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「トルク、無事に目覚めたんだね。怪我は大丈夫?」
「体の調子はどう?トルク」
ドイル様とアンジェ様が見舞いに来てくれた。
「ドイル様も無事でなによりです。アンジェ様にもご心配をかけました」
アンジェ様にはマジで心配かけたからな。ドイル様が人質になったり川に落ちたりしたからな。マジで申し訳ない。
「トルク、ドイルを助けてくれて本当にありがとう。二人とも無事でなによりだわ」
「トルク、助けてくれてありがとう。トルクが居なければ死んでいたかもしれない」
「私も最後にはクレイン様に助けられました。クレイン様が間に合わなければ私は賊に殺されていました。」
「そんな事はないよ。トルクは僕を助けてくれたじゃないか」
「私がもう少し強ければ賊を倒せたのに。ドイル様にはご迷惑をお掛けしました」
「僕が弱かったからだよ。僕がもう少し強ければトルクを助けられたのに」
……あれ?ドイル様が少し変な方向に向かっていないか?
「僕も勉強は魔法や武術の鍛錬をする事にしたんだ。強くなって次はトルクを助けるんだ。それから日頃の行いにも気を付けるし。いっぱい勉強をして強くなるよ」
……上の兄姉の悪い事の真似をしなければいいけど。
「訓練をして、僕は強くなるよ。今度はトルクを守ってあげる」
……年下に守られるのは勘弁です。年上の尊厳が無くなります。
「なんにせよ、無事でよかったわ。怪我の具合はどう?」
「背中と腹と顔が痛いです。賊の奴に結構、殴られたので」
「貴方達が馬車に戻ったときは酷い傷だったわ。顔は血塗れ、体には擦り傷や打撲、骨にも異常が有ったかもしれない。応急処置をして急いで私の実家に馬車を飛ばして、怪我の治療をしたのよ。治療をしていた医師からは「運が悪ければ今日の夜には亡くなります」と言われて。ポアラやマリーちゃんが泣いていたわ。」
そこまでヤバかったのか、オレの怪我の状態は。
「伯爵家には回復魔法の使い手はいないし、もう他に出来る事は何もなかった。貴方の母親のリリアさんが貴方の手を取って一晩中呼びかけていたわ。朝を迎えて医師から「峠は越えました」と聞いたときには、今度はリリアさんが気を失って大変だったのよ」
母親にマジで感謝アンド心配かけてごめんなさい。
「今度はポアラとマリーちゃんがトルクとリリアさんの世話をしてね。二人とも一生懸命に看病をしていたわ。後からエイルドとドイルも看病に参加していたけど、エイルドは頭を殴って起こそうとするから立ち入り禁止にして、ドイルは貴方の手を握って呼びかけていたわ」
さすがエイルド様、怪我人に鞭打つとは相変わらず脳筋ですね。ドイル様も見舞いに来てくれて感謝します。
「本当にありがとうございます。私なんかの為にこれ程の事を」
「貴方はそれほどの事をしたのよ。私たちの命の恩人よ」
「そう言ってもらえると幸いです」
ガンと音とともにいきなりドアが開いた。
「トルク!無事か?怪我は大丈夫か?」
「トルク、起きた?」
エイルド様とポアラ様が部屋に入って来た。
「エイルド、ポアラ。ドアをノックして入ってきなさい。貴族としてあるまじき行為よ」
「すみません、母上。トルク無事みたいだな。心配したぞ」
「心配した、怪我は大丈夫?」
ベッドに近づいて怪我の様子を聞いてくる。本当に二人にも心配をかけたな。
「大丈夫ですよ。心配をかけました」
「全く、オレの舎弟に怪我をさせてタダでは済まさないぞ」
「違う、私の使用人」
「違うぞ、オレのだ」
「私の物」
……最後は物扱いかよ。あれドイル様も何か言いたそう。
「違うよ、トルクは僕の将来の右腕だよ。その為に僕は男爵を継ぐんだよ」
ドイル様について行った方が出世できそうな気がする。
あれ?ドイル様が男爵家を継ぐって言っているぞ。後継者問題が発生していないか?大丈夫なのか?
三人が言い争っているけど、アンジェ様はニコニコしながら三人の話を聞いている。「止めて下さい」と小声で言うがアンジェ様はニッコリ笑って断った。病人の部屋で騒ぐのは貴族としてあるまじき行為ではないのか?
困ったな、三人の話に参加するならこちらに矛先が向くだろうな。参加しなくてもそろそろオレに話が向くだろう。
「トルクの考えはどうだ」
エイルド様の質問がついに来た。どうしようか考えていると、母親とマリーが入って来た。ナイスタイミング。
「食事を持ってきたわよ」
「お兄ちゃん、私が食べさせてあげる」
「ありがとう、母さん。食事は自分で食べられるよ、マリー」
なんとか話がそれたようだ。食事は体に優しいスープにようだ。皿を受け取りゆっくりと食べる。
食事を食べ終えたら、中年の男性が部屋に入って来た。母親に聞いたらオレの体を見てくれた医師だと教えてくれた。
男爵家族は全員、部屋から出たが母親とマリーは包帯を替えて医師の手伝いをする。
「うん、顔以外の怪我は良くなったようだね。さすがに若いと回復が早い様だな」
……少しばかり回復をしすぎたかな。
診断後、医師が顔に変な匂いのするドロドロ液体を塗って包帯を巻く。臭い、とても臭い。
「どうもありがとうございます。お陰で助かりました」
「いやいや、私は医師としての仕事をしただけだよ。君の母親の愛情のお陰で良くなったんだ。明日また来るから、まだ安静にしておいてくれ」
「ありがとうございます」
医師は部屋から出て行き、部屋に居るのはオレと母親とマリーだけ。
「貴方も少し寝なさい。疲れたでしょう」
母親が休息を勧める。起きてからいろんな事が起こったからな。賊と戦ってその後の事、母親やマリーの事、男爵家の事。色々と話を聞いて少し疲れた様だ。言葉に甘えて寝る事にしよう。
「そうだね、少し休みます」
「お兄ちゃん、私も叔母様もこの部屋で寝泊まりしているから心配いらないよ。お休み、お兄ちゃん」
……村にいたときよりもマリーが明るい性格になったようだ。そんな事を考えていたら疲れていたのか直ぐに眠りについた。
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