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現在、家の庭でくま〇んモドキと話をしている。
「なぁ、オレも回復魔法が使えるかな?使えたら頭の怪我も治るだろう?」
「頑張れ」
「バカには無理だ」
「アホには出来ない」
「やかましい」
なんでだろう、自分よりも背が低い奴に偉そうに言われるとムカつく。
「なぁ、どうやったら回復魔法が使えるんだ?一応下級の光魔法は使えるぞ」
「光魔法が使えるからって回復魔法は使えないぞ」
「バカには分からないが回復魔法は特殊な魔法だからな」
「アホには分からないが回復魔法は繊細な魔法だからな」
……もう一回、捕まえて搾ってみるか?
「頼む、回復魔法を教えてくれないか?」
「教えても良いが理解できるか?」
「バカに理解できるか?」
「アホには理解できないだろう?」
くま〇ん其の一・其の二を捕まえる。
「タオルのように搾ったらいい色の着色料が出来るな。そういえば包丁が切れなくなったから砥石の代わりにならないかな?丁度いい硬さだから砥石の代わりになりそうだ」
「待て待て、精霊を搾るな、精霊は砥石の代わりにはならない。魔法を教えるから手を放してくれ。二人の顔色がヤバい」
チィ、其の一・其の二を放して其の三の話を聞く。
「子供に分かるように教えるのは難しいが回復魔法とは生命力を活性化させて再生能力を促進して体を元の姿に戻す力なんだよ、分かるか?」
「つまり、人間が持つ自然治癒力の速度を速めるのか?それとも細胞を増殖させて元の体に戻すのか?」
「言っている事は良く分からないが回復魔法とは人の体を健康な元の状態に治す力だ!!」
オレが思うに多分、健康な体に戻すのが回復魔法なのか?しかし偉そうに力説をする。理論派ではなく感覚派の精霊の様だ。それでよくオレを馬鹿にしたもんだな。
「どの状態が健康なんだ?老人に使ったら若返るのか?腕が切れたらトカゲのように生えてくるのか?病人に掛けたら病気が悪化しないか?体内に不純物が有る状態で回復魔法を掛けたらヤバくないか?」
「言っている意味がよく分からないが、体が健康な状態を覚えているし、若返りは無いよ。腕が切れたら繋げば良い、不純物は取り除けば問題ないよ。回復魔法とはすごいんだぞ」
前世では医学を習っていないからよく分からないが、兎に角、回復魔法は凄いらしい。感覚で使うのが少し怖くなってきた。使って悪化しないだろうな。でもオレは回復魔法を覚えたい。
「どうしたら回復魔法が使える?」
「自分の魔力を生命力に変えて体を再生させる」
「魔力を生命力に変換するにはどうすれば出来るんだ?」
「気合・根性・努力」
「ドヤ顔で言い切るな」
「とりあえず、自分の頭の怪我を治してみれば?」
「気合・根性・努力で変換できるか」
「手伝ってやるよ、手のひらに魔力を集めてみな」
手のひらに魔力を集めると其の三が近づいてきて魔力に触る。
あれ、なんか魔力の質が変わったような気がする。透明で見えない魔力が、透明な白い色の魔力になったような感じだ。
「魔力を生命力に変換したが質が違うだろう。怪我している頭に魔力をつけてみな」
頭に生命力を与えると痛かった頭が痛くなくなった。触ってみると傷が無い。
「これが回復魔法だ。しかし他人に回復魔法をかけるには少し異なる。魔力を生命力に変換するけど他人の生命力では効果が出ない。だから怪我をした人間の魔力を生命力に変換をしないといけない。相手の魔力を操作して生命力に変換をする」
「本人の魔力のこもった生命力しか効果が無いのか」
「そうだよ、だから他人に掛ける回復魔法は難しいよ」
「魔力が無い人間はどうすればいいんだよ?」
「魔力が無い生物なんてこの世にはいないよ。魔力を生命力に変換する方法を練習したらどうかな。手のひらに魔力を込めてさっきみたいに魔力の質を変えるんだ。手伝ってあげるよ」
手のひらに魔力を込めて生命力に変換をしてみる。魔力が生命力に変換しているようで透明な魔力が白く透明な色になる。
「お、無事に変換が出来ているね。才能あるよ」
「マジで、やったぜ」
「うんうん、この調子だよ。あとは他人の魔力を生命力に変換する事だね」
「あ、オレの母親を見てくれないか?病気でいつも臥せっているんだよ」
「いいよー、この家だよね、案内をしてくれよ」
オレはくま〇ん其の三を母親の所に連れていく。其の一・其の二を置き去りにして。
「ベッドに寝ているのが母親だよ、一年前から調子が悪くて今では寝たきりの状態なんだよ。回復出来ないかな?」
「おや、これは酷いな。冬を越せないぞ」
「頼む、治してくれ。お願いだよ」
「丁度良い。君が治せばいいよ、回復魔法を覚えたから大丈夫だよ」
「叔父さんを治したみたいに母親を治してくれないのか?」
「実を言うとあまり人間を治したらダメなんだよ。基本的にただの人間とは会ったり話したりしたらダメなんだ」
「へぇ?でもオレと話しているよね」
「君は例外かな。頭の打ち所が悪くて精霊が見えたとか前例が無いから。でもこれは一時的なものだから遅くても明日の朝には精霊は見えなくなるよ。頭の怪我も治したしね」
「……わかった、オレが母親に回復魔法をかけるから上手く出来ているか教えてくれないか」
「いいよー、まずは母親の魔力を感じることから始めよう」
母親の手を触り魔力を感じる。
「魔力を感じたら自分の魔力を使って生命力に変換するんだ。そして生命力をダメージが有るところに当てる。」
「なあ、母親はどこが悪いんだ?分からない」
「この場合は母親の魔力を全部生命力に変換をすれば良いよ、大雑把だけど間違いは無いから」
「大雑把な回答だな、ドチクショー」
「なに、練習練習」
「なあ、お前の名前は何ていうんだ?オレの名前はトルクだ」
「精霊には基本的に名前は無いよ、オレ達はただの精霊だ」
「そっか、明日になればお前達は見えなくなるんだよな。少し寂しいよ」
「オレ達はずっと三人でいたから寂しさは感じた事はなかったな。それにオレ達はお前の事を見ていたよ。魔法の練習をしたり、狩りをしたり、薬草を採ったり。村人からは無視をされていたが、バカみたいに前向きな奴だとみんなで話してたぞ」
「なんだよ、見ていたのか」
「見ていたよ、村人に無視をされててもめげないからね。この子は頭が変なんじゃないかってみんなで相談をしていたんだよ」
「上げて落とすな、こら」
「おや、母親の魔力を生命力に変換出来たみたいだね。これを毎日続けていけば治るよ」
「ありがとう、其の三。助かったよ」
「・・・其の三ってなに?」
「バカバカ言うやつが其の一、アホアホ言うやつが其の二だ。お前が其の三」
「おおお、オレの名前は其の三か、良い名前だな。オレの名前は其の三だ」
おいおい意味分かっているのか?その名前で良いのか?
「オレが其の一」
「オレが其の二」
「オレが其の三」
其の一・其の二も復活したか。
「じゃあねー、バカ面」
「またなー、アホ面」
「頑張れよー」
やはり其の一・其の二は絞めよう。手足を縛って魔法の的にしてやる。
こうして俺は母親の回復に精を出す。毎日毎日、母親に回復魔法を使った。そしてオレは念願の回復魔法を使えるようになった。
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