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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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閑話 伯爵領襲撃事件とその後①

私の名はサムデイル・ルウ・バルム。バルム伯爵領地を治めており伯爵の地位にいる。

王都からの手紙を見て憤怒して手紙を破り捨てる事を必死に抑えている。手紙の内容は「アイローン伯爵領の砦の増援に向い、第二王子と共に帝国軍を討て。バルム伯爵領の砦の増援の話は平民を徴兵して砦に送る」と簡単に言うとそう書いてある。

現在、バルム伯爵領の砦には兵が少なく維持する事が難しくなっている。戦争で怪我人が増えて死亡したり、怪我のせいで戦場に参加できない騎士や兵達が多くこのままでは砦が帝国に奪われる可能性がある。

バルム伯爵領の砦は難攻不落として有名で、私の祖先が作り上げた砦だ。たとえ十万の敵兵からでも守れると自信がある。

しかし砦を守護する兵達が減り、王都に増援を頼んだが平民が来るだけだ。現場を指揮する騎士、もしくは防衛に有利な魔法使いを頼んだがそれも断られた。

回復魔法を使える魔法使いも貴族院に頼んでいるがそれも無理だった。

王都に居る回復魔法の使い手は王族や上級貴族が囲っているから難しい事は分かっていたが、回復魔法の使い手が砦に来たら怪我人を治せる。その事を何度も貴族院に話したが「下級騎士や平民に回復魔法は勿体ない」と言われる。

戦場を知らない王都の貴族が放った言葉に殺意を抱き八つ裂きにしてやろうと本気で思った。行動を起こす前に他の貴族から腕を抑えられて私は貴族院で剣を抜く事なく、私はその貴族に怒りを覚える事しか出来なかった。

ここ数年は帝国の諜報に頭を悩ませている。砦を経由しないで領内の村々で破壊行動を行い、領内の砦に送る補給物資を襲われる。子供や孫達が賊に襲われる。

兵を巡回させて見回りをしているがそれだけでは駄目だ!

傭兵ギルドと魔法ギルドと協力して帝国に人間を送り情報を集めたり、賊を泳がせて一気に壊滅したりしているがいつも後手後手に回っている。

今年は孫のエイルドとポアラが王都の学校に行くのだが大丈夫だろうか?

途中で賊に襲われたり、王都の貴族達に良からぬ事を言われたり、乱暴されたりしないだろうか?

そういえば、リリア殿の子供のトルクも一緒に王都に行くはずだ。あの子は剣も使えて魔法も使える。二人の護衛に丁度良いだろう。

トルクはポアラと婚約したとアンジェの手紙にも書いていたし、あの子ならエイルドとポアラを守ってくれるはずだ。

さて、どうにかしてバルム砦を守らないといけないな。誰を砦に行かせるか……。

それからアイローン伯爵領の砦の増援も考えないといけない。

多すぎるとバルム砦に人が出せない。少ないと王族に対する忠誠が疑われる。……頭が痛いぞ。

見回りの兵達はそのままに領内を哨戒させて、クレインは伯爵家に待機させよう。この場所ならクレインの男爵領にも王都に行けるし、アンジェもドイルも伯爵家に滞在させよう。

レオナルドを砦の増援に加えて……駄目だな。レオナルドは男爵家に居てもらってクレインの代わりをさせるか。

流石にリリア殿に砦の防衛を頼む事は出来ん。リリア殿にはトルクと一緒に王都でエイルドとポアラを助けてもらおう。

しかし砦の増援だが誰をやるか難しいな。魔法ギルドや傭兵ギルドに砦の増援を頼むか。徴兵された平民の中に剣や魔法の心得がある者が居れば嬉しいのだが……。

一層の事、誰か良い者に騎爵位をやって砦に行かせるか……。


「申し上げます!ウィール男爵からの伝令が来ました。伯爵領で賊に襲われたとの事です。手紙を預かっています。詳しくはこの手紙をご覧下さい」


また賊が出たのか。クレインとレオナルドが居るのだ。賊は殲滅されただろう。何々……。

帝国兵と思われる兵が二十人襲ってきて撃退したが、洗脳されたバルム伯爵の兵達がアンジェ達を襲ったがこれを阻止した。しかし後方より矢を射られてアンジェに矢が当たり致命傷を負ったが、トルクが回復魔法を使ってアンジェを回復させた。

……待て!待て!なんだこの内容は?少数の帝国兵が護衛の多いクレイン達を襲ってきた?理由はなんだ?嫌がらせか?護衛兵をアンジェ達から遠ざける為か?

洗脳されたバルム伯爵の兵達?男爵家に送った兵達の事か?あいつらは洗脳されていたのか?どうして今まで何事もなかったのだ?これは後でクレイン達に聞くべき内容だ!

アンジェに矢が当たり致命傷を負った?それをトルクが回復魔法で治した?アンジェの負った傷はかすり傷だったのか?それをトルクが傷薬を持っていたからそれで治したのか?

致命傷の意味は死ぬ原因になる傷の事だろう。アンジェが矢で致命傷を負ったけどトルクが回復魔法を使って治したって意味なのか?

……少し休憩しよう。お茶を飲んで休憩しよう。

トルクが回復魔法を使えるという事はトルクを砦に派遣すれば怪我人の治療が出来るのではないか?

……茶が美味い。

しかしリリア殿の子供を戦場に行かせる事になる。そんな事は出来ない……。

だが砦の事を考えたら……。

恩人の子供を戦場に……。




「手紙を読んだが詳しく聞きたい。教えてくれ!」


クレイン達が伯爵家に着いたので私はクレインとレオナルドを執務室に呼び、今回の騒動の内容を聞く事にした。


「伯爵領に入ったところで賊に襲われました。賊の数は二十人です。護衛兵三十人と私とレオナルドで殲滅に当たり、残りの二十人の兵はアンジェ達を守る為に護衛を任せたのですが、後方で護衛をしていた伯爵家から来た兵達が急に正気を失って私達を賊と認識して襲ってきました。いつからかは分かりませんが兵達は洗脳されていた様です。その後、馬車から出てきたアンジェに賊の矢が当たり致命傷を負い死ぬところでしたが、トルクが回復魔法を使いアンジェの怪我を治し、洗脳されていた兵を光魔法で洗脳を解いたのです」

「その後、生きている賊を捕らえて尋問しましたが、帝国出身の者という事が分かりました。洗脳されている様子は有りません。帝国で罪を犯した罪人で国外退去として武器と一緒に王国に来たと言っています」


二人の報告を聞き新しい情報が入ってきたな。少しずつ情報を整理しよう。


「まずは賊だが何処から王国に入ってきたのだ?帝国に続く道は山脈を上る他無いと思っていたが」

「賊達にもその事を聞きましたが、本人達も分からないそうです。目隠しをして馬車に乗せられて後に解放されたと言っています」


レオナルドが私の疑問に答える。

馬車で行ける道か……。そんな所は無いはずだが。他の領地には帝国との秘密の道があるのか?


「他の領地に帝国との秘密の道がある様です。隣の領地のアイローン領地だと思います」

「……場所は分かるのか?」

「賊達も地理に詳しくないので場所は分からないそうです。そしてクレイン様達を狙った理由ですが、ある人物から襲ったら金と食料を貰えると言われたので馬車を襲ったと言っています」

「誰が唆したのだ?」

「現在、調査中です。帝国のスパイと思いますが詳しい事はまだ何も分かりません」

「分かった。牢屋に入れて引き続き尋問してくれ」


スパイは居なくなったと思ったがまだ居たか。全くネズミの様に殺しても出てくる。我が領地だけではなく他の領地も帝国のスパイは多いのだろうか?王国は帝国にスパイを送っているのか?今度、他の領地の者に聞いてみるか。


「次に洗脳された兵達の件だが」

「兵達は洗脳を解いています。記憶も残っており罪の意識にさいなまれ死罪を求めております」

「死罪にするくらいなら戦争で戦死させる。死ぬ気で罪を雪げ」


しかし洗脳なんていつの間にされたのだ?兵達は覚えているのだろうか?いや記憶を改ざんする事は闇魔法で出来るはずだ。おそらく覚えておるまい。そして一番聞きたい事は。


「トルクが回復魔法を使ってアンジェを回復したと言っていたが本当か?」

「はい、私達の目の前でアンジェに回復魔法をかけました。アンジェの体に矢が当たり致命傷でした。しかしトルクが回復魔法を使いアンジェの傷を癒したのです」

「手紙で回復魔法を使ったと書いていたが本当だったのか。トルクは誰から魔法を教わったのだ?リリア殿ではないだろう」

「その事ですが、伯爵家に着いたら教えてもらう事になっています。私と義父上とアンジェ、レオナルドとリリア殿とでトルクと話し合いの場を設ける予定です」


トルクが回復魔法を使える事は分かった。しかしどの様にして覚えたのだ?待てよ、子供のトルクが使えるのだ。他の人間でも回復魔法を使える者が増えるかもしれない。

トルクから回復魔法を習いその者を砦に行かせれば怪我人を治療できるのでは?


「分かった。では皆をここに呼んでくれ」


詳しくはトルクから回復魔法をどうやって覚えたか聞いてからだな。

使用人にアンジェとリリア殿とトルクを呼んできてもらい、お茶の準備をさせる。少しするとアンジェが執務室に入ってきた。


「失礼します、お父様。お久しぶりです」

「アンジェよ、久しいな。矢を受けたと聞いたときは心臓が止まるかと思ったぞ。無事で何よりだ」

「はい、トルクが居なかったら私は死んでいたでしょう。トルクには感謝しきれません。怪我で血が流れて少し疲れていますが、この程度なら問題ありません。」


体調も問題ないようだな。しかし回復魔法は重症の怪我を短時間に治せるものだったか?私の聞いた話では治癒に数日かかると聞いたが。


「そうか、本当にトルクが居て良かった。レオナルドよ、お前がクレインに仕えてから一番の手柄はトルクを連れて来た事だな」

「ありがとうございます。何か褒美を与えて頂けますか?出来ればトルクを私の補佐に付けたいのですが」

「それは難しい褒美だな。レオナルドの補佐をさせても良いが、将来はエイルドとドイルの補佐をさせる為に今のうちに教育しておくか?」


レオナルドの褒美にクレインが乗りかかる。レオナルドの仕事を勉強させて将来は二人を補佐するか。トルクなら出来るだろう。


「貴方達、その前にトルクはポアラの婚約者よ!勝手に決めないでちょうだい。もしかするとトルクが男爵家を継ぐかもしれないのよ」

「エイルドは王宮騎士になると言っているから家を継ぐのは先になるな。その間にトルクに継がせるか。ドイルが伯爵家を継いでトルクが男爵家を継ぐのか?」

「あら?トルクが伯爵家を継ぐかもしれませんよ。お父様がご存命ならポアラとトルクの子供が伯爵家を継ぐかもしれませんね」


楽しい未来を語っているが私はそこまで長生きできるとは思えん。しかしポアラの子供は見てみたいな。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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