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精霊の友として  作者: 北杜
九章 王都脱出編
250/275

18 バレた!②

新作はじめました!


魔力ゼロの探索者~魔力ゼロは無才ではなく異才だった~


詳しくは下のから!

     ↓

https://ncode.syosetu.com/n1381hy/


完結まで毎日投稿予定作品です。


よろしくお願いします。

 オレとマリーが抱き合っている場面を見て驚くニューラ。


「確かにマリーさんは私なんかとは比べ物にならないくらい可愛いし、リリア様にも信頼されているし、いろいろと気遣いが出来るし……。でも私の方がオーファンさんと出会ったのは早かったのに……」


 泣きそうな表情で独り言の様に言うニューラ。

……ニューラはオーファンに好意を持っている様だ。そしてマリーと抱き合っていたから面倒な勘違いをしたんだな。


「ニューラ、勘違いだ。オレはただマリーを慰めていただけだから」

「ニューラさん、少し悲しくなって、オーファンさんに慰められていただけだから。誤解しないで」


 マリーと一緒に誤解を解く。紆余曲折あったが何とか信じてもらった。……年頃の女の子は難しい。そして話題を変える。


「ニューラさんはマリーに用事が有るんだよね。何か有ったの?」

「はい、まだマリーさんの移動の準備が終わっていないので、リリア様が準備を手伝われるとの事です」

「分かりました。ポアラ様の本を木箱に入れたら……」

「後はオレがやるよ。マリーは先に準備をしたら良い」

「では、お願いします。オーファンさん」


 ニューラ、マリーと別れる。そして去り際にマリーが小声で「言葉遣いが雑になっているよ。今はオーファンさんなんだから」と注意を促す。……失敗した。ニューラに気付かれた可能性が。

 でもニューラの様子を見る限り、問題無さそうだ。オレは木箱に本を入れる作業に入った。

 ……そういえばサクラは何処だ?

 ……今まで気づかなかったがサクラが居ない?

 ……オーファンの体のせいでサクラが半透明にしか見えないからな。

 ……いったい何時からサクラの声を聞いていない? サクラを見ていない?

 ……厄介事を押し付けられる可能性が。

 ……もうすぐ誰かが厄介事を通報に来るのでは?

 ……急いで仕事を終わらせてサクラを捜しに行こう!

 ……ついでにレイファの様子を見に行こう。まだ会ってないからな。

 仕事を終えてサクラを捜す。

 客間。……高価な調度品等が回収されていて殺風景になっている。サクラは居ない。

 食堂。……数人が食事をとっている。サクラは居ない。

 厨房。……料理人も引っ越しの準備をしながら携帯食の準備をしている様だ。サクラは居ない。

 玄関口。……荷物の入った木箱が玄関口に集められている。サクラは居ない。

 洗面所。……誰も使用していない。サクラは居ない。

 廊下。……使用人や侍女や兵達が動き回っている。サクラは居ない。

 中庭。……静かで誰も居ない。サクラは居ない。

 ……本当に何処に行ったんだ? 二階かな?


「あ、オーファン様」


 サクラを捜している途中で、レイファと出会った。……リリア母さん譲りの銀髪で、顔立ちもよく似ている。父親の遺伝子などこれっぽっちも受け継いでいないようだ。良かった。心の美しさが外に現れたような綺麗な子に育ったな。お兄さんは嬉しいよ。


「どうしましたか?」

「なんでもないよ。どうかした?」

「すいませんが聞きたい事が有りまして……。マリーさんとの会話を聞いていて……。お兄様がオーファン様の体に……」


 ……レイファが近くに居た事に全然気づかなかった。オーファンと入れ替わっている事がバレていた。……って言うか何処から聞いていたの?


「ドアの影に隠れていました。聞いていたらニューラが来て本当に驚きました」


 ……オレはいつの間にかポンコツになっている様だ。マジで気を引き締めよう。


「隠していてごめん。普通では信じられない事だから……」

「口調も違いますし、本当にオーファン様ではないのですね……」


 感動の再会だと思うのだけど、なんか距離を感じる。オーファンと入れ替わっているせいなのか?


「お母様とお兄様に会いたいと願っていたのに。……夢にまで見た願いなのに。目が覚めたら屋敷でお父様達に貶され、ファルゴン様に虐められて……」

「夢じゃないよ、レイファ。父親やその息子は帝都でオレが仕返ししたから。心配いらないから」


 そういえば前世の記憶を思い出してから、妹との初めての会話だな。


「レイファ。本当に無事でなりよりだ。母さんもレイファの事を本当に心配していた。レイファが心の支えだった。助ける事が出来なかった兄を許してくれ」


 いろいろなしがらみが有って助ける事が出来なった。妹との距離が遠く、自分で動く事が難しい未成年で、大人に頼むしか出来なかった。精霊の力を借りる事が出来る御使いとなったが、自分と精霊の事で多忙になり、妹の事が二の次となっていた。


「お兄様の苦労も知っています。お母様を助ける為に狩りをして生活費を稼いで、回復魔法を覚え、出稼ぎに行った事。男爵家で働いて大変だった事も聞いています」


 ……そうだな。大変だった。ブラック企業並みに大変だった。


「私よりもお兄様の方が苦労なさった事を聞いています。お兄様が居なかったらお母様が死んでいたかもしれません。お兄様がお母様の側で助けてくれたので、私達もまた出会う事が出来ました。本当にありがとうございます」


 我が妹はええ子や。最悪な環境でも優しく育って。お兄ちゃんは嬉しいよ。そして苦労してきた日々が報われる想いだよ。もう少しで家族全員が幸せに暮らせるのだから。


「レイファ。オレはオーファンの体を帝国に帰らせる責任がある。帝都での用事を終わらせて、恩人を看取った後、絶対に家族の元に帰るから待っていてくれ」

「はい、任せてください。お兄様の分まで頑張りますから!」


 本当に我が妹はええ子や。レイファにお小遣いをあげたい心境だよ。


「そういえば、お兄様は何をしていたのですか?」

「精霊が居なくなったから捜していたんだよ。何処に居るのやら……」


 いつもならサクラが何処からともなく現れて、おちょくったり、おどけたり、冷やかしたりするんだけど、今回は本当に出現しないな。

 ……あ、レイファに精霊の事を教えていない! しまった!

 どうやって誤魔化そうかとマジで考えていると、


「お兄様、私は精霊の事を知っています。ランナが御使い様の事を知っていたでしょう。私だけではなくお母様もマリーもニューラもクイナもルーシェさんも知っていますよ」

「……そうだったのか。レイファ、精霊の事は内緒ね」


 自分で暴露して相手に内緒と頼む情けないオレ。でも可愛い妹は笑いながら承諾してくれた。

 そしてレイファはオレに質問をする。 


「精霊様ですか。どんな御方なのですか?」

「ピンク色の長い髪が似合っている綺麗な女性だよ。面白い事が好きで、何するか分からない、本当に理解不能な行動を取って頭を悩ませる存在だ。いつの間にか変な事をしてオレに責任を押し付けたり、後始末している最中にオレを驚かせたり」


 最初はいい雰囲気でサクラの事を説明していたけど、少しずつ恨み節になっていく。


「今回もオーファンが大変だって言われて、いきなりオーファンと体を入れ替えられて、そして一番最初に見たのが、知らん男がこっちに剣を振り下ろしている光景だったし。そいつをぶん殴ったら、それが王太子だって言うし、もうマジモンの修羅場だったよ。説明が足りないと思わないか? そしてそのまま殴り合いの乱闘に突入って酷くね? ……すまない、レイファ。愚痴ってしまって」


 妹に愚痴る兄。そんな妹は「だ、大丈夫です、気にしないでください」と言ってくれた。本当に優しく育った妹だ。


「……王太子に暴力を振るったと言われましたけど、大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ。オーファンの体で殴ったから。殴ったのはオーファンだと思っているよ」


 あの王太子はオーファンが御使いって思っていたな。後で誤解を解いた方が良いだろうか?


「……誤解を解いた方が良いと思います。オーファン様が罪に問われるのでは?」

「そうだね、後で誤解を解いておこう。でもあの王太子が納得するかな? あの手の輩は説明しても曲解するか聞かないタイプだし。説明しても聞く耳持たずに、更に罪を背負う可能性も」

「そこまで酷くはないと思いますが。王太子ですよ……」

「自分が正しいと思っている人種だよ、アレは。友達には絶対にしたくない存在だよ。それにあんな奴らに忠誠を誓う奴等とも友達になりたくないね。精霊と友達になった方が数倍もマシだよ」


 偶に思う。王侯貴族に対する認識や態度が、この世界の人達とオレでズレがあると。それはオレが前世の感覚のままでいるためだ。

 身分社会ではなく、前世の平等社会に根差した感覚で行動しているオレの方が、この世界ではおかしいのだ。

 レイファもオレの考え方に違和感を覚えただろう。オレの考え方は前世の常識と今世の経験によるものだ。ハッキリ言ってこの世界の人間とは価値観が違う。オレと同じような思考の持ち主は変人か、雷音さんと共に行動した精霊のサクラやジュゲム達。あと前世の記憶を持っている帝国皇女くらいだろう。

 レイファはオレの言葉にどう答えて良いか分からないようだ。そういえば、


「レイファは移動の準備は終わった? バルム伯爵領は結構大きい街だから見応えがあるよ」

「はい。荷物はほぼ持っていませんから準備はすぐに終わりました。お母様の準備を手伝おうとしてもランナが居るのでする事がありませんし、マリーの手伝いをしようと思っていたら……」


 その時にオレがマリーに暴露中だったんだな。


「お兄様の方は準備が終わったのですか?」

「オレは特に準備は必要ないかな。しいて言うなら携帯食くらいかな」

「帝国にはどのような方法で行くのですか? オーファン様からは空を飛んで行くと聞きましたが」

「両手両足から風魔法を発動させて空飛んで行くよ。御使いは精霊の力を借りて空を飛ぶのだけど、オレは自力で飛べるから」


 少しずつレイファの価値観が壊れているような気がする。御使いと会話すると価値観が壊れていくからな。


「レイファ。自分の価値観がおかしくなっていると思うけど、御使いと会話した人達が通る道だよ。素直に受け入れた方が楽だよ」

「……価値観をおかしくしたお兄様が言う言葉ではありません」


 オレもそう思うよ。オレも精霊に価値観をおかしくされたから。


「とりあえず、母さんの所に行こうか。オレも今は何もする事が無いし」


 リリア母さんの部屋を知らないので、レイファに案内を頼む事にした。

 レイファは気を取り直して案内してくれた。


「そういえばレイファは屋敷での生活には慣れた?」

「はい。皆様良くしてくださいます。ポアラ様やマリーと友達になりましたし、アンジェ様からも良くして貰っています。これもお兄様やお母様のお陰です」


 オレはレイファの明るい返事を聞いて「そうか、良かった」と言った。ウィール男爵家の皆と仲良くなれてこっちも安心した。


「お兄様はポアラ様の婚約者ですよね。ポアラ様に会わなくて良いのですか?」

「オーファンとしてさっき会ったよ。アンジェ様から口止めされているからね」

「……お兄様の婚約者なのでしょう? 説明した方が良いのでは?」

「解消可能の婚約者だからな。ポアラ様に好きな人が出来たら解消する事になっているんだ。だから正式の婚約者って訳じゃない」


 頭を掻きながら説明する。学校に通っているイケメン貴族達から告白されたり、したりしているだろう。それかクレイン様やアンジェ様が将来性のある貴族令息をお茶会に誘った可能性もあるな。


「……なんにせよ、ポアラ様の婚約は拒否可能だから心配ないだろう。アンジェ様も苦労人とは結婚させたくない様な事を言っていたし」

「お兄様。本気で言っています?」


 どうした妹よ。いきなり機嫌が悪くなってない? オレ変な事言った?


「……お兄様。アンジェ様とお話ししましょう」

「はい……」


 迫力ある表情でレイファはオレとアンジェ様の話し合いを提案し、オレの手を掴んで歩き出す。

 レイファが何を考えているか分からない。アンジェ様に無礼な事を言わなければ良いのだが、と思いながら、妹に手を引かれていた。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[気になる点] いなくなってもサクラだしで納得しそうになりましたけど、王都って精霊がなぜかいないって話でしたっけ。 まさか、ね?
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