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精霊の友として  作者: 北杜
九章 王都脱出編
251/276

19 現在の婚約事情

新作はじめました!


魔力ゼロの探索者~魔力ゼロは無才ではなく異才だった~


詳しくは下のから!

     ↓

https://ncode.syosetu.com/n1381hy/


完結まで毎日投稿予定作品です。


よろしくお願いします。

「失礼します、アンジェ様。ほんの少しだけお時間をよろしいでしょうか?」


 レイファは執事達に荷造りを指示していたアンジェに頼み込む。

 アンジェ様はオレとレイファを見て「分かりました」と言って、荷物の整理が終わった私室に招き入れ、オレ達を椅子に座らせた。


「レイファさん、オーファンさんの事かしら?」

「トルクお兄様の件です。先ほどオーファンさんから聞いたのですが、トルクお兄様とポアラ様は解消可能な仮の婚約だというのは事実でしょうか?」


 レイファの問いにアンジェ様がオレを見る。オレは事実だと思っているので黙って頷いた。


「……それは何時聞いたのかしら、レイファさん」

「先ほどです。さきほどオーファンさんからお聞きしました。本当にそうなのですか?」


 オーファンの体にトルクが乗り移っているとレイファは知らないと思っているアンジェ様。

 アンジェ様はオレを見てから、レイファに言った。


「婚約当初は解消可能でした。しかしポアラはトルクさんを愛していますので、婚約破棄などしませんし、仮の婚約でもありません」


 え!? なにそれ? 初耳だよ!

 オレが驚いている事にアンジェ様が深くため息をついた。そして、


「最初はトルクさんの幸せの為に、ポアラの婚約者にしました。当時ポアラはトルクさんに恋愛感情を持っていませんでしたが、私が無理矢理二人を婚約させたのです」


 うん、その通りだな。母親も初耳みたいだったからな。そしてオレの幸せって言うのも初耳です。

 レイファも「お母様の許可なく婚約ですか……」と言ってため息をついた。


「あの時はポアラが子供でした。私がリリアさんにトルクさんとの婚約が事後承諾になった事を詫び、改めてリリアさんを説得している、その前で、ポアラは婚約は破棄したと告げました。その結果、リリアさんはこの婚約に深い不信感を抱いてしまって……。それで説得する為に、『トルクから婚約解消しても良い。ポアラがトルクを必ず幸せにする。トルクが不利にならない様にする』という条件を出しました」


 おかしいな? オレはクレイン様から『婚約が嫌ならいつでも解消する』としか聞いてないよ。アンジェ様からはポアラ様を再教育するって聞いていたが、勉強の事だと思っていた。


「トルクさんから承諾を頂いたので婚約継続中です。私はポアラが婚約破棄や撤回などしない様にリリアさんと一緒に再教育しました」


 再教育ってそっちの方だったんか……。


「お茶会を重ねて二人の時間を増やし、ポアラとの仲も進展していると思っていました。トルクさんもポアラを嫌っていませんし、二人の仲は良好であると、……そうですよね、オーファンさん!」

「……」


 少し考える。二人でいたとき何を話してたっけ? ああ、医療ギルド設立の話だ。確かオレが雑務全般でポアラ様がギルド長をすると話し合っていた様な気が……。他は……。


「皆とのお茶会は楽しかったですね」

「他にないの! 他に!」

「他ですか? 他は……」


 何かあったかな? ……思い出せないな。……レイファもどうして溜息をついている?


「授与式前に伯爵邸の中庭でポアラを慰めたでしょう! その時の事はどうなの!」


 ……確かバルム伯爵から砦に行くように命令された後だったな。ポアラ様が中庭に逃げ出したから追いかけて慰めていたけど、精霊達がぺちゃくちゃ話しかけてきて、そっちの方に気が取られて……。


「ポアラが貴方に告白したでしょう。忘れたの?」

「え?」


 アンジェ様はポアラ様がオレに告白したと言う。……ヤバい、全然記憶にない。精霊達の馬鹿話なら覚えているんだけど、ポアラ様との会話は覚えていない。……ヤバい。そんな会話だったなんて。


「ポアラから聞いたのだけど。トルクさんに告白したって……」

「お兄様、ポアラ様の告白を覚えていないのですか?」


 どうしよう。正直に謝るか? それとも精霊の馬鹿話のせいにして謝るか? 戦闘で頭を打って記憶があやふやだと言って土下座して謝るか? こんなときにサクラかララーシャルが側に居たら素晴らしい対処法を教えてくれるのに……。


「トルクさん!」

「お兄様!」


 正直に謝ろうとしたら、


「……レイファさん、オーファンさんですよ、彼は」

「あ!」


 慌てて口に手を当てるレイファ。それを見たアンジェ様は、レイファがオーファンの中身がオレである事を知っていると確信したようだ。って言うか、アンジェ様もオレの事を『トルク』って呼んだよね。


「……トルクさん、口止めしていましたよね」

「先ほどのアンジェ様方との会話をマリーが隣の部屋で聞いていて、私とマリーの会話をレイファが聞いていて……」

「ではマリーさんとレイファさんしか知らないという事ですね……」


 先ほどとは違うため息をつくアンジェ様。レイファはアンジェ様に「申し訳ございません」と謝罪する。


「すいません、アンジェ様。油断していました。でもレイファとマリーには口止めしているので大丈夫だと思います」


 オレもアンジェ様に謝罪する。


「……気をつけてくださいね、トルクさん。レイファさんも皆に話さない様に。……それからトルクさん」


 え? まだ何かあるの、アンジェ様?

「デンキンス子爵令嬢アルーネさんの件です。彼女の事を覚えていますか?」

「バルム砦で従者だったアルーネ様ですね。覚えています」

「彼女の婚約者に貴方の名が挙がっている事を知っていますか」

「……初耳です」


 オレがアルさんの婚約者候補に? 初めて聞いたぞ!


「貴方には伝えられていないのですね。水面下ではアルーネさんの婚約者にトルクさんが候補に挙がっています。……本当に知らなかったのですね」

「本当に初耳です、アンジェ様。確かにデンキンス子爵からアルーネ様を婚約者に勧められましたが、既に婚約者が居ると言って断りました」


 いつの間にそんな状況になったんだ? あ、またアンジェ様がため息をついた。レイファもため息?


「候補に挙がっているではありませんか……。デンキンス子爵から勧められた時点で、アルーネさんの婚約者候補になっています」

「お兄様、そのやり取りは貴族の婚約者を決める常套手段ですよ。……『第二夫人でも良い』とか言われませんでしたか?」


 確かそんな事を言っていたような気が……。でもその場を和ませるジョークだよね。


「細かい事は後でとか、今度ゆっくり話そうとか言われていたら、ほぼ確定ですね。トルクさん、そのような事を言われていないでしょうね?」

「お茶会に誘われませんでしたか? お兄様」


 ……言われた気がする。でも冗談のようなやり取りだったから違うと思うけど。


「トルクさん、帝国でも女性と付き合っていないでしょうね?」

「……姉の様な女性が出来ました。ちょっと特殊な精霊です。そういえばサクラは本当にどこ行ったんだ?」


 ララーシャルの事をどう説明すれば良いだろうか? そしてサクラは本当に何処に行った? いつもならからかって来るのに本当に何処に行った?


「トルクさん、サクラと言う方は精霊ですよね。近くに居ないのですか?」

「はい、いつもなら近くに居るはずなのですが。……あ!」


 オレは叫ぶと二人が驚いたので謝罪する。居なくなったんじゃなくて、オレが見えなくなったんだ!


「すいません。ちょっと失礼します」


 目を閉じて精霊術を使い魔力を濃くする。オーファンの体だから、魔力が少ないんだ。だから魔力が減ったらサクラが見えなくなり声も聞こえなくなったんだ。


「ようやく気付いたのね。遅いわよトルク」

「すまん、サクラ。自分の体だと思って動かしていたからな。オーファンの魔力だとすぐに見えなくなるとは思わなかったんだ」

「私が見えなくなった事を居なくなったと思って探しているトルクの姿は面白かったわよ。大丈夫よ、黙って居なくならないから安心して」

「何度か居なくなっただろう。そして厄介事を増やすから、いろんな意味で心配なんだよ。ララーシャルに伝言を残して外出したりしただろうが」

「……お兄様、この部屋に精霊が居るのですか?」


 オレとサクラの会話を聞いていたレイファが質問してきた。


「姿は見えないけど、精霊は居るよ。サクラ、妹のレイファだ」

「トルクお兄様の妹でレイファと申します。よろしくお願いします、サクラ様」


 姿の見えないサクラに自己紹介するレイファ。


「挨拶が遅れましたね。初めまして、ウィール男爵夫人のアンジェと申します。サクラ様、ウィリバルテォイオン辺境伯邸で助けて頂いて感謝致します」


 アンジェ様もサクラに自己紹介をする。

 サクラは「オーファンと一緒に来ていたから皆の事は知っているわ。でも改めてよろしくねー」と軽く挨拶を返すので、オレが代弁して「よろしくと言っています」と伝えた。


「……そういえばトルクさん。先ほどララーシャルという方の名前が出ましたけど、どのような関係なのですか?」


「先ほど説明した押しかけ姉的精霊です」

「その方も精霊なのですね。……トルクさんの知り合いの精霊は女性が多いのですか?」

「……三頭身の熊もどきの精霊。バルム伯爵邸の中庭の木の精霊。動物型の火と木の精霊。この屋敷くらい大きいカバの精霊。首だけの精霊。男性型の精霊と多種多様です」


 アンジェ様は精霊が女性しかいないと思ったのだろう。その誤解を解いた。


「……バルム伯爵邸の木の精霊って」

「はい、あの木には精霊が居ます。私がバルム伯爵邸にいた時には声しか聞こえなかった為、姿は分かりませんが。……そういえば百年くらい前にその精霊とバルム伯爵家の子供が友達になったらしいですよ」


 そういえばそんな話をしていたな。懐かしいな。……懐かしさで思い出したが、木の精霊には腕輪を捜すよう頼まれていたな。すっかり忘れていたよ。


「あの木に精霊が居たの? 本当なの、トルクさん」

「はい、今なら声だけではなくて姿も見えると思います」


 御使いの修行をしたから今度は見えるだろう。しかしどんな姿なんだろうな。人間系や動物系。それ以外の系統も有るのかな?


「昔、あの木に悪戯した事を怒っていないかしら?」


 アンジェ様の表情が強張っている。屋敷の木にどんな悪戯をしたんだろう。でも気にしてないと思うけどな。


「大丈夫だと思いますよ。魔法の的に使われていても、そんなに怒っていませんでしたし」

「そんなにって言う事は少し怒っているのですね……。屋敷に帰ったら謝罪しておきます。トルクさん、謝罪するときは立ち会ってくれませんか?」

「戻ってきたら立ち会いますので、肩を掴まないでください。マジで痛いです」


 今まで存在を知らなかった精霊に対して、凄い勢いで気を使い始めたアンジェ様は、


「中庭を立ち入り禁止にした方が良いかしら? あと中庭の維持費を倍に、いえ五倍にして、庭師を増やして美しい状態を保って。木を魔法の的にしたあの教師は辞職させて……」


 中庭の維持に力を入れる様だ。バルム伯爵に許可を得た方が良いと思うけど。……でも精霊の存在を知ったから許可するだろうな。


「とりあえずオレ達は戻ろうか? レイファもアンジェ様への質問も終わっただろう」

「……お兄様に新たな質問が増えましたけど、後日にしておきます。少し時間を置いてゆっくりした後で、お母様達と質問させてください」

「今まで会えなかったからな。後日質問でも良いよ。それよりもオレもレイファ達の事を聞いても良いかな。アイローン伯爵邸でどんな生活をしていたのかを聞いても良いだろうか?」

「聞いても面白い話題ではありませんよ。私達の生活環境は酷かったので」

「その酷い話の恨みは、帝都に居る元凶にぶつけるから心配いらないよ。サクラも良いよな」

「もちろんよ。二人で恨みを晴らしましょうか」


 オレとサクラが「フフフ」と笑う。それを見ているレイファは、


「……ランナ達と一緒に説明した方が良いのかしら? でもランナの方が過激に話す可能性があるかも。でも酷い目にあった事は事実だし。お兄様が怒らない様に説明する方法はあるかしら?」


 レイファはどうやって事実をまろやかに伝えようかと考えている。……まろやかに表現しないといけないくらい酷い事をされたのなら、家族の為に絶対に復讐をしないといけないな。レイファからの説明を聞いたら、オレはサクラやララーシャルに恨みを晴らす方法を相談しようと思った。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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