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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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閑話 伯爵領襲撃事件とその後③

四章終了~。

クレインに授与式の準備をさせ、家臣の子供をエイルド達の従者にする段取りをする。

そういえばその家臣達から子供に騎爵位を与える話もあったな。エイルド達の従者には関係無いがついでにその者達にも騎爵位をやっておくか。

しかし一日しか余裕がないが準備は大丈夫だろうか?

無理なら諦めさせよう。また後日に時間を作れば良い。

部屋にやってきた家臣達を集めて説明をする。


「エイルドとポアラの従者の件だがお前達の子供達を用いる。王都の出発は明後日だ。急いで準備をしろ。顔合わせは明日だ」

「失礼ですが、準備期間がありません」


それはそうだろうな。一人の家臣が言うが、他の家臣が言った。


「分かりました。直ぐに準備をします。私には男女の子供が居ますのでエイルド様とポアラ様の従者にはピッタリです」


……この者は前々からエイルド達の従者には私の子供をと言って薦めていた者だ。

トルクが来る前にエイルド達に紹介したが三日も持たずに従者を辞めた子供達の記憶がある。

その者達に任せて大丈夫か?だが時間がない。その者達がまた辞めたら他の者を従者にするか。


「分かった。エイルド達には明日紹介するから準備をしろ。それから明日、授与式を予定しているが騎爵位を与える者は……」

「はい、私の愚息ですが是非お願いします。伯爵領を守る騎士にするべく鍛えております」


この者の子は確か伯爵家の兵だったな。推薦者も信頼できる。トルクと一緒に砦に行かせるか。


「それからドドバン子爵から我が子に爵位をと受けております」


ドドバン子爵の子供か。子爵は武に優れて帝国から砦も守ってくれている得難い家臣だ。ドドバン子爵の子供なら問題あるまい。

とりあえず二人が授与式に参加する事になった。トルクも入れて三人か。流石に時間が足りなかったな。

家臣達は執務室を出る。私の次の仕事は……おやノックが聞こえる。クレインが部屋に入ってきて授与式について相談に来た。


「授与式に参加する者が増えたと聞きました」

「トルクを含めて三人になる。そうだクレインはこの者を知っているか?」


ドドバン子爵の子供の事を聞く。

「義父上、この者は確かドドバン子爵の三男ではないでしょうか?」

「いや次男だ」

「……なら問題ないでしょう。ドドバン子爵の次男は兵達からも評判は良いですし、武より文を重んじています。補佐役に向いているそうです」

「三男はどのような人物だ?」

「……権力を振りかざして平民をモノ扱いして乱暴していると聞いた事があります。幼少期から王都で生活をして王都の貴族の従者をしていた事で乱暴者に育ったと思います」

「……そのような者に爵位を与える事は出来んな。ドドバン子爵の家族は何をやっているのだ?」

「ドドバン子爵は砦に、家族は長男が王都の学校に行っている間に王都に住んでいたようです。次男は砦で生活していましたが、三男は王都で生活していたようです。子爵夫人は王都出身の貴族で三男を親戚の子供の従者にした事で王都貴族のような乱暴者になったようです」


……見事なまでに教育の失敗だな。

今回、騎爵位を与えるのはトルクと伯爵家騎士の息子のロダン、それからドドバン子爵の息子か。

この三人が砦に行く。ドドバン子爵の息子は砦で生活をしていたから問題は特にないだろう。ロダンも伯爵領で働いていたから小隊長くらいは大丈夫か。

トルクには今回、洗脳されていた兵達が護衛に付く。トルクの護衛と手伝いをしてもらう。後はトルクが隊長として将来、兵を率いる事を教える為に学ばせるか。


「失礼します」


レオナルドと一緒に入ってきたのは今考えていた洗脳されていた兵達の隊長だな。確か名前は……。


「失礼します。ケビンです」


そうケビンという名前だったな。伯爵領の見回りをしていた者だ。


「レオナルドから聞いたと思うが、お前の任務は聞いたな」

「騎爵位を受け取るトルク殿の護衛です」

「それだけではなくトルクに兵を率いる事を教える為に、トルクの下にお前達を付ける」

「了解しました。私と私の部下、十名。トルク殿の指揮下に入ります!」

「トルクの仕事は怪我人の治療だ。しかし砦ではそれだけではないだろう。突発的に前線に出る可能性もある。その時はお前達がトルクの盾になり、トルクの命を守れ。お前達が怪我をしてもトルクなら治療できるだろう」

「了解しました!」

「うむ。レオナルド。ケビン達の兵に伯爵家の家紋が付いた防具を渡す許可を出そう。お前達は我が伯爵家の兵だ。トルクを頼むぞ!」

「はい、準備をします」


これでトルクの身の安全は大丈夫だろう。後は後ろ盾だな。

伯爵家の騎士だから後ろ盾は私だというのは普通の者は分かるが、頭の悪い連中にはどう教えるか……。

砦にいる一番偉い奴の側近にしておけば良いか。砦に赴いたときに話す事が増えたな。

……執務室の入り口からノック音が聞こえる。許可を与えて食欲をそそる匂いと共に入ってきたのは私の信頼する執事長のギルバートだ。


「失礼します。お食事をお持ちしました」


窓を見ると外が暗い。いつの間にか夜になっていたのか。

ギルバートに食事の用意をしてもらい娘や孫たちの事を聞いた。

トルクが砦に行って戦争に参加する事でもめていたが説得できたとの事。トルクがポアラの説得をして二人の間が狭まった事や、エイルド達が納得したとの事、リリア殿やマリーも納得したらしい。

リリア殿には悪い事をしている。恩を仇で返すような事をしている。どうすればよいのか……。

考えているとネーファが執務室に来た。


「失礼します。少しよろしいですか?」


ネーファが執務室に来るのは珍しい。用事はトルクの砦行きの件だろう。


「リリアさんの事なのですが」

「リリア殿の事か。私も心を痛めている。しかし回復魔法が使えるトルクの力がどうしても必要なのだ」


リリア殿の件か。ネーファにもわかってもらいたい。


「トルクが砦に行くのは納得しました。ですがリリアさんの事です。今まで貴族や目上の人々に脅されながら生きていました、今回の件もリリアさんがハッキリ断っていたら貴方は諦めていたでしょう。ですがリリアさんは貴族・目上の人間の言う事を聞く事が当たり前になっているのではないでしょうか?あの方の今までの人生が脅されて生きていたからそれが当然になっているのでしょう。どうにか出来ないでしょうか?」


……リリア殿の今までの生き方を考えたら貴族の命令を聞くのは当たり前になっているだろう。平民は貴族の命令を聞く。それは王国でも帝国でも当たり前だ。平民出身のリリア殿も当たり前のように貴族の命令を聞くのは当然ではないのか?


「リリアさんを私の娘にするのでしたら伯爵家の一人になります。自分の考えをハッキリと言える人でなければなりません」


……リリア殿と一緒に生活しているアンジェに詳しい話を聞いてみるか。そしてネーファの言う通りならアンジェに貴族の立ち振る舞いを見習わせるか。


「今からリリアさんと話そうと思います」

「……私も行こう」


リリア殿と会い何を言うのか分からないが、リリア殿の為になにかをしたい。ネーファとギルバートと一緒にリリア殿がいる部屋に向かう。

ドアに近づくにつれて部屋からリリア殿の声が聞こえる。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


……今は部屋に入らない方が良いだろう。ネーファとギルバートを見て二人共頷いた。三人は来た道を静かに戻った。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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