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さつき、身動きが取れなくなる

「みんなみんな滅びてしまう。

どうやったら、助け出すことができる?」

うちゅうじんたちは、巨大な円盤からこの星の処置を話しあいます。

「闇の宇宙の力を受けたトラヒーが自らの進化と引き換えに、ついに、破壊のスイッチを入れてしまったからには、もう救いようがない。」

「ちきゅうにいるうちゅうじん全員を母船に避難させてから、ちきゅうに巨大彗星を衝突させて、この救いようのなくなった人類を滅亡させてから、生き残った種を進化させて新しい文明を作らせようか。」

「最も避けたかったことですが、最終手段に踏み切るしかないところまで来てしまったようです。」

ものすごく苦い顔をしてあるうちゅうじんが言います。

「うむ・・・彼らちきゅうじんは、われわれが何十億年もかけて作り上げ贈った愛の贈り物の価値を知らないばかりか、喜ぶこともなく、受け入れることもなく、むしろ、邪魔者扱いして棄ててしまう愚かな生物のようだからな。」


にいちゃんがテレパシーで、かれらと話します。

「ある提案があります・・・。」

「しかし、それは・・・それはあまりにも。」



闇の住人たちはみんなばけものに吸収されてしまいました。

ばけものから血管のような触手が出てきて、トラヒーにつながります。

ばけものとひとつになったトラヒーは、まるで自分が誰なのかすらも分からないようです。


宮殿だった空間は、時空から切り離されて景色が濁流のようになっています。

その閉ざされた場所にいるのは、狂ったばけものとそこにつながったトラヒー、

そして、さつきと、にいちゃんと、はるか先生の三人だけ。

何が何なのやらまったくわかりません。

ばけものは、もはや自分自身が何者であるのかすらわかっていないようです。

うめくようにして、触手を振り回します。

触手が当たったところが次から次へと臭いにおいを発しながら溶けるように腐っていきます。

どこまでも深い深淵からぎょろりと飛び出した目玉がこちらを凝視しています。


「目を合わせちゃダメ!」

とハルカ先生がさけびます。


それは、さつきに語り掛けてきます。

「ヒトトハメヲアワセナケレバダメデショウダメデショウダメデショウ・・・。」

「シュクダイハヤッタノ・・・。」

「ヒトノハナシハサイゴマデキカナキャダメジャナイ・・・。」

「アナタノソンザイガイッタイドレダケヒトニメイワクヲカケテイルトオモッテルノ・・・。」

「ダレモオマエノコトナンカアイシテハクレナイヨ・・・。」


耳をふさぎ、じっと下を向いてうつむきます。

「オマエニイキルカチハナイ」

「ジャマモノ!」「オマエハワルモノ」

「オマエハクルッテイル!クルッテイル!オカシイヨオマエハ!」

「・・・ネエ、ハナシキイテルノ、ネエッテバ!ムシシナイデ!」


「ちきゅうの毒」をまき散らす、牙やとげを生やした草が生い茂ります。


さつきは、叫びました。

「うるさああああああい!」


「オマエハヒトヲウラギッタうらぎったウラギッタうらぎった。」


耳をふさいでも、「それ」はすべてをおしのけて、さつきの存在すべてを穢し、

どこまで逃げてもべっとりと付きまとってきます。

なぜなら、それはさつきの存在そのものだったからです。


さつきは、草にぐるぐる巻きにされてしまいました。そして、もうどんなに頑張っても何一つ身動きが取れなくなってしまったのです。


「ワタシハワルクナイ・・・ナニモワルクナイ。

ワルイノハおまえオマエおまえオマエ。

チガウ・・・チガウ・・・チガウ。

ワルイノハヒトリノコラズソウダ。ミンナミンナ有罪。シンデシマエバイイ。」


時空のはざまに飛ばされ、濁流のようになった景色のすみずみから、ちきゅうじょうで何が起こっているのかがちらちらと見えてきます。

ちきゅう上の表面で、地震や大災害が起こり、街が消滅していくのが見えます。


「すべてが・・・すべてがおわるの?

いままで、たくさんたくさん、がんばってきた。だけど、すべてはみんな無駄だったの?」


にいちゃんは、天を見上げてこう言いました。

「こわくても、だいじょうぶだよ。

だいじょうぶ、だいじょうぶ。

ぼくがいるからね。」



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