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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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14

「おいトルク、起きろ」


誰だよ、もう少し寝せてくれよ。


「こら、いい加減に起きろ」

「あと少し寝させて」


寝返りをうって丸くなる。久しぶりにゆっくりベットで寝れるんだから。


「起きろ」


頭に衝撃が走る。痛ってーな。なんだよ、睡眠妨害するなよ。誰が殴ったんだよ。目を開けて殴った相手を見る。レオナルド様か。ならいいや、もうひと眠りっと。


「起きないか、トルク」

「ただいま、外出中です。御用のある方は後日お越しください」


睡眠の邪魔をしないでくれよ、朝から色々あって疲れたんだから。手を掴まれて上半身を起こされる。痛いよレオナルド様。


「起きたか」

「……おはようございます。レオナルド様」

「もうすぐ昼だぞ。昼食の用意だ」

「……デカルさんに頼みます」

「ここは伯爵家で男爵家ではないぞ。まだ寝ぼけているのか?」

「……起きてます」

「ならいい加減にベッドから出ろ」

「……今日は……」


眠いから寝させて下さい。目をつぶって再度横になろうとするが、また頭に衝撃が走った。


「痛いです、レオナルド様」

「ようやく起きたか、顔を洗って昼食の準備だ」

「私は使用人であって料理人ではないですよ」

「サムディル様がお前の作った料理を気に入ってな。昼食も作ってくれと言っている。あと昼食はピザだろう」


そういえばレオナルド様に昼食はピザと言ったな。仕方がないから準備をするか。ベットから出て顔を洗って身だしなみを整える。頬を叩いて気合を入れる。よし、頑張ろう。


「それから休んでいた時間の給金は無しだ」


目から水が流れて気合を入れて叩いた頬を濡らした。



さてと、ピザのほかに何を作るかな。台所に向かいながら考える。考える、考える、思いつかない。ピザだけでいいか。後は他の人が考えるだろう。台所に着くと料理人達がいっせいにオレを見る。怖くなって後退り、帰りたくなったが副料理長がこっちに来た。


「トルク殿、今から昼食の準備だ。今度は何を作るんだい」


顔が笑っているが雰囲気が怖い。笑いながら言っているが言葉とは裏腹にすごい事を考えているだろう。きっと「邪魔だからどこかに行け」「料理の邪魔をするな」「新しい料理を教えたらお前は用無しだ」などかな。あれ、あの人はイーズの父親じゃないか?なんで伯爵家の台所に居る?


「とりあえずはレオナルド様のリクエストでピザを作ります。材料を取りに行ってきます」

「私も行こう。どんな材料がいるんだい?」

「チーズとトマトとハムと野菜です。そして小麦粉、卵、後は気分次第。それからなぜ私を取り囲んでいるんですか?」

「逃がさないためだよ。君が逃げたせいで私達は大変だったんだ」


……何があったんだろう?少し聞くのが怖い。そういえばどうしてイーズ父がいるんだ?


「どうして、イーズの父親がここに居るんですか?」

「彼は数年前まで伯爵家の料理人をしていてな。今日は応援として料理を手伝ってくれる」

「街の料理店はどうするんですか?」

「そんな事より昼食の用意だ。ほら行くぞ」


大人に囲まれてオレは食糧庫に向かう。食糧庫ではドアの修理をしている最中だ。流石は伯爵家、仕事が早いな。

オレ達はピザの材料を取って台所に戻り料理を開始する。料理~料理~。副料理長にピザの作り方を教える。

……ピザが出来上がったのでみんなで味見をする。相変わらず何か足りない。しかし周りは「うまい」「初めての味だ」「こんな料理初めてだ」と好評だ。オレの舌がおかしいのかな?


「何か足りないと思うけどみんなはどう?」

「……すまないが初めて食べた料理だ。欠点が分からない」

「そっか」


やはりオレには料理人は無理だな。とりあえず。男爵家や伯爵家のピザを作る。丁度、執事長が来たようだ。配膳は任せよう。そういえばオレは朝食を食べないで寝てたから、まだ今日はなにも食べてなかった。オレは料理の後片付けをして昼食の準備をしようとするが。


「トルク殿も一緒に配膳を頼むぞ」


オレがなにしたっちゅうねん。



執事長や使用人が食堂で配膳をして、伯爵夫婦と男爵家族が食事をする。他人が食べていると欲しくなる。腹減ったな。


「これがピザか、濃厚で旨いな」

「こんな美味しいのは初めてよ」

「うむ、相変わらず旨いな」

「美味しいわね」

「トルクお代わりだ」

「私もお代わり」

「僕もお代わり」


料理のお代わりはオレに言わないで執事長に言ってください。執事長が使用人に言って料理の追加を持ってこさせる。副料理長にピザの作り方は教えたし大丈夫だろう。しかし、えー匂いだな。腹減った。


「この調子なら今夜の夕食も楽しみだな」

「なんでもカラアゲって言う物でしょう。貴方達も食べたことない料理でしょう」

「確かに楽しみだな」

「どんな料理かしら」

「ハンバーグより美味いかな?」

「ハンバーグより美味しいかもしれない。トルクが今まで出し渋って作った事がない料理だから」

「どんな料理だろう」


……そういえば唐揚げを作ることを忘れていた。材料は有ったかな?副料理人に確認しないといけないな。それからそんなに期待しないでください。口に合わなかったらどうするんですか。

デザートの果物まで食べて、みなさん満足顔で昼食を終えたようだ。今は食後のお茶を飲んでいる。オレもいい加減に食事を食べたい。


「さて、トルク。今日は朝から料理を作ってもらって感謝している。料理長が逃げだして料理が作れないなんて我が家の恥になる所だった。お前のおかげで伯爵家の者が旨い料理を食べれたぞ」

「ありがとうございます。これも副料理長や伯爵家の料理人のみんなが手伝ってくれたおかげです」

「うむ、良くやった。褒美を考えないといけないな。クレインに褒美を渡しておくから後で受け取るがよい」


なんか面倒な事しているな。直接、伯爵様から渡せばいいのに。そうか、オレは男爵家の使用人だから、クレイン様から褒美を貰わないとダメなんだ。伯爵家から直接、男爵家の使用人に物を渡すなんて事をしたら男爵家が恥をかく事になるし受け取った本人も無礼になるからな。貴族ってメンドクサイ。


「それからクレインと話したが、伯爵家の料理人を男爵家に出すからそいつらに新しい料理を教えてくれ」

「分かりました」


料理を教えるのはデカルさんに任せよう。オレは料理の開発だな。この際、新しい料理道具も作ってもらおうかな。だし巻き卵用の四角いフライパンやフライ返し(ターナー)や蒸し器を作ってもらおうかな。さすがに圧力鍋は無理だろう。


「しかし、このような料理。どうやって作ったのだ?」

「頑張って作りました」

「・・・作るにはいろんな料理や食材を知っておかなければならぬ。どうして知ったのだ」


核心をついてきたな、伯爵様め。しかしこの対応策は出来ている。


「私が料理を作るきっかけになったのは辺境の村でした。母が倒れてしまって私が料理を作ったのです。最初は上手く出来ませんでした。お金もなく食材を買えなかったので私は森でいろんな食材を集めました。お腹が空いたので森で集めた食材を食べた時、腹痛と吐き気に襲われ私は倒れました。母を一人にする訳にはいかない。私は天に助けを祈りました。そうしたら何処からか声が聞こえたのです。「食べなさい、毒を出すのです。その味を知りなさい。それが生きる道に繋がるでしょう」と。声を聴いた私は吐き気に耐え、なんでも食べました。森に有る花や草、木・木の皮・根っこ・葉っぱや木の実・キノコを食べました。それ以外にも動物や鳥・蛇・トカゲ・虫・ミミズ・カエル・サウルを食べました。生で食べたり、火で炙ったり、茹でたり、煙で蒸したりして食べました。一番、美味しかったのは蛇の蒸し焼きでした、味付けに変な木の実を付けて食べたら天に昇るような味になりました。カエルの姿焼も不味くありません、形はグロデスクですが慣れたら可愛いものです。少し体が痺れて動かなくなりましたが美味しかったです。ミミズは生では食べない方が良いでしょう、お腹で動くような感覚がしましたが慣れると癖になります。トカゲは小さいのでいっぱい捕って食べました。尻尾が切れても再生するので良く捕まえては尻尾を取って火で炙ったものです。それから木の皮や木の根はあまり美味しくなかったです。苦さと堅さで食べるのに苦労しました。煮ても焼いても食べれません。それらを食べたら腹が痛くなって死ぬかと思いました。虫は生で食べたら死にそうだったので焼いたり湯がいたりしました。噛むと苦くてドロリとした液体が虫から出てきました。それから動物は・・・」


「もう説明せんでいい」


伯爵様の声が食堂に響く。食堂が静かだな。みんな引いてる、ドン引きだ。どの辺りでドン引きになったのかな?せっかく考え込んで仕入れたネタなのに、これ以上のネタが言えなかった。

伯爵様や男爵様はオレの見る目が変わったな。変人奇人を見た様な顔をしている。

女性陣や子供達はハンカチや手で口を押えて横を向いている。やっぱり気持ちが悪かったかな?

執事長や使用人もオレから離れて行く。クレイン様が呆れたように言った。


「それで、どうして料理が作れるようになったのだ?」

「実は変なキノコを食べたら幻覚が見えてしまって変な料理が目の前に現れました。食べようとしても触れないので私はこの幻覚に誓いました。「必ずこの料理を作って見せる」と。それが私の作った料理です」

「……要するに変なキノコの食べた幻覚がトルクの料理の基なのだな」

「そうです。味は解りませんが形とかは、ほとんど同じです」


オレは力説する。もう少しだな、説得?出来る。


「辺境の村では材料が無く作れませんでした。しかし私は諦めませんでした。材料が無いなら似たような材料で作ればいいと。私は森に入り材料を集めました。動物や鳥、蛇やトカゲの肉類。草や花、木の根や木の皮を元にした野菜類。味付けに虫を使用して……」

「説明するな」


今度は怒られた。そうだよね、オレの作った料理がゲテモノから開発されたと聞いたら引くよね。


「お前の料理には変な物は入っていないだろうな」

「勿論です。変な料理は他人には作りません。キチンとした食材で作っています」


伯爵様やクレイン様が執事長を見る。


「私も作り始める所から立ち会いましたが。食在庫の中の物しか使っていません」

「食材が無かったので仕方なく他の材料で作ったのです。私はまずい食材より美味しい食材で料理を作りますよ」

「……分かった」


良し、信じてくれたぞ。流石に前世で覚えましたとかは言えないからな。


「では夕食も頼むぞ」

「わかりました。頑張ります」

「トルクは昼食がまだだろう。食事を取っても良いぞ」


昼食が終わってオレはようやく食事にありつける。オレは急いで使用人用の食堂に向かうが。


「後片付けがまだだ。手伝ってくれ」


オレのメシ~。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[気になる点] 「後片付けがまだだ。手伝ってくれ」 オレのメシ~。 料理人は、後片付けしてから食事するの。二度手間のような気がするよ。
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