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精霊の友として  作者: 北杜
九章 王都脱出編
232/276

2 説明②

 ポアラの質問への回答を先伸ばすオーファン。


「とりあえず、帝都での出来事を先に答えます。トルクがアイローン伯爵とトルクの妹が帝都に居るという情報を聞いた時の事です」


 ロックマイヤー公爵家のクリスハルトから、アイローン伯爵が妹と一緒に帝都に居るという情報を得て、トルクは妹を救出する事を決めた。オーファンはトルクの手伝いの為に一緒に行動する。

 実際はララーシャルから「経験を積みなさい」と言われたので強制的にトルクに付いていったという事は話さなかった。

 帝都のソバーレル公爵邸に忍び込み、監禁されていたニューラを助けた。トルクは帝都にいた妹がレイファではないと気付いた。しかし腹違いの妹を助ける為に、ニューラの母親で大怪我を負っていたクイナも救う。

 アイローン伯爵に遭遇したトルクは恨みを晴らすように魔法等の的にし、その途中でソバーレル公爵が出てきてその騎士達に囲まれたが、窮地を脱出して、何故かオーファンとニューラとクイナは王国のウィール男爵邸に移動していた。


「これが私の知っている情報です。疑問はいろいろと有ると思いますが、私もどうしてこのような状況に陥っているのか、トルクに問い質したい心境なのです」


 突っ込みどころ満載の説明だった。トルクが精霊の友人である御使いなのは秘密だと思って、説明する事が出来なかった。それに精霊の説明をしてもこの場にいる人達は信じないと思ったし、オーファン自身も精霊のサクラの姿を目にすることが出来たのは夢のような場所でだけだった。超常現象を自分の目で視て、トルクの尋常でない行動に接する事によって初めて信じる事が出来たのだ。だから精霊の事は信じてもらえないと考えるオーファン。


「質問だが良いか?」


 サムデイルがオーファンに問いかける。


「どうやってトルクとお主はソバーレル公爵邸に侵入したのだ?」

「トルクと一緒にこそっと侵入しました」

「どうやって監禁されていた者を探し出せた」

「トルクの友人の協力があったので」

「どうやって大怪我をしているクイナを、それはトルクが回復魔法を使ったからか?」

「ニューラもクイナさんもトルクが回復魔法を使って怪我を癒しました」

「どうやってソバーレル公爵邸から脱出できたのだ?」

「気絶していたので分かりません」

「どうやって帝都から王都に来たのだ?」

「同じく気絶していたので分かりません」

「……お前、ワシを舐めているのか? トルクの友人だからと言って馬鹿にしているのか?」

「どうしてこんな状況に陥っているのか、私がトルクに聞きたいです……」


 オーファンは『絶対にトルクのせいだ。トルクが精霊に頼んで緊急措置としてオレとニューラ達を移動させたんだ。どうして帝都じゃなくて王都なんだよ!』と心の中でトルクに悪態をつく。

 サムデイルは泣き止んだクイナにも質問をする。


「少年の説明に補足はあるか?」

「あの、アイローン伯爵を落とし穴に落として、水魔法の水玉でいたぶっていましたが……」

「ファルゴン様を殴っていましたけど良かったのですか?」


 クイナとニューラはトルクとオーファンの行動、父親や弟に折檻した事を暴露する。なぜかオーファンの方に視線が集まる。


「……トルクの行動で私は責任持てません。それにトルクは母親や妹を不幸にした父親を恨んでいましたから」


 オーファンはトルクが母親や妹に代わって恨みを晴らしたと言う。そういえばアイローン伯爵に水魔法を当て、息子のファルゴンを殴ったのは自分だったなとオーファンは思い出す。そして『トルクも何かしていたような』と思い出していた。


「あ、あの、トルクお兄様はニューラ達を助ける為に帝都に来たのですか?」


 トルクの妹のレイファがオーファンに話しかける。オーファンは「アイローン伯爵の元に居る妹を助ける為に帝都に行きました」と答える。そしてレイファは、


「では王都に戻ってくるのですか? 家族と一緒に暮せるのですか?」

「……用事が済んだら戻ってくると思います」


 トルクは妹を助ける為に帝都に来たが、先代皇帝の息子であるオーファンを助ける為にも帝都に来た。その後はラスカル男爵領に居る先代御使いを見舞う予定だ。この事は皆に話さない。どんな用事かと聞かれたが、詳しくは知らないと濁した。

 トルクは妹に好かれているとオーファンは思った。そして妹のベルリディアも自分の事を心配していると思い、帝国に戻らないといけないと考える。

 リリアはトルクが無事だと分かってオーファンに感謝を述べる。そしてオーファンにこれからどうするのか聞いた。


「帝国に戻ります。私を待っている家族がいますので」

「どうやって帝国に行くの~? 国境は警備が厳重だよ~」


 喋り方が独特なルーシェに対してオーファンは考える。……方法はある。トルクが自力で空を飛べるのだから、自分も訓練をしたら空と飛べると思った。


「帰還の方法はあります。ですが訓練が必要なので少しだけ滞在の許可を頂ければ」


 オーファンの言葉に疑問に思う者達。そしてオーファンはサムデイルに訓練に必要なモノを頼んだ。


「それは手に入るが、どうするのだ?

「訓練に必要なので」

「分かった。明日までに持ってこよう」


 オーファンはサムデイルに礼を言う。そしてエイルドが、


「訓練なら私が剣の相手をするぞ! トルクから剣を習ったのだろう。私が相手になろう!」


 と言ってオーファンを連れて応接間から出て行った。そしてドイルもその後を追う。

 オーファンが居なくなり、リリアとクイナも疲れた様子を見せたので、話し合いを終える事にした。

 リリアとクイナを休ませる為に、マリーとポアラとレイファとランナも一緒に退出する。ルーシェも一緒に退出しようとしたが、アンジェに呼び止められた。

 応接間に残ったのはサムデイルとアンジェとルーシェの三人。三人は今回の話し合いについて、オーファンについて相談をする。


「オーファンと言う少年だが、なんというかトルクと会話しているようだった」

「私もそう思いました。偶にしぐさがトルクさんに似ているので」

「信頼できると思うか?」

「嘘は言ってないと思います。でも隠し事が有ると感じました」


 オーファンという少年。トルクの友人という子供。信じても良いとアンジェとサムデイルは思った。


「ルーシェさん、帝国の密偵だった貴方にも意見を聞きたいのですけど……」

「なに! 密偵! 聞いていないぞ! アンジェ!」


 サムデイルはルーシェを凝視する。リリアの妹で、レイファとランナと一緒に王都に来たとしか聞いていなかったからだ。


「アハハ~。元密偵です~。この書類はバルム伯爵にお渡しします~。帝国の捕虜収容施設の捕虜の名簿です~」


 懐から書類を出してサムデイルに渡すルーシェ。そして、


「詳しくはしりませんが~、アイローン伯爵がソバーレル公爵と繋がっていたという話は聞いたことあります~。それからロックマイヤー公爵の次期当主が王国の捕虜になった事も聞いたことあります~」


 二人はルーシェの話を聞いてソバーレル公爵が何者なのか聞いてみた。


「先々代皇帝の孫で、皇位継承権のある方ですね~」


 帝都では後継者争いが過激化していて、ソバーレル公爵家、サンフィールド公爵家、ヤンキース辺境伯家、そして王族のエルアーモ皇子が帝位継承のために暗闘していた。現在はエルアーモ皇子が有利と聞いている。


「現皇帝の子息達は継がないのか?」

「長男は体が弱くて~、次男は性癖がヤバくて~、三男は女不信との情報です~。全員が辞退したと聞きました~」


 サムデイルの質問に答えるルーシェ。そして、


「あと未確定ですが、先代皇帝の隠し子がいるとか~。ファーレンフォール伯爵家の子供らしいですよ~。その子を皇帝にしようと企んでいる勢力が有るとか無いとか~」

「他にも知ってそうな情報がありそうだな。逆に王国の情報はどんな事を伝えたのだ?」

「えーと~、王国の食べ物の生産地のほかに~、王族派と辺境伯派の貴族達くらいですね~。あ。そういえばリリア姉さんの生存ですけど帝国は掴んでいました。私はリリア姉さんの情報が知りたくて、帝国に王国の情報を売ったのです」


 ……いろんな情報が筒抜けだったのかとため息をつくサムデイル。そしてルーシェに帝国側の情報を洗いざらい喋る様に命じた。

 そして実はこの場には四人目がいた。最初からずっとオーファンと一緒に居た人物がいる。桜色の髪をした精霊のサクラが王国のウィール男爵邸に居た。

 サクラもドラゴンに王国へと飛ばされた被害者である。ドラゴンの術に抵抗出来なくもなかったのだか、それでもしドラゴンの術が解けてしまったら、普通の人間達は空から落ちてしまう。全員を助けるのに失敗したら不味いと考えて、仕方なく飛ばされるのに身を任せた。

 ドラゴンに飛ばされて着いた場所がトルクの家族のいる場所だった。サクラはドラゴンが『ニューラが帰りたいと願った場所に飛ばした』と判断する。ニューラやクイナには良いが、オーファンとサクラには良い迷惑だ。

 本来ならサクラは御使いであるトルクの元に帰るのだが、オーファンを置いて一人で帰ったら、トルクに何を言われるかわからない。そう思ってオーファンと一緒に行動をする事にした。ついでにララーシャルからの頼みである『オーファンに経験を積ませる』という頼みも消化出来る。

 しかし現状をトルク達に伝えることが出来ない。これにはサクラも困った。トルクに精霊の印を与えたので、サクラはトルクと遠距離でも精神を通してトルクと話す事が出来るのだが、トルクが魔力を使い過ぎて気絶して意識が無いので伝える事が出来ない。

 伝言を頼もうにも、王都周辺には自由に空を飛ぶ事が出来る風の精霊が近くに居ない。

 トルクの魔力が回復したら寝ていても会話する事が可能だが、回復まで数日はかかるだろう。

 トルクが大丈夫なのは感覚で分かるけど、トルクを助ける為にドラゴンが無茶をしてないか心配もしていた。……まぁライと同郷のトルクなら大丈夫だと考えているし、近くにはララーシャルも居るので問題ないだろう。

 そして帰ったらドラゴンをぶん殴ってやろうと決める。タヌキ姿の精霊に罰を与えてやるとサクラは誰にも聞こえないが「覚えていろよ! タヌキのポンポコドラゴンめ!」と叫んだ。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁ!サクラ!ココにいた! …忘れてたー。面白いー!
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