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第零章 『日常奇譚』
それは
私がまだ『ボク』だった頃に舞い降りた
儚くも永かった夏の記憶
……そう
私には忘れられない夏がある
懐かしき邂逅を携え
永遠を纏った
金色の夏が……
第零章 『日常奇譚』
この世に生れ出でた全ての人間には、
天命を全うするまでの間に
必ず重要な岐路、所謂『転機』が訪れる。
その回数もタイミングも人により様々だが、
それら『転機』には必ず
種となる『きっかけ』が存在する。
その『きっかけ』は、
日常でもあらゆるところに転がっており
身近であるが故に、その安心感から、
ほとんどが見過ごされてしまう。
そんな『きっかけ』に波長が合い、
目の前に幾つかの道が拓かれる瞬間がある。
そこが『転機』である。
しかし、大抵の場合、その瞬間に
『転機だ』と気付けることはごく稀で、
後に『転機だった』と気付くことが
ほとんどである。
今思えば、あの夏の出来事は、
私にとって、正にその『きっかけ』であり、
意図を孕んだ晴天の霹靂のような
『転機』へと昇華した。