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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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「ハンバーグ♪ハンバーグ♪今日の食事はハンバーグ♪」


エイルド様とドイル様の歌声が馬車に響く。エイルド様だけではなくドイル様もハンバーグを希望ですか。

クレイン様は


「まあ、今日はエイルドのランクアップのお祝いだ。頼むぞトルク」


との事なのでオレはハンバーグが主の献立を考える。今回は何がいいかな。

色々考えていると伯爵家に着いたので、オレはエイルド様の料理を作るべく、クレイン様に聞いてみた。


「料理を作る許可を得たいのですが、誰に言ったらいいですか?」

「そうだな、執事長に聞いてみよう。トルク、一緒に来い」

「わかりました」


オレはクレイン様の後を追う。


「トルク、ハンバーグは大盛りでな」

「僕も大盛り」


後ろから掛けられるエイルド様とドイル様の言葉を聞きながら、振り向いて親指を立てる。そしてクレイン様と一緒に屋敷に向かった。玄関に入ると老人が挨拶をしてきた。


「お帰りなさいませ、ギルドは如何でしたか」

「執事長、何も問題なかった。馬車を手配してくれて感謝する」


この人が執事長か。結構、年取っているな。白髪のオールバックでビジっとしてなんかかっこいい。将来はこんな老人になりたいものだ。


「頼みがあるのだがいいか」

「何でしょうか」

「この子に今日の夕食を作ってもらいたいから手配を頼む」

「食事をこの子がですか?」

「男爵家でも作っている。エイルドに祝いの食事を作ってもらう事になった」

「わかりました。料理長に相談をしましょう」

「頼んだぞ。ではトルク、後の事は執事長に聞いてくれ」


クレイン様はオレの返事を待たずして他の場所に移動した。いままで空気だったオレは執事長に挨拶をする。


「トルクです。よろしくお願いします」


執事長はオレを見て考え込んでいる。何かあるのかな?


「まあいいでしょう。ではトルク、厨房に行きますのでついてきてください」


執事長はスタスタと移動する。オレも急ぎ足で執事長についていった。

台所は玄関の反対側にあり裏口の近くにある。オレは執事長の案内で台所に着いた。執事長は台所で働いている人に言った。


「料理長を呼んでください」


しばらくしたら。中年の男が向かってきた。


「なんの用だ。仕込みの最中だぞ」

「料理長、すいませんがこの子に夕食の料理をさせてください。ウィール男爵様の頼みです」

「あぁ~?何を言っていやがる。ガキが料理を出来る訳ないだろう。第一、オレがそんな事を許すと思っているのか」

「これは男爵様の御願いです」

「やかましい、使用人が料理人の縄張りに入ってくるな」

「ですが、これは貴族のご命令です」

「ここは料理をする料理人の場所だ、ガキの遊び場所ではない。」

「この子は男爵家で料理をしているそうです」

「たかが男爵家がなんだ。オレは伯爵家で料理を振舞っているんだぞ」


なんだかあまり歓迎されていない様だ。


「……くそったれめ」

「ではお願いします」


そう言って執事長は厨房から出て行った。この後は何もないの?大丈夫なのか、歓迎されていないぞ。本当に料理は出来るのか?


「おい、ガキ。こっちだ」


裏口から外に出た。外の古びた小屋に案内されたよ。


「お前は此処で勝手にしろ。あとオレの視界に入るな」

「すいませんが材料は何処にありますか?」

「黙れ、オレは忙しいんだ。イーズ」

「は、はい、料理長」


十代前半の男が料理長に近づいてくる。


「このガキの面倒はお前が見ろ」

「は、はい」


そう言って料理長は厨房に戻った。オレは古びた小屋を見るがこれは酷い。こんな所では料理は出来ないぞ。埃だらけで料理器具が全く無い。


「君は何をしたんだ。料理長があそこまで怒るなんて」

「知らないよ、オレは此処に料理をしに来たんだが、どうも歓迎されていない様だ」


小屋を見ながら返事をする。かまどは使えるかな?


「あたりまえだろう。君みたいなよそ者が料理をするなんて聞いたことない」

「仕方がないだろう。クレイン様の頼みだ」


かまどはダメか。包丁も無い。薪も無い。あ、フライパンは有る。


「料理人の縄張りにはふつう貴族も使用人も入ってこれない。これは常識だよ」

「貴族の命令もダメなのか」


皿も無いな。ナイフもフォークも無い。ここで料理は無理じゃね。


「確かに貴族の命令は絶対だけど、普通の貴族は厨房には入ってこない。料理人は貴族の希望通りに料理を作るだけだ。君は料理を作るって言っているが無理だ。伯爵家の料理人はよそ者には厨房は使わせないよ」


段々うるさくなってきたな。こっちは色々と考えているのに。


「子供の遊び場では無いんだ。料理人見習いのオレもまだ料理もした事ないのに、君みたいな子供に何が出来るんだよ」

「とりあえずは食材を見に行くか。なあ食材は何処にあるんだ?」

「話を聞いていないのか?君みたいな子供には無理だよ。食材は料理長の管轄だ。料理長の許可が無いと食糧庫は見れないよ」


こいつうるさいな。オレだって好きで料理をしている訳ではないぞ。貴族の命令だからだぞ。


「とりあえず、料理長に許可を得るか」

「だから無理だよ」


オレは見習いの言葉を無視して、料理長に会うべく厨房に向かった。


「料理長、食材を見せて下さい」


いきなり顔に衝撃が走る。料理長に殴られた。倒れて殴られた所を確認したらまだ治っていないところの傷だよ。少し血が出てきた。


「オレの視界に入るなって言っただろう。イーズも真面目に面倒みろ」


あ、イーズも殴られた。


「ここはガキの遊び場じゃない。ガキが料理なんて出来るか。今度来たらぶっ殺すぞ」


掴まれて裏口から放り出された。痛みで体が痛いから回復魔法を掛ける。くそったれめ。


「もう諦めたら。僕もこれ以上、殴られるのは嫌だよ」


イーズも頬を殴られたようで、頬を触りながら言った。


「ここは伯爵家だよ。格下の男爵家とは違うんだ。料理人も偉いんだよ。たかが男爵家の当主の命令よりも伯爵家の安全が大事だよ。君が作った料理で体を壊したら料理長の責任だよ。たかが男爵家使用人が伯爵家の料理長に逆らうのは馬鹿だろう」


ぶっちーーん、堪忍袋の緒が切れた。ああ、この感覚は久しぶりだ。前世で切れた時と同じ感覚だ。今世では初めてだが。


「たかが男爵家使用人だ? 伯爵家の料理人がそんなに偉いのか。ボケが、絞めてやる」

「ち、ちょ、ちょっと待て、何をする気だ」

「ぶち殺すだけだ」

「待て、待て。殺すな。料理長だぞ」


イーズがオレの右腕を掴んで必死で止める。止めるな殺せない。


「だから何だ、同じ人間だぞ」

「だから殺すな、殺すなら料理で殺せ」


なにそれ、料理人対決?オレは料理人ではないよ。ただのガキだよ。


「安心しろ、フランパンで殴り、包丁で首を切って血抜きをしてから細かく切り刻んでかまどで焼くだけだ。料理で殺せるぞ」

「それは料理で殺すじゃなくて料理道具で殺すだ。頼むから殺すな」


マジでうるさいなこいつは。料理長はクレイン様を馬鹿にしたんだぞ。オレも殴られたし、殺してもいいだろう。

あ、クレイン様を馬鹿にしたのはこいつだった。


「お前もクレイン様を馬鹿にしたよね。死んでも良いよね」

「待て待て、オレは男爵様を馬鹿にしていない。頼むからその目を止めてくれ」


目がなんだ?オレの目は遠くも見える良い目だぞ。


「お前はうるさい。死ねよ」

「待ってくれ、許してくれ。なんでもするから」

「たかが料理人見習い程度が何を言うか」

「確かに料理人見習いだけど、僕はこの街のデカい料理店の息子だぞ。結構偉いんだぞ」

「だから何だよ、死んでいく人間には関係ないよ」


待てよ、デカい料理店?ニヤリ。


「おい、イーズ。なんでもするんだよな。だったらオレの手伝いをしろ」

「分かったから首から手を放してくれ」


あ、無意識に首を掴んでた。メンゴメンゴ。イーズもいい加減に包丁を持っているオレの右腕を放してくれ。しかしいつの間に包丁なんて持っていたんだろう?

よし、あの料理長に目にモノ見せてやるぞ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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