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精霊の友として  作者: 北杜
七章 帝国公爵領編
175/275

12 出発と懐かしき精霊

書籍化決定しました!


詳しい報告は活動報告で!

 深夜、日付が変わりそうな時間帯にラスカル領に行く準備を終わった者達が大樹の近くに集まっている。

 オーファンとベルリディアはどうしてこんな時間に集まっているのかを公爵さんに問いかけている。


「ラスカル男爵領に行く為だ。詳しくは後で教える」

「今からラスカル男爵領に行くのですか? どうして朝に出発しないのですか?」

「詳しくは後で教える」


 オーファンは質問に同じ言葉で伝える公爵さんに少しイライラしている。

 そんなときに星の光が消えている場所を発見した。それは段々と近づいてくる。宙を浮いている大樹が屋敷の大樹の隣に並んだ。

……屋敷の大樹と同じくらいデカい大樹だ。根を覆う大地と一緒にラスカル領から飛んで来たのか。


「お待たせ! ただいま」


 サクラとララーシャルがオレの隣に来て挨拶をする。


「おかえり、ずいぶんと大きい木だね。……こんなデカい木が空を飛んでいるんだから見た人がビックリしただろうね」

「大丈夫よ。認識出来ない様にしていたから。現に他のみんなには見えないでしょう」


 サクラの言葉で周りのみんなを見るけど、確かに普段通りだな。ビックリしているオレの表情に気づいたのはベルリディアだけだった。


「久しぶりだな。トルク」


 ジュゲムが声をかけてくる。久しぶりだね、ご苦労様。


「御使いとしての最初の仕事にしては初心者のララーシャルには難しいからな」

「感謝するよ、ありがとう」

「礼なら今度美味い酒を頼む」


 ……分かったよ、今度酒を買ってくるよ。それよりもクリスハルトに頼むか。


「クリスハルト、すまんが酒を貰えるか? 精霊が御所望だ」

「精霊が来ているのか? 土産に酒は用意してあるがそれで良いかな?」


 土産の酒をジュゲムに渡す約束をして、サクラの周りに精霊達が集まる。


「みんな、いくわよ!」


 サクラの号令で精霊達が返事をして庭の大樹を動かし始める。庭に集まっていた人間達は動揺し、大樹が宙に浮き始めた事に驚愕する。


「大樹が浮いている!」

「凄い!」

「あそこにも木が浮いているぞ!」


 ラスカル領から持ってきた大樹も、今は周りの人達に見えているようだな。そして屋敷の大樹があった穴にラスカル領の大樹が入った。クリスハルト達は大樹の近くに行って確認をしている。


「これで良し! あとはバラバッサラの木をラスカル領に持っていくだけね。トルク、ラスカル領から持ってきた精霊を紹介するわ」

「オス! ご紹介に預かりました木と月華草の精霊であるドンバッサラであります。オス!」


 三頭身の二足歩行が出来そうなカバだよな……。身長がオレの三倍以上ありそうなデカい三頭身のカバだ。


「この度は私の願いを聞き入れてくれてありがとうございます。オス!」


 体育会系の応援団のようなカバだ。腕を後ろに回して胸を張っている。


「サクラの姉御から聞いています。木と火の精霊バラバッサラの代わりに私がこの屋敷を見守っていきます。オス!」

「……よろしく頼むよ」

「オス!」


 オスオスうるさい。どうした? クリスハルト、腕を引っ張るな! 大樹の近くにある花? 月華草じゃないか? 木と月華草の精霊って言っていたから。しかし幻想的な光景だな。月の光で淡く輝く花がとても綺麗だ。


「月華草は高価な植物で薬にも使える稀有な花なのだ。それがこの屋敷にこれだけ咲いているとは……。精霊に交渉して花を譲ってもらう事は出来ないか?」

「分かったよ、聞いてみる。……毎年半分くらいなら大丈夫だそうだ。でも花に水やりと虫取りを頼みたいそうだよ」

「半分も良いのか! 分かった、庭師に頼んで管理してもらうぞ! ありがとう、トルク」

「スクートよ! 庭師に説明を頼むぞ、精霊が住まれる大樹だから大切に世話する様に!」


 喜ぶクリスハルトと公爵さん。フローラさんとベルリディアは月華草の花の美しさに見惚れている。オーファンも花をじっくり観ている。


「トルク、もうすぐ出発みたいよ。バラバッサラがみんなに別れの挨拶をしたら行くみたいね。準備は良い?」 


ララーシャルが近づいて話しかける。そういえば人数の変更があったんだよな。合計十五人に増えて馬車も三台で行く事になった事を伝える。


「馬車は私が持っていく事になるから大丈夫と思うわ。それから私とサクラとジュゲムに魔力を渡してね。」

「分かったよ、出発時に渡すよ。クリスハルト! そろそろ出発の時間だぞ。準備はいいか?」


 オレの呼びかけでクリスハルト達が集まってきた。


「荷物は馬車に入っている。後は私達が入れば準備は完了だぞ」

「トルク、私達も大丈夫よ。いつでもラスカル領に向かえるわよ」


 人間達も精霊達も準備が出来た様だ。念の為にララーシャルには実体化してもらって人間と精霊の通訳をしてもらう事にした。


「じゃあ、トルクの魔力を貰うわよ。……寿命が三週間ほど減るくらいね。だいぶ頑張ったのね」


 あれだけ頑張って魔力を濃くしたのにやっぱり寿命が減るのか。精霊達から魔力を急激に吸われて意識が遠くなった。……サクラよ、気絶するとは聞いていないぞ。




 ……白い空間にいる。確か前にも見た事がある夢だ。ララーシャルと初めて会ったときの夢の中の空間だな。その前はくまモドキの光の精霊其の三と話をしたっけ。

 周りを見渡すと土下座して謝っている精霊其の三と説教しているララーシャルの姿が……。何をしているんだ?


「申し訳ありません。ララーシャルさん。しかしトルクが心配だったんです」

「だからって夢に介入して良いと思っているの!」

「友達が居なくなって半年以上たっていたから、みんなで探してようやく見つけて会おうとしただけなのです」

「でも勝手に体に入り込んで良い訳ないでしょう。トルクの魔力は私のモノなんだから!」


 少し待て、ララーシャルよ。オレの魔力はオレのモノだ。お前のモノじゃないぞ。


「しかし印を付けた友人だから少しくらいの魔力は……」

「駄目に決まっているでしょう。私の許可が必要な事は分かっているわよね!」


 とりあえず、ここはまた夢の中か? 久しぶりだな、其の三。元気だった?


「お前の魔力が無くなって半年以上経っているんだぞ! 本当に死んだと思っていたら、遠くで魔力を感じる事が出来たから、みんなで協力して来てみたんだ。そしたらジェノサイドサクラと一緒に居るし! 何やっているんだよ!」

「こら! サクラをそんな名前で呼ばない! 怒られるわよ」

「すいません、ララーシャルさん。あーー! 顔の印が薄くなっている! どうして? みんなの印が!」


 そうなのか?印が薄くなったのか? 笑いを取るつもりの印なんだから別にいいだろう。それよりも久しぶりだな。其の一と其の二は元気か?


「トルクに言われた通りに館や街を守っているぞ。だから褒美をくれ。魔力でもお菓子でも良いぞ」

「私の許可なく魔力は渡せません。それでトルクってば、この精霊と知り合いなの?」


 光の精霊其の三だ。最初にオレに印を付けた友達の一人だな。心配かけてすまん、オレの魔力を感じなくなった理由は多分魔封じの腕輪を付けていたからだろう。でも今は御使いの修業をして精霊が見えるようになったぞ。


「みたいだな。よりにもよってジェノサイドサクラから印を貰うってある意味凄いぞ……」


 なんだ、そのあだ名は。サクラに聞かれたら怒られるぞ。


「魔道帝国を滅ぼした大精霊で、不愉快な事をすれば大地に封じられ、全てを砂に還らせる……とても素晴らしくて美しい精霊様ですよ。サクラ様に印をつけて貰ってトルクは幸せだな。とても幸運な事だぞ!」


 其の三の後ろでサクラが微笑みながら肩に手を置いている。そして其の三は顔から汗を滝のように流しながらサクラを褒め称えている。少し其の三が可哀そうになってきた。でもどうしてサクラもオレの夢の中に居るんだ?


「私は光と土と砂と精神の精霊だから夢の中くらい簡単よ。それにしてもこの子がトルクに印を付けた精霊なのね。初めまして私はサクラよ。よろしくね」

「は、はい、サクラ様。よ、よろしく、お、お願いします」


 怯えているな、これでもかってくらい怯えているな。……大精霊と言われるサクラと精霊其の三とでは精霊の格が違うんだろうな。


「今回は不問にするけど、もし……だったら剥ぐわよ」


 サクラの声が聞こえなかったけど剥ぐって何を剥ぐのやら。丁度良いや。其の三にバルム領の事を聞くか。


「とりあえず街は無事だぞ。オレ達が頑張っているからな。それにほら館の木の精霊も手伝ってくれているぞ。頼み事の件があっただろう。探してくれるように恩を売っているみたいだな」


 館の木の精霊の探し物、確か……腕輪だよな。まったく探してなかった。でも今まで探せる環境にいなかったからな。


「それに敵が攻めているから街を守る為にオレ達も手を貸しているぞ。風で敵の矢の威力を落としたり、壺で頭を叩いて失神させたり、悪夢を見せたりと頑張っているんだぞ。だから魔力をくれ! お菓子でも良いぞ!」


 バルム砦が突破されて街にも被害が加わっているのか。王国と帝国の境界線にあった砦が落ちたから王国は攻められているのか。知り合いとか家族は大丈夫かな? マジで心配だよ。

 考え込んでいると、またララーシャルから怒られている精霊其の三。ララーシャルは魔力を渡す事に反対の様だ。少しくらい大丈夫と言おうとしたが。


「いまトルクが魔力を渡したら寿命が半年くらい減るのよ! 今回は諦めてお菓子にしなさい!」


 ララーシャルにマジで感謝する! 本当にオレの事を考えて怒ってくれていたんだな。


「……わかったよ。でも絶対にお菓子を貰うからな。絶対だぞー!」


 そう言い残して精霊其の三は消えていった。夢の世界から出て行ったのか? ……良く分からん。


「とりあえず、トルクもそろそろ起きたら?」

「そうね、もうラスカル領に着いているから起きた方が良いわよ」


 ララーシャルとサクラがハリセンも持って言う。……今回も起きるにはハリセンで叩かれるんだな。

 二人からのハリセンを頭で受けて衝撃で目を覚ます事になった。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おおおおおやっと最初〜中盤までの伏線が復活してきました!! 更新ありがとうございます!
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