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精霊の友として  作者: 北杜
二章 下人編
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閑話 男爵家文官の回想録1

私はバルム領ウィール男爵に仕えるレオナルドという。

今回は辺境の村が新しく男爵様の領地になったので土地を管理する為に現地に向かっている。

もともとはアイローン伯爵領の領地だったのだが、不正が発覚して領地が没収されたらしい。それ以上の情報がないので良く分からないがアイローン伯爵は横暴な貴族で平民の事は奴隷としか思っていない貴族だ。近年ではアイローン伯爵領地で銀山が見つかった、他領地に融資をして王国の発展に繋げた、戦争で帝国の爵位を持つ貴族たちを捕虜として帝国との交渉を優位にした、アイローン伯爵の次男が王国親衛隊の一員となった等々と貴族としての実績を上げていたのだが、その実績がこの二、三年で下がり始めた。

領地で見つかった銀山の一部を懐に入れて見つかってしまい罰を受けた、融資の利子が暴利で他の貴族から叩かれている、水害により不作になり無茶な労役で平民から反乱を起こされた、帝国との交渉でアイローン伯爵が不利な事をやらかした等々と現在は悪い事しか聞かない。

やはり、人間悪いことをするとバレるものだな。不正をしないように私も心掛けて行動しよう。




そろそろ名前が無い辺境の村だ。過去の記録を調べてみたら去年からは豊作だが、それ以前は不作が続いていたらしい。年貢も相場よりも多く取って他の貴族の懐に入っていたそうだ。戦争の被害もあったらしいが補償しなかったらしい。酷い話だ。

私が管理をするからには税は相場に戻して村の事をいろいろ聞いておかなければならない。

そういえばこの村には魔法が使える子供がいると他の村から聞いたことある。なんでも、狩りと水魔法が得意で村に貢献をしているとか。それから村が魔物に襲われたときに怪我した人達を的確に治療をしたとか。

そういえば農園責任者のゴランが新しい人材を欲しがっていたな。魔法も使える子供は欲しいから出来れば引き取りたい。子供のころから教育をして育てれば男爵家の為になる。村には迷惑をかけるが、育てたら辺境の村の管理を任せたら面白いかもしれない。

考えていると辺境の村に着いた。この村にもそろそろ名前を付けた方が良いのかもしれないな。

近くに居る村人に村長の家を案内させて家の中に入る。老人の夫婦がいるようだがこの老人が村長だろうか。


「私はバルム領ウィール男爵に仕えるレオナルドだ。お前がこの村の村長か?」

「はい、私がこの村の村長です。なにか御用でしょうか?」

「うむ、私がこの村の管理を任されたから、今回は村の見回りだ。それから村に魔法を使う子供がいると噂で聞いたのでな。出来ればその子を引き取りたい」


村長が驚いているな。噂の魔法を使う子供は村に貢献をしているから、いきなり引き取りたいと言ったら驚くだろう。


「魔法を使う男の子供がいます、今呼んできますのでしばらくお待ちください」


村長が家から出て行った。子供を呼んでくるのだろう。私は村長の家で待った。それから少ししたら村長が子供を連れてやってきた。なかなか頭の良さそうな子供だな。これは鍛えがいがありそうだな。


「ほう、この子が魔法を使える子供か」

「はい、そうです。名前はトルクといいます」

「トルクと言ったな。明日の朝にこの村を出るから準備をしておけ」


そして私は村長の家を出てこの村を見て回った。村長が後からついてくるようで村の案内をしてくれるようだ。


「申し訳ございません、一つよろしいでしょうか」

「どうした?」

「前任の貴族様はどうなりましたか?」


前任の管理をしていた奴か、確か不正したアイローン伯爵の罪を被った男爵の一人だったな。確か死罪だったはずだ。


「今後はこの村の管理は私になる、前任の奴は罪を犯したのでこの村にはもう来ない」


確か村長の娘は魔法が使えるから男爵家の養女になったが、その後、男爵の不正が発覚して男爵領から出て行ったと聞いた。現在はこの村に戻って生活しているが体調を崩しているらしい。


「安心をしろ、お前の娘は大丈夫だ。孫にも酷いことはしない」

「ご存じなのですか」

「うむ、私なりに調べている。もうこの村は私の管理になる。もう大丈夫だ」


村長の娘は男爵の養女になったが、その男爵家が不正をして罰を受けた時に男爵家を出たと聞いている。彼女も罰を受けてこの村に来たらしいがそれまで大変だっただろう。私がこの村を管理するから問題ないはずだ。そういえばその子供がトルクなのか。ということはトルクは男爵の子供なのか?

まあ良い。たとえ男爵が不正をしてもその養女と子供には罪はない。


「よろしくお願いします、ワシの初孫なんです」

「わかった」


もちろん私がトルクを育ててやろう、なかなか見どころがある少年だ。育て方次第では私の右腕になれるかもしれないな。




次の日の朝。


「叔父さん、後の事はお願いします」

「トルク、すまない」

「村長、母さんの事をお願いします」

「分かった」


見送りの人間は少ないが二人ともトルクを心から心配をしている事がわかる。


「準備は出来ました」

「分かった、出発する」

「はい」


良い返事だ、これからトルクが何を出来るかいろいろ話してみるか。


「文官様よろしいでしょうか?」

「なんだ」

「この村の名前は何でしょうか?」

「ここはバルム伯爵が治める領地の辺境の村だ」


……村の名前を決めておくか。男爵様に相談をしよう。




旅の間にトルクの事を考えていた。

トルクは母親から文字や計算を習い、下級魔法も使える。馬の世話をするからと言って土魔法で土の桶を作り、水魔法で桶に水を入れて馬に飲ませる。食事の時は火魔法でたき火を作り、前は味気ない保存食を食べていたが、トルクがサウルを捕ってきて調理をして薬草入りスープを食べる。

本当にこの子供は八歳か?私の仕事内容も理解しているし。確かにこの子は昔、貴族の家に住んでいたがそれでも頭が良すぎないか?最初は「良い買い物をした」と思ったが今は「何者だ、この子は。母親の教育だけでここまで育つのか?」と思っている。

確か男爵家にはトルクと同じ年の子供達がいるがトルクとは違いすぎる。経験と苦労をするとそれだけ賢くなるのか?

とりあえずは農園責任者のゴランにトルクの教育の相談をしよう。こいつは男爵家の為になる。まずは農園の勉強の為に畑仕事をさせよう。そしてゴランの下につけて農園責任者の仕事を見せよう。

その後は私の仕事の手伝いだな。男爵様のお子様の相手をさせて信頼を築かせるのも面白いかもしれない。

そんな事を考え町に着いた。

農園に行きゴランを見つける。


「ゴラン、こいつが新人のトルクだ。後はよろしく頼むぞ。それから後で少し相談をしたいから時間をくれ」


この後は男爵様に挨拶をしなければならない。

今回の旅、いろいろと男爵様に報告しないといけないな。辺境の村の名前とかトルクの事を。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[気になる点] >確か村長の娘は魔法が使えるから男爵家の養女になったがその後、男爵の不正が発覚して男爵領から出て行ったと聞いた。現在はこの村に戻って生活しているが体調を崩しているらしい。 >「安心を…
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