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さつき、中学生になる

中学校の生活が始まりました。

この地球上が大混乱の中、何もかもがはじめての生活。


中学校にあがり、勉強は難しくなりました。

「高校になると中学の比じゃないぞ。」

「大人になるともっともっと大変なんだからな。」

少しずつですが、毎日の生活が子どもの時に比べて、しんどくて味気ないものになってきたような気がしました。


いつのまにか、誰もが熾烈(しれつ)で過酷な競争のなかに巻き込まれています。

勉強やスポーツができる人間と、できない人間の間で明確な線引きがされていきます。

人と人がお互いに助け合ったり、協力してなにかをする心の余裕なんてありません。

ただ、自分が、ただ、自分だけが、「いいポジション」を獲得すること、人と比べて「すごいね」って言われること、勉強やスポーツができるという「誇り」を獲得するために一生懸命努力します。

いつまで頑張るのでしょう。どこまで頑張り続けなきゃいけないのでしょう。


学校というのは、まるで牢屋か軍隊。

なんでもかんでもみんなで一緒にやらなければいけません。

勉強も一緒、食事を食べるのも一緒、遊ぶのも一緒、トイレに行くのも一緒。

騒がしい生徒たちに、それを押さえつけるために、いつも怒鳴りつける先生たち。

そして、数えきれないほどたくさんの校則。

「そうしないといけないんだ。それ以外にどうしようもないんだ。仕方がないことなんだ。」って感じながら、私たちは自分の想いや感情、考えていることを表現する機会を奪われていきます。

何のためにあるのかわからない授業だけが一方通行で儀式のように流れていき、「わたし」はいつも窓の外を見つめながら空想にふけっています。

その間は、大好きな本を読むことも、絵を描くことも、走り回ることもできません。

無表情のような毎日と、暇つぶしと寂しさを埋めるためのバカみたいな大騒ぎ。

大人たちは、「がんばれ、がんばれ、もっとがんばれ」って言う。

一体どこに向かって、何のために頑張ればいいのでしょう。

だけど、頑張らないと、わたしは落ちこぼれて、この世の中に居場所をなくしてしまう。

こんな窮屈でしんどいことが一生続くのだとおもうとやってられません。


さつき、教科書を読むことは、実は大好きです。

だって、そこにはちきゅうじんたちがそれまで何千年もかけて積み重ねてきた知識や知恵ができるだけわかりやすく伝えられているのですから。

わたしは、教科書を読んでいるうちにもっともっとこのちきゅうのことを知りたくなってくる。

なぜこの地形はこんなふうになったの?数字の規則ってすごいなあ。

だけど、先生たちには「おどろき」や「たのしさ」という感覚がないみたいです。

いいえ、先生だけでなく、生徒たちもたいがい、「勉強なんてやって何の役に立つの」とわかったようなふりのことをのたまいながら、効率よく点数をかせぐための「それ、点数つきますか」という質問しかしてこない。


それでも、友達は宝物です。

毎日の何気ない会話や、手紙のやり取り、おしゃべりが楽しくて。

特に、大人には話せないような悩みとか考えていることを語り合える時、「この子たちと出会えて本当に良かったな」と思うのです。

想えば、とても不思議なことです。

ちきゅうには七十億人以上の人がいて、何かの偶然でお互いに出会ってこうして一生に一度の大切な時を過ごしている。


また、こんな生活の中で、わたしは思うのです。

心はいつもカーテンに覆われている。

カーテンを開けて人に見せることのできる心もあれば、ずっと閉じていないと・・・どうしても開けることのできない心もあること。

・・・もし、すべてのカーテンを取っ払って、すべてのこころを安心して見せられるお友達がいるならば・・・その人こそ、一生大切にしなければならない本当の宝物だと。

大人たちは、こころがないのでしょうか。それとも、まるで鉄のカーテンに覆われたみたいに心に決して光が差し込むことはないのでしょうか。

そんなことを思うことがよくあります。

いいえ、わかりません。こころに鉄のカーテンがかかってるのは大人も子供も誰だって一緒で、わたしだってそうなのかもしれません。

ちきゅうの人たちはみんな鉄のカーテンを心にかけていて、そうしないと生きていけないことばかりが多くて、開き方を知らないだけなのかもしれません。


・・・うちゅうの学校って、どんなところなんだろう。

わたしは、はるか先生から小学校の時聞いたことを思い出していました。

校則はたったひとつ。

・・・なんだったっけ。そうだ。

「うちゅうは自分のことを愛していて・・・?

うちゅうのことをしっかり愛する・・・?

おともだちを、自分のように大切にすること。

自分のしてもらいたいことを人にもしてあげる。」

だったっけ。

それだけで、だいじょうぶなんだと。


少しずつ、その言葉がどこか遠く感じられるようになりつつあります。


ちきゅうの社会や歴史のことをお勉強するたび、いろんなことが分かるようになってきました。

ちきゅうじんとは、たえず戦争をするいきものであること。

強いものが、弱い者を支配しいじめること、これも当たり前だということ。


・・・そして、さつきも「立派な」ちきゅうじんだったのです。

中学生や高校生になると、にいちゃんやはるか先生が言ってた「宇宙の大切なルール」なんて守ってる人なんていない。そもそも、どう頑張ったって完全にそれを守ることなんてできないから息苦しくなって死にそうになる。

「そんなの・・・きれいごとだよ。」


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