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精霊の友として  作者: 北杜
十章 帝国皇城混乱編
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11 後宮 オーファンルート②

 私は皇族となると決めた。

 部屋に居る全員が納得してくれた。そして私が疑問に思っている事を聞こうとしたら、


「あの、私の父は誰なのですか?」


 ベルリディアが疑問に思っている事をお母様に聞く。

 お母様は『ついに質問された!』と言う表情で、ラグーナ様は姿勢を正してベルリディアの問いに答える。


「ベルリディア。貴方の両親は……」

「ラグーナ様、私が答えます。私が言わないと駄目なのです」


 お母様がベルリディアを見て言った。


「貴方の父親はターニャ様の兄であるボルダーと言います。オーファンが生まれて、ターニャ様が亡くなった後にボルダーは姿を消しました」


 お母様は視線を空中に浮かべて説明を続ける。


「ボルダーはベルリディアの誕生を待ち望んでいました。しかしベルリディアが生まれる数日前に行方不明になり、生きているのかも不明です」


「ボルダーの探索をしようと思いましたが、ターニャが生んだ子のオーファンの件もあったから、大袈裟な行動が出来なかったのよ。秘密裏に捜していたけど成果は何も無いわ」


 ベルリディアはショックで何も答えない。私も何も言えなかったが、ララーシャル様はお母様に質問する。


「ボルダーの実家に連絡は?」

「オルレイド王国側ですから連絡手段が無く。それに大事にする訳にもいけませんので……」

「御使いの側近であったラスカル男爵に頼もうと考えましたが、ターニャとオーファンの事を考えるとね。誰が味方か敵か分からないの。知っているのはこの部屋に居る者達だけよ」


 お母様とラグーナ様は説明する。そしてララーシャル様が言った。


「今なら大々的に探せるわよね。私も協力しても良いわよ」

「よろしいのですか? ララーシャル様。是非お願いします!」

「ベルリディアちゃんのお父さんは私の知り合いの知り合いだからね。協力するわ」


 私は思った。こういう風にトルクは厄介事を引き寄せるのだと。その大半は精霊やララーシャル様が持ち込んで来て、トルクが対応するが、その結果周囲を巻き込むのだと。


「ララーシャル様、私が言うのも難ですが、まずはトルクに相談した方が良いのでは?」

「もちろん相談するわよ。大丈夫よ」


 ……うん。精霊やララーシャル様の大丈夫の定義は私達とは違うと思った。

 ……でもベルリディアの父親を捜して欲しいのは私も同感だから、トルクには頑張ってもらおう。……きっと私も厄介事に巻き込まれるが、クリスハルト達も巻き込まれるのだから苦労は分散すると信じたい。


「では皇帝陛下に会いに行きましょうか。今頃は精霊の御使いとの会談中だけど大丈夫よ。皆が居る場所でオーファンの紹介をしましょう」


 ラグーナ様がトルクと皇帝、その他貴族達が居る場所へ向かおうと提案するがララーシャル様が待ったをかける。


「その前に貴方の兄の先代皇帝に会いに行きましょう。治療して弟の言葉から『息子』だと宣言させた方が効率的よ」

「……弟? ……兄の姉と言えばララーシャル……。どういうことですか! 御使いになると若返るのですか!?」


 あ、ラグーナ様が死んだはずの姉のララーシャルと気付いた様だ。


「酷い妹ね。こんな綺麗な姉を忘れるなんて」

「物心つく前に亡くなった姉? 本当なの?」

「簡単に説明するとね。死ぬ前に精霊と融合して半分精霊になったの。半分人間で半分精霊の半精霊よ。この世界に二人しかいないわ」


 ラグーナ様は詳しく説明してもらいたいが、ララーシャル様が「ルライティールの治療にいきましょう」と皆に伝えるが、


「それで、さっきから何しているの? ドラゴン」


 何もない空間を見るララーシャル様。……ドラゴンってソバレーユ公爵邸を地面ごと上昇させた精霊だよね。

 ララーシャル様の視線に目を向ける部屋の全員。そしてララーシャル様が、


「え? 屋敷に侵入しようとした人達をソバレーユ公爵邸に飛ばしたの!」


 全員が窓から外を見ると攻め込んで来た騎士達が次から次へ飛ばされている。


「どうして騎士達が飛んでいるのですか!」

「知らない騎士達ね。それに今日は来客の予定もないから、オーファンを狙った敵かしら?」


 驚いているお母様に対して、現実逃避気味なラグーナ様が落ち着いた表情で言う。侍女長のアンネさんは窓の外を見て固まっている。

 私やベルリディアは慣れているのでララーシャル様の方を見て精霊との対話を聞く事にした。


「どうするの? コレ。え? 怪我の心配は大丈夫? 当たり前でしょう。……まったく、教えてくれたら良かったのに。……確かにラグーナと会話していたけど邪魔になりそうだから事後報告って。とりあえず、ここは危険かしら? ……貴方が敵を飛ばしているから危険は無いと思うけど。……え? 飛ばす? 何処に? 弟の場所に? ドラゴン、場所知らないでしょう?」


 ……なんだかヤバい会話になってきている。私とベルリディアはラグーナ様達全員を密集させた。


「ちょっと待ちなさい! 逆に弟を飛ばす! って病人よ! 大丈夫ってどこがよ! 止めなさい! ……って飛ばした! 何処に! ……此処?」


 そして部屋の壁を壊して老人が寝ているベッドが飛んで来た。

 ……寝ている老人が私の父親である先代皇帝なんだろうな。

 私はララーシャル様を見る。


「ドラゴン! 貴方やりすぎ! トルクに叱ってもらうんだからね!」


 ……精霊を制御するって大変なんだな。トルクの苦労が分かる。

 私が思い更けている間に、ラグーナ様がベッドで寝ている先代皇帝に近づいて話しかける。


「お兄様! 大丈夫なの!」


 お母様やベルリディアもベッドに近づき、私も先代皇帝に近づいた。……この人が私の父親なのか。


「……寝ています。特に異常はないようです」

「……そう、何事もなくて良かったわ」


 侍女長のアンネさんが先代皇帝を診て、ラグーナ様が安堵するが、この状況は異常で大事だと思うのだが、誰もそういう風に思わないのだろうか?


「この方が先代皇帝なのですね」

「そうよ。私の友人のターニャが愛した人で、オーファンの父親よ」


 ベルリディアが先代皇帝を見て、お母様が肯定する。……私も初めて父親の顔を見た。感想は老人だな。父親というよりも祖父だと言われた方が信じられる。……歳の差が有るからしょうがないか。


「……本当に歳を取ったのね。ルライティール」


 慈愛に満ちた表情でララーシャル様が先代皇帝の手に触れて回復魔法をかける。すると先代皇帝が目を覚ました。そして、


「……姉上、夢とはいえお会いする事が出来て光栄です」

「夢じゃないわよ。ルライティール。もちろんあの世でもないわ」

「……姉上、私は貴方の仇を討つために死力を尽くしましたが、王国を滅ぼす事ができず申し訳ない」

「ルライティール、夢でも幻でもないわよ。回復魔法を使ったから起きる事ができるわよ」

「……姉上、仇を討てず申し訳ない。姉上……」

「いいから起きなさい!」


 先代皇帝の頭を叩くララーシャル様。……姉弟だから不敬ではないはずだけど、帝国皇帝の父親を叩くって……。ラグーナ様は驚きすぎて声も出ない様だ。


「まったく、寝起きに弱い子ね。子供の時から朝が起きられない癖は治ってないの? 早く目を覚ましなさい!」

「……? ……え? は?」


 混乱している先代皇帝。そしてラグーナ様が「お兄様、起きましたか?」と恐る恐る聞く。


「……此処は?」

「私の屋敷です」

「ラグーナの? いつの間に此処へ?」

「さきほど」

「……ベッドはワシが使っているベッドだな」

「はい、ベッドごと私の屋敷に」

「……ラグーナ。部屋の壊れた壁から見える風景は?」


 全員が壊れた壁の先にある外を見る。上空に飛ばされて地面スレスレに着地した後に上空に飛ばされ続けている気絶した騎士達だった。……精霊のしわざだな。


「精霊が私達を守る為に……」


 ラグーナ様も言葉が続かない。異常現象だからしょうがない。


「精霊? 精霊とは御使いの? どういうことだ?」


 うん、先代皇帝も完全に目が覚めた様で、外での出来事に対して説明を求めている。

 混乱中の先代皇帝にララーシャル様が説明する。


「外での出来事は精霊ドラゴンの仕業よ。トルクが護衛にってつけてくれたのよ」

「……もう少し説明を」

「分かったわ。最初から説明するわね」


 ララーシャル様は最初から説明をした。自分が死んだ理由から精霊になった訳。そしてトルクとの出会いからはじまり、旅をする途中で私とベルリディアとの出会い、ロックマイヤー公爵邸での出来事まで説明した。

 アンネ侍女長は途中で皆にお茶とお菓子を振る舞い、

 その間も精霊ドラゴンは騎士達を飛ばし続ける。


「そしてロックマイヤー公爵邸に大木の精霊が移動したいって言ってね。御使いであるトルクが頼まれたの。そして……え、何、ドラゴン?」


 話を止めて、私達が見えない精霊を見るララーシャル様。


「……え? そんな事になっているの? だから騎士達が此処に来ていたのね。襲っている訳じゃなかったのね」

「そうだったわ! どうして私の屋敷に騎士が攻め込んできているの! 護衛兵はどうなっているの!」


 ラグーナ様がアンネ侍女長に問い質す。


「本日は皆様が来られる為、護衛兵は屋敷外を守っています。絶対に屋敷内に立ち入り禁止と厳命しているので入る事が出来なかったのでしょう。」

「護衛兵を屋敷に入れても良いでしょうか?」


 お母様がラグーナ様に提案する。ラグーナ様から許可を貰うとお母様は退室して護衛兵の元へ向かった。


「あの、ララーシャル様。どうされたのですか?」


 妹がララーシャル様と精霊の会話内容を聞く。私も何が有ったのか聞きたい。


「トルクが行方不明だって。正門で難癖つけられたから自分で何処かに行ったらしいわ」


 ……トルク、どうしてそんな行動を取ったんだ!


「皇子を治療した後、何故か騎士達と戦っている?」

「ララーシャル様。どうしてそんな事になっているのですか!」


 ルルーファル様がいち早く私達を代表して質問した。


「……私が聞きたいわ。クリスハルトも近くには居ないみたいなの……」

「お兄様がどうして一緒に居ないのですか!どうしてそんな状況に!」


 うん、私もどうしてそんな状況になったのかをトルクに聞きたい。そんな混乱の中。


「ワシが動こう。まずは外の状況を収めて、御使いの元へ向かおう」


 先代皇帝が混乱を収める為に動いてくれるようだ。


「全ての原因はワシに有るようだ。ならば全ての原因を収めるのはワシの務めだろう。ラグーナよ、手伝ってくれ」

「分かりました。騎士達に護衛させます。お気をつけて」

「何を言っている。皆で行くぞ。皆で行き、混乱を収める」


 外を眺める先代皇帝。

 屋敷の外は飛ばされている騎士達と恐怖で近づく事が出来ない騎士達。

 原因は現在ララーシャル様と口論している精霊ドラゴン。

 ……ララーシャル様、トルクの事で口論するよりも、精霊を止めて欲しいです。


「まずはこの屋敷の混乱を収めないといけないが……」


 父親である先代皇帝の表情には疲れと諦めが現れていた。……きっと私も同じ表情をしていると思う。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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