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トルクです。行き成りですが私は人に追われています。後ろから刃物を持った人に追われています。どうしてこうなったのでしょうか?記憶を遡るとこうなります。
オレは部屋でゴロゴロしたかったが伯爵家を出て街に向かった。街は人が多く結構にぎわっていて、露店で食べ物を買ったり、土産を見たり、露店の土産屋さんと値切り合戦をしたり結構楽しかったです。まずは母親に髪飾りを土産で買いました。あとはマリーとレオナルド様と男爵一家と伯爵夫婦にも買わないとな。あとは男爵家の使用人達にも買わないとダメかな?貰ったお金で足りるかな?
歩きながら屋台で買った肉の串を食べていると、前の方でイーズと女の子が一緒に歩いている。イーズは彼女のエリーさんとデートか。これはデバガメもとい見張りでもなく後方で温かい目でデートの行方を確認するべきだよね。後でイーズ父にも報告をしておかないと。イーズとエリーさんは前方で話しながら歩いている。少し近づいて話を聞いてみよう。
「でね、リリアさんって人がとてもきれいなの。奥様とアンジェ様とお茶をしている時に私も見たけど綺麗よ。お子様がいる様だけど、どんな子供かしら?きっと可愛い子ね」
「リリアさんの子供か、きっとリリアさんとは違うタイプの子だな。性格は悪辣で陰険な子供だろう。刃物を持ったら殺人的な事をするに違いない」
・・・おい、イーズ。お前はオレの事をなんて思っているんだ。
「あはは、イーズっては。今日は冗談ばかり言って。どうしたの?」
「職場できつい事があってね。その時思ったんだ、エリーと一緒に街に遊びに行こうって」
「私もイーズに誘ってもらって嬉しかったわ」
「僕も喜んでもらって嬉しいよ」
「こんな日が毎日続けば良いのにね」
「毎日続くよ、絶対に」
青春してるねー。見ていて微笑ましいよ。これは何かしないといけないかな?精神年齢年上として何かした方がいいよね。
①イーズ達と偶然会ったふりをして出会茶屋に連れて行くように仕向ける。
②二人に偶然会ったふりをしてオレがさりげなく高級食事店や高級服屋に行かせて男の甲斐性をエリーさんに見せる。
③オレがイーズを唆してエリーさんにプロポーズさせる様に仕向ける。
「ねえ、手を繋いでもいい?」
「勿論、いいよ」
「イーズの手は温かいね」
「水仕事で手が硬くて荒れているだろう」
「そんな事ないわ、貴方の手は温かくて優しい手だわ」
「エリー」
「イーズ」
見つめあう二人。此処は街中だよ。なに二人の空気を作っているんだよ。周りの通行人が温かい目で見ているぞ。あ、一部の人は嫉妬の目で見てる。この二人どうしよう。
やはり、二人をストーカーは止めてお土産でも探そうと思って行動しようと思ったら、マントを顔まで被っている人がイーズ達に近づいて来る。このピンク色の空気に近づくなんてすごいな。
「お前達、刺されたくなければ静かにしてそこのその道を曲がれ」
「料理長、貴方がどうして」
「黙って歩け。騒いだら殺すぞ。エリーも黙ってろ」
「は、はい」
……料理長が二人を拉致しました。オレはどうしようか?やはり二人に後をついていくか。仕方がない、またストーカーを始めるか。
マント男の料理長とイーズ達は裏道に入り大通りの奥の方へ向かった。オレも三人に見つからない様に後をついていく。休日がとんでもない事になったな。
裏通りの古びた家に三人は入っていった。オレは部屋の中を見る為に窓から様子を見る。部屋の中には男が料理長を入れて五人。イーズとエリーさんは部屋の真ん中にいる。
「だから、これを男爵の食事に入れろ」
リーダーのように真ん中にいる男が手に小さなツボを持ってイーズに言っている。あのツボはなんだろう?
「そんな事は出来ません。毒を混ぜるなんて無理です。すぐに見破られます」
「安心をしろ。この毒は遅効性で一ヶ月後に熱が発生して高熱で死ぬ。お前が入れたとは分からない」
「そんな事は出来ません」
「出来なければそこのお嬢さんが痛い目を見るぞ」
「そんな、エリーは関係ないだろう」
「関係あるさ、この会話を聞いたからな。かわいそうな子だな」
「お前達が勝手に喋ったんだろう。僕たちは無関係だ」
「知らねーな。兎も角お前はオレ達の命令を聞けばいいんだよ」
……うーむ、どうやら男爵様達に毒を盛ろうとしている様だな。やっぱりクレイン様は誰かに狙われているのかな?
「だいたい、そこの馬鹿が伯爵家から逃げ出さなければお前に頼まなくても良かったんだが」
「仕方ないだろう、変なガキのせいで料理人を首になったんだ。せっかく伯爵家料理長になったのにあのガキのせいで」
「まったくだ。折角、お前に頼もうとした事が出来なくなってよ。貴様にいくら金を渡したと思っている」
「だから他の奴を紹介しただろう。こいつらで手を打ってくれ」
「足りねーよ。貴様を十回殺しても足りねーよ。ボケが」
「だったらオレの料理の腕を買ってくれ。頼む」
「貴様の腐った腕なんていらねーよ。殺しても良いがまだ利用価値が有るから殺すなって言われている。運が良かったな、元伯爵家料理長」
後ろに命令を出している敵がいるのか。厄介だな、どうしようか。とりあえずイーズ達を助けないといけないがオレ一人じゃ無理だよね。助けを呼んでくるまで無事でいろよ。窓から離れて伯爵家に居るクレイン様に伝えようと思ったが。
「オレ達のいう事を聞かなければ女がどうなっても良いのかな?」
「止めてくれ、何でもするから。エリーには手を出さないでくれ。お願いだ」
「た、助けて、イーズ」
「エリー」
急がないとエリーさんがヤバい事になるな。助けるしかないか。しかしどうやって助けるか。兎に角、隙を作らないと。となれば古典的な方法でやるか。
「可愛いねーちゃんだな。お前が命令を聞かないならこのねーちゃんで遊んでもいいんだぞ」
「分かった。だからエリーには手を……」
「だったらこの毒を使え」
そういってリーダー格の奴がイーズに小瓶を渡した。イーズは小瓶を握り締めてリーダー格の奴に言った。
「毒を料理に入れるからエリーを解放しろ」
「毒を入れたら解放をしてやるよ。それまではここでゆっくりしてもらう」
「こんにちはー、ご注文の品を届けに来ましたー」
いきなりの登場と大きい声でみんながこっちを見る。よし、最初の計画、みんなの意識を自分の方に向ける事。計画通りだ。次の計画を行くぞ。
「料理長。命令通りにギルドに行ってきましたよ」
「貴様、何故ここにいる」
「料理長が教えてくれたじゃないですか。この場所を」
「おい、どういう事だ」
「知らない。「料理長がギルドに行けって言っただろう」私は何もしていない」
部屋のみんなが料理長に目を向ける。計画その二、みんなの意識を他にそらす事。その隙に石礫をエリーさんの腕を握っている男に当てる。今回の石礫は石を回転させて速いタイプの石礫だ。男の腹に当たりぐふっと言って倒れる。その隙にオレはイーズとエリーさん手を握って外に出る。出たら家のドアを閉めて土壁で塞いだ。
「トルク、どうして此処に?」
「お前はエリーさんを連れてギルドか伯爵家に行け。そこで応援を呼ぶんだ。オレが囮になるから。エリーさんを頼むぞ」
「わ、分かった。急いで応援を呼ぶから」
あ、窓から男達が出て来たよ。出てきた奴に石礫を当てるが、今度は入り口の土壁をブチ破って来やがった。
「このクソガキが舐めた事しやがって」
だいぶ切れているな。イーズ達はっと、よしキチンと逃げているな。後はオレが逃げるだけだ。
「大丈夫だよ。もう少しでギルドの人達が来るから。大人しくしてた方がいいよ。今なら罪も軽いはずだ。キチンと罪を認めて改心すれば伯爵様も分かってくれるよ。ね、料理長」
「このガキが。よくもオレを嵌めてくれたな」
「嵌めたなんて人聞きの悪いよ、料理長。オレは料理長の命令を聞いただけだから」
「テメーのせいでオレは……」
料理長の話の途中で土壁で道を遮ってオレは全速力で逃げる。
「わっははは。さらばだー。この事は男爵様に伝えておくからなー」
「あのガキを捕まえろ。殺しても構わん」
よし、オレが目標になったな。イーズよ、頼むから早く応援を呼んでくれよ。
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