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精霊の友として  作者: 北杜
十章 帝国皇城混乱編
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15 登城 オーファンルート④

 皇帝の弟となった私、オーファンは現在、大広間の皇帝の横に居る。


「今回の騒動の原因の一つである私の弟を紹介する」

「オーファンと申します。皇族の一員として精進し、ベルンダラン帝国の為に尽力する事を誓います」


 皇帝に紹介されて、集まっている皇族貴族達の前で話す。


「陛下、本当に前皇帝陛下の御子息なのですか?」

「ワシが保証しよう。オーファンは正真正銘ワシの子である」

「ラグーナ・オルネーレ・ベルンダランの名において私も保証します」


 一部の貴族が確認するが、前皇帝と、その妹であるラグーナ様が保証してくれた。

 表面上は納得をしている貴族達だが、腹の中ではどす黒い事を考えているのだろうな。


「それから私の息子であるイーズファングの病も完治した。御使いが難病を癒してくれたのだ」


 私の反対側に立っていたイーズファング殿下が貴族達に言った。


「御使いによって病が治り、私は皇太子となる事に決まった。皆の者、よろしく頼む」


 難病を患わっていた第一皇子の病が完治した事で、イーズファング殿下が次期皇帝となる事が、関係者だけの話し合いで決まった。

 これはトルクの評判をこれ以上下げない為の発表である。


「第二皇子のレンブランド、第三皇子のサルバトーレ、次期皇帝であるイーズファングを助けるように」

「御意」

「御意」


 頭を下げる第二皇子と第三皇子。他の貴族達の目には次期皇帝は第一皇子と決まったと考えるだろう。

 病弱だった第一皇子が皇帝となり、補佐に第二皇子が付き、第三皇子が将軍となるだろう。

 他の皇太子候補者は皇太子にも皇帝の椅子に座る事も困難となった。

 特にエルモーア皇子は今回の失態で苦しい立場にいる。


「エルモーア皇子よ。御使いを怒らせて面会の邪魔をした件についてだが」

「皇帝陛下。私はそのような事は考えておらず、ただ挨拶をしただけで……」

「報告は聞いている。配下が分を弁えず、御使いに手を出そうとしたのだったな」

「いえ! 手を出すではなく、注意をしただけです! 誓って何もしていません!」


 トルクの事だから無意識に煽った可能性は有ると思う。でもクリスハルト様がいるからそんな事はしてないはず。


「皇族貴族は大広間で御使いを待つようにと伝えたはずだ。どうしてエルモーア皇子は御使いに挨拶に向かったのだ?」

「……大広間へ案内する為に」

「案内はロックマイヤー公爵令息に任せている。その事も伝えていたはずだ。お前は私の言葉を軽く見ているのか? それとも馬鹿にしているのか?」

「そのような事は! ……申し訳ありません」


 ただ頭を下げるエルモーア皇子。

 エルモーア皇子の失敗はトルクを軽く考えていた事だろう。トルクは貴族の様な行動はとらないし、平民の様に皇族貴族を敬るなんてしないから。

 エルモーア皇子は皇太子になる事も候補にも上がることはないだろう。

 ソバレーユ公爵も競争を辞退したし。

 後はサンフィールド公爵とヤンキース辺境伯が皇太子競争に残っている。


「サンフィールド公爵。お主はオーファンに危害を与えたとの事だが?」

「皇帝陛下。身に覚えがありません。どうしてそのような事をお聞きに?」

「信頼できる者からの報告書だ。オーファンの親族のファーレンフォール伯爵に圧力を与えたそうだな?」

「私は皇族のオーファン様を保護しようとしただけです。圧力などかけておりません。その報告書の間違いでしょう」


 サンフィールド公爵はのらりくらりと皇帝陛下の質問を躱す。確かに証拠がない。

 二人の会話にソバレーユ公爵が口を挟んだ。


「皇帝陛下、サンフィールド公爵にお話ししたい事があります。許可をお願いします」


 皇帝陛下は頷いてソバレーユ公爵を肯定した。


「サンフィールド公爵。これが最後通達だと思って下さい。皇帝陛下には御使いが味方に付いておりますので嘘偽りなくお答えください。御使い相手に戯言は死よりも苦しい将来がまっているでしょう」

「……脅しているのか? ソバレーユ公爵」

「私は御使いに忠誠を誓っております。しかしサンフィールド公爵の虚言で周りの者達の頭髪が抜けるのは忍びないのです」


 ソバレーユ公爵の言葉にサンフィールド公爵の近くにいる貴族達が数歩下がった。

 サンフィールド公爵派閥の貴族達だと思うが皆が頭を手で防御している。……そんな事しても無駄だと思う。


「頭髪が抜けるだけではなく、全身の毛が抜ける可能性も。老若男女関係なく……」


 サンフィールド公爵の近くには誰も近づかなくなった。……この行為だけでもサンフィールド公爵が圧力を加えた事が分かる。


「……い、いや、わ、私は圧力な、なんて」


 サンフィールド公爵が力ない反論をしているとソバレーユ公爵が驚いた表情をした。サンフィールド公爵を見ていた他の貴族や皇帝陛下、皇族の皆も驚く!


「サ、サンフィールド公爵! これ以上嘘は駄目だ! 眉毛が抜けて無くなっている! これ以上嘘を言うな!」


 ソバレーユ公爵の必死の言葉にサンフィールド公爵が自分の眉を触る。眉毛が抜けている事に気付いたサンフィールド公爵は眉毛以外の毛が無くなるのを恐れて、己の罪を自白する。


「申し訳ございません! 許してください! 圧力を加えました! 先代皇帝の御子息を利用すれば皇位継承で優位に立てると考えて、ファーレンフォール伯爵の子供を人質にしてオーファン様を捕まえる様に利用しました! 許してください!」


 大広間にサンフィールド公爵の声が響く。さらに、


「ファーレンフォール伯爵の御子息はスグに解放します! 慰謝料も支払います! 当主の座を息子に譲って私は領地で謹慎しますから許してください!」


 御使いと一緒に居る精霊がサンフィールド公爵に罰を与えたのだと、大広間にいる皇族・貴族達は理解した。


「罪は私だけでお願いします。妻や息子は関係ありません! 罰は全て私が負いますから他の者達はお許しください!」


 サンフィールド公爵が白状した事により、眉毛と頭髪の一部が抜けるだけで済んだ。

 モヒカンで眉無しになったサンフィールド公爵を誰も笑う者はいない。もし笑って目立ってしまったら精霊の罰が下る可能性があると皆が思っているからだ。

 しかし笑いを堪えている人が一人いる。

 先代皇帝の隣にいるララーシャル様だ。

 ララーシャル様は先代皇帝の影に隠れ、口を押えて笑いを堪えている。……お願いですから笑わないでください。つられて私も笑ってしまいそうだから。


「そして先代皇帝である父を救った者を紹介する。ララーシャル殿だ」


 皇帝陛下がララーシャル様を紹介する。

 ララーシャル様は皆の前に出て優雅にお辞儀する。……さっきまで笑いを堪えていた人とは思えない。

 そしてララーシャル様を見た先代皇帝と同年代の老人達は、ララーシャル様を見て驚いている。年代的にララーシャル様を知っているのだろう。


「彼女はワシの姉であるララーシャル姉上だ。知っている者達もいるだろう。どうして亡くなった姉上が生きているのか。そして歳をとっていないのかを説明する」


 先代皇帝がララーシャル様から聞いた事を大広間にいる人達に説明した。

 帝国の者達に殺されかけ、先代御使いのルルーファル様の精霊に助けてもらい、人と精霊の間の半精霊となった事。

 半精霊となった事で寿命が長くなり、御使いと友として行動を共にしている事。


「ワシは王国が姉上を殺害したと思い仇を討つために戦争を続けた。しかし姉上を殺害したのは帝国の者達だったのだ! ワシは姉上を殺害した者達を必ず裁く! 皆も力を貸してほしい!」


 先代皇帝の言葉を聞いた老人達は即座に承諾した。先代皇帝と同じ時間を生きた人達にしか分からない感情だろう。


「ルライティール、私を想ってくれてとても感謝しているわ。でも私を想ってくれのならこれ以上憎まないで。何十年も憎悪に囚われ続けるのは止めてほしいの」


 ララーシャル様が先代皇帝に、大広間の皆に聞こえる様に話す。ララーシャル様の声は透き通った綺麗な声だった。


「確かに私は帝国兵に殺されたけど、実行犯の騎士達はもう死んでいる可能性が高いわ。計画した人間も寿命で亡くなっている可能性の方が高いわ。これ以上犯人に時間を使うのは勿体ないから、その時間を皆でお茶でも飲みながら過ごしましょう」


 ララーシャル様の見る者を魅了する微笑に、先代皇帝が泣き崩れ、老人達も感動で貰い泣きをする。感動するシーンに大広間の貴族達も貰い泣きをしている。


「後日、皇太子となったイーズファングのお披露目とオーファンとララーシャル様を歓迎するパーティーを開く。皆も参加してくれ」


 皇帝陛下の言葉に貴族達が賛同する。

 そして皇帝陛下と共に皇族が大広間を退出する。私も皆と一緒に退出してため息を吐いた。……人前に立って緊張した。


「大丈夫か? オーファン」

「御心配ありがとうございます。イーズファング殿下」

「殿下は止してくれ。私達はもう家族なのだから」

「正確には叔父だけどね。年下の叔父よりも弟枠がしっくりくるね」

「レンブランド兄上、オーファンを困らせるな。貴方はいつも一言多い」

「サルバトーレも弟が欲しかっただろう。弟枠で賛成すると思っていたのに」

「……昔の話しでしょう」


 イーズファング様、レンブランド様、サルバトーレ様は仲が良い様だ。


「とりあえずオーファンの立ち位置は皆で相談して決めよう。私も弟枠に賛成するよ」


 イーズファング様は私を弟扱いするみたいだ。……年下だから仕方がないか。

 そしてクリスハルト様達がいる客間に着いた。

 クリスハルト様の他にロックマイヤー公爵令嬢のルルーファル様、気絶から回復したシャルミユーナ皇女が居る客間でトルクと精霊サクラも居る。

 ララーシャル様がシャルミユーナ様を回復させて詳しい説明を聞いた。

 まず封印された精霊が窓を壊した事で、シャルミユーナ様がトルクを責めて、戻ってきた精霊が責められていたトルクを助ける為だったらしい。

 シャルミユーナ様は今回巻き込まれた形で落ち着いた。……原因は『精霊が窓を破壊して元凶らしきトルクに説教して精霊の力を借りて逃げた。トルクを胸ぐら掴んでいたシャルミユーナ様と一緒に』なんて頭がおかしくなりそうだったよ。

 関係者全員何とも言えない様な表情をしていた。もちろん私もそのような表情だっただろう。

 そして一番の被害者であるトルクは……。


「トルクはまだ出てこないの?」

「はい。部屋にいるとは思うのですが……」


 ララーシャル様が客間の隅に行って「トルク。いい加減に機嫌を直して頂戴」

 ララーシャル様が言うにはトルクは心に傷を負ってしまったらしい。


「確かに帝都中に恥ずかしいポーズを披露したり、言葉使いが変態的だったけど、隅で座りこんでいるのはどうかと思うわよ。貴方が立ち直らないと御使いのお披露目ができないわ」


 トルクは精霊とフュージョンした結果、中二病? という病気にかかり療養中らしい。

 中二病を治す特効薬はなくサクラ様やララーシャル様の回復魔法でも癒す事が出来ないそうだ。


「サクラ、トルクどうするの? 何時まで認識除外の術をかけるの? え、心が癒えるまで? 何日後よ? お腹か減ったら? あのね……」


 ララーシャル様がサクラ様を説得しているが難しそうだった。


「大丈夫よ、トルク。まだ十四歳じゃないでしょ。中二病じゃないから大丈夫よ」


 シルヴィアーナ様がトルクが居るであろう場所に話しかける。……十四歳って関係あるのかな?


「シルヴィアーナ様。どうして十四歳では中二病にかからないのですか?」

「中二病は十四歳がかかる精神病なのよ。トルクは十四歳じゃないから大丈夫よ」

「ちょ、ちょっとシルヴィアーナ! 説得じゃなくて止めになっているわ!トルクが更にヤバい状態になったわ!」


 シルヴィアーナ様でもトルクの説得は無理だった。


「あ、あのトルク様は大丈夫なのでしょうか?」


「……大丈夫だ、ルルーファル。トルクは病気に負けないはずだ」


 クリスハルト様もルルーファル様も心配している。お二人は私達が大広間に居た間、トルクを看ていたので心配なのだろう。


「お兄様、トルク様はご無事でしょうか?」


 ベルリディアもトルクの心配をしている。私も心配だが本当に大丈夫だろうか?

 そしてある仮説が浮かんだ。もしもその仮説通りに事が進むのなら……。


「ララーシャル様。もし精霊がトルクの体調不良を回復させようとして、精霊が原因を考え、その原因が帝国だと判断したら、帝国は大丈夫なのでしょうか?」


 私の質問にララーシャル様は視線を逸らした。……うん、何か起きるか? それとも起きているのか?

 そして私の質問とララーシャル様の無言で部屋の全員の表情が固まる。


「……帝国が滅んだ原因は『御使いトルクが中二病を発生させたから』と未来の歴史家が書き記したら、笑いを通り越して呆れるわね。御使いトルクではなく中二病トルクね」


 シルヴィアーナ様。お願いですからこれ以上トルクに止めをささないでください。

 そして皆が『緊急事態!』という表情に代わりトルクの病気を癒す方法を相談し始めた。

 ……トルク、早く回復してくれ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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