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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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三章の男爵家使用人編を伯爵家滞在編に変更しました。

オレはイーズを連れて料理を作るべく行動をする事にした。

あの料理長に目にモノ見せる為に絶対に料理をしてやる。まずは材料の調達だ。


「おい、イーズ。まずは材料の調達をするが金はあるか?」

「え、お金?僕は見習いだよ。お金なんて持ってないよ」


ち、使えねえ奴だ。しかしまずは材料を買うお金がないとは困ったな。いきなり躓いたぞ。


「おや、トルク。どうしたんだ、顔から……」


レオナルド様だ。丁度いい。


「お願いがあります。お金を貸してください」

「は?」

「お金を貸してください」


オレはレオナルド様に近づき金を催促する。


「待て、どうしたんだ一体?」

「お願いします、お金を貸してください」

「分かったから近づくな、いくらだ?」


オレはイーズを見る。


「銀貨一枚くらいでいいと思うよ」

「銀貨二枚で」

「分かったから、銀貨二枚だな」


懐から銀貨を出すレオナルド様。よし二枚受け取ったぞ。


「ありがとうございます。よし、行くぞイーズ。食料店に案内しろ」


イーズを掴んで屋敷を出る。街に出て食料店に行こうとするが。


「なあ、イーズ。食材が売っている所は何処だ?」

「はぁー、こっちだよ」

「よし、急げよ」

「ねえ、僕の方が年上なんだから言葉使いを変えないか?」

「なんでだよ、クレイン様を馬鹿にした奴が何言っている?」

「いや、そうだけどさ。でもね」

「やかましい奴だな。良いじゃないか、下っ端だろうお前は」

「だからさ、ねえ」

「急ぐぞ、伯爵家の夕食まで時間がないだろう」

「あーもう、僕は何しているんだろう。それから顔についている血を拭いた方がいいんじゃない」


そういえば料理長に殴られて顔から血が出ているのを忘れてた。道理でレオナルド様が引いてたわけだ。



「ここが食料店だよ。ここなら食材もそろうだろう」

「よし、まずは肉を買ってこよう。どっちだ?」

「あっちだよ」


オレ達は食材を買い回った。しかし此処は本当に色々あるな。まるで前世のスーパーの様だ。


「えーと、肉よし、塩よし、パンよし、小麦粉よし、卵よし、バターよし、チーズよし。えーと後は野菜っと」

「ねえ、材料を買ってもどこで料理をするんだい?」

「お前の家で料理をするぞ。実家は料理店なんだろう。まずはそこで下ごしらえをしてから屋敷で仕上げる予定だ」

「え、僕の家で料理をするの?」

「仕方ないだろう、あの小屋にはフライパンと椅子しかなかったぞ」

「いやでもね、いきなりは難しいかもしれないよ」

「安心しろよ、厨房の隅を使わせてもらうから」

「この時間は仕込みの最中だから使う事は出来るけど、許可が下りるかどうか」

「大丈夫だよ、まだお金が残っているからこの金で厨房を借りる」

「確かに銀貨一枚は残っているけど」

「問題ない、大丈夫だ。オレ達には失敗は許されないんだからな」

「オレ達って僕を巻き込まないでくれよ。僕は関係ないよ」

「細かい事はいいんだよ。さあ行くぞ」

「あーもう、どうしてこいつに出会ったんだよ」

「叫んでないで行くぞ。お前の案内が必要なんだからな」


オレはイーズの案内でイーズの親がやっている料理店に着いた。デカい店って言っていたがデカいのかな?基準が分からない。


「ただいま」

「お邪魔します」


オレ達は挨拶をして店の中に入るが、店の中は誰もいない。


「今は仕込み中だから客は誰もいないんだよ」


そうなんだ、店の中は結構広いな。あ、奥から誰かが来た。


「すみません、今は仕込み中でして。あらイーズじゃないの。今日はどうしたの?」

「あー、ただいま母さん。ごめんだけど厨房を貸してもらえないかな」


イーズの母親か。仕込み中にすみませんね。


「父さんに聞いてみないと分からないから聞いてみるわ」

「頼むよ」


イーズの母親は奥に戻った。それから二人で少し待つ。


「いきなり帰ってきてどうした、イーズ。伯爵家の仕事はどうしたんだ?」


おっとお父さん登場ですか?オレは前に出てイーズの父親に挨拶をする。


「急な訪問、誠に申し訳ございません。私はウィール男爵家使用人のトルクと申します。私がこの街の土地勘に不慣れですのでイーズ殿に案内をしてもらっていました。諸般の事情からただいま食材を買ってきており、此処で下ごしらえをさせていただきたくお伺いしました」

「料理の下ごしらえ?」

「はい、少し大変な作業ですので厨房の片隅を貸していただければ幸いです」

「それは構わないが、伯爵家の方が設備など整っているはずだ」

「伯爵家の厨房では出来ない作業です。秘密の料理法を教える訳にはいきませんので」

「しかし、オレが見るかもしれないぞ。いいのか?」

「イーズ殿の親なら問題ありません。今回、彼にはいろいろ助けて頂いたので」

「そうか、ではオレにも手伝わせてくれ。これでも料理人の端くれだ。新しい料理法と聞いたらオレも見てみたい」

「よろしくお願いします」

オレはイーズ父に礼を言って父親と一緒に厨房に向かった。

「……あいつ、誰?」


イーズの言葉は無視して。

オレの変わり身についていけなかったようだ。オレだって礼儀くらいは弁えているぞ。全く。



厨房でイーズ父とハンバーグを作る準備をしている。

まずは買ってきた肉を細切れにする。玉ねぎをみじん切りにしてパンを粉にしてパン粉でつないで塩で味付けをして肉を丸めて空気を抜く作業をする。


「なるほど肉を細切れにして丸めるのか。確かに新しい料理法だ」

「少し焼いてみましょうか。完成品を食べてみてください」


フライパンに油を引いて焼いてみる。……よし完成。


「どうぞ、召し上がってください」

「これは、なんて旨さだ。肉が柔らかくて噛めば噛むほど肉汁が出る。初めて食べたぞ」


よし、好評だな。やはりこの世界にはハンバーグは無かったようだ。


「そんなに美味しいの?」

「お前も食べてみろ。これはすごいぞ」


イーズ母も食べてみる。口に入れた後に目を大きく開いて驚いた。


「なんて、美味しさなの。こんなの初めて食べたわ」

「僕も一口」


イーズも食べた後に言った。


「なんて美味しいんだ。こんな変な子が作った料理が美味しいなんて。世の中、間違っているよ」


おい、ちょっと待て。


「伯爵家の料理長を殺そうと考えるし、僕も首を絞められて殺されかけた奴が作った料理なんてまずいと決めつけてしまった。確かにこの子は僕を脅迫したり、危害を加えようとしたりしているから料理なんて無理だと思っていたけど、なんてすごい料理を作るんだ」


マジでへこんでいるな。そんなにオレが料理を作るのが間違っているのか。確かに脅したり殺意が沸いて殺しかけたけど未遂だろ。


「僕の方が年上なのに使用人か召使と勘違いをしている子供がこんな料理を作るなんて、わがままで嘘つきで自分勝手だし、料理長にケンカを売ってる馬鹿だし、身分を知らないアホだと思っていた子がこんな料理を作るなんて」


……そこまで言わなくてもいいんじゃないか。親がオレを見る目が変わってきているよ。


「……お宅のお子さんは被害妄想がすごいですね」

「……母親に似て繊細なんだ」

「ごめんなさいね、でも昔から出来る子なのよ。今回もきっと立ち直るわ」


親と子供に同情されるイーズ君。本気でへこんでいるな。


「おーいイーズ、そろそろ伯爵家に戻ろうと思うがいいか?」


後は焼くだけにしておいたハンバーグを持ってイーズに言う。キチンと皿の上にボールで蓋をして帰る準備は万端。後はイーズが立ち直るのを待つだけだ。


「……戻ろうか」


やっと立ち直ったか。後片付けが終わってようやくイーズが喋ったよ。まだ引きずっているが。

「もうすぐ伯爵家の夕食の時間だし」

「なんだって。帰って仕上げる時間は有るのか?」

「……ぎりぎりだと思うよ」

「急いで帰るぞ。申し訳ないがお礼は後日改めて伺います。では失礼します。あ、これは台所の使用料です」


銀貨をテーブルに置いてイーズを引っ張って走って伯爵家に帰る。


「急げ、イーズ。このままじゃオレ達二人とも縛り首だぞ」

「分かったから引っ張るな」


オレ達は全速力で伯爵家に向かった。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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