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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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ブックマーク数が100件を超えました。皆さんありがとうございます。

伯爵家は現在、ハチの巣をつついたような騒ぎを起こしている。賊が伯爵家の当主を狙ったからな。使用人や兵隊さんが大慌てで右往左往している。そういえば、クレイン様やレオナルド様や他の人は大丈夫なのかな?オレは事故現場に居るだろう伯爵様に会いに行った。

使用人さんに伯爵様の居場所を聞いて伯爵様の所に行く。どうやら執務室で事件があったようだな。オレが執務室に行くと使用人さんが執務室を掃除している。部屋の中を見るとクレイン様やレオナルド様、アンジェ様や伯爵夫人もいる。執務室を見渡すと大きな布の下に賊と思われる死体があるみたいだが、広範囲に赤い血が飛び散っている。精霊はどんな風に賊を殺したんだ?


「トルクか、お前もこの騒ぎを聞きつけた様だな」


クレイン様がオレに気付いて言った。そりゃそうだよ。騒ぎに気付かない方がおかしい。


「サムデイル様が賊に襲われたと聞きました。今回の賊は私達を襲った賊でしょうか?」

「貴方を襲った賊ってなにかしら?」


後ろから母親の声が聞こえる。どうしようかな?振り向くのが怖い。後ろからの威圧が怖いよ。


「ねえ、トルク。貴方を襲った賊ってどういう事?今日は休暇で街に行っていたわよね。それでどうして賊に襲われたの?」

「えーとね、街でお土産を買ってる最中で知り合いが拉致されてね。助ける事は出来たけどオレが代わりに賊と追いかけっこをして、狙われました」

「貴方は何をしているの。まだ子供なんだから、あまり心配させないで」

「ごめんなさい」

「リリアさん、この子が助けたのは伯爵家で働いている子なのよ。そんなに責めないで」


伯爵夫人が助け船を出してくれた。ありがたい。


「まあ、その後に伯爵家の牢屋に入っていたがな」


伯爵様、その事は内密ですよ。


「どうして、牢屋に入ることになったのかしら?貴方は何をしているの?」

「えーと、魔法ギルド長の人に魔法が使えない腕輪をされて、言いがかりをつけられたので伯爵家まで逃げたら門番の人に牢屋に入れられた」

「どうして、腕輪をつけられたの」

「闇魔法の使い手と勘違いをされて」

「どうして、貴方が闇魔法の使い手と勘違いをされるの?本当に何をしているの?」


母親がマジで怒っている。どうしようかな?土下座して謝るか?それとも逃げ出すか?逃げ出すのは無理だろうな、その後が怖すぎる。やっぱり誠意を見せて土下座が一番無難か。


「リリア殿、今回の騒動は敵が闇魔法の使い手でな。伯爵家に闇魔法の呪いを放つ事だったのだよ。しかし魔法ギルド長とトルクが敵の陰謀を見破り難を逃れ、それで今回は助かったのだ。だが魔法ギルド長が呪いを見破ったトルクを闇魔法の使い手と勘違いをしてな。それでギルド長が逃げ出さないために腕輪をはめたらしい。まあ魔法ギルドから逃げ出した様だがな。子供が三階の窓から飛び降りて逃げるとは思わなかったと言っていたぞ」


伯爵様、マジでその事は内緒ですよ。母親の雰囲気がすごい事になっているよ。


「トルク、貴方は後で話し合いをしましょうね」

「はい」

「では死体がある所で話すのもなんじゃ。隣の部屋に行こう。ワシも込み入った話がしたい。リリア殿も良いかの?」


伯爵様が先頭にクレイン様やレオナルド様、アンジェ様や伯爵夫人や母親を執務室の隣の部屋に移動する。オレは執務室を出ようとするが。


「トルク何をしている。お前も話に付き合え」


伯爵様に捕まってオレも話し合いに参加する事になった。

伯爵様よ。オレはまだ子供だよ。どうして大人同士の話し合いに子供が参加するの?母親や伯爵夫人が疑問に思っているよ。そして伯爵様はオレを膝にのせてみんなに話した。


「今回の賊はワシも驚いた。賊が執務室に入りワシを殺そうとし、ワシも今回は死を覚悟したが、いきなり賊が動かなくなったと思ったら血を吹き出しながら倒れたのだからな。どうして賊がワシを殺そうとしたのか?どうやって伯爵家の執務室まで来れたのか?そして死に方だ。いきなり動かなくなって血を吹き出して死んだのだ。なにかの魔法ではないかとワシは思うのだがどうだろうか」


伯爵様が母親に質問をしている。母親は少し考えて言った。


「私はその場に居合わせていないので詳しくは解りません。しかし魔法的なもので間違いは無いと思います。まずは敵を把握する、そして敵の動きを止め、最後にとどめを刺す。目に見える範囲でしたら人を動かなくする事、これは風魔法の上級でしたら出来ると思います。そして血を吹き出して死亡させる方法、これは水魔法の上級でしたら出来ると思いますが私には出来ないと思います。この二つの事を出来る上級魔法使いは居ないと思います。そして、執務室にはサムデイル様と賊しか居なかったと聞きます。見えない場所で的確に魔法を使うなんて上級魔法使いでも無理です。少なくとも二種類の属性を使える上級魔法使いなら可能だと思いますがそのような魔法使いは居ないでしょう」

「執務室の窓から部屋を見て魔法を使い賊を倒したというのは?」


クレイン様が母親に質問をした。


「それでも距離が有ると無理でしょう。私も敵の動きを止める事は少し離れても出来ますが、敵を無力化するのは難しいですね。血を吹き出して死亡させる事は近づかないと無理だと思います」

「夕方に陽が眩しくて執務室の窓にはカーテンが掛かっている。外の様子は見えないはずだ」


伯爵様がダメ出しをする。外からは執務室は見えないらしい。


「ではどうやって賊を倒したのか。それ以前に誰が賊を倒したのだろうか」


皆さん考え込んだ。さすがに精霊の仕業とは思わないだろう。


「それにどうやって賊が入り込んだのでしょうか?伯爵家に忍び込んでサムデイル様の執務室まで来るとは一体どうやって」


レオナルド様が皆に言った。確かに伯爵家の警備を潜り抜けて執務室に居る伯爵様を殺そうとするなんて、伯爵家の警備はザルか?執務室の前に警備の人間は居なかったのか?


「執務室の前にいる警備の人間は?」

「二人が入り口で警備をしていたが話を聞いたところ一人は腹を下してトイレに行ったらしい。残った一人も腹痛で集中力が散漫になって背後から殴られて気絶したらしいな」


・・・それでいいのか伯爵家の警備は。伯爵家の料理のせいか?それって新しい料理を作ったオレのせい?でも今日は料理を作ってないからオレのせいじゃないよね。


「どうも二人とも昨晩、古い酒を飲んでそれに当たったようだ」


・・・本当に伯爵家の警備は大丈夫なのか?そんな奴に執務室の警備をさせるなよ。


「伯爵家に侵入した方法は使用人に化けた様だ。どうも男爵家の使用人と間違えたと他の使用人は言っている」


・・・武器を持って使用人に変装して他の使用人の皆は何も思わなかったのか?それ以前にオレは何時まで伯爵様の膝の上に居るのだろうか?


「今回、帝国はワシやお主の命を奪おうとしている様だ。本格的に帝国との戦が始まるかもしれないな」

「そのようですね、私も男爵家に戻ったら身辺に気を付けます」

「ワシの兵を男爵家に回そう。男爵領の見回りや農園も気を付けておけ」

「わかりました」

「それから使用人も少し回してほしいわ」


アンジェ様がいきなり会話に参加した。


「リリアさんやマリーちゃんが家に来るし、兵も男爵家にくるのでしょう。料理人も来るし使用人も補充してほしいわ。それからマリーちゃんの教育係も欲しいからエリーが欲しいけどお母様、どうかしら?」

「あら、エリーは近いうちにお見合いを考えているのよ。急に男爵家で働くなんて大丈夫なの?」

「お見合いは大丈夫よ。エリーは好きな人がいるから。その子と一緒になればいいわ」


アンジェ様、ナイス!イーズとエリーさんを一緒にするんだね。


「その子は爵位もち?最低でも騎爵位くらいはもっているわよね」

「爵位は持ってないけど大丈夫よ。二人とも愛し合っているからね」

「ダメよ。エリーを幸せにしないと、私はエリーの両親に合わせる顔が無いわ。だから最低でも爵位持ちじゃないとね」

「爵位が有っても幸せになるか、わからないじゃないの」

「でも爵位が有った方が良いわ。平民よりも貴族と結婚した方が幸せになれるわ」


伯爵夫人とアンジェ様が言い争っているよ。今回の話し合いは賊の件じゃなかったのか?二人の言い争いは段々と激しくなってきたな。飛び火しない様にクレイン様やレオナルド様、伯爵様は少し離れている。母親はどうしようか考えている様だ。そうだ今のうちに伯爵様に中庭の件を聞いてみようかな。


「サムデイル様、少しお聞きしたい事が有るのですがよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「どうして私は膝の上に居るのでしょうか?」

「お前が逃げないようにするためだ。分かり切った事を聞くな」


流石に逃げませんよ。


「それからあの中庭ですがとても綺麗ですよね。古くから伯爵家に有るのですか?」

「・・・中庭・・・」


あれ、伯爵様が考え込んでいるぞ。精霊の事を知っているのかな?


「どうしました、義父上?」

「中庭で思い出した事がある。ワシの父から聞いた話だがこの中庭には伯爵家を守ってくれる守り神がいると言う話だ。ワシの祖父は父上が子供の頃に帝国との戦で亡くなったそうだが、父にこの中庭を大切にしろと言われたらしい。この中庭に居る守り神が私達を守ってくれると言ってな。ワシが子供の頃に聞いた話だ。すっかり忘れていた」

「守り神ですか。どうりであの中庭だけ他の所よりも綺麗だと思いました」


魔法の教師が魔法の的にしていたけどね。しかし精霊ではなかったか。


「伯爵家を守護する中庭の守り神ですか。伯爵家を守る精霊の様ですね」


母親が守り神を精霊だと思ったみたいだ。初めて精霊の事が人から聞けたよ。


「精霊ですか?悪意から守ってくれると聞いた事があります」

「私も聞いた事があります。辺境では精霊は守り神としてまつられていると」


クレイン様やレオナルド様が精霊の事を話す。精霊って人間社会に少しは広まっているんだな。


「ワシも精霊なんて見た事もないし、トルクに中庭の事を聞くまで忘れていた。リリア殿は精霊の事を聞いた事はあるか?」

「私も精霊の事は詳しくは解りません。しかし中庭に居る精霊が賊からサムデイル様を救ったかもしれませんね。精霊は私達が使う魔法とは比べ物にならない位、強力だと聞いた事があります」

「ならば今回の賊を殺したのは、中庭の守護神、精霊の仕業なのか?」

「精霊が助けたのかは判りません。しかし助けたとなると少し困った事になります」


母親が困った顔でサムデイル様と窓の外、中庭の方を見て答えた。


「精霊は助ける代わりに、その人に何かの恩返しか試練を与えると聞いた事があります。今回、賊から助けてもらったから見返りを要求されたかもしれません」


大正解。流石は水の上級魔法使い。その通りです。恩返しのために変な腕輪を探すことになりました。


「・・・しかし、ワシは恩返しなど要求されていない。何より精霊を見ていない。他の者はどうだ?」

伯爵様が皆に聞くが精霊を見たり聞いたりはしていないと言う。ちなみにアンジェ様と伯爵夫人はエリーの件でまだ言い争っている。すごく白熱しているな。

「まあ、見た事も無い精霊の話をしても仕方がない。今回の件でワシも運よく助かったしクレイン達が伯爵領に来た時の帝国からの賊も粗方一掃出来た。伯爵領も当分は大丈夫だろう。これも中庭の守護神のお陰だな」

「そうなるとトルクも精霊に助けてもらったのかもしれないな」


クレイン様がオレを見て言った。伯爵領に来る途中で賊に襲われて川に落ちた時に、精霊に助けてもらった事かな?


「辺境の村で毒を食べて死にかけた時に声が聞こえたのだろう。それは精霊の声じゃないだろうか?」


しまった、作り話がすごい事になっている。母親の方を見るのが怖いよ。伯爵様の膝の上から逃げ出したいが両手でがっちり掴まれているから逃げられない。


「なるほど、お主の料理の元は精霊の助けがあって出来た料理なのか。これは精霊の料理として他の者に勧める事にしよう」

「精霊の料理ですか。良い名前ですね」

「確かにあの美味しさは天に昇るような美味しさですから、名前負けもしないでしょう」

「サムデイル様、そろそろ私を降ろしてもらってもいいですか?」


さっきチラリと母親を見たがオレの方を向いて微笑んでいる。マジで怖い。どうして何も言わないの?ごめんなさいお母様。僕が悪かったです。だからその笑顔は止めて下さい。


「どうした?折角、お主の料理の名前が決まったのだぞ。その名に相応しい料理を頼むぞ」


それよりも母親をどうにかしてください。全面的に心配をかけたオレが悪いけどフォローしてください。


「トルクよ。お主に精霊の料理を作った褒美を与えないといけないな。何が良い?」

「まずは膝から降ろしてください」


オレは伯爵様の膝から降りて母親の前に行き土下座をした。


「お母様、申し訳ありません。許してください。今後は無茶をしません。心配をかけない様に努めますから何卒、お許しください」


いきなりの土下座に周りの皆が会話を止めた。アンジェ様と伯爵夫人も会話を止めている。


「心配をかけない様に努めます。知らない人にはついて行かないし、街に出るときは大人の人と一緒に行動をします。露店で値段交渉もケンカ腰でしません。食べ物の好き嫌いもしません。職業がら人に恨まれる事も有るかもしれませんが、心配をかけない様にしますので許してください」


周りから声が聞こえない。母親の雰囲気はまだ怒っている感じがする。オレは土下座で床しか見えないが感じるのだ。母親はまだ怒っていると。



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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