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精霊の友として  作者: 北杜
三章 伯爵家滞在編
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少し暗い話になります。

 私が辺境の村で暮らしていた、十五歳の時でした。

 村での暮らしは大変でしたが、父親と母親、次男と次女と私で暮らしていました。長男は徴兵されて戦争で亡くなり、私達は悲しみましたが税を納めるために毎日一生懸命働きました。この村で魔法を使えるのは亡き祖父から教えてもらった私だけでした。魔法を使って少しでも村の生活を良くしようと頑張っていましたが、その事を噂で聞いた貴族、アイローン伯爵とヴォルグ男爵が帝国との戦争から帰る最中に村に来ました。

 そして、私に目を付けたのです。私は伯爵と男爵に誘拐同然に連れて行かれました。


「ここは私の領地内だ。貴様が来なかったらこの村を滅ぼすことも出来るし、税を重くしてやるぞ。おとなしくしろ」


 貴族に言われたら私は何も出来ませんでした。私は家族の為、村の為に貴族の命令を聞きました。

 その後、ヴォルグ男爵が父に、村長に言った言葉は忘れません。


「娘を差し出さなければこの村を蹂躙し滅ぼすぞ」

「今だったら、帝国兵がこの村を滅ぼした事にできる、兵達も良い遊びになるだろう」

「この村にこの娘の居場所は無い。娘の心配はするな、こいつは貴族の女になるのだからな。こんな村よりもいい暮らしが出来るぞ」


 私は何も出来ません。村の為、家族の為に貴族に反抗をしない事にしました。

 ヴォルグ男爵領に着いたときに私は男爵の養女になりました。平民では側室に出来ないからとの事です。男爵からは「奴隷にすれば良いと思ったが伯爵様が側室にした方が面白いだろうと。

 ただの平民が苦労して男爵の養女になり伯爵様のモノになるのだ。物語が出来そうだな」と言って笑っていました。私は貴族の遊びで平民から男爵の養女となりました。

 その後、私は男爵家で貴族の教育を受けました。学問、マナー、ダンス、教養などを学びました。男爵からは「成績が悪ければ村に良くない事があるかもな」と言われているので必死に覚えました。必死で覚えた結果、一年位で貴族の教育を終えて私は伯爵領に行きました。その後、私は伯爵の側室になりました。

 それからトルクが生まれましたが、正室の方には子供が生まれていなかったことから、正室から嫌がらせを受けて私とトルクは家の離れに住むようになりました。離れに住むようになって正室の嫌がらせが少なくなり、侍女と友となり仲良くなりました。

 トルクが一歳になった頃、伯爵と正室と一緒に王都に行く事になりました。私を連れて行く理由はわかりませんが多分、嫌がらせだと思います。

 トルクと友人の侍女と王都に行く途中で川の氾濫に遭って足止めを食らっていた時でした。正室に呼ばれて行ってみると、正室の侍女の人に氾濫している川に突き落とされてしまい、溺れながら必死で水魔法を使い抵抗をしました。

 その時に私は水魔法上級の使い手となり、結果的に川の氾濫を治めて、見ていた周りの人から「水の聖女」と言われるようになりました。

 私を突き落とした正室の侍女は行方不明になり、私は水の聖女、アイローン伯爵第二夫人として王都で名が広まりました。ただの側室よりも第二夫人の方が良かったのでしょう。その時の伯爵が言った言葉を覚えています。


「ただの平民が水の聖女と言われるようになり、王都でも名前が広がったのは私がお前を拾ったからだ。感謝しろよ。これでトルクも利用価値が上がるな。次は娘を産めば政略結婚ができる」


 続いてトルクの妹のレイファが生まれ、伯爵領では銀山が発掘されたり融資が上手くいったり良い事が続きましたが、正室の嫌がらせも更に続きました。料理の質が下がったり、家の玄関口に動物の死骸が置いていたり、物が無くなったり、ほか色々。良く思いつくものです。私が水の聖女として王都の水害を抑えているので正室も表立っての行動は出来ないようですが、トルクやレイファに関してはその限りではありません。誘拐未遂が四回、毒殺未遂が八回、殺人未遂が二回と二人とも良く生きていました。何かあるとトルクとレイファが泣き叫んでその都度、危険から遠ざかったのです。二人のお陰で私も侍女も助かった事もあります。二人には何か特別な力があったのでしょう。私がトルクの世話を、侍女がレイファの世話をする事が多くなり、私達は子供達から目を離さないようにしました。この子達と一緒に居ると悪意が遠ざかるような感じがしたのです。

 それから、トルクが五歳、レイファが四歳になった頃に、伯爵領で水害があったのですが、正室が雇った魔法使いが水害を治めました。正室も水魔法が使え現在は上級の使い手になったらしいです。その後に正室が妊娠をしたと聞きました。その頃から正室の嫌がらせは無くなりました。

 しかし、今度はトルクの父親、当主から嫌がらせが始まりました。正室が妊娠したのでトルクが邪魔だと思ったのでしょう。

 その後、正室が男の子を産みました。跡取りです。

 正室に跡取りが出来た事で私とトルクは伯爵家を追い出されました。レイファは政略結婚の為に家に置いておくそうです。

その後、ヴォルグ男爵からは養女から平民に戻されて。


「伯爵家での生活は良かっただろう。聖女とも言われて楽しかっただろう。だが今はただの平民だ。本来はお前を殺しておいた方が良いのだが、上級の水魔法の使い手だ。平民の生死はどうでも良いと伯爵様は言っておいでだが、お前は死んだという事にする。」


 男爵が剣を抜いて、私に剣先を向けながら、ニヤリと笑って、言いました。


「生きたいか、死ぬかはお前次第だ」


 いやらしい顔で笑いながら言います。私は後の事が分かりました。近くにトルクも使用人もいません。トルクは人質として他の所にいるのでしょう。

 その後、私は平民に戻されました。勝手に貴族にして勝手に平民に戻され、体を汚されて、世間には死んだという事になったようです。


「アイローン伯爵夫人からお前を殺せと言われていたが、お前は生まれた村で隠れて暮らせ。帰っても村での生活は苦労するだろう。他の領地に行くことは許さん。お前のせいで生まれた村が無くなるなんて嫌だろう」


 ヴォルグ男爵はニヤニヤ笑っていました。私はレイファを伯爵家に置き去りにして辺境の村へ帰りました。私が村に帰らなければヴォルグ男爵は村を滅ぼすでしょう。アイローン伯爵は娘のレイファに酷い事をするかもしれない。娘の事は友人の侍女に任せて私とトルクは辺境の村に帰りましたが、男爵の命令が村に届いているようで村でも居場所が無く体調を崩して寝込んでしまいました。トルクのお陰で何とか無事に生き長らえていました。

 

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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