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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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21 授与式

「これより、授与式をはじめる」


扉が開きレオナルド様が先頭で歩き、その後をオレが付いて行く。オレの後ろに後の二人も一列に並んで歩いていく。

顔を正面しか向けないから目で周りを見渡すとエイルド様達やアンジェ様、母親やマリー、その他の人達がいる。

数少ないイベントだから見物客が多いのかと思ったらそうでもないようだ。

どちらかというと身内や関係者だけの様だ。

大広間の奥いる伯爵様の前に行きオレ達は横一列に並んで片膝を付く。レオナルド様はクレイン様の方に行き剣が置いている箱を取って伯爵様の方に向かった。


「トルク、ロダン、ブレイン。サムデイル ルウ バルムの名において汝らを騎士に叙任する。これからはフォウの称号を名乗る事を許可する」


フォウの称号は騎士のみが名乗れる称号だ。これでオレはトルク フォウと、騎士トルクと名乗れる。

伯爵様はオレ達一人一人に剣を渡しオレ達は両手で受け取った。


「領主と領民達をすべての敵から守る剣となれ」

「不幸の最中であっても広量であり続け、富の中にあっては気前良く」

「礼節に於いては常に模範的であれ」

「新たな騎士達よ。死ぬまで領地を守り、王家を守り、国を守る剣となれ」


……要するに国や王族や領地や民を守れ、心の広い人になれ、お金は貯めるのではなく使い、礼儀正しい人間になれか。


「サムデイル ルウ バルムの名において汝らを騎士に叙任する」


立ち上がり剣を身に着ける。オレの剣は二人の剣より一回り位小さい。軽くて便利だ。でも子供には少し重い。


「これで授与式を終了する。新たな騎士に祝福を」


これで終わりか。……あっという間に終わったな。ただ伯爵様の言葉を聞いて剣を貰って身に着けて終了か。

武器を持ったら一人前の様になったようで少しうれしい。


「おめでとう!」

「トルク!おめでとう」

「おめでとう!トルク」


みんなから祝福され喜びがこみ上げ少し嬉しくなった。平民のオレが爵位を貰ったんだ。これで少しは楽が出来るはずだ。

……戦争で生き残ればな。

平民よりも上だけど爵位的には一番下だからな。馬鹿な貴族の命令に従わなければならないかもしれない。

待てよ?爵位を貰ったけど苦労する方が多くないか?

平民だったら貴族には遊び半分で殺されるが、爵位持ちならすぐには殺されないが冤罪や不敬罪とかで罰せられるか処刑かな?

いや爵位剥奪で平民に戻るくらいか?

爵位を貰うのは少し早まったかもしれないか。でも要りませんとは言えないし仕方がないか……。


「次に三人に任務を与える」


まだ儀式は終わってなかったのか。


「騎士トルク、騎士ロダン、騎士ブレインは兵達とバルム砦に援軍の任務を与える」

「任務承りました!」


ロダンさんが頭を下げ返事をする。オレもロダンさんの真似をして頭を下げる。


「お待ちください、サムデイル様。私は王都の任務ではなかったのですか?」


ブレインさんが異論をとなえる。ブレインさん、騎爵位成りたての人がいきなり伯爵様に反論なんて凄いな。


「そのような事はない。お前達は砦の援軍に向かう」

「ですが!」

「詳しい事は後で話す。ブレイン!返事はどうした?」

「……任務承りました」


嫌々ながら頭を下げるブレインさん。そんなことしても任務は無くならないよ。諦めて一緒に砦に行こう。でもどうしてオレを睨むんだ?話したこともないし初対面だろう。親の仇の様に睨んでいるんだけど。


「では急ぎ準備に取りかかれ。以上だ」


伯爵様やクレイン様達が広間を出て授与式は終りオレは新たに騎士になったロダンさんとブレインさんに話そうと思ったが、オレを睨んでいたブレインさんは早々と部屋を出て行く。

ブレインさんの後姿を見ていたらロダンさんがオレに話しかけてきた。


「騎士トルク、初任務が砦の援軍とは知っていたかい?」

「クレイン様達から聞いていました」

「そうか、こんな子供が砦に行くなんて……」


あんまり危機感を持っていなんだけどロダンさんの表情を見るとピクニック気分じゃなさそうだ。


「そんなに砦は危険なんですか?」

「……君はレオナルド様達から砦の事は聞いていないのかい?」

「……詳しい内容は聞いていないですね」

「現在、帝国から王国を守る二つの砦があるだろう」

「バルム伯爵領の砦とアイローン伯爵領の砦ですよね」

「そうだ、バルム領の砦は地の利も有るし攻めにくい。難攻不落の砦だ」


そこら辺はレオナルド様からも聞いたが、兵の数が不足しているからオレ達が援軍に向かうと。


「そしてアイローン伯爵領の砦にも帝国兵が攻めてきている。過去、二つ同時に砦に攻めてきた事はない。アイローン伯爵領の砦の方が王都に近いから砦が突破されると王都まで攻められる危険性があるんだ」

「……そういえばバルム伯爵もアイローン伯爵領の砦に援軍に向かうって言ってました」

「……私達がバルム領の砦で、主力がアイローン伯爵領の砦か。爵位貰って早々名誉の戦死となりかねんな」

「同期として死なないように頑張りましょう」

「そうだな。それでは私も準備があるから失礼する」


……オレも準備しないといけないが、王国や帝国の情勢、世間の情報を集めておかないといけないな。知らない事が多い。この世界に新聞なんてないからな。情報不足は仕方ないか。

とりあえずレオナルド様に聞いてみよう。

そう思ってレオナルド様を探すが部屋に居ない。クレイン様達の所に行ったのかな?レオナルド様の所に行こうとしたが。


「トルク!お前の騎爵位のお祝いをするぞ!」

「みんな食堂で待っているよ!」


エイルド様とドイル様に捕まった。二人がオレの手を引いてオレを引っ張って行く。

クレイン様達に砦の事を聞こうと思ったのに……。オレってタイミングが悪いのかな?




食堂は伯爵家の使用人達が食事をする所ではなく、伯爵様家族が食べる食堂だった。

伯爵夫人のネーファ様、アンジェ様、ポアラ様、母親、マリーが席に座って待っている。


「トルクを連れてきました」


エイルド様、ノックをして入りましょう。ほらアンジェ様から怒られますよ。バンって扉を開けるものじゃないよ。

ドイル様、長兄の真似をしないでくださいね。


「あらためて騎爵位おめでとう。トルク」

「ありがとうございます、ネーファ様」


伯爵夫人に礼をして勧められた席に座った。サムデイル様とクレイン様はいないな。色々と砦の事とか聞きたかったのだが……。


「さて、料理長が丹精込めて作ったお菓子よ。トルクに美味しいって言わせる為に頑張ったらしいわ。頂きましょう」

「いただきます」


子供達は食事を食べ始めた。クレイン様達を待たなくて良いの?伯爵夫人も食べているから良いのかな?

お茶会みたいにお菓子や果物がありお茶会みたいだ。

クレイン様やサムデイル様がまだ来ていないけど先に食べても良いのかな?ふと思ったがネーファ様が疑問に答えてくれた。


「クレイン達は後でやってくるそうよ」


……顔に出たのかな?改めて食事を食べようとしたとき、ドアからノック音が聞こえた。


「失礼します。伯爵がトルクを呼んでいます」


その言葉を聞いてみんなが食べたり話したりするのを止めた。そして伝言役の人を見る。

エイルド様やアンジェ様、ポアラ様、マリーは睨みつけ、ネーファ様や母親はにこやかな顔をしているが目が笑っていない。

ドイル様は伝言役の人を無視してお菓子を食べている。

お茶会は用事が済んだ後だな。みんなに中座の断りを入れて伯爵様のもとに向かった。

伯爵様のいる執務室にはクレイン様やレオナルド様達もいて他にもオレが知らない人たちもいる。あ、魔法ギルドと傭兵ギルドのギルド長達もいる。


「トルク、急に呼び出してすまんな。両砦で大規模な戦闘があったようだ……」


大規模な戦闘か。砦から来た騎士から話を聞く。

帝国側から二万くらいの敵兵が攻めてきたそうだ。砦の兵士たちは多大な被害を受けたがなんとか撃退に成功したそうだ。

そしてアイローン領の砦にも帝国が攻めてきたがこちらは難なく撃退。被害は少なく問題ないらしい。

しかしアイローン砦の方はまだ帝国兵が近くにいてにらみ合いが続いているらしい。

ギルド間で情報を交換している傭兵ギルド長も両砦の内容は事実であると同意している。そして大規模な作戦の一つではないかと伯爵様達に言い魔法ギルド長も同意した。

魔法ギルド長が調べた情報だと帝国の上層部で揉め事が起きており、その結果が王国に攻めている将が変わった可能性があると指摘した。

バルム砦からは援軍の要請と傷薬等の補充を要求。そしてアイローン砦からも援軍の催促がきたらしい。

……バルム砦は多大な被害って大丈夫なのか?確か砦には一万くらいの兵が居るって聞いているけど数字で被害額を答えてほしい。この世界の人達は数字が苦手なのか?


「クレイン。バルム砦の援軍と物資の補充を頼む。私もバルム砦に行き状況を把握してアイローン砦に急ぎ行く。ギルド長達はバルム砦に援軍を向かわせてくれ。それから……」


……話を聞いている限りオレって必要ないんじゃないか?何のために呼ばれたのだろう?

こんな事ならみんなで一緒にお菓子や果物を食べたかったな。

料理長が作ってくれたお菓子か。甘いものはなかなか食べれないからな。砂糖が高いんだよ。蜂蜜も高いし。お子様の小遣いじゃ買えないもんな。

果物は売ってはいるが偶に腐っているものがあるから注意しないといけないし。前に腐った果物を売っている店員に腐っているって言ったら「これが美味いんだよ」ってマジで言ってくるし!腹壊して三日間トイレに籠りやがれと言おうとしたよ。


「……ルク、聞いているのか?トルク!」

「はい、聞いています」


ビックリした。いきなり呼ばないでくれよ。伯爵様。


「では頼んだぞ!トルク」


……なにを頼んだの?もう一回教えてください。プリーズ!

周りの人達がオレを見ている。何を頼んだんだよ?今更、教えてもらえる事が出来るのか?


「では皆の者、頼んだぞ!」


みんな伯爵様達に礼をして部屋から出る。オレも出た方が良いのかな?あれ?傭兵ギルド長に肩を掴まれた。どうした?と思ったら一緒に部屋の外に出た。


「久しぶりだなトルク、お前の身分証だ。受け取れ」


受け取れって、いつの間にオレの身分証をギルド長が持っているんだ?母親が持っているはずだか。

疑問は後で考えるとして身分証を見る。

名前の欄にトルク フォウ バルムと書いており出身地と年齢が書いており戦闘力がEって書いてある。

……戦闘力ってどっかの漫画か。吹き出しそうだったぞ。……戦闘力がEなのか?確かエイルド様はGランクだったんだが……。


「この戦闘力の欄ですけど。Eってなんですか?」

「上から六番目で下から三番目だ」


確か最上級がSでA、B、C、D、E、F、Gだったな。そうじゃなくて!


「どうしてギルド長が身分証を持っているんですか!それに年齢が十六歳ですよ。オレはまだ十歳です!」

「……気にするな」

「もしかして間違いですか?」

「……細かい事は気にするな。あと出身地はバルム領地だぞ!」

「それからどうして母親が持っているであろう身分証を貴方が持っているのですか?」

「それも気にするな!バルム伯爵からお前の身分証を作れと言われてな。先程の会話にもあっただろう」


話の内容を聞いてないから強く言えない。ギルド長に聞いてみるか?


「それからエイルド様付の側近だがあの二人を推薦した」


あの二人?って誰だ?


「エイルド様のランク上げの試験のときの対戦者だ。二人には王都で側近を務めてもらう」


あの二人が側近って大丈夫なのか?確かヘタレの根性なしの口だけの二人組だよね。


「安心しろ。オレが鍛えたからな。どんな命令だってハイと答えるまでイジメいや、シゴキいや、訓練したぞ。今ならDに近いEランクだ!」


……さっきイジメとかシゴキって言ったよな。どんな事をしたんだよ。訓練内容を好奇心で聞くべきかスルーするべきか。


「騎士トルク、少し良いか?」


今度は魔法ギルド長か。


「今回の身分証の裏面の件だが……」


身分証の裏面?持っている身分証の裏を見る……。

補足……火魔法下級・水魔法下級・風魔法下級・土魔法中級・光魔法下級・闇魔法下級。と書いてある。


「伯爵様の命令で回復魔法の事は書いていない。それから回復魔法や闇魔法の洗脳魔法の解除は光魔法中級レベルだが下級と記入してある。その方が良いと我々は判断した。伯爵の要請があれば正しい内容に書き換える事が出来る」


ツッコミ処は色々ある。頭を押さえながら冷静に魔法ギルド長に言った。


「どうして闇魔法下級って書いているんですか?オレは闇魔法なんか使えませんよ!」

「何を言っている?お前は闇魔法の使い手だろう?」


古い話を持ってきたな。違うって言っているのに!


「光魔法が使えるのに闇魔法が使える訳ないでしょう。貴方が言った言葉ですよ。ほら光魔法の光玉!」


光玉の光で周りが明るくなる。どうだ!オレは闇魔法ではなく光魔法の使い手だぞ。


「……後日訂正する」


不機嫌そうに言い捨てて傭兵ギルド長と一緒に玄関の方に行く。

不機嫌なのはこっちだぞ。なんだよ!この身分証は!間違いだらけじゃないか!

それに伯爵様がオレに言っていたことを聞けなかったじゃないか!どうするんだよ!


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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