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精霊の友として  作者: 北杜
八章 帝国皇都騒動編
201/275

2 衝撃の夕食

12月2日により『精霊の友として』一巻発売決定!


詳しくは講談社ラノベ文庫、Kラノベブックスのホームページをご覧ください。

 部屋の外に居た侍女さんから「夕食の準備が出来ました」と言われたので、隣部屋のオーファンとベルリディアと一緒に侍女さん案内で食堂に向かった。

 食堂には公爵さんとクリスハルトが先に座っており、クリスハルトの横には知らない美少女が座っていた。……フローラさんに似ているような気がするから親族かな?


「トルク殿、ララーシャル殿、オーファン、ベルリディア。旅の疲れは取れただろうか?」

「部屋で休ませて頂いたので、旅の疲れは取れました。気を遣って頂いて感謝致します」

 オーファンが頭を下げると同時にベルリディアも頭を下げる。兄妹だから以心伝心だ。

「私達も良いお部屋で休ませて頂きましたので、旅の疲れも取れました。誠にありがとうございます、デックスレム様」


 ララーシャルが真面目に美しい礼儀作法で公爵さん達に返事を返す。……こういう動作を見ると本当に上流階級のお姫様だよな。


「私の娘を紹介しよう。クリスハルトの妹でルルーファルだ。ルルーシャル義母から名前を貰って、トルク殿達よりも少し年上かな。ルルーファルは皇族の姫様の学友で、私達と離れて城で暮らしている」

「初めまして、ルルーファルと申します。宜しくお願い致しますわ」


 こっちも上流階級のお姫様って感じだな。ルルーファルさんは立ち上がって丁寧に自己紹介する。おっと返事を返さないと!


「初めまして、トルクと申します。ロックマイヤー公爵とクリスハルトにはお世話になっております」

「初めまして、ララーシャルと申します。こちらこそよろしくお願いしますね」


 オーファンとベルリディアも挨拶して全員席に座った。そして食堂の扉が開いて、良い匂いと共に夕食がテーブルに配膳される。そして公爵さんの号令で夕食が始まった。いろんな種類の料理があって美味しそうだな。


「トルク様はルルーシャル御婆様の後継者である御使い様だとお兄様からお聞きしました。ララーシャル様は特殊な精霊とも」

「はい、その通りです。それからルルーファル様には見えませんが、私の横にはサクラという精霊もいます」


 そのサクラはオレの皿から料理を食べ、「トルク、次はお酒が欲しいわ」と言っているので、公爵さんにサクラ用にお酒を用意してもらった。

 オレの近くのテーブルにお酒とコップを置くと、「お酒とコップが消えた!」と驚くルルーファル様。実際はサクラが手に取ったときに魔法で見えなくなり、サクラは手酌でお酒を飲んでいる。


「ララーシャル様のようにサクラ様も美しい精霊なのでしょうか?」

「そうですね。奇麗ですよ」


 褒めないとサクラが不機嫌になるからな。実際に奇麗だからその通りだけど。誉められて嬉しがるサクラは置いておいて、……この魚料理は美味しいな。焼き加減が絶妙だ! カボスっぽい果実の汁の酸味がマッチして美味い!


「私も御使いになる為に御婆様の訓練を受けましたが、精霊術を覚える事が出来なくて。トルク様はどのような修行をしたのですか?」

「ルルーシャル婆さんから教わった修行法かな? その前に精霊を見たり、声を聞いたりした事があったから、そのお陰かもしれないですね」

「修行をしないで精霊を見た事があったのですか! どうすればそんな事が」

「確か……、殴られて、地面に頭を叩きつけられたショックで精霊が見える様になったのかな。精霊が言うには一時的なモノって言ってましたよ」


 頭に衝撃を受けたショックで精霊が見えるようになった。嘘のような真実を言うと、テーブルで食事をしているララーシャルとサクラ以外の者が全員こっちを見る。

 ……どした? 今食べている、魚料理の食べ方が変かな? カルシウム摂取の為に小骨や背骨ごと食べているけど、マナー違反だった?


「……よく無事だったな。怪我とかはしなかったのか?」

「精霊から回復魔法を習って治療したから大丈夫。そのときに回復魔法を覚えたんだよ」


 クリスハルトが怪我の具合を聞いてくる。昔の事だし、回復魔法で治したから大丈夫と答えた。


「頭にショックを受けたら精霊が見える事あるのだろうか?」

「確率はかなり低いです。ゼロに近いですね。ショックを受けても見る事が出来ず、最悪死ぬ可能性の方が高いですよ。トルクの場合はもの凄く運が良かっただけです。一生分の幸運を使ったのではないでしょうか」


 公爵さんがショックの可能性を口にしたが、ララーシャルが即座に否定して、皆がオレを見る。……ララーシャル、もう少しオブラートに包んで言えなかったの?


「多分だけど、トルクが精霊に回復魔法を教わって癒していなかったら、翌日には死んでいたんじゃないの? かなり痛かったと思うけど頭に血が上って痛みを感じる事が出来なかったのではないの?」


 ……思い出す。思い出す。思い出す。……ま、良いか。昔の事だし、過ぎた事だ。日頃の行いが良かったと思って、ハハハと笑いながら忘れよう。……そういえば帝都の屋敷のパンは、公爵領で食べたパンよりも味が落ちるな。やっぱり作っているパン職人の差なのかな?

 話題を変える様にベルリディアがルルーファルに話しかけた。


「そういえば、ルルーファル様は皇族の姫様のご学友とおっしゃっていましたが、シャルミユーナ様のご学友なのですか?」

「はい、シャルミユーナ様に恐れ多くも学友にして頂いて、姫様が暮らしている後宮に住んでいます」


 ……確か後宮に住んでいる理由って変態皇子から逃げる為だったよな。公爵さんの方を見ると『その通りだ』と言うようにため息を吐きそうな顔で頷いた。


「ではラグーナ様の所にいる私のお母様の事も御存知ですか? レンリーディアという名前です」

「はい、お会いしました。オーファンさんとベルリディアさんの事を心配していましたよ」


 母親が無事だった事に喜ぶ兄妹。良かったな、二人とも苦労したもんな。


「しかし男性厳禁の後宮にいますのでオーファンさんは入る事が出来ません。ベルリディアさんなら何とか後宮に入る事が出来るのですが」


 ルルーファルさんの言葉を聞いてオーファンは仕方がないと言う表情をする。そして、


「ベルリディアだけでも良いので会わせてもらいませんか?」

「大丈夫です。お父様がラグーナ様に御手紙を出していますので、御兄妹で会えますよ」


 ベルリディアがルルーファルさんの言葉を聞いて喜ぶ。そうだな、兄妹で会った方が良いよな。……メインディッシュの肉料理が来た。良い匂いで美味しそうだな!


「そういえば、ルルーファル、先代皇帝の容体は? 具合は良いのか?」

「その件に関しては私も良く分かりません。でも持ち直したとシャルミユーナ様から聞いています」


 先代皇帝、ララーシャルの弟だったな。クリスハルトがララーシャルの代わりに聞いたのだろう。ララーシャルが持ち直したって聞いて、安心したようだ。


「でも先代皇帝も御高齢なので、お城の医師たちは予断を許さないと……」


 急がないとヤバいかな? どっちにしても会うけど、表から公爵さん達と一緒に会うか、裏からこっそり忍び込んで会うかは、ララーシャルと相談しよう。

 少し話題が暗くなったので、ルルーファルさんが、今、帝都で一番話題のデザートを持ってきたと言う。


「お城でも皇族とその一部の者しか食べられない、とても美味しくて洗練されたデザートですよ」


 そう言われると、オレの料理人心に火が灯る。どんな料理か吟味してやる!


「トルク、デザートだけど私の分も頂戴ね! ……ってなんで気合い入れているの? デザートを頂戴って言っただけなのに!」

「サクラ、料理の味の追求は、料理人として当然の事だ。新しい料理と聞いたら気合いを入れるのは当然じゃないか!」

「……料理人じゃなくて、御使いでしょう、トルクは」


 サクラのツッコミを受けて、デザートが全員に配られ、食べる。


「ツルンとして面白い食感で美味しい!」

「柔らかくて甘くてとても美味しいです!」


 オーファンとベルリディアは絶賛し、


「これが噂のデザートか! 素晴らしい味だ!」

「皇族や一部の者しか食べる事が出来ないデザート。この味なら皇族専用となるな」


 クリスハルトと公爵さんも絶賛している。


「柔らかくて、甘くて美味しいわ。どうやって作るのかしら?」


 ララーシャルも初めて食べるデザートという事は、ララーシャルが居た時代にはなかったデザートだ。


「この料理の作り方や材料は秘密です。どうしました? トルク様、プリンのお味は如何ですか?」


 目の前にプリンがある。前世で食べた事があるようなプリンだ。味は……イマイチ。前世で食べたプリンの方が美味いと感じる。

 それよりもこのプリンは誰が作ったのだ? どうして名前も前世と同じプリンなんだ?

 オレと同じ、前世の記憶を持つ人間が居るのか? この帝国に! プリンを作った人間はオレと同じ前世の記憶を持っているのか?


「ねえ、トルク、これってプリンっていうデザートよね、ライが作った事ある料理に、失敗作でプリンっていう名前の料理があるの」

「このデザートを作った人間は、オレみたいに転生者か、雷音さんのような転移者かもしれない……」


 オレは帝都での用事に、この料理を、プリンを作った人間に会う事を付け足した。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 脱線フラグ・・・(?。妹かなんかはほっといていいのかねぇ
[気になる点] プリンという名称は昭和中盤になって呼ばれるようになるから、雷音さんって下手したらトルクの爺ちゃんかもしれん [一言] プディングではなくプリンなところが現代感ある。しかも、甘味を取り扱…
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