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さつき、ハルカ先生と再会する

「ハルカ先生!!」

懐かしい顔だった。


あの時、担任だったハルカ先生が病室に現れたのです。

「どこに行ってたの?あれから何があったの?何でここが分かったの?」

そんなことは今はどうでもよかった。後回し。


「さつきちゃん!」

先生は私をハグすると、あの宇宙人のアンテナを伸ばしてわたしの全身を優しく包み込んだ。

その感覚はすごくやわらかくて、あたたかくて、ねむたくなって、安心だった。

今までの寂しい気持ちや辛い気持ちがスーッとどこかに消えていくみたいに感じられました。

「さつきさん、あなたのこと・・・ずっとずっと気になってたの。

あなたは、先生の大事な生徒で、おともだちだから。」


「ちきゅうを滅ぼすための悪いうちゅうじん」

「うちゅうじんは死刑」

「出会った人も重罪と処す。」

そんな言葉がチラリと、さつきの脳裏をよぎります。

だけど、「来ないで。あっち行って。」とは決して言えなかった。

さつきは、無言で先生の服をにぎりかえしました。


先生は、自分の正体を隠してこっそり毎日病室にやってきました。

パパとママとはるか先生はにいちゃんの事件の時以来すっかり仲良くなって、半分家族みたいです。

最初、パパは、

「先生・・・あんた、うちの娘にいたずらをして学校をクビになったんだってな。まさか、そんな人とは思っていなかった。・・・まさか、さつきの病気も、あなたが・・・?」

と誤解して言いました。

さつきが、

「ちがう!ちがうよ!パパ!先生はね、先生はね・・・」と言いかけたところ、

ママが言います。

「あなた、覚えてない?ハルカ先生は、『あの子』を、さつきの兄を助けてくれたわよね?先生がいなければ、『あの子』は・・・。」

「しかし、それは法律違反で・・・。いや、そんなことはどうでもいい。

・・・疑ってすまなかった。周りの人間がみんなみんな、あんたが悪いというもんだから・・・私もつい乗せられてしまったようだ。すまない。謝ります。

もし、気を悪くしたら申し訳ない。

私もあなたのことを信じる。どうか、これからも一家ともどもよろしくお願いいたします。

・・・特に、さつきは、あなたのことが大好きです。

小学生の時、家では本当にあなたのことを喜んで話していました。」


一瞬、ハルカ先生の動きが止まりました。

「どうしたの?」

さつきがきくと、先生の眼はどこか遠いところを見ています。

何かを思い出しているみたいです。

目が(うる)んだかと思うと、大粒の涙がぼろぼろとこぼれてきます。


「うわああああああああああああああん!」

先生は、子どもか赤ちゃんのようにうずくまって泣き始めました。


たくさん、数えきれないほどの辛いことがあったのでしょう。

誰にも言えない悔しいことや哀しいことがあったのでしょう。


「わたしたちは・・・わたしたちは、にんげんが、大好きで、このちきゅうを幸せにしたいと思って、やってきた。おともだちになりたかったのに。

・・・だけど、なんにも、なんにも、できなかった・・・そればかりでなく、いつの間にか悪者にされて。

そして、一緒にやってきたうちゅうのたいせつなお友達は、まるでゴミを焼くように殺されていった。

・・・それでも、ちきゅうのひとたちが好きです。

たとえ、どんなにひどいことをされても、わたしたちはちきゅうを愛し続けているのです。

守りたい。守りたい、味方になりたいと思っているのに、わたしは、わたしはなんにもできない。愛しているのに、なんにもできないまま、この素敵な星とそこに住む人びとは、なぜ、なぜ、自ら自分の首をしめるような愚かなことを続けていくのでしょう?

・・・もう、もう、だめです。疲れました。先生は。

助けて・・・だれか、助けて。もう、これ以上何もできないよ。」


せんせいは・・・うちゅうじんたちは、ちきゅうじんを恨んで復讐なんか全く考えていなかった、そればかりか深く私たちのことを愛していたのです。

うずくまっているはるか先生のところに、さつきはベッドから降りていきました。

「せんせ、はるかせんせ。」

それ以上、何も言葉が出てこなくなって、先生の背中をさするので精一杯でした。

いろいろ、伝えたいことがあるのに・・・いろんな思い出のこととか、ありがとうとか、あるんです。だけど、こんなになってる先生の前でなんにも出てこないのです。

気が付くと、さつきもせんせいを抱きしめながら思わず泣いていました。


「・・・せんせ。」

昔、ハルカ先生が、苦しんでいたにいちゃんをだきしめて、何かを話しかけていた姿を思い出しました。

「せんせ、だいじょうぶだよ。さつき、せんせのこと大好きだよ。ありがとう。

・・・いっぱい、つらいことあったね。よしよし。

せんせ、だいじょうぶだよ。あなたの生徒、あなたのおともだち、さつきがついてるよ。」


どれくらいそうしていたことでしょうか。


「さつきさん、やっぱりあなたは・・・あなたは、先生自慢の生徒で、大切なおともだちです。ちきゅうに来て、よかったです。生きてて、良かったです。」


「・・・もし、あなたまで、あなたまでが、うちゅうじんを殺すことに加担することがあれば、せんせいはもう生きていなかったかもしれない・・・。」



先生が病室を出た後、心の中で思いました。

「・・・ごめんなさい。先生、ごめんなさい。

さつきは、にいちゃんを、にいちゃんを・・・裏切った。」


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