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精霊の友として  作者: 北杜
十章 帝国皇城混乱編
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10 登城 トルクルート②


 とりあえずクリスハルトと一緒にシャルミユーナの元へ行く事にした。

 シャルの居場所を知っているというサクラの案内で広いバルコニーに降りる。


「到着!」

「……トルク、到着ではない。どうするんだ! 父上にどう説明する! 謁見の間には全員が集まっているんだぞ!」

「大丈夫だクリスハルト。ボルドランとウルリオが説明してくれるよ。それよりもシャルに会って第一皇子を回復させよう」


 頭抱えそうになるクリスハルト。仕方がないな。


「クリスハルト。エルモーア皇子と側近っぽい騎士の一人が怒ったからサクラが嫌な表情をしたんだ。サクラを怒らせるよりも逃げた方が良いだろう。城が壊れるよりも城が無傷の方が良いだろう」

「……トルク。精霊のせいにしていないか?」

「精霊のせいにしている」

「ララーシャル様が一緒だったら精霊サクラ様の感情を知る事が……」

「ララーシャルの方が怒り出すのが早いと思うぞ?」


 高圧的だったし、礼儀知らずって言われたし。オレも少しムカついたけど、オレよりもサクラやララーシャルの方が怒りの沸点が低いからな。

 オレはローランドやダニエルのこと以外は沸点が高いと思うよ。


「確かに責任転嫁したけど、サクラも承諾したから一緒に空を飛んで来たんだから。それよりも早くシャルに会おう」


 とりあえずノックする。少し待つと騎士っぽい女性がバルコニーに来たけど「姫様、誰も居ません。気のせいでしょう」と言う。

 ……認識除外の術をかけたままだった。サクラに解除してもらおう。


「誰だ! 急に現れて! ロックマイヤー公爵子息! どうやって此処に!」

「急な訪問失礼する。シャルミユーナ様にお会いしたい。御使い様もいると伝えてくれ」


 オレを見る女騎士さん。……手を振って見た。


「……ロックマイヤー公爵令息、どうして第一皇子の部屋にシャルミユーナ様が居られる事が分かったのですか?」

「……精霊の加護だ」


 クリスハルトも精霊のせいにしたな。まあ事実だから問題無いか。サクラも「私にかかれば簡単よ!」と胸張って言っているし。

 あ、シャルがこっちに来た。


「……ねえトルク。今日は皇帝陛下と謁見ではなかったからしら?」

「ボイコット」

「……御使いを敵には回さないと思うけど、お父様怒るわよ」

「仕方がないんだ。エルモーア皇子とその側近に『礼儀知らず』と言われてしまったんだ。礼儀知らずは皇帝に謁見出来ないからな。だからシャルの約束を優先しようと思ってね」


 皇帝に会う必要は無いんだよね。優先順位はオーファンの件とララーシャルの姉の先代皇帝に会う事。そして同じ転生者のシャルの約束である兄を治す事だ。皇帝に会う必要ない。


「クリスハルト様、貴方が居ながらどうしてこんな状況に?」

「申し訳ございません。城門でエルモーア皇子が待ち構えており、私が行動する前にトルクと精霊が行動してしまい……」


 ……シャルとクリスハルトが同時にため息をつく。すまない、二人とも。

 そんな事より患者を治すか。


「シャル、患者は?」

「……まずは皇帝陛下に会う必要があります」

「患者を治してから考えるよ」

「そ、それは嬉しいのですが、まずは謁見が先では?」

「優先順位はシャルの頼みが先で、皇帝陛下に会うのは二の次」

「では二番目でお願いします。兄を診たら皇帝陛下の謁見をお願いしますね」


 オレ的には『皇帝に会うの面倒くさい』なんだけど、シャルの少し迫力ある言葉に承諾する。

 クリスハルトも何度も首を縦に振り続けている。

 ……やはり皇帝に会う必要があるか。……面倒だな。

 とりあえずシャルの兄の容体を。あ、サクラ、先に診ているのか? どうな塩梅?


「……生まれついての病弱状態に、毒も体内にチラホラ。ほっといたら死ぬわね」

「偉い人には毒殺は付き物なんだな。それで治せる?」

「ちょっと痛いけど治せるわ」

「だったら許可取ってみるよ。だから少し待ってくれ」


 シャルの兄は起きていて、オレ達のやり取りを聞いていたみたいだ。


「お兄様! 目を覚ましたの! 大丈夫!」

「うるさくて目が覚めてしまったよ。大丈夫だよ、シャル」


 シャルの兄は見た目通り『病弱!』って感じだ。体は瘦せていて、顔は青白い。


「初めまして、御使い様。イーズファゴホッ! ゴホッ!」


 少し体調を回復した方が良いな。

 シャルの兄に近づいて回復魔法をかける。

 すると少し体調が良くなり、咳を出なくなった。


「一時的に体調を良くしました。体調はどうですか?」


 サクラほどではないが、オレの回復魔法も捨てたモノじゃないな。

 そして体調が良くなった第一皇子は改めてオレに挨拶する。


「御使い殿、初めまして。イーズファングと申します。この度は私の我儘を聞いてくださり感謝いたします」

「初めまして、トルクと申します。急な訪問で申し訳ありません」

「久しぶりだね、クリスハルト。最後に会ったのは何時だったかな?」

「はい、お久しぶりです、イーズファング殿下。最後に会ったのは五年くらい前ですね。お会い出来ずに申し訳ありません」


 クリスハルトとイーズファング殿下は知り合いらしい。ロックマイヤー公爵家は皇族と繋がりがあるから当然か。

 イーズファングさんは「ゴホッゴホッ」と咳をすると口から血が流れた。……オレの回復魔法では解毒は難しかったようだ。

 やはり精霊に頼むしかないな。

 まずは状況を説明して、治療に当たり痛みを伴う事を説明しなければ。


「イーズファング殿下。とりあえず治療は可能です。しかし痛みが伴いますがよろしいでしょうか?」

「……本当ですな? 御使い様」


 皆かオレの言葉を聞いて喜んでいる。


「はい、病弱な体の治療と解毒で治ると精霊がそう言っています」

「トルク、ちょっと待って。解毒? 毒って意味よね? 毒を盛られていたの?」


 サクラ、説明お願い。皆に伝えるから。


「えーと、コレとコレに毒が塗っているわね。それからその花瓶の花に一つだけ花粉に毒がある花が有るわね」


 毒だらけだな。シャル達に伝えると、シャルは侍女や騎士に命令して毒物を撤去した。


「とりあえず精霊から『ほんの少し痛いけど治療に時間がかかる方法と、痛いけどスグに完治する方法のどっちがいい?』って言っているけどどうする?」

「……スグに完治する治療でお願いします、御使い様」


 ベッドで横になっている男性の声。眠りから目を覚ましたイーズファング殿下が完治を願い出た。

 声に力が無いイーズファング殿下にシャルが近寄り手を握る。

 準備は良いみたいだし! 治療を開始しよう。サクラ、頼んだ!


「フュージョンするわよ、トルク」


 え? フュージョンするの? 聞いてないよ? する理由って有るの?

 オレの疑問を無視てサクラはオレの体に入る。魔力が覚醒したような感覚と共に体が強化されたような感じになる。


「……とりあえず治療を始める」

「トルク、その姿は?」


 驚いている皆を代表してシャルがオレに問う。


「本気モード。精霊と力を十全に使う御使いの奥義」

「……スーパーサ〇ヤ人?」

「……言わないでくれ」


 さすがは転生者だな。言って欲しくないツッコミをしてくる。


「ではイーズファング殿下の治療を始めます。痛いけどスグに完治する方法で治しますが、痛みを覚悟してください。貴方が想っている以上の傷みでしょう」

「え?」


 イーズファング殿下の呆けた表情を無視してサクラは治療を始めると……。


「グッ! ―! ―!」


 痛みに耐えきれず叫ぼうとするが、痛みで声が出ないイーズファング殿下。口から泡が……。

 声なき声に叫ぶイーズファング殿下を守ろうと女騎士さんがオレに切りかかりそうになるが、クリスハルトが止める。侍女が驚き混乱し、シャルがオレを責めようとするが無視する。

 サクラ、あと何秒で治療は終わる?


「あと三十秒よ。もう少し我慢してって言って」

「あと三十秒で完治します! 痛みに耐えて下さい! 頑張って!」


 オレの声を聞いたシャルがイーズファング殿下の手を握って「頑張ってお兄様!」と祈る。

 剣を抜いた女騎士とクリスハルトが対峙する。クリスハルトは丸腰だ。クリスハルトが刺されたら大変だ! ロックマイヤー公爵達が悲しむ。オレは女騎士さんに水魔法の水玉で迎撃……あ、水玉をモロに食らった女騎士さんは壁に激突した。……ゴメン、後で治療するね。

 クリスハルトが「助かった、ありがとう。しかし彼女は大丈夫だろうか?」とオレに問う。オレは「後で治療するから」と返事をしてイーズファング殿下を見守る。


 イーズファング殿下の体から黒い毒素の様なモノが浮かび消える。それが全部消えてしまうとイーズファング殿下の叫ばなくなった。


「治療は終わったわ。完治よ」


 イーズファング殿下は痛みに耐えて呼吸が荒い。でも顔色が良くなり咳も無い。無事に完治したようだ。


「ありがとう、サクラ。礼は酒で良いよな」

「酒じゃなくて、今回はお願いする権利が欲しいわ。私の頼みを聞いて欲しいの」

「今までずっと頼みを聞いていたのにか? ……酒で勘弁してくれ。サクラの権利によるお願いなんて恐怖過ぎる」

「大丈夫。無理難題は頼まないから。トルクでの可能な頼みだから心配しないで」


 ……心配しかしねぇ。過去での出来事を考えると、断ろうが強制的に頼まれるんだから!


「お兄様! 大丈夫ですか!?」

「……大丈夫。気分も良くて体も軽い。こんなに体調が良いのは生まれて初めてだよ!」

ベッドから体を起こしてシャルに笑いかけるイーズファング殿下。侍女達も嬉し涙を浮かべている。

「トルク、お疲れ様」

「イーズファング殿下を治療出来て良かったよ。皆喜んでいる」


 前世の医者が手術後に『手術は終わりました。大丈夫です』と言って喜ぶ患者の親族を見守る医者の気持が分かった。喜ぶ人を見るのが癖になりそうだな。


「トルク、あとお前の魔法で気絶した人の治療を頼む。助けられた手前、言いたくないがやり過ぎだと思う。もう少し手加減できなかったのか?」

「ごめん。本気モードだったから加減がね……。スグに治すから。サクラに頼ん……だら大変な目に合いそうだから自分で治療するよ」


 オレは女騎士さんの治療を始める。……なんかこの人が一番割を食った気がする。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
ララーシャルの姉の先代皇帝に会う事。 ララーシャルの弟の先代皇帝に会う事。 少しづつでも更新してくれて嬉しいです! 次回も楽しみにしています(^^♪
[気になる点] 治療中に剣を抜くって、治療されたら困る側のひとかな?
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