぎないけど…。
で、結論から言うと…俺クローンじゃね?って思った。
また変な事を言い出したのは何でかって言うと異世界転移するって今更だけど非現実的な事だろ?そんな非現実的な事が俺に起きるのかって思って…。
そういうのはもっと主人公主人公してる人がなると思ってたから…俺だって一度ならずそんな想像した事あるけど。
自分で認めるのは非常に非っ常~に気に食わない事だけど俺は能力的には平々凡々だから俺が異世界転移するのは不思議だなぁとつくづく思っていた。
異世界転生ではなく転移なのだから俺の事を転移させる何者かが居たはずだと思った。だとしたら記憶が無いのはおかしい。そして転移する云々の記憶が曖昧なのは異世界小説色々読んでよくある事。ただ俺が忘れっぽいだけなのかと思ってたけど、その何者かが記憶を消したのでは…!という所まで行き着いた。
俺を転移させる事が出来るような存在が理知的で無いはずがないっと偏見混じりの考えからその部分の記憶が無いのにはきっと理由がある。
と言うことでその理由が何かを考えて、平凡な人間が異世界転移したらどんな行動をするのかって実験で実際に人間を送ったら非人道的だなんだらみたいな理由でクローンか人間に似た生物を造って記憶と精神を転写したというストーリーを考えた。
だとしたら記憶が曖昧なのは実験のためにはそんな記憶が残ってたら不都合で、記憶をコピーする時に省いたから。このストーリーなら辻褄が合うんじゃないかと思う。
だからステータスで自分の名前が無いんだって気付いた。う~んうだとすると俺の頭がおかしいのは元からなのかクローンだからなのか異世界に来たからなのか分かんなくなったな。
自分がそんな状況で実験に協力するかと考えると……やるね。俺なら多分やる。記憶がコピーされて精神が同じだから分かる。
そう考えた時、自分は偽者なのか?今までの家族との楽しかった記憶も友達と遊んだり喧嘩した思い出も全部実際に体験した訳じゃなく複製された紛い物なのか?初恋の淡い思い出も彼女との時間も実際には無かったのか?…と愕然とした。
まあ初恋と彼女は嘘だけどね。まだ誰かを好きになった事も無いよ。
自分の存在とは何なのかととてつもなく衝撃を受けた。さすがの俺でもしばらくショックを受けて考え込んだ。
20いや30分は考え込んだと思う。こんなに立ち直るのに時間が掛かった悩みなんて初めてだった。30分も考えたら飽きたけどな!
だとしても…だとしてもだ!それが事実かどうかは分からない。この考察結果は思春期の子供の、自分は本当の子供じゃなくて拾われてきた子供なんだっていうのとレベルは変わらない。事実確認が出来るか出来ないかの違いしかない。
それに思うを多様してる所からも話が仮定の域を出てない事が分かる。
人間は辞めてみたかったから別にいいし、見た目が良くて人間より優れた生物に成りたいとは思ってたし。とりあえず自分をクローン人間だー!とでも思って生きてくつもりだ。
そう決意を新たに異世界を生きていくぞ~と気合いを入れ直していると…
「何してるの~?」
と声を掛けられた。
あっ、そうそう。この一週間で一番変わった事がコイツ。
そこには銀髪で犬のような耳が付いた美少女がそこに立っていた。
ていう妄想をするようになった事だよ。
美少女云々に限らず今の状況から助け出される色んな妄想をしてるよ。
神様に呼び出されて「すまんかったな」なんて謝られて手違いで森に送ってしまったなんて言ってチートスキルを貰ってイージーモードになる。…なんつってな!
そんな事が俺にある訳がねぇ!!あったらもっと前にあるわ!
まあそんな愚痴っても何も変わらないので、そろそろ肉も無く食べ物を探さねば。体も動くようになってきた、食べ物探しもするが、今回の怪我各種は教訓にもなった事だし強く成れるよう鍛えよう。
まずは筋トレと身体を上手く扱えるように遊ぶ!




