さつき、愛が広がっていく
「しっかりしなきゃ・・・。大人にならなきゃ。
甘えてばっかりいちゃだめだ。」
平和が取り戻った街で、さつきは打って変わったように真面目でしっかり者になりました。
さつきはいっぱいお勉強をしました。
コツはね、たくさんあるけれども、「なりたい自分の姿をニヤニヤしながら想像してから、勉強に取り掛かる」ということ。
一気に難しいことに取り組むのではなくて、一つずつできることを増やしていく喜びを知っていること。
そして、「みんなを幸せにすること」を考えること。
人はね、何のために勉強したり、成長するのかって考えたことある?
自分の力で、誰かを幸せにするため。
これまでは、競争して人に勝つために勉強をしてきた。
だけど、競争でなくて、「共創」つまり「協力」と「創造」の次元に進んでいかなくちゃならないのです。
私の夢は、うちゅうに行くこと、そしてにいちゃんの星にいって、ちきゅうの文明を進めていくこと。
でも、ほとんどのちきゅうじんたちは「そんなこと夢物語だ」と言って、さつきのことを大笑いして、馬鹿にします。
でも、わたしだけはひとり「さつきなら、できる!絶対できる!いや、すでに実現している!」って強く想って、毎日そのことを何遍も何遍もノートに書いていたんだよ。
そうしたら、周りから何を言われようと、「自分ならできる」っていう確信がわいてきて、ますます頑張ることができた。
努力ってしんどいっていうけれど、好きなことだったら何十時間でもやっていられるからすっごく楽しいの。
夢中になれることがあると、人はそこに幸せを感じるようにできているのです。
さつきは、昔のことを思い出してあれこれ考える暇もなかったし、これからの将来のことを考えて不安になる暇もなかった。
ただ、今、ここだけ、夢中になることを考えていた。
そんなさつきの頑張る姿を見て、周りの人たちもさつきの真似をしはじめました。
くらやみにろうそくがともって増えていくみたいに、連鎖反応のように、いいことが次々とおこりはじめました。
この姿をみて、さつきははっきりと確信したのです。
「ひとりができることはこの暗闇に小さなろうそくを灯すように小さいことかもしれない。
だけど、だれかひとりが自分からろうそくを灯せば、わたしたちは、こうやって明かりを広げていくことができる。みんなが集まれば、太陽みたいにこのちきゅうのすべてを照らしていくことができる。世界だって変えていくことができるんだ。すべては、〈わたし〉の勇気ある小さな一歩から始まります。そして、その小さな一歩は世界を変えるだけの力があるのです。」
さつきの仲間たちはどんどん増えていきました。
「愛」がどんどん広がっていきます。
*
さつきは、山に登ります。
ハルカ先生に、
何人かのお友達が笑顔でついてきます。
空気はどこまでも透明で澄みとおっていて、飽和し溢れる清らかさが崖を上る皮膚に吸い込まれ、汗は喜びに輝いて見えます。
さつきたちは、手をつなぎながら緑の上をのぼっていきます。
振り返ると、雲が海のように幻想的に山という山を覆い、まるで白い毛皮や羽毛をまとっているみたいです。太陽がすべてを照らし出します。
夜になると、宝石のような星たちが、海岸の砂粒よりも多く輝いて降ってきそうです。
すべての星たちは生きていました。
そして、銀河は大きく大きく脈をうっているのです。
「ハルカ先生の星はどこ?」
「にいちゃんは、どこから来たんだろう。」
そんなことを話しあいます。
山も、空も、雲も、花も、鳥も、すべてのものがさつきたちに語りかけていました。
すべては、「うちゅうのひみつのことば」の響きです。
うちゅうのすべてが、銀河系から素粒子のひとつひとつにいたるまでが、まるでひとつのオーケストラのように「うた」をうたって、そのおくにあるなにかとてつもなく偉大なものをほめたたえてよろこびのこえをあげているのです。
さつきは泣いていました。
なぜかわからないけれど、なみだがあふれてしかたがなかったのです。
きがつくと、さつきのおともだちもみんなみんな涙をながしています。
なにかおさえつけられないものが、さつきのこころのおくから、おなかから湧き上がってきて、すべての存在がうたっている「うた」にじぶんも加わらなければ、加わりたくて仕方がないのです。
どうやって、うたったらいいか。
それは、ならわなくても、生まれたときから、いいえ、うまれるまえ、この世ができるまえから知っていたことでした。
ずっとずっとわすれていた、あの「うた」。
いつもいつもこころの中に鳴り響いていたメロディ。
心の耳をすませば、すべての存在がうたっているあの「うた」。
思い出した。思い出した。やっと思い出したよ。
「ちきゅうのみんなーーーーーーーーーっ!
よく聞け―――――――ッ!
これがぁああああああ!
愛の力だああああああああああーーーーーー!」
さつきは、世界の中心で大声で愛を叫びます。
その声は、うちゅうにも届いたのでしょうか。




