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精霊の友として  作者: 北杜
九章 王都脱出編
249/276

17 バレた!①

新作はじめました!


魔力ゼロの探索者~魔力ゼロは無才ではなく異才だった~


詳しくは下のから!

     ↓

https://ncode.syosetu.com/n1381hy/



完結まで毎日投稿予定作品です。

よろしくお願いします。

 懐かしさに浸ったままじゃ駄目だ。するべき事をしないといけない。


「エイルド様、アントンですが、馬鹿な事をしない様に、王都を出るまでどこかの部屋に閉じ込める方が良くありませんか?」

「そうだな、捕まえておこう」


 エイルド様が呼ぶと、ダヤンが来た。……久しぶりに会ったダヤン。最後見た時はローランドに切られて重傷だったが、無事だったんだな。


「アントンを捕まえてくれ。あいつが馬鹿しない様に部屋に隔離してほしい」

「分かりました」


 頭を下げて礼をし、アントンを捜しに行くダヤン。

 ダヤンが無事だったのなら、他の部下達も無事だったんだな。良かった。

 ダヤンが探しに行こうとしていたが、隣の部屋から声が聞こえた。声の主はマリーだ。

 マリーの悲鳴を聞いてダヤンが部屋に入っていく。エイルド様とドイル様も駆けつけようとするので、オレも付いていく。


「何をするのですか! アントン様! 馬鹿な事は止めてください!」


 オレ達が見たのは、アントンがペンダントを壊そうとしている場面だった。近くにはポアラ様とマリーが居た。


「うるさい! 平民が口を出すな! これを壊されたくなかったらオレの言う事を聞け!」


 ペンダントが人質? モノ質に囚われていて、ポアラ様達は動けないようだ。

 ……あのペンダントって、ポアラ様から貰って、中に何か入れて送り返してくれと頼まれていたモノに似ているような。でも捕虜になったから結局送り返せなかったんだよな。それをどうしてポアラ様が持っているんだ?


「これが大事なのだろう! 壊されたくなければ、オレの言う事を聞け!」

「こ、壊さないで。な、なにが望みなの」


 ポアラ様、どうして狼狽えているのですか? そんなにそのペンダントが大事なの? エイルド様達も動けないでいるし! それ以前にモノで脅迫してアントン馬鹿なのか?


「オレと一緒に来い! お前を人質に取って、エイルドを王族に取り入らせる。そしてオレは王族の護衛騎士になり出世して、将来はガハァ!」


 面倒だったからオレは土魔法の石礫をアントンの腹に当てて気絶させた。

 アントンが気絶しているのを確認して、落ちているペンダントをポアラ様に渡す。


「ポアラ様、ペンダントです」

「ありがとう、オーファン」


 ペンダントを大事に抱きしめるポアラ様。なんか久しぶりにポアラ様に会った気がする。昼間は騒動でバタバタしていたからな。


「オーファンさん、本当にありがとうございます。このペンダントはトルクお兄ちゃんがポアラ様にくれた大事なモノだったのです。救ってくれて本当にありがとうございます」


 マリーの声を聞くのも久しぶりだな。元気そうで良かった良かった。


「しかし大事な品物を強奪して命令を聞かせるなんて。最低な奴ですね」

「……何度も何度も従者を変更してくれと頼んだが、トルクが戻るまでと言われてな。ここまで馬鹿な事をしたのなら従者を辞めさせるだろう」


 エイルド様が見下しながら言う。オレがバルム砦に行ったから、アントンが後釜の従者になったのか。


「オーファン。トルクみたいに魔法を使ったわね。まるでトルクみたい」

「トルクに教わりましたから」


 ポアラ様は勘が良くなったのか? 今までは自分の興味が有る事にしか話さなかったのに。……魔法の使用法に興味が湧いたのだろうな。

 おっと騒ぎを聞いて駆けつけて来た使用人達。エイルド様が説明し、ダヤンがアントンを捕縛して連れて行った。


「……オーファン、少し変わった? 魔法の使い方が前よりも上手くなっている気がする。トルクの様な魔法の使い方で」

「そうだな、戦い方もなんか少し変わったか? トルクのような感じがする」


 ポアラ様とエイルド様の直感か! 二人とも得意分野に関しては勘が鋭いんだよな。


「気のせいですよ。二人とも。それよりも荷物整理は終わりましたか?」

「大丈夫だよ。ほとんど終わっているから。後は持ち帰る本の選定だけだけど……」


 二人が返事をする前にマリーが答える。

 本の選定か……、結構本が多いな。


「……明日持って行く分と、次の便で運んでもらう本を分けてみてはどうですか?」

「そうだね。ありがとう、オーファンさん」


 マリーは木箱を貰いに部屋を出て行った。オレ達も部屋に戻ろうと考えていたが、ドイル様が謝罪してきた。


「本当に助かったよ。ありがとう、トルク」

「……私はトルクではありませんよ。ドイル様」


 なんでオレの名前で呼びかけるの!? マジでビックリした! まさか正体がバレている? そんなまさか! でもとっさに躱したオレ有能!


「……本当にオーファンなの? なんかトルクみたいだよね。前にオーファンと一緒に訓練した時と感じが違うんだ。目を瞑っていたらオーファンじゃなくてトルクの様に感じるよ」

「私はオーファンですよ。トルクは帝国に居ますよ」


 疑いの目でオレを見るドイル様。何だ? もしかしてさっきのは引っ掛けだったのか? 正体がバレない様にもっと丁寧にオーファンの演技をしなきゃ。

 頑張れ! オレの表情筋! ポーカーフェイスだ!

 でもドイル様ってこんなに勘が良かったっけ?


「……口止めでもされているのかな? お母様とお爺様なら知っているかな? どう思う、トルク」

「ですから私はトルクではありません。オーファンです」


 オレがトルクであることを前提にして話さないでください。それとも罠なのですか? この子っていつの間に策士に育ったの?


「……トルクならこの程度の罠にかかる訳がないか。ごめんね、オーファン」


 と言われてドイル様と別れたが、……引っ掛かりそうでしたよ。それにしても、最後まで疑いは晴れなかったな。ドイル様が三人の中で一番怖い存在だと思ったよ。この一年近くで一番変わったのはドイル様ではないのか?


「オーファンさん、木箱運ぶのを手伝って!」


 マリーから手伝いを頼まれた。一人で木箱を運ぶのが難しいみたいだ。

 オレはマリーと一緒に木箱を運び、部屋に戻ってポアラ様の本を入れる。

 いつの間にか部屋には誰もおらず、オレとマリーだけになった。二人で黙々と本を入れる。


「しかしビックリしたわ。オーファンさんとお兄ちゃんが入れ替わっているなんて」


 突然のクリティカルな言葉を食らい「ブホッ!」と息を吐いた。……どうして知っているんだ!


「リリア叔母さん達の会話を聞いたの。ちょうど部屋の隣で荷物整理していたら声が聞こえてね。私もビックリしたよ」

「……みんなには内密に頼むよ、マリー」

「分かっているよ。でも無事で良かったよ。叔母さん達も喜んでいるし。……私も嬉しいよ」


 明るい声から泣き出しそうな声で無事を喜んだマリーに、頭を撫でて「ただいま」と言ったら「おかえり、おにいちゃん」と涙を流しながら返した。


「オレの代わりに母さんを助けてくれてありがとうな、マリー」

「……私は何も出来なかったよ。お兄ちゃんが居なくなって叔母さんの心が壊れたときも、何も出来なかった」


 心が壊れた? どういう事だ? 聞いていないぞ!


「お兄ちゃんが捕虜になった事を知って倒れて、ドイル様をお兄ちゃんと勘違いして……」


 精神的にマジで酷かったのか……。


「バルム砦にあったお兄ちゃんの私物を届けてくれたモリスって人が、お兄ちゃんが死んだと言って……」


 ……モリスめ、逆恨みでオレを陥れるだけではなく、リリア母さんまで傷つけやがって。今度会ったら半殺しの半殺しにしてやる!


「マリーが母さんの側に居なければもっと酷い状態になっていたと思うよ。マリーが側に居たからギリギリ助かったんだ。だから何も出来なかったって言わないでくれ。オレの方が何も出来ていないんだから」


 マリーを慰める。オレは母親の事をマリーに頼りすぎていた気がする。……母親孝行出来てないな。


「まだ帝国でするべき事がある。もう少ししたら帰ってくるから、母さんの事を頼んで良いか?」


 今はマリーに負担をかけているが、王国に戻ったら家族と暮らそう。レイファ達も戻って来たんだから。


「王国に戻ったら、バルム砦で従軍した給料でウィール男爵領に大きい家を買って、……借家の方が良いかな? それで皆でゆっくり暮らそう。従者としての給料とかあれば生活費は……足りんな……。長男として生活費を頑張って稼がないと……」


 マリーを慰めながら将来設計をするが、従者の給料では生活費が足りない可能性がある。……レオナルド様に頼んで給料を上げてもらおうかな? ……あれ、なんだかマリーの様子がおかしい。


「……お兄ちゃん。ウィール男爵領には帰れないの」


 ウィール男爵領は帝国に奪われた。料理人補佐のイーズやカミーラさん達はバルム伯爵領に逃げる事が出来たが、農園管理者のゴランさんや鍛冶師のキャサリンさんは、領民を逃がす為に帝国兵相手に戦死した。……あんなに強かった人が死んだなんて。

 ……辺境の村は焼かれ、男爵領は帝国に奪われていたなんて……。オレは男爵領の事を全く知らなかった……。

 王国に戻ったらウィール男爵領で今まで通りの生活をするとばかり思っていた。

 エイルド様やポアラ様やドイル様の我儘を聞き、レオナルド様の事務作業を手伝い、ゴランさん達と一緒に畑仕事を頑張り、キャサリンさんと色んな物を作り、イーズと一緒に料理を考えたり、クレイン男爵やアンジェ様達とウィール男爵領の事を相談したり。

 リリア母さんは長年の願いがかなってレイファと一緒に暮す事が出来て、マリーや祖母と一緒に幸せな日々を送って……

 ……。オレが居ない間に王国ではいろんな事があったんだ……。


「今日の事だってそう。王太子達に殺されて、皆ともう会えないんだって思った。男爵領には二度と戻れないって思った。二度とリリア叔母さんにもお兄ちゃんにも会えないって、本気で思ったんだから……」


 今まで気丈に我慢していたマリー。オレが居ないぶん自分がしっかりしなきゃと、折れそうな心に蓋をして頑張っていたみたいだ。でもオレと再会した今、感情を剥き出しにして、オレに抱き着いて泣いている。

 ……何も言えなくなったオレは、マリーの頭を撫でる事しか出来なかった。

 マリーは両親と祖父を亡くし、故郷を失くした。これ以上、不幸になってほしくない。


「大丈夫だよ。オレは必ず帰ってくるから。男爵領にも帰れるように頑張るから。だから元気出してくれ」


 こんな陳腐な事しか言えない自分が情けない。オーファンだったらもっと気の利いた事が言えるかな? ……クリスハルトなら言えそうだな。


「マリーさん、リリア様がお呼びで……」


 オレとマリーが抱き合っている所を見て驚くニューラ。そして、


「オーファンさんはマリーの様な子が好きなのですか!」


 混乱していろいろと勘違いした言葉を言い放った。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一度逃がしたのはまずかったものの、アントン無事捕縛。 そりゃ捕まえるよね。 [気になる点] 秘密が一人、また一人とバレていきますね。 このまま芋づる式にポーラ達にもバレるの、時間の問題かも…
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