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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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60,000PV突破&ユニーク12,000突破。

皆さまありがとうございます。


とりあえず、部屋に戻ったが部屋には誰もいない。ゆっくり寝ようと思ったけど寝る気になれないから伯爵家を散歩する事にした。今日はいろんな事があったからな。初めての街で買い物したり、イーズとエリーさんをストーカーしたり、賊と追いかけっこしたり、牢屋に入れられたり、外出禁止令が出されたり、本当に今日は色々あったな。

部屋を出てまずは食堂に行ったが誰もいない。さすがに厨房には行きたくない。きっと夕食の支度を手伝わないといけないだろう。

どこに行こうかな?考えながら歩いていたら中庭に着いた。綺麗な中庭だ。きっと庭師さんが一生懸命、維持をしているんだろうな?オレは中庭を眺めていたら人がいるのを確認した。

ポアラ様とマリーが中庭で魔法の訓練をしている様だ。ポアラ様は今日は劇を見に行くって言っていたが街から帰ったのかな?他にも使用人達が中庭に待機している。オレは暇つぶしに近づいてみた。教師役の女性の人が二人に教えている様だ。


「ですから、魔法を使うときは優雅に気品よく魔法を放つのです。手の先から足の先まで美しさに気を付けて魔法を優雅に放します。魔法を美しく使うには日頃から美しく有る事です。その美しさは他の人を魅了して、敵も味方も美しさに見惚れるでしょう。これこそ美しい魔法使いです。分かりましたか?」

「分かった」

「分かりました」


……なにその魔法?美しい魔法使い?ナルシストなのか?おかしくない?女教師のオバサンは髪を結って似合ってない派手なドレスを着ている。そんな人がどうして気品とか優雅とか説明をしているの?魔法の説明だよね、絶対に違うよね?


「では、次に美しく魔法を使う練習をしましょう。そこの使用人。兵隊を呼んできてもらえる」


魔法の教師さんがオレを見て言った。するとポアラ様とエリーもオレに気付いた。


「あ、お兄ちゃん。今日は街に行くって言ったけどもう帰ってきたの?」

「トルク、お帰り」

「ただいま戻りました、ポアラ様。少し早いけど帰ってきたんだよ、マリー」


二人に挨拶をして教師さんに挨拶をする。


「はじめまして、男爵家使用人のトルクと申します。今から兵隊を呼んできますが何人くらい呼んできましょうか?」

「そうね、五人くらい呼んできてもらえる?」

「私が呼んできましょう」


側にいた使用人の一人が返事をして兵隊を呼びに行くようで中庭から出て行った。


「では兵隊が来るまで、貴方が魔法の的になってください」


的ですか?魔法は動くモノに当てるっていうヤツですね。行き成り教師の人がオレに向かって魔法を放つ。火魔法の火の玉だ。オレは反射的に避けて火の玉を回避した。後ろの木に当たって木が焦げる。マジでオレに当てようとしたよ。それに木が焦げたぞ。綺麗な中庭に何をするんだよ。


「さあ、ポアラ様もマリーさんも魔法を使ってください。魔法は動くモノに当てる事が一番、上達します。そして美しく優雅に」

「分かりました」

「分かった」


二人とも返事をしてオレに魔法を放つ。ポアラ様が火魔法の火の玉、マリーが水魔法の水の玉をオレに放つ。マジで止めてくれよ。後ろの木がすごい事になるぞ。そして、教師も魔法を放つ。三人から狙われてオレは土魔法の土壁を使って防いだ。魔法が土壁に当たる。よし中庭の木も大丈夫だ。せっかく綺麗な中庭なのにどうして魔法で壊すんだよ。


「土壁を使うのは禁止です。貴方は避けなければいけません。動くモノに当てないと魔法は上達しませんから。早く土壁から出てきなさい。それから二人も魔法は優雅に放つのですよ」


このくそアマめ!いいだろう。動くモノに当ててやるよ。後悔するなよ。

オレは土壁から出た。出たら三人から魔法を放たれる。オレはそれを転がりながら避けて教師に左手で水魔法の水の玉を放つ。教師は右側に避けようと行動する。しかしオレの右手で水の玉を放った。右手で放った水の玉は左手で放った水の玉より勢いがよくて速い。避けた先に早い魔法が教師さんの顔に当たる。良し!計算通りだ。顔に当たって見事に倒れる。オレはその隙に水魔法の水の玉を教師に当てる!当てる!当てる!当てる!

痛て!ポアラ様の土魔法の石礫が掠ったよ!危なかった。でも当てる!当てる!当てる!当てる。


「ねえ、お兄ちゃん。教師の人、気絶してない?」


え、魔法を止めて教師に近づいたら気絶してるよ。おかしいな、水魔法の水はそこまで強くしてないのに?


「トルク、教師を気絶させたらダメ」

「すいません、これでも手加減はしたんですけど」

「あれで?」

「お兄ちゃん、あれで手加減はないよ」


そうか?水魔法しか使わなかったし、そこまで威力は出さなかったんだけど。


「とりあえず、起こしましょうか?使用人さん、すいませんが教師の人を起こしてもらっていいですか」


中庭に居た使用人の人に頼む。流石に男や子供よりも同性の女性に頼むのが良いだろう。使用人が連れて来た兵士達が教師を背負って中庭から出て行った。あれ?起こさないの?どこに連れて行くの?


「トルク、魔法の授業を邪魔したらダメ」

「お兄ちゃん、教師の人を気絶させたらダメだよ」


教師が気絶して魔法の授業が出来なくなった。


「ごめんなさい」


二人に謝る。でも仕方ないよね。教師が子供に向かって魔法を放ってくるんだから。正当防衛だよ、仕方ないよね。


「トルク、反省してる?」

「お兄ちゃん?」

「すいませんでした」


それでもオレは悪くないと思う。そういえば。


「ねえ、あの教師は気品とか優雅とか言っていたけど、どんな事を習ったの?」

「分からない」

「分からない」


二人の声が重なった。子供の二人には気品や優雅は分からないだろう。本当に魔法の授業だったのだろうが?



ポアラ様とマリーは魔法の教師さんを見に屋敷に戻った。オレは中庭で寝転んで休憩をする。夕方に近いが寝心地が良い。さっきまでの魔法合戦が嘘のようだ。目を瞑ってゆっくりしていると声が聞こえた。


「木を守ってくれてありがとう」

「綺麗な中庭だからな、景観を損ねない様にしないとね」


寝転んで目を瞑ったまま返事をした。心地よいな、絶好の昼寝日和だ。もうすぐ夕方だけどね。


「あの人はいつも中庭を壊すんだよ」

「他の所で魔法を使えばいいのにね」

「全くだよ、木や花が傷つくのはダメだよね」

「そうだね」


男の人と話しているが庭師の人かな?オレは寝転んで話しているが無礼じゃないよね。


「庭師さんも大変ですね。この中庭を維持するのは大変でしょう?」

「私は庭師じゃないよ。精霊だよ」


ガバっと起き上がる。周りを見るが誰もいない。


「君は声が聞こえるようだが精霊の姿は見えない様だね」

「ここにも精霊がいたのか……」

「精霊はいろんな所に居るよ。人間には姿は見えないし声も聞こえないけどね」

「でもオレは声が聞こえるぞ。どうしてだ?」

「偶にいるんだよ。精霊が見えたり、声が聞こえたりする人間がね」


精霊が見えたり声が聞こえたりする人間はオレのほかにもいるのか。しかしどうしてオレに声が聞こえるのだろう?昔は姿も見えたのに。


「昔は精霊の姿を見た事があるんだ。くま〇んの三人?が見えたよ」


く〇もん元気かな?あれから村に帰ってないから分からないけど、あの三人?の事だ。変な事して遊んでいるに違いない。


「くま〇んの意味が分からないが子供の頃に見える事がある様だよ。ここに住んでいた人間も子供の頃は見えていたしね」


アンジェ様か伯爵様が精霊を見た事があるのかな?


「詳しくは分からないが百年くらい前かな。子供が僕を見て驚いていたよ。その子は声も聞こえて私と友達になったんだよ」

「ほんとに昔だな。しかし友達になったって事は友達の印もつけたのか?」

「君も印がついているね。そうだよ僕と友人になったら印をつけたよ。君みたいに顔じゃなくて手に印をつけたんだ」

「……笑ってもいいぞ。顔の印は笑いをこらえるのに苦労したって他の精霊も言っていたしな」

「もう、限界だ。なんて変な印だよ。それも顔につけるなんてこれは笑ってくれって言っているもんじゃないか!」


精霊が笑っている。姿が見えるならきっと指をさして笑っている事だろう。それとものたうち回りながら笑っているか。オレは笑いが止まるまでしばらく待った。


「あー、面白かった。こんなに笑ったのは何年ぶりだろうか」

「娯楽を提供できて良かったよ。それで聞きたい事が有るがいいか?」

「なんだい?僕の事かい?」

「精霊ってこの世界ではどういう存在なんだ?誰も精霊の事なんて言ってもないし聞いた事も無い」

「さあ、知らないよ。人間の世界なんて精霊の私は関係ないし」

なんだよ、知らないのかよ。本当に誰も精霊の事なんて言わないし聞いた事ないからな。母親や他の大人に聞いて「頭大丈夫か?」とか「疲れているでしょう」など言われたら悲しいよ。

「だったら、精霊の事を知っている奴は居るのか?今、生きている奴だぞ。百年前じゃなく、今、現在だぞ」

「僕の周りには居ないな。印をつけている人間は君以外には居ないよ。でも他の精霊なら知っているかもしれないね」


チィ、使えない精霊だ。


「だったら精霊とはなんだ?」

「その疑問は難しいね、私も君という人間とはなんだ?と返した方がいいかな?」


抽象的すぎたか。


「精霊は人間には見えないがこの世界に存在する。精霊はこの世界にどんな役割をしているんだ」

「それを言うなら人間はこの世界でどんな役割をしているんだい」

「……別に何もしていないな。国同士で喧嘩したり、欲で殺したり殺されたり、親が子を捨てたり。些細な事で人や物を傷つけるし、確かにどうでもいい質問だったな。すまなかった、忘れてくれ」


世界から見たら人間なんて群れた動物の一つだろう。変な質問をしたな。オレは謝ったら精霊は笑った。


「ハハハ、君は本当に変わっているね。僕達、精霊は特に何もしてないよ。しいて言うならこの世界を見ている事だね。空を見たり、景色を見たり、伯爵家の事を見たりしているよ」

「本当に何もしていないんだな。まあ、ゆっくりできて良かったな」

「そうだね、でも伯爵家にいる人間が友の孫を殺そうとしているね」


……友の孫ね。確か百年前の子供が友だと言っていたからその孫と言えばサムデイル様だよね。


「すまないが、そこの辺を詳しく聞きたい。サムデイル様が殺されそうなのか?」

「そうだよ。友の孫を殺そうとしている。今、友の孫に武器を振り下ろそうとしているよ」


今かよ、どうすればいいんだよ。伯爵はどこだ?助ける方法は有るのか?


「やばいぞ!伯爵様を助けないと。伯爵様は何処だよ。それ以前にどうやって助けるんだよ。まだ生きているのか?」

「まだ生きているよ。運よく武器を躱した様だね」

「どうすれば助けられるんだよ。ていうかお前は伯爵様を助ける事は出来るのか?出来るなら助けてくれよ!頼む」


精霊なら伯爵様を助ける事が出来るはずだ。オレは精霊に頼み込んだ。


「助けられるけど、どうして君が頼むの?友の孫とは関係がないよね」

「どうしてと言われても助けたいからだ。伯爵様はオレの料理を褒めてくれたし、アンジェ様の父親だし。エイルド様達の祖父だ。男爵家のみんなが悲しむのは見たくない。頼むよ、精霊様」

「……分かった。助けよう。……助けたよ」


早いよ!本当に助けたのか?


「本当に助けたのか?早くね?」

「此処は僕の領域だよ。助ける事なんて簡単だよ。それで僕は君の願いを叶えたから僕の願いも叶えてくれるよね」


精霊はうれしそうにオレに言った。後出しで願いを叶えろかよ。酷いな、こいつは。


「……オレに出来る事なら良いが、誰かを殺せとか、傷つけろとか、物を盗めとかは無理だぞ。ついでに目から怪光線を使えとか、口から火を噴けとか、心臓を出せとか、ピーとかも無理だ」

「最後のピーは解らないけど僕の頼みは探し物だよ。友に渡した腕輪を探してほしいんだよ」


流石に放送禁止用語は解らないだろう。しかし探し物か。


「その腕輪の特徴はなんだ?」

「この腕輪だよ」


いきなり頭の中に見た事が無い腕輪が浮かんできた。精霊がやったのか?


「いきなり頭の中に腕輪が浮かんできたがお前がやったのか?」

「そうだよ、これを探してほしい。これは僕が作った腕輪で友に渡したんだよ。友は戦争で亡くなったらしくて腕輪も帰ってこなかった。僕と友の絆の腕輪を探してほしい。頼むよ」

「分かったよ、伯爵様を助けてくれた恩だ。腕輪を探しておくよ。だがオレにも都合がある。時間が掛かるが良いか?」

「君が死ぬまでに腕輪が見つかったらありがたいな。それじゃあ頼むね」

「分かったよ、それで他にヒントは無いのか?現物を見ただけじゃ何処に腕輪が有るかわからないぞ」


オレは精霊に聞いたが返事が返ってこない。どうしたん?まさかノーヒントで腕輪を探すのか?それは無理だぞ。


「おい、精霊。ヒントを出せ。せめて方角だけでもいいから教えろ。現物だけじゃ探せないぞ」


しかし返事は返ってこない。


「おい、頼むからヒントを教えてくれ。教えないとこの中庭の木に落書きをするぞ。どんな落書きを書くのかは、やはり定番のへのへのもへじかな?それともドラ〇モンでもいいぞ。パ〇マンやハッ〇リくんも捨てがたいな。ここはやはり孫〇空か。子供と大人とどっちがいい?」


やはり精霊から返事は返ってこない。マジでノーヒントかよ。無理じゃね?


ふと思ったが本当に伯爵様は命を狙われていたのか?精霊の嘘じゃないだろうな?簡単に事件を解決したが最初っから嘘で伯爵様が命を狙われてなかったんじゃないか?そして助けたって簡単に言ったがそれも嘘じゃないだろうな?そんな事を考えていたら屋敷が騒がしくなった。兵隊が声を出して移動して、使用人の人達が動き回っている。どうしたんだ?


「どうしたんですか?」


動き回っている使用人の人に聞いてみた。


「旦那様の命を狙う賊が屋敷に入り込んだようです」


精霊の言う通りに賊が伯爵様の命を狙ったようだな。


「サムデイル様は無事ですか?」

「私も詳しくは知りませんが、無事だと聞きました。忙しいので失礼します」


……精霊は嘘を言っていなかったか。仕方が無いから精霊の願い通りに腕輪を探してやるか。オレは中庭に向かって。


「恩を返すために腕輪を探すよ。見つけたら此処に持ってくるからな」


そう言ってオレは中庭を出た。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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