20 授与式準備2
「トルク、マリー。起きなさい。もうすぐ朝食の時間よ」
母親の声で目が覚める。ベッドから出るが頭が働いていないようで眠い。もう一度寝なおしたい。
マリーも睡眠不足みたいだ。ベッドから起き寝ぼけながら仕事着に着替えている。マリー服が裏表逆じゃないか?しっかりしろ!
え?オレも寝ぼけている?仕事着じゃなくて授与式の服を着ている?
……オレも寝ぼけているな。急いで仕事着に着替えて朝食を取ろう。その前に水魔法で水を出して顔を洗うか。
少し水が冷たいな。火魔法で温めよう。
顔を洗ってもまだ眠いな。授与式で眠くならなければいいんだけど……。
マリーと共に身だしなみを整えて朝食を食べる為に食堂に行く。いつもよりも遅れて来た食堂には多くの人が朝食を取っておりオレ達もテーブルに座り食事をとる。
今日の朝食はベーコンエッグと野菜のスープか。三人で食事をとっているとレオナルド様がオレ達のテーブルに来る。
「トルク、隣の席に座るぞ。リリア殿、少しトルクと話してもよろしいですか?」
今日の授与式の話かな?
「今日の授与式の件だが……。緊張して寝れなかったのか?目の隈が凄いぞ」
「アハハ、少し寝不足で」
「授与式では間違えなく寝ないように。それよりも授与式だが昼食後の予定だ。トルクだけではなく他の者も授与式に参加させる」
まあ、数人と一緒にした方が手間も時間もかからないからな。
「昼食後、着替えて待っていてくれ。私が迎えに行く」
「分かりました」
「エイルド様達も見学をする。将来の為に授与式の流れを見せないといけないからな。リリア殿もマリーもお前の授与式を参加されるが後方で見るだけだ。授与式の作法は覚えているか?間違った動作をしたら恥をかくぞ」
「大丈夫と思います」
エイルド様と一緒に礼儀作法を習ったから大丈夫と思う。
「……やはり最後に礼儀作法を練習するか。朝食後に練習するぞ。ついでに書類整理も手伝ってくれ」
どっちが主目的ですか?書類整理の方が主目的の気がしますよ?レオナルド様。
朝食後、母親とマリーと別れてオレはレオナルド様と一緒に書類整理をするべく伯爵家で与えられている部屋に行き礼儀作法をチェックされた。
「特に問題はないな。強いて言うなら授与式に参加する者達の間違った動作を真似する可能性があるくらいだ。礼儀作法が下手な者がいても真似するなよ」
「分かりました」
「では書類整理を手伝ってくれ。砦に物資を送る書類だ。そうだ!トルクが欲しい物資はあるか?」
オレがほしい物資?怪我人を治療するために行くからな。欲しいものと言えば医療品くらいだろう。
「怪我人の治療に必要な物資をお願いします。清潔な布や消毒用のアルコールとか」
「なんだ?その消毒用のアルコールとは」
この世界にはアルコールって言葉はないのか。なんて言えば良いのかな?
「えーと、傷口を洗う液体です」
「傷口を洗う液体?水で良いだろう。砦には井戸水が豊富だし砦近くには川もある」
……真水で洗わないのか。医療技術も中世レベルなのか?水を沸騰させて冷めた水を使うか、それとも……。
「それにお前には水魔法があるだろう。水魔法で傷口を洗ったら良いのではないか?」
「……その方法は考えつきませんでした」
「まだ寝ぼけているのか?書類整理をしたら少し休むか?」
「大丈夫です。頑張ります」
「まあいい。とりあえず砦に行ってから欲しい物資を教えてくれ」
それから書類整理をするが、文字と数字が眠気を誘い途中で眠りそうになる。眠い!マジで眠い!
「……トルク、少しだけ休憩するか?」
その言葉を聞いてオレは机に頭を預けて睡眠をとった。レオナルド様ありがとうございます。
「休憩するのはこの書類が終わった後だ」
「……先に少しだけ寝せて下さい」
そう言えば卵の薄皮は切り口に良いと言われているから卵を貰おう。
少し睡眠をとったら眠気が無くなったよ。レオナルド様には感謝だな。
そのぶん仕事しなくて白い目で見られたが授与式で寝る事に比べれば良いと判断されたみたいだ。
残りの時間で書類整理を手伝って昼食の時間になったのでレオナルド様と別れて食堂に行く。
食堂に入り周りを見渡すが知り合いは居ない様だ。仕方がないので一人で食べる。
昼食をとり部屋に戻ったら母親とマリーが着替えて部屋を出る所だった。
「先にアンジェ様達と行ってきます」
「お兄ちゃん!頑張ってね」
二人と入れ違いに部屋に入り着替えてベッドに座って待機する。
食べた後だからまた眠くなってきた。少しだけ寝ようかな。
駄目だ。寝たら迎えに来たレオナルド様に今度こそ怒られるかもしれない。それに服にしわが出来るかも。
でも天気も良く部屋も暖かくて眠気を誘う。
しかしオレも少しずつ偉くなっているな。
最初は父親から捨てられて村人達から無視された村八分の生活をしていたが、男爵家の下人になり、使用人になって今度は騎爵位持ちか。
順調に偉くなっているな。この年で騎爵位持ちなら将来は堅実で幸せになるだろう。
母親と妹と一緒に幸せに暮らせるなら問題ない。来年は王都で生活できるし生活水準も向上しているだろうと思う。
大人になったら恩人であるクレイン様達を助ける為に男爵家で働くのだ。
家族と幸せな生活が待っているだろう。
そう言えばポアラ様と結婚するのかな?婚約者だがポアラ様と結婚か……。駄目だ!将来の想像が難しい。
ポアラ様に魔法の的になる未来しか想像できない。
「……ク!トルク!起きろ」
「……え?」
バッとベッドから起き上がり声の方を見るとレオナルド様がいる。寝てたのか?
「爵位式の前に寝るとは……」
頭を掻きながらボヤくレオナルド様。とりあえず授与式の準備が出来たのかな?
「授与式の準備が出来たから行くぞ」
「わかりました」
部屋を出て大広間の方に行く。
大広間の入口の周りには兵隊さん達が並んで待機しており、入口の前にはオレと同じような格好をしている人達が二人いる。この人達がオレと一緒に授与式に参加するメンバーかな?
「お久しぶりです、レオナルド様」
「久しぶりだな、ロダン」
「この子がレオナルド様が鍛えた秘蔵っ子ですか。良い顔つきですね」
褒められたんだよな?それにしても鍛えた秘蔵っ子ってなんだよ。改めて思うとレオナルド様って騎爵位だけど凄い人なんだよな。クレイン様達の信頼も厚いし文武両道で王都にも詳しい。王都の学校で上位の成績を収めたって聞いている。
どうして男爵家に居るのかは聞いた事がないな。レオナルド様なら王宮騎士や上級騎士にもなれたと思うが……。
その辺は後日で聞くか。
「こんな子供が爵位を受け取るなんて伯爵様も何を考えているのか」
もう一人の人がオレに向かって悪態をつく。この人も騎爵位を受け取るのか。とりあえず挨拶しておくか。
「初めまして、トルクと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、トルク殿」
「ふん!」
一人は穏やかに挨拶を返してくれたが、もう一人は無視された。まあいいか。
「ドドバン子爵の御子息だな。……確かブレインだったな。もうすぐ授与式が始まる。その不機嫌な顔をやめて身だしなみを整えろ。もうすぐはじまるぞ」
ドドバン子爵の御子息さんは不機嫌な態度で身だしなみを整える。オレも身だしなみの最終チェックをはじめる。大丈夫だな。
扉の奥からクレイン様の声が聞こえた。
「これより、授与式をはじめる」
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




