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精霊の友として  作者: 北杜
四章 男爵家使用人編
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6 男爵家へ帰還

2/3 サブタイトル修正

豪華な食事って言っても野営で作るのは大変だ。だがオレには魔法がある。土魔法でテーブルと竈とグリルと石窯を作る。火魔法で竈とグリル石窯に火を付けて調理開始だ。本日のメニューは肉と野菜の具沢山スープ。ニンニクとハーブと塩で味つけたもの。そして肉と野菜をBBQだ。それから小麦粉をこねてピザを作ってやったぞ。どうだ、一人でやったぞ。すごいだろう。お代わり?待て、もうすぐピザが焼ける。

その前に女性達にも食事を持って行くから少し待ってくれ。オレはスープとピザを持って女性達が居るテントに向かった。入り口の前で一声かける。


「食事を持ってきました。入ってもいいでしょうか?」

「どうぞ」


許可を得たのでお邪魔する。入ったら赤い髪の女性、カミーラさんがテントの外に近い入り口に居た。中に入って食事を渡す。


「夕食です。食欲がないかもしれませんがスープだけでも飲んでください」

「ありがとう、貴方が作ってくれたのね」

「頑張りました」


カミーラさんが皆に食事を渡してくれた。カミーラさんがスープを一口飲んで顔色が変わった。


「すごく美味しいです。貴方が作ったの?」

「今夜は豪華にしました。皆さんにも美味しい食事を食べて貰いたかったのでお口に合って良かったです」

「あ、ありがとう」


ヤベ、茶髪の女性が泣き出した。確かファルラさんだったな。


「落ち着いてください。お代わりも有りますからゆっくりと食べて下さいね」


泣きながらスープを飲むファルラさん。カミーラさんがファルラさんの背中をさすっている。


「あ、あの私達はどうなるの」


確か姉妹の姉の方だよね。名前はマーナさん。


「避難してきた村人達は男爵家で保護しています。家族や親族が町に居るかもしれません」

「私達は賊に両親を殺されました。親族もいません。村では無視されて助けてくれる人がいないのです」


今度はこっちの姉妹が泣きそうな顔だよ。妹のミーナさんは泣いてない?


「大丈夫です。それなら男爵家で保護しますから。まずはゆっくり身の振り方を考えましょう。男爵家を頼っても良いですし、知り合いを頼ってもいいです。帰るまで何日かかるのでその間に考えましょう。ね」


姉妹を慰めながら言った。結構無責任な事言ったけど大丈夫かな?でもこの子達も村八分されたようだから助けたいんだよね。


「あ、お代わりいります?持ってきますよ」

「大丈夫よ。ありがとう」

「では私は一旦外します。失礼しますね」


オレは外に出て今度は腹を空かした男どもの食事を作った。エイルド様も食べているな。


「トルク、ピザをお代わり。大盛りで」


エイルド様も調子が戻った様だ。いろんな事が有ってきつくて辛い思いをしたからな。明るくなって良かった。


「わかりました。もうちょっと待ってください。それまでこれをどうぞ。野菜と肉ですよ」

「相変わらず旨いな。野営でこんな料理を食べれるとは」


レオナルド様もお疲れ様です。


「スープのお代わりもどうぞ。具沢山で美味しいですよ」

「色々具材が入っていて美味いスープだな」

「体に良いスープですよ。疲れた体にピッタリです。あ、エイルド様。肉ばっかり食べないで野菜も食べて下さい。はい野菜大盛りです。これを全部食べたらお代わりしても良いですよ」

「嫌だ。肉が食べたい」

「クレイン様から拒否権を貰っていますので拒否します。キチンと食べないとダメです。こら、そこの護衛兵。エイルド様に肉渡したらダメです」


兵隊さん達が交代で食事をしてようやく終わった。後片付けは他の人に任せてオレは男爵様に渡す手紙を作成する。


「あ、あの」


テントの入り口から女性の声が聞こえる。なんだろう?


「何かご用ですか?」

「ごめんなさい、あ、あのね。ちょっと」


何だろう?あ、生理現象か?やっべぇ。どうしよう?外で用を足すなら兵達が近くに来るから無理だよな。男を怖がっているし。テントの中なら尿瓶のような壺はどうだろうか?

でも壺しかないかな?えーと壺壺っと。そうだ丁度、壺を掘り当てたんだ。それを使うか。


「少し待っててもらっても良いですか?」


壺を持って行こうとしたら。顔に風の塊をぶつけられた。イッテー、風の精霊其の二の仕業か。

流石に精霊の本体の壺を尿瓶代わりに使うのはダメみたいだな。それよりもお前ら近くにいるのか?いつの間にか居なくなったと思ったら姿が見えないだけか?せめて声を聞かせろよ。

仕方がないから土魔法で壺を作る。こんな物で良いかな?


「失礼します」


壺を持ってテントの中に入って呼んでいたカミーラさんに話しかけた。


「すいません。気づかなくて。外が良いですか?それとも壺を作ったのでそれで良いですか?」

「……壺でお願いします」

「ではこちらに置いておきます。では失礼をします」

「待って、この部隊の隊長様にお礼を言いたいのだけど」

「お礼は明日でいいですよ。今日はゆっくりしてください」


テントを出て、一呼吸。あー緊張した。なんか少し疲れたよ。早く手紙書いて休もう。




朝になり出発の準備を整えて男爵家に向けて出発をした。女性達は馬車に乗せてエイルド様は護衛が乗る馬に二人乗りをした。オレはレオナルド様に昨日書いた手紙を渡して馬車の近くを歩いていたが、レオナルド様に呼ばれて先頭へ走った。


「トルク、手紙の内容を詳しく知りたいから質問に答えてくれ」


辛そうな顔で言葉を吐いたみたいに言ってきた。手紙の内容はおかしかったかな?質問に答えて何故か知らないが手紙の内容を誰にも言わない様に口止めされた。不思議に思ったがレオナルド様の言葉に従った。

その後、帰路は順調に続いた。道端に死体があると兵隊さんが埋葬して、魔獣が現れるとこれを倒した。特にこれといった事は無く男爵家に近づいて行った。

カミーラさんはレオナルド様にお礼を言えるまでに回復している。まだ男が怖いけどお礼を言う為に我慢をしたそうだ。

途中で襲われていない村で女性達の服を仕入れてもらった。ずっと布を被っているのはさすがに駄目だよね。村の女性の人に服を見繕ってもらいお金を払う。なぜかオレの分も用意されていた。オレの好みに合わない派手な服だったしオレは動きやすい恰好が良いからと言って断った。

町が見えてきてやっと帰り着いた。もう少しで農園が見えるだろう。女性達が馬車の窓から農園を見ている。初めてここに来る人は農園の広さにビックリする。オレも驚いたもんな。その後も仕事内容にも驚いた。子供の仕事量じゃないもんな。

男爵家に着いて玄関で待機すると男爵様が来られた。


「ただいま戻りました」

「ご苦労」


レオナルド様が代表で今回の見回りの事を話す。男爵様は盗賊は頑丈な牢屋に入れる手配をする。それから見回りに参加した兵達は明日まで休むよう指示をした。


「エイルド、男爵領の見回りはどうだったか?お前も疲れただろう。アンジェに会って少し休め」

「はい。父上」

「トルクもご苦労だった」

「ありがとうございます」

「それから賊に捕まっていた女性達と話したいが大丈夫か?」

「赤髪の女性、カミーラさんから聞いた限りでは大丈夫だと思います」

「解った。先に部屋で休ませて後で話を聞こう。トルク、部屋は用意しているからクララと一緒に案内をしてくれ。後で彼女たちに話を聞くがその時もお前も話に参加するように」

「わかりました」


オレは馬車の中に居る女性達にクララさんを紹介した。


「お初にお目にかかります。男爵家の侍女を務めていますクララです。よろしくお願いします」


それからオレが四人の名前を教えてクララさんと一緒に部屋に案内する。


「こちらの部屋で体を休めて下さい。トルク貴方も少し休みなさい。クレイン様に呼ばれたら教えるわ」

「ありがとうございます。では部屋で着替えて待機しておきます」

「汚れを落としてきなさい。それからリリアさんも部屋に居るわ」


母親も部屋に居るのか。帰りの挨拶をして叔父さんと祖父の事を言わないといけないな。荷物は馬車の中だった。一回外に出て荷物を取りに行こうとしたら護衛の人が荷物を持ってきてくれた。あざーす。

部屋に入ると母親が祖母の近くにいる。祖母はベットで寝たままではなく椅子に座っている。回復しているみたいだ。


「母さん、お婆さん。ただいま帰りました」

「お帰りなさい、トルク。見回りはどうでしたか?」

「お帰りなさい。そして改めて自己紹介をさせてね。貴方の祖母よ。今まで辛い思いをさせてごめんなさい」

「訳は母さんから聞いています。こちらこそ改めてよろしくお願いします」


祖母は泣きそうになり母親に慰められた。だけどこんな状況で叔父と祖父の訃報を言わないといけないのか。言いたくねー。


「母さん、お婆さん。今回の見回りでオレ達の村まで行ってきた。そして、叔父さんとお爺さんは帝国兵と戦い亡くなった」


叔父さんと祖父の遺髪をテーブルに置いた。最初二人は訳が分からなかったが段々とオレの言葉の意味がわかり祖母は顔を伏せて泣き、母親は泣きながら祖母を慰めた。オレはただ二人を見るだけ何も出来なかった。

しばらくしたらクララさんがオレを呼び出した。二人が泣いているのを見てオレは「祖父と叔父が亡くなった事を伝えて遺品を渡しました」と小さい声で呟きクララさんは「後でマリーを部屋に戻します」と言ってオレ達は彼女達の部屋に行って男爵様がいる執務室へ向かった。

部屋の中には男爵様とレオナルド様、アンジェ様もいる。クララさんに母さんの事を聞かれたのでオレが「今は体調を崩したので少し休ませてください」と言った。アンジェ様は少し考えて「わかったわ」と納得してくれた。

彼女達をテーブルに座らせてクララさんが人数分のお茶を用意してくれた。オレも手伝おうとしたが断られたのでレオナルド様が座っているテーブルの後ろで待機した。


「今回の件、すまなかった。トルクの手紙でお前達の事が書いてあった。カミーラ、農園には避難してきた者が居て、中には知り合いがいるだろう。だが農園には男が多い。働くなら男爵家の使用人として働いてはどうだ。慣れるまでは女性が多い所に配属しよう。考えておいてくれ」


カミーラさんは帝国に村を滅ぼされて親族は殺された。農園に行けば知り合いが居るかもしれない。でも男性が多い所は遠慮したいと言ったので男爵家の使用人になる事にした。


「ファルラと言ったな。町で商いをしているとトルクから聞いている。親族に伝えたら生きている事を驚いていたぞ。後で馬車を手配するから親族の所に行くと良い。その後、用事があるなら男爵家の者やトルクに伝えてくれ。可能な限り支援しよう」


ファルラさんは町の親族の所に行くことにした。家族や恋人を殺されて可哀そうな人だ。親戚の人達が力になってくれたら嬉しい。


「マーナとミーナだな。トルクから親を亡くして他に頼る者が居ないと聞いている。ならばカミーラと同じで男爵家の使用人として働けばどうだ」

「ありがとうございます。でもミーナは体の調子が悪いので休ませてください。私がミーナの分まで働きますから捨てないで下さい」

「マーナもミーナも体調が戻るまで休んで良い。用事があるならトルクやクララに言えば良い。あと、お前達は村人達から迫害されていたと聞いている。その理由を教えてもらっても良いか?」


マーナさんもミーナさんも村人達から村八分されていたがその訳は聞いていなかったな。


「私達も知りません。父も母も教えてくれませんでした。村人達は私達を迫害した理由を知っていると思います」

「そうか、それではこちらで調べてみるが良いか?」

「はい、私達もどうして迫害されたのか教えてもらっても良いでしょうか?」

「解ったら教えよう。レオナルド、頼む」


クレイン様がレオナルド様に投げた。そしてオレも手伝う事になるだろう。農園責任者のゴランさんにも手伝ってもらおう。


「何から何までありがとうございます。彼女が私達を親身になって励ましてくれたから私達は助かりました」


カミーラさんがオレ達に礼を言うが、彼女?


「彼女が助け出された後も、馬車でも私達の為に励ましたてくれて助けてくれて。ウィール男爵様には感謝をしています」


彼女って誰?男爵様もレオナルド様も首を傾げている。見回りに行っていた兵達は全員男だよ。


「すまないが誰の事を言っているのだ?」


クレイン様がカミーラさんに聞く。彼女達はオレの方を向いて話しかけた。


「トルクさんの事です。彼女が居てくれたので皆様を信じる事が出来ました。彼女が居なければまだ私達は恐怖に怯えていたでしょう」


レオナルド様が口元を抑えてゴホゴホと言っている。アンジェ様もオレを見て困った顔で笑っている。クレイン様は渋い顔をしてオレを見た。オレって女に見えたの?


「あの~。オレ男ですよ」


彼女達がいっせいにオレを見た。オレは何処から見ても男だ。


「でも、髪が長いし」


確かに今は肩まである髪を後ろで結んでいる。邪魔だから切ろうと思っているのだけど。


「それに私達の事も解るし」


それは周りに女性が多いからだ。母親やマリーと過ごしてれば多少は解る。


「それに小柄で可愛いから」

「小柄なのはまだ子供だからです」

「本当に男なの?」

「本当に男です」

「だから村で女服を嫌がったのね」


やっぱりあの服は女子服だったのか。派手で動き辛そうだったから断って正解だった。クレイン様やアンジェ様やレオナルド様は笑っている。笑ってないで誤解を解いてくれよ。


「今回はトルクを連れて行って正解だったな」

「そうですね。そのお陰で彼女達が助かったのですから」

「ねえ、トルク。侍女服を今度着てみない?マリーちゃんとお揃いで似合うわよ?」


全力で拒否します。



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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