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精霊の友として  作者: 北杜
十章 帝国皇城混乱編
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2 現状確認②

 現在の状況を聞いたオレが次にする事は、


「ララーシャル、食事の時間は何時? 腹減った」

「……少し待ってね、ベルリディアちゃんがトルクの食事も持って来てくれるから」


 ララーシャルはオレと会話していた時に、ベルリディアに声を飛ばして連絡して食事を頼んだそうだ。……いつ連絡したんだろうか?

 そんな事を考えているとノック音が聞こえる。部屋に入って来たのはベルリディアとオーファンだ。盛られている食事が多いのでララーシャルもオーファン達も一緒に食べるみたいだ。


「トルク様、ご無事で何よりです」

「ありがとう、ベルリディア。心配かけてごめんね」


 ベルリディアには本当に心配かけた。なんせ兄が行方不明になったからな。そして急にオレの体に憑依してとても心配しただろう。


「トルク……」

「オーファン……」


 オレとオーファンは見つめ合う。オーファンの言いたい事は分かる。無茶させてしまったし、命の危険にも晒した。文句言われても何も言えないのだ。


「……家族と会えたかい?」

「……ちゃんと会えたよ。別れの挨拶も出来た」

「トルクをずっと心配していたからね」

「オーファンも皆を守ってくれてありがとう。助かったよ」

「何も出来なかったよ……。トルクが来て? トルクが皆を守ったんだよ」

「そんな事ないぞ。妹姫さん、スメラーニャ様がお礼言っていたぞ。オレが来るまでオーファンが守ったんだ。自信を持って良いぞ」


 オレを責めないオーファンの優しい心遣いが嬉しい。マジで良い子だよ。


「でも……、どうして! 精神入れ替わりってなに! 帝都に戻ったと思ったらトルクの体だし! ララーシャル様からは『御使いの修行する?』なんて言われるし! これ以上訓練は嫌だよ! もっと安全な訓練にしてよ! 死んでしまうよ! 今回も死にそうだったのに! これ以上は絶対に死ぬよ!」


 ……あらー、気が緩んで弱気になってしまって、愚痴を叫んだかー。

 しょうがないよね、オーファンは子供なんだから。中身も子供で、オレみたいに中の人が大人ではないのだから。


「ララーシャル様が何度も何度も訓練って言って訓練させるし! ウルリオ様の訓練が一番楽って思うんだよ。ボルドラン様から同情されたよ!」


 オレはララーシャルを見る。ララーシャルは「あはは」と他所を向いてから苦笑いしている。ベルリディアもララーシャルを見たので「ごめんなさい」とオーファンに謝罪した。

 しかしオレとオーファンの訓練は違うのかな? オレは瞑想とかでウルリオの訓練よりも楽だったのだけど。

 今度オーファンの訓練を見学してみるか。


「御使いの訓練ってなに!? そんな事になったら死ぬよ絶対! 確かにトルクの様な技術は身に着けているけどこれ以上は無理! これ以上やったら死んじゃうよ!」

「……すまない、オーファン。今後は訓練とかはさせないから。ララーシャルにも、サクラにもキツク言っておくから」

「絶対だよ! 絶対だからね! 信じるよ! トルク!」


 オーファンがマジでヤバい状態だった。ララーシャルとサクラが訓練と称して馬鹿な事をしている可能性が出てきた。サクラとララーシャルに絶対に訓練をさせないでおこう。


「……分かったわ、オーファン。でも訓練無しは駄目。貴方は将来皇族になるのよ。他の皇族や貴族達に皇族として認められる為にも訓練は必要よ」

「そ、そんな……。皇族辞めること出来ないのですか……」


 オーファンが壊れかけてマジでヤバいな。ベルリディアもオーファンを慰めているし、どうにか出来ないだろうか?


「だから御使いになれば、皆から一目置かれるわ。その為に御使いの訓練頑張らない?」

「絶対に嫌だー!」


 あ、オーファンが部屋から逃げ出した。御使いの訓練ってそこまで酷い訓練ではないはずだが……。オレは死にかけたけど。


「……御使いの訓練だけど、オーファンにはどんな訓練をしたんだ?」

「まだ何もしてないわよ。でも訓練という言葉に逃げてしまってね。帝都と王都の経験がトラウマになったのかしら?」


 本当にそれだけだろうか? ララーシャルも偶に人の言葉を無視して実行するからな。それでなにかしらのトラウマをオーファンに植え付けたのだろうか?


「お兄様は私が追いますので、お二人は食事をどうぞ。トルク様はスープで体調を整えてください」


 ベルリディアも昔に比べてタフになったと思う。やっぱり旅での経験は人を強くタフにするのだと思った。




 食事を終えたオレはクリスハルト達に会おうとしたが、ララーシャルに止められた。


「まだ動き回らない方が良いわ。後一日だけ休んだ方が良いわ」


 ……寝たきり状態だったから早めに体を動かして、なまっている体の調子を元に戻したかったけど、ララーシャルの言葉を聞き入れた。……無茶は禁物だしな。


「話し合いは?」

「少しの間なら許可しましょう。それももうすぐクリスハルト達が来ると思うからね」


 とりあえずクリスハルト達との会話は許可された。しかし長時間の話し合いはララーシャルが止めるだろうな。

 そして最初に誰が見舞いに来るだろうか? クリスハルトかな? ボルドランかもしれない。大穴でシャルが来るかな? でもシャルは皇女だから来るのは無理だろう。


「御使いよ! 無事でなによりだ!」


 変態皇子のレンブランドが一番目か……。これは想像してなかったよ。っていうかアンタ謹慎中じゃなかったのか?


「御使いが目覚めたと聞いて急いで来たのだ! これは見舞いの品だ。え? 城で謹慎中? 城ではなくて別宅の自室で謹慎していたぞ。ロックマイヤー公爵邸の近くの別宅だ!」


 ロックマイヤー公爵邸の近くに変態皇子の別宅が在ったなんて……。門番は何考えて訪問を許したんだ? 権力つかって訪問したのか? それとも別宅と公爵邸を行き来する地下道でも掘ったのか?


「ララーシャル殿! お久しぶりです。相変わらずお美しい!」


 変態皇子の急な入室で逃げ遅れたララーシャル。


「黙りなさい!」


 と言って変態皇子に手を向けると、変態皇子は床に這いつくばった。……これはオレが王都の城で受けた重力魔法か!?


「サクラから重力魔法を聞いて、私も使えるように練習したの。でも人間一人くらいの範囲で狭いのよ。要練習ね」


 ……ララーシャルって多才通り越してチートだよな。


「で、どうやって警備厳重な屋敷に入って来たんだ?」

「お、おう、御使い、殿。元気、そうで、なにより。説明、するから、魔法を、解いて……。これ、以上は、潰れて……」


 ララーシャルに重力魔法を解いてもらおう。じゃないと説明が聞けないからな。


「申し訳ありません、御使い殿、ララーシャル殿。しかしご無事でなにより。お二人にお会いできてうれしい限りです。そしてその節は誠に申し訳ない。どうも御使い殿やララーシャル殿の事に関すると周りが見えなくなってしまい……」

「良いから早く説明してくれ」

「おっとすいません。屋敷の裏口の門番に金を渡して屋敷に入り、警備兵の配置は密偵に調べさせたので警備の隙をついて侵入しました。時間帯によって警備が手薄なところがありますから、私でも問題無く辿り着けました」


 ロックマイヤー公爵邸の警備がザルなのか? それとも変態皇子の隠密行動が優れているのか?


「しかし城よりも警備が厳重だったから侵入に少し苦労したよ。さすがはボルドランだな。今回の失敗は警備計画書をクリスハルトに提出した事だな。クリスハルトは警備計画書を机の上に出したままだったから簡単に密偵に盗み見られたのだから」


 ……帝国密偵も優秀みたいだ。そして変態皇子も優秀だと再認識した。でも!


「クリスハルトに伝えるからな。オレはロックマイヤー公爵側だから」

「その程度の事で御使いから許されるのなら問題ない。ロックマイヤー公爵の罰など、私には赤子が戯れる程度なのだから」


 皇族にとってはロックマイヤー公爵の遺憾砲は効かない様だ。だからララーシャルが変態皇子に、


「私もロックマイヤー公爵側だから、私が罰を与えましょうか?」

「申し訳ありません! 何卒お許しください!」


 頭を下げる変態皇子。……でもララーシャルは重力魔法を使って罰を与える。

 床に倒れて苦しむ変態皇子にため息をつくオレ。

 そしてララーシャルが「早く吸魔術使って精霊を見える様にしないとサクラが怒り出すわよ」と言ってくるので更にため息をついた。……また精霊達の無理難題を聞く事になるのだろうか。




 ベッドの上で魔力を溜める精霊術の準備を、吸魔術を使う為に座禅を組んでいた時にクリスハルトとボルドランが部屋に入って来た。


「……どのような状況なんだ?」

「……たぶんレンブランド様が侵入して、ララーシャル様の機嫌を損なって罰を受けている最中でしょう」


 クリスハルが室内での出来事を見て、ボルドランが推察して述べる。そしてララーシャルがどのようにして侵入してきたのかを説明した。


「私の責任か……。鍵をかけていたとはいえ書斎に書類を出しっぱなしにしていたからな……。あと裏門の門番に罰を与えないと……」

「ララーシャル様がいる公爵邸に侵入できる密偵はどうしましょうか? ……まさか書類を調べた密偵は我々が味方だと思っている者達か! トルク様の味方だと思っていた者が裏切り者の可能性が!」

「いや、御使いやララーシャル殿が留守の時に侵入した密偵だぞ。さすがに御使いや精霊が居る時に密偵など侵入させる訳がないだろう。見つかって私が罰せられる」


 重力魔法から解放された変態皇子がボルドランに言う。……ボルドラン、裏読みしすぎたね。


「……警備体制を変更しよう、ボルドラン。それからトルクも無事で何よりだ」

「心配かけてすまなかった」

「本当に心配したぞ。帝都の貴族宅の地盤上昇からオーファン行方不明まで! トルクは気絶しているし、目が覚めたらトルクではなくてオーファンだと言っているし! 父上と一緒に登城して皇族の方々に説明して政敵からは難癖付けられてキレそうになったり! 帝都に住む者達は地盤上昇地を聖地だと言って崇めようとしたのを抑えたりして本当に大変だったんだぞ!」


 ……すまなかった。


「ララーシャル殿が『庭で精霊達の宴が始まったから酒と食べ物をお願い』と頼まれたが、三日前に酒と食料が底を尽きかけたから慌てて買い出しに行って、何故か帝都の食料が値上がりして、帝都に住む者達が『また戦争が始まるのでは? それとも内乱か?』と勘違いして更に大変だったんだぞ!」


 ……本当にすまなかった。早く魔力を補充して精霊達に宴を止めさせるから。


「トルク様、現在はララーシャル様が庭で宴会をしている精霊達を叱ったので酒等の注文は減りました。帝都での地盤上昇は魔法の実験と皇族が発表し、戦争開始の噂はデマと広げた事で物価の値は安定しています」


 ボルドランが現状を説明してくれた。……マジですまなかった、二人とも。


「そんなことより、トルク殿。会わせたい者達が居る。来てくれないか?」


 変態皇子の知人をオレに紹介したいのか? 

 あんまり帝国のお偉いさんと会いたくはないんだけど……。


「……メンドイからパスで」

「バルム砦の責任者であったアーノルドとトルク殿の部下であったケビン達を帝都に呼んだので会わせようと……」

「それを先に言え!」


 確かに最初断ったけどさ! だって変態皇子の知り合いと会いたくないし! でもケビン達やアー

ノルド様なら話は別だ!

 吸魔術を後にして、サクラや精霊と話す事も後にして、先に皆に会いに行くよ! ララーシャルも行くだろう!


「もちろん私も行くわよ。トルク一人に行かせる訳ないじゃない」

「私も行きます。トルク様」

「アーノルド殿に会って礼をしないとな。そして謝罪もしないといけない。私も行こう」


 ララーシャル、ボルドラン、クリスハルトも行く事になった。


「では案内しよう。私の別荘であるロックマイヤー公爵邸の隣の屋敷だ」

「レンブランド殿下、隣の屋敷は他の貴族が住んでいたと……」

「その貴族はギャンブルに負けて屋敷を手放した。今は他所の屋敷に居候しているらしい」


 ギャンブルで屋敷を取られる貴族……。帝国の貴族は大丈夫なのか?


「……ボルドラン」

「分かっています。隣の屋敷方面に警備を厳重にしておきます」


 変態皇子の言葉を聞いてクリスハルトとボルドランの仕事が増えたな。

 ……今回はオレの責任じゃないぞ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[一言] アーノルドのアーの所が改行されていて読みにくいです。 アー ノルド こんな感じ。
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