表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
82/276

閑話 婚約騒動の裏側

書き上げた後に投稿した方がいいのか迷いました。

駄文だと思いますが、とりあえず載せてみます。

男爵家当主クレイン・ルウ・ウィール男爵


今日はリリア殿とトルクをお茶会に呼ぶ。ポアラとトルクを婚約させる為だ。

ポアラは来年王都の学校に行くからその前に決めていた方が良いと思いアンジェに相談してみた。アンジェもトルクが気に入っているしリリア殿と姉妹になれると喜んでいる。後はリリア殿に説明するだけだがアンジェが「私がリリアさんに説明しますから」と言うので任せた。

お茶会の日、ポアラとトルクの婚約の良き日だ。少しお茶会には遅れたが大丈夫だろう。


「今回のお茶会の目的はポアラとトルクの婚約だ」


笑いながら皆に言ったがリリア殿とトルクの様子がおかしい。リリア殿は少し困った顔だし、トルクは顔が引きつっている。アンジェはリリア殿とトルクに言ってないのか?ポアラも驚いている。笑っているのは私とアンジェだけだ。


「ポアラには婚約者がいないからな。王都の学校に行く前に決めていた方が良い。王都に住んでいる貴族達から可愛いポアラを守るためには婚約者がいる方がいいからな」

「そうね。私のときも王都の貴族達はうるさかったわ。辺境の貧乏貴族をオレが娶ってやるからありがたく思えって言われた事あってね」

「なんだと。誰が言ったんだ。私のアンジェにそんな口を聞いた奴は」


思い当たる奴は……三十人くらいはいる!誰が私のアンジェにそんな事を言った奴は!アンジェは同級生・上級生・下級生からも人気があったからな。男女問わずに人気が合って、アンジェの心を射止めるのに私も苦労した。


「誰だったかしら?忘れたわ。同じ様な言葉を何人もから言われたから」

「今度、会ったら絞めてやる」

「何人かは戦死しているわ。それに私の事で怒るよりも、ポアラが言われない様にしないとね」

「そうだな、ポアラを王都の貴族達から守るために婚約者をトルクにしようと思ってな。トルクが矢面に立ってポアラを守ってくれ」


ポアラはアンジェに似て綺麗だから学校でも人気が出るだろう。エイルドも学校にいるが兄よりも婚約者の方がポアラを守りやすいはずだ。私が在学中も婚約者同士で一緒に居た奴を思い出す。婚約者の女性を守る為に頑張っていたな。上位貴族の暴力や悪意から守り、無理な場合は周りの友人を頼り婚約者を守っていた。

私も手伝ったが大変だった。上級貴族と決闘したり、デートプランを考えたり、お茶会に他の男が参加しないように周辺を護衛したり。本当に大変だった。


「クレイン様、アンジェ様。トルクは平民です。男爵家の令嬢との結婚は出来ません」

「クレイン様、確かに母さんは水の乙女っていうあだ名が付いている元有名人だけど私は平民ですよ」


おかしいな?アンジェからリリア殿に説明してもらっているはずだが、二人とも初めて聞くような事を言っている。


「水の乙女じゃなくて、水の聖女だ。元有名人ではなくて今も有名だぞ。それにお前は王都に行く前に騎士爵を与える予定だから問題ない」


水の聖女は有名だ。義父や他の辺境の貴族や平民を助け出した姿に心を奪われた人は多かったらしい。そして亡くなった事を聞いた者は皆悲しみ、殊に命を救われた貴族達はトルクの父アイローン伯爵の元に訪れ死を悼んだという。


「王都にある義父の別宅からエイルドとポアラは学校に通う予定だ。トルクには二人の護衛を任せる。そしてその次の年にはお前も学校に通う事になるだろう。リリア殿の娘を保護したらリリア殿は義父の養女となり、お前と妹は義父の孫になる。お前にも伯爵家の継承権が発生するからポアラの婚約者としても問題無い」


アンジェは本当に二人に説明をしたのだろうか?私はアンジェを見るがにこにこ笑ってこちらを見ていない。まさかと思うがリリア殿に説明をしてなかったのか?




アンジェ・ルウ・ウィール男爵夫人


「リリアさんと本当に姉妹になる事が出来るし、ポアラにも婚約者が出来てトルクが義理の息子になるし、私はとても嬉しいわ」


リリアさんにポアラとトルクの婚約の事を言おうとすると何故か邪魔が入ったりして彼女に説明が出来なかった。一回だけトルクの将来を聞いたけどリリアさんは「あの子が私の様にならない事です。貴族に理不尽な命令で自由を奪われない様に願っています」と泣きそうな顔で言っただけ。ポアラと結婚させることは理不尽な命令ではないし、自由は有るから結婚させても大丈夫よね。


「リリアさん。私の一生のお願いです。トルクをください。必ずポアラが幸せにしますから」


だから今からリリアさんを説得しましょう。ポアラにも幸せになってほしいし、リリアさんにも幸せになってほしい。


「ね、ポアラ。トルクが貴方の婚約者よ。これから二人で幸せになってね」


トルクは剣術や魔法も使えるし勉強も出来て気立ても良い。お父様やお母様の受けも良いしエイルドやドイルも慕っている。男爵家で働く者達からも信頼されているし、レオナルドの仕事も手伝っていて領地の為にいろいろ頑張っている。


「ごめんなさい。トルクと結婚は無理です」


……ポアラが拒否した!どうしてなの?


「どうして!トルクが嫌いなの?トルクは頭も良いし剣の腕も良いし、魔法も使えるわ。性格も悪くないと思うし、顔は女顔だけど数年たてばカッコイイわよ。最終的な爵位も伯爵令息よ。何が不満なの?性格?顔?身長?」

「そうだぞ!トルクは有能な人材だ。ポアラの婚約者としては申し分ない。何が不満なんだ?」

「トルクは苦労人だから、これからも苦労すると思う」


……苦労人って。伯爵家で初めてリリアさんとマリーちゃんと一緒のお茶会でもそんな事を言ったわね。


「トルクって仕事が多いし、エイルド兄様やドイルからいろいろ頼まれて苦労しているし、レオナルドからは普通じゃ出来ないような仕事をさせられているし、家では料理や掃除や雑務をしている。冬は魔法で温かい水を出したり石を温めて保温したりすごく大変な事をいつも頑張っている。いつ休んでるの?って思うくらいに仕事している。そんな人と結婚なんて無理と思う。私までトルクの苦労がうつりそう」


……トルクってそんなに仕事していたの。私はクレインを見る。クレインは思い当たる事が有るようで自分のこめかみの近くに指を刺して考えている。トルクはポアラの言葉に納得して無言で頷いている。リリアさんはトルクを見て考えたりしている。クララや他の侍女達を見るがみんな視線をずらす。トルクは使い勝手が良いから色々と雑務を頼んだ事が有る様だ。

それから先はポアラの愚痴だ。


「この前もエイルド兄様と一緒に森に遊びに行ったし。ドイルと農園に行って新しい料理を食べたし」

「私はマリーと一緒に勉強やお茶会や礼儀作法をしていて大変なのにどうして私はトルクと一緒に勉強出来ないの?」

「魔法の勉強が少なくなったし、トルクを的として魔法が当てれなくなった。皆がトルクを使うから私がトルクと魔法の勉強が出来ない」


勉強する時間が増えてトルクと勉強や遊べなくなった事が嫌だったようだ。不思議に思った事をリリアさんが私の代わりに言った。


「ポアラ様はトルクと一緒に魔法の勉強がしたい。でもトルクとは一緒に居たら変なことに巻き込まれるから結婚は嫌という事ですね」

「……あれ?」


あれ?じゃないでしょう。貴方はトルクと一緒に居たいけど婚約は嫌ってどういう意味?

私はこのお茶会の前に娘とキチンと話すべきだった。説得するべきだった。ポアラはトルクを嫌ってないから婚約は大丈夫だと思っていたから、不意打ちで驚かせようと思ったのに。成功したら十年は話のネタになるから面白いと思ったのに。




男爵家家庭教師リリア。


我が子がポアラさんと婚約者になるなんて初めて聞きました。前もって知っているのなら私も対応が出来たと思いますが、お茶会で急にトルクが呼ばれクレイン様が婚約の発表をする。何も聞いていなかった私達親子は呆然としました。

何とか立ち直り話を聞いていると、トルクの仕事内容を聞いて頭が痛くなる。この子の仕事量にも驚いたけどそれを平然とこなすから頭が痛い。他の人達を見る限り嘘ではない事は明らかのようです。トルクから仕事の事を聞いたけど「エリーさんやマリーと一緒に部屋の掃除をした」とか「エイルド様やドイル様と一緒に勉強をした」とか「今日は厨房で働いた」とか「レオナルド様の所で雑務をこなした」くらいで私やマリーちゃんが喋る方が多くトルクが聞き手になっている事が多い。私はトルクがどんな事をしているのか把握していなかった。母親失格かもしれません。

でも、この事は母親として言わなければいけません。トルクが幸せになるように。


「ポアラ様はトルクが苦労人だから結婚はしたくない。でも勉強を一緒にしてほしい。変な事に巻き込まれる可能性があるから結婚したくない。魔法の勉強も一緒にしたい。見事に矛盾していますね」

「トルク!今から苦労人を止めなさい」

「……どうやってですか?アンジェ様」


一番良いのは仕事を減らす事でしょう。トルクのしている仕事は子供がする仕事量ではありません。


「……苦労人を止めることは後で考える事にして、ポアラはトルクと婚約者になる事は反対なのか?」

「トルクと一緒の時間が増えるし、魔法の勉強も出来るかもね。王都の学校で婚約者がいるって言えば他の男達の風除けになるし。厄介事は全部婚約者に任せる事が出来るわよ」

「それにトルクならあなたを領主にしてくれるかもしれないわよ。爵位はトルクで領主がポアラ」

「どうしても嫌でポアラに好きな人が出来たら婚約を撤回すれば良い。この婚約は王都でポアラを守る為の婚約だ。王都で起こるトラブルは婚約者のトルクが守ってくれるだろう。その為に婚約者は居た方が良い」


クレイン様とアンジェ様がポアラさんの説得?言いくるめているようですね。トルクと婚約させる為に色んな事を言っています。トルクが苦労する未来しか思いつきません。私はこんな婚約は止めてほしいですがクレイン様やアンジェ様には恩がありますし、アンジェ様の両親にも恩があるので言いづらいです。


「わかりました。トルクを婚約者にします。厄介事は全部トルクに任せるし、領主の地位も貰う」

「そうか、婚約を承諾したか。いや目出度い」

「おめでとうポアラ、トルク。二人とも婚約者として仲よくね」


これは婚約した事になるのでしょうか?貴族の常識ではないと思います。


「では二人でゆっくり話をする為に我々は部屋を出るか」

「二人とも今後の事を相談しなさい」


トルクとポアラさんを残して私達は部屋を出ました。出てすぐにアンジェ様が私に向かって言います。


「リリアさん、ごめんなさい。いきなりの婚約だと思うけど私達はトルクとポアラを結婚してほしいの。私達は二人とも幸せになってほしくて」

「アンジェ、リリア殿の許可を得てなかったのか?」


部屋を出るなり謝るアンジェ様の行動にクレイン様が言った。


「ごめんなさい、言う機会が無くて言えなかったの」


クレイン様がため息をつく。普通なら事前に親に話があるはずだが。今回はお茶会の目的が婚約の話とは聞いていなかった。


「此処ではなんだ。部屋で話そう」


私達はクレイン様の執務室に向かいました。




男爵家執事ダミアン


私がクレイン様の執務室の整理をしている最中にクレイン様・アンジェ様・リリア様が入ってこられた。私は一礼をして皆さんをテーブルに案内して私はクレイン様の後ろに立つ。クララと他の侍女達がお茶の準備をするまで少し時間がかかった。

本日はトルクとポアラ様の婚約を話し合う事だったと思います。二人がいないという事は婚約したのでしょうか?そうなるとトルクをただの使用人としては使えないな。せめて掃除と雑務を無くすとして、厨房の仕事も減らした方が良いかもしれない。農園のお使いも減らした方が良いかもしれません。後日、レオナルド様と相談してみよう。


「トルクはポアラ様の婚約者になる事は確定なのでしょうか?」


リリア様がアンジェ様に聞く。リリア様は二人の婚約に不満があるようですね。私も不満です。私の後継者にと考えていたのですが。


「確かに私達はトルクとポアラの婚約を結びました。私は二人が一緒になってほしいと願っています」

「トルクは私達の子供の命の恩人だ。トルクには幸せになってほしいと願っている」


トルクはお二人に信頼されていますね。お子様達からも好かれているし、私達使用人からも好かれています。あの子は働き者で私達が困っていると助けてくれるし、デカルと一緒に美味しい食事を作ってくれる。私と一緒に生活していた時も何かと助けてくれた。本当に良く出来た子だ。


「ですが、このままではトルクが不幸になる未来しか想像できません。私は不幸になっても構いませんがトルクには何卒……」


……なにかしら二人の婚約は上手くいかなかったのでしょうか?私は不安を覚えます。


「これから先、二人にはなるべく一緒に行動させましょう。ポアラの考えも変わるかもしれません」

「しかしトルクに負担がかかります。王都の貴族の事は聞いた事が有ります。平民を物として扱い、簡単に傷つけると。来年はそのようなところに行きます。あの子が上手くやっていけるかが心配です」


確かに王都の貴族相手にトルクがやっていけるかは疑問ですね。そして王都に住む平民にも序列がありますから今度その辺りも教えた方が良いでしょう。


「トルクがエイルド様やポアラ様の風除けになるという事はそれだけ負担をかける事になります。私はトルクをそのような場所に行かせたくありません。ですが王都に行かないと娘を助けられない。私は娘を助けるためにトルクを見捨てる事になります。あの子は娘の事を知っているので私に迷惑をかけないように承諾したのです。私は母親失格です」


泣き崩れるリリア様をアンジェ様が慰める。話を聞くかぎり二人の婚約は成った様ですが強制的に結んだのでしょうか?

私もリリア様の事は簡単に聞き及んでいます。側室でトルクと一緒に捨てられて生まれ故郷の村に帰った。その後体調を崩したリリア様を救うためにトルクは使用人として働きお金を稼いでリリア殿の体調を治した。そしてそれを不憫に思ったクレイン様達がリリア様とトルクを一緒に男爵家で住まわせた。リリア様は男爵夫婦に恩を感じておりポアラ様の家庭教師やアンジェ様の話し相手をしている。

しかし話を聞く限りでは少し矛盾がありますね。初めてリリア様に娘がいる事を知りました。私が聞いた内容は簡略化された話と噂が混じっていますから少しくらい間違いはあるでしょう。


「取り乱して申し訳ございません」


リリア様が落ち着きアンジェ様に礼を言う。クレイン様が口を開いた。


「リリア殿、私はトルクやリリア殿に幸せになってほしい。ポアラとの婚約も幸せになってほしいからだ。王都では辛い事があると思うが将来は地位も得て幸せになるはずだ。トルクはエイルドやドイルの右腕としてポアラと一緒に二人を支える。リリア殿の御息女も必ず助け守る。だからこの婚約を認めてほしい」

「私はトルクの判断に委ねます。トルクが自分で考えて婚約を希望するならそれを支持します。ですが婚約を希望しないなら諦めて下さい。二人が婚約を希望しないと皆が不幸になるでしょう。結婚の事は二人に決めさせてください」

「分かった。だが婚約者としてポアラとトルクを認めてほしい」

「……分かりました」


その時ドアの方からノック音が聞こえたので私がドアを開けるとポアラ様が来られて部屋に入る。


「お父様、お母様。私はギルドを作りたいから許可を頂戴」


急に話題を振られた男爵様達は勿論、部屋に居る使用人達も話の流れについていけない様です。


「ポアラ様、最初から教えてもらえますか?クレイン様もアンジェ様も分からないようです」


私が疑問を口にする。部屋に居る全員意味が分からないのだ。どうしてギルドなのだろうか?ポアラ様はさっきまでトルクと二人で話していたはずなのに。


「私は将来、この領地に医療施設を造りたいの。でもそんな施設は領主や爵位が無いとダメだと言われたから領主を目指していたんだけど。トルクが医療ギルドだったら領主の許可で出来るって言ったから許可を貰いに来たの」


……ポアラ様とトルクは二人で何を話していたのでしょう?使用人の私には何も言えません。他の侍女達も言葉を喉で止めている様な表情をしています。呆れているクレイン様とアンジェ様。言葉を口にしようと考えているリリア様。

ここは御主人様が話さないとダメでしょう。私はクレイン様の正気を取り戻そうとクレイン様に声をかける。


「クレイン様。お茶のお替りはいかがでしょうか?」

「……そうだな。貰おう」


私はクララに目配りをしてお茶の手配を頼む。クララが何か言いたそうな顔をしているが気にしない。私も出来る事と出来ない事がある。ポアラ様の件は出来ない部類に入る。


「ポアラよ。どうして医療施設を造りたいのだ?」

「私の仲が良かった友達が病気で亡くなった時に思ったの。領地に医療施設が有ったら病気が治ったかもしれない。でもそんな施設は領主や爵位がないと造れないって言われたから領主になりたかったの」


……医療施設。男爵領では怪我や病気にかかる人は多い。領民の為にポアラ様は医療法を考えていたのですか。ポアラ様が領民の事を考えていて私は心が温かくうれしい気持ちになります。


「誰がそんな事を言ったのだ?」

「伯爵家にいた魔法の先生。でもトルクがギルドなら領主の許可で出来るって言われたから許可を貰いに来たの」


婚約者同士でポアラ様はトルクと未来の男爵領の事を話していたのですね。ポアラ様と未来の話をするとはトルクは話し上手だ。


「ギルドの許可を貰ってポアラはどうする?計画は?施設は?人材は?お金は?どのように考えている」

「……何も考えていない」

「まずは計画を立てて私に報告をしなさい。許可を下すのは具体案と計画を見て許可する」

「わかりました。では計画を考えてお父様の許可を貰います」

「それからトルクの婚約の件だが……」

「トルクと婚約解消しました」


……ポアラ様の一言で今回の苦労が水の泡に消えました。

クレイン様の考え、アンジェ様の努力、リリア様も覚悟、私達の苦労がすべて台無しになりました。


「トルクと結婚しなくてもギルドは造れるから先程解消しました」

「……ねえポアラ。トルクとの婚約は嫌だったの?トルクと婚約者になればダンスの相手やお茶会も参加できるし魔法の勉強も出来るのよ」

「……そうだった。やっぱりトルクと婚約します」


婚約がこんなに簡単で良いのでしょうか?私はトルクが気の毒になりました。ポアラ様は本当にトルクを思っているのでしょうか?ただの友人?使い勝手の良い使用人?本当にクレイン様やアンジェ様の苦労は何だったのでしょう。


「クレイン様、アンジェ様。今回の婚約の件ですが……」

「待ってくれリリア殿!少し様子を見ようではないか」

「まだ時間がありますから!もう少しだけ私達に任せて下さい」


リリア様の言葉をクレイン様とアンジェ様が遮る。今回の婚約はどう見ても失敗でしょう。リリア様も強くは言えないがトルクとポアラ様の婚約を解消したいようだ。

おや?ポアラ様がドアの方に向かっている。逃げ出すみたいです。私はポアラ様に声をかけた。


「ポアラ様、まだお話は続いています。勝手に部屋を出てはいけません」

「ちょっとすぐに戻るから」

「ダメです」

「トルクの所に行くだけ」

「ダメです」

「トルクとまた婚約した事を伝えるだけだから」


……そういえばトルクと婚約破棄をしたと言っていましたね。現在トルクは婚約破棄されたと思っているのか。そして再度婚約したと伝えられたらトルクは何を思うでしょう?

少し時間を空けておいた方が良いのではないでしょうか。トルクにも考える時間が必要だと思います。


「まずはトルクより先に皆様とお話しください」


逃げるのに失敗したポアラ様は私を睨むお顔は可愛いですね。ニッコリ笑ってテーブルに座らせる。クララにお茶の準備をさせて家族会議が開始しました。

話し合いの結果、ポアラ様とトルクの婚約は条件付きだが一応成った。婚約したと思って良いだろう。

トルクと結婚することが医療ギルドを作る条件となったからだ。

ポアラ様はこれを承諾したが、リリア様はこれに異議を唱えた。「条件付きの結婚では幸せにならない」と言い結婚に反対したがクレイン様とアンジェ様の二人がリリア様を説得した。「トルクがポアラと結婚が嫌ならそれを許す」「ポアラがトルクを幸せにする」「トルクが不利にならない様に責任を持つ」など言ってリリア様の説得?した。

リリア様は「トルクと相談します」と言って最終的な判断はトルクに任せるようだ。

ポアラ様はトルクと結婚する事がギルドの許可を貰える第一条件となり、その他にも学校の成績が上位である事、アンジェ様の主催するお茶会に必ずトルクと参加する事、習い事から逃げない事、親の言う事を聞くこと、兄弟仲よくする事、好き嫌いをしない事と様々な条件を付けられた。

ポアラ様は承諾した。悩まずにその程度の条件なんて楽勝と思っている顔だ。

……本当にこの婚約で二人は幸せになるのでしょうか?


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ