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男爵家から出発をして三日目、あと一日でアンジェ様の実家である伯爵家に着く予定だ。この先の大きな川を渡ったら領内に着く。先日の雨で水量が増えて流れも速い。落ちたらヤバいかな。
濁流が流れる上に架かっている橋を渡ろうとすると後ろから声が聞こえた。
「盗賊が来たぞ、急いで橋を渡るんだ、急げ」
一人の旅人風の男が後ろから走ってくる。クレイン様も兵隊さんも後ろの方を見る。五人位の厳つい顔の男たちが後ろから走ってくる。
「先に馬車を橋の向こう側に行かせろ、兵の半分は此処で賊を倒すぞ。残りの兵は馬車と一緒に先に行け」
三台の馬車が橋を渡る、オレも一緒に橋を渡った。馬車が渡り終えたら旅人風の男がいきなり橋の出口を土の中級魔法で土の壁を作って出口をふさいだ。
「これで男爵様はこっち側には簡単に来れなくなったな。テメエらとっとと片付けるぞ」
隠れていた賊が二十人くらい出てきた。こっちは兵隊さんが十人くらいとおまけのオレ。クレイン様は橋の入り口の方。ヤバい!メッチャヤバい。兵隊さんは馬車を守るべく陣形をとっている。賊がこちらに向かってくるので急いで対応をしなければ。まずは男爵がこちらに来れるようにするために土の壁を壊す事からはじめるが土魔法を使った賊は土壁の前にいる。先にこいつを叩くべくオレは賊に見つからないように魔法を使う。
オレの考えた土魔法、頭上からタライではなく土魔法で作った丸椅子落とし。
魔法を使っていた賊の頭にドンと音を立てて落として賊は気絶した。オレは急いで土壁の所に行って壁を壊す。壊し方は相手の魔力で出来た土魔法をオレの魔力で上書きをして土の壁を壊す方法をとる。土壁を壊したらクレイン様と兵隊さんの一部がこっちに来てくれた。これで何とか助かったな。
すごい勢いでクレイン様が次々と賊を倒してしまう。半分くらい倒してしまってクレイン様は賊たちに言った。
「降伏をしろ、命だけは助けてやる」
良かった、これで命のやり取りは終わった。ほっと一息をつこうとするが安心をしたのも束の間。賊の一人が男爵家族の馬車に乗り込んでドイル様を人質にした。あの賊は最初の旅人風の男だ。オレが魔法で気絶させた奴だったが意識が回復したようだ。ヤバいオレの責任だ。
「動くな!このガキを助けたかったらまずは武器を捨てて仲間を解放してもらおうか」
ナイフをドイル様に近づけてクレイン様や兵隊さんを脅す。クレイン様は悔しそうな顔で賊を睨んでいるが兵隊さんに賊の解放を命令した。
オレは隠れながら人質を持っている賊に近づく。こういう状況では小さい事が便利だな。次にドイル様をどうやって助けるかが問題だ。オレの装備は旅の服。素手で大人からドイル様を助けないといけない。
オレは賊の隙を窺う。男爵様が武器を地面に落とした瞬間に人質を持った賊の両足に一つずつ幅の小さい落とし穴とその間に土壁を作成。すると男が足だけ落とし穴に落ち土壁が急所を直撃する罠の出来上がり。三つ同時の魔法を初めて使ったが上手くいった。
賊はナイフを落として股間に手をやる。その隙に反対側の手、ドイル様を捕まえている手に飛びつき手に噛みついた。痛みで賊はドイル様を放してオレはドイル様の手を取って男爵様の所に行こうとするが。
「このクソガキが」
といってオレを男爵様の反対側、川の方に殴り飛ばした。手を掴んだドイル様と一緒に。
ドブンとドイル様と一緒に川に落ちてしまった。泳ぎの知識は前世ではあるが今世ではまだ泳いだことは無い。それも服を着ていて泳げないドイル様と一緒だ。川の流れは昨日の雨で激しく泳ぐことが出来ない。息苦しくなり何とか空気を求めるが服とドイル様がいるので上手く泳げない。苦しくなり意識を失いかけた時、声が聞こえた。
「あらら、この子達は溺れているのかしら?」
水の中で女性の声が聞こえる。苦しくなって幻聴かよ。そう思っているなら助けてくれ。
「いいわよ」
オレとドイル様に空気の膜が出来た。一瞬で膜が出来、空気が有る。体が酸素を欲しがりゼイゼイと呼吸をする。意識がしっかりしてきて水の中なのに空気の膜に包まれ呼吸が出来る。川の底を流れる幻想的な景色の美しさに見惚れた。
「これは一体何なんだよ」
あり得ない景色を見ながら疑問を口にする。
「貴方達が溺れていたから助けたけど大丈夫かしら」
また女性の声が聞こえる。周りを見ているが誰もいない。ドイル様は気絶しているみたいだ。
「あら?私の姿は見えないのかしら」
「申し訳ないが声は聞こえるが姿は見えない。助けてくれてありがとう」
「体は大丈夫?怪我はない?」
「殴られた所以外は大丈夫だ。ところであなたは誰ですか?」
「私はこの辺りにいる精霊よ」
……精霊。くま〇ん三兄弟が確か精霊とか言っていたっけ。名前は確か其の一、其の二、其の三。
前に見た精霊は姿が見えたが、今回は見えず声だけが聞こえる。くま〇ん三兄弟の事を思い出していると。
「どうしたの?考え込んで?」
「ごめん、昔に精霊を見た事があるが、今回は声しか聞こえなかったから不思議に思ったんだよ。改めて礼を言うよ。ドイル様と一緒に助けてくれてありがとう」
「いいのよ、お友達を助けるのは当たり前でしょう」
「お友達?」
「精霊のお友達でしょう。友達の印が付いているわ。友達の友達だからね」
「友達の印ってなに?初めて聞いたよ、その印の事」
「精霊と友人になった証として印を付けるのよ。自分たちの友達だという印をね」
そうか、三兄弟はオレを友達と認めてくれたのか。三兄弟を思い感動をする。ありがとうくま〇ん三兄弟。
「しかし変な印よね。最初に見たときは笑ったわ」
「……変な印?」
「ええ、精霊の印は精霊のその時の意思に沿って作られるからどんな印かは決まっていないの。でもその印は面白いわ。顔に赤・黄色・青の色を投げつけてぐちゃぐちゃな印になっているわ。笑いをこらえるのに苦労したわね」
……前言撤回、今度会ったら絞めてやる。
「そんなに酷い印なのか・・・」
「ええ、だから分かったのよ、貴方が精霊と友達だって」
「だから精霊の声が聞こえるのか?」
「一時的な事だと思うわ、精霊を見たり声を聴いたりするのは才能がいるの」
「オレにその才能が有るのか?」
「分からないわ、たぶん何かの衝撃を受けて声だけが聞こえるようになったのかも」
……衝撃といえば賊から殴られたくらいだな。頭をぶつけたら精霊の声が聞こえるのか?
「頭に衝撃を受けたら精霊の声が聞こえるとは。そういえば昔も頭に衝撃を受けたっけ」
辺境の村人から放り投げられて地面に頭をぶつけた記憶がある。頭のネジが緩んでいるのかな。どうやったらネジを締められるのやら。
「そういえば結構、下流に流されているけど。どうやったら陸に上がれるの?」
「陸に上がるの?」
「人間は水の中で生活は出来ないよ。他のみんなと合流しないといけないし、ドイル様の無事を確かめないと」
「あらら、もう少し話したかったけど仕方がないわね、今から陸に上げるわ」
「ありがとう、そういえば自己紹介がまだだった、オレの名はトルク」
「私は川の精霊、名前はレイファルラーネよ」
「名前が有ったんだ。オレの知り合いは名前が無かったよ」
「私も友達からつけてもらったのよ。かれこれ五百年位前だったわ」
精霊って結構長生きだな。そんな事を考えていると川の精霊レイファルラーネが言った。
「じゃあ、陸に上げるわよ。衝撃に気を付けてね」
衝撃?何に対する衝撃か聞こうとする前に下からドンという音と衝撃がきて空気の泡がすごい速度で上に上がる。川から出て陸に飛ばされた。ドイル様に抱き着いて衝撃に備える。空気の泡ごと地面に叩きつけられたが何とか無事?に陸地に上がった。
あの川の精霊め、もう少し優しく陸地に上げてほしかったよ。
とりあえずは川の精霊に感謝をして気絶をしているドイル様をおんぶして上流の方に行こう。
男爵様もオレ達を探しているはずだ。
しかし、どのくらい下流に流されたのかな?
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




