表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
七章 帝国公爵領編
173/276

10 出発準備

書籍化決定しました!

詳しい報告は活動報告で!

 ラスカル領に出発する日をサクラ達と調整して三日後と決定し、クリスハルトは報告の為に屋敷に戻った。予定としては二日後にサクラがララーシャルと一緒にラスカル領に行き、大樹とジュゲムと一緒に戻ってきたら、人目につかないよう深夜に木を植え替える。植え替えたら、三日後の深夜にそのままラスカル領に行く事になる。

 木が空を飛ぶのを目撃した者が驚かないか? という問題は、サクラが認識されない様に魔法をかけて解決するそうだ。そして四日後の朝には植え替えが全て完了となる。その後にルルーシャル婆さんを見舞う予定だ。

 数日間滞在して公爵さんとクリスハルトは帰る予定らしい。ファーレンフォール家の兄妹をそのままにする訳にはいかないからな。

 そしてオレは現在、屋敷の庭の大樹の側で、野宿をしながら魔力を濃くする為に吸魔術をしている。それは何故か! 


「今回の移動でトルクの魔力をかなり使うから今のうちに魔力を貯めておいて。少ないと生命力を使って寿命が減るから」

 

 サクラに言われてオレは抗議したが駄目だった。オレの話を聞かないし、言っても。


「大丈夫! トルクなら出来るって。ライだって出来た事よ、同郷のトルクにも出来るわよ!」

「失敗したら寿命が減るだろう!」

「大丈夫! 多くて一年、上手くすれば三日くらいしか寿命が減らないわよ」

「減る事は変わらんだろう!」

「大丈夫! 何事も経験、経験」

「だから……」

「大丈夫! トルクなら出来るわ!」


 ……言っても『大丈夫』で押し切られた。寿命を減らす量を少しでも抑えるためにずっと吸魔術をする。自然の魔力を吸収して自分の魔力を濃くする。


「頑張れ! 御使い」

「負けるな! 御使い」

「ファイトだ! 御使い」

「凄いぞ! 御使い」


 周りの精霊達の応援がうるさい! 吸魔術の邪魔をするな! サクラもララーシャルもラスカル領に行っているので、隙あらばオレの魔力を奪おうと、体を乗っ取ろうと襲ってくる。だから精霊術で身を守っている。

 しかしサクラとララーシャルがラスカル領に行った夜にベッドで寝ていたら精霊が襲ってきて体を乗っ取られそうになったのは閉口した。精霊術で防御してなんとか耐えている内にバラバッサラが駆けつけて来てくれたから助かった。


「サクラの姉御に頼まれて守っていましたが、アッシの若い衆にここまで好かれるとは流石ですな。念の為にアッシの近くに居た方が良いでしょう」


 バラバッサラの助言に有り難く従う。オレは大樹の側で吸魔術をして、食事を取り、睡眠をとっている。精霊達から身を守る為にオレは屋敷ではなく庭の大樹の側で野宿をしている。

 今までサクラとララーシャルが精霊達から守ってくれていたが、二人がいないとろくに寝る事も出来ないなんて。……マジで厄介な体質だよ。

 そんなこんなで瞑想しながら魔力を蓄えていると足音が聞こえてくる。目を開けるとクリスハルトと侍女さんが食事を持って来てくれていた。


「トルク、昼食を持ってきたぞ」

「ありがとうございます。クリスハルト様」


 敬語で喋るとクリスハルトはため息をついて言った。


「オレには敬語を使わなくても良いと言っただろう」

「仕方ありません。敬語を使わないと周囲の者達から注意を受けますから」


 ……クリスハルトは侍女さんを見て再度ため息をつく。


「私には敬語は不要だ。どちらかというと私の方が敬語を使わないといけないからな」


 侍女さんが昼食の準備をする。オレが野宿をする事になり、食事も外で食べる事になったので大樹の近くにはテントとテーブルが置いてある。あれ? 二人分の食事の準備をしているよ?


「今日は私もここで食べようと思ってな。同席を良いかな?」

「……とりあえず、精霊に許可を取るよ。周りの精霊達がオレ達の食事を狙っているからな」


 バラバッサラにオレ達を精霊達から守ってもらう事をお願いする。「任せてくだせぇ」と言ってオレの近くで護衛をする。


「今日が三日目で、夜にはラスカル領から大樹が来る予定だよな」

「その予定です」


 今日の献立は御馳走だな。お代わり自由なパンに野菜のスープに肉料理がある。昨日の昼はお代わりできないパンだけだったのに。


「だから敬語は止めてくれ。トルクの提案で箱馬車に私達と荷物を載せて行く事になっているが荷物の量が多くて大きめの箱馬車になる予定だ。大丈夫だろうか?」

「大丈夫と思うよ」


 ……肉が硬いな。噛み切れないよ。これが帝国の料理なのか? 帝国人は顎が丈夫だな。水と一緒に飲み込もう。


「護衛と侍女だが母上の者達が来る事になった。合計五人で私達家族を入れて八人だ。三人は御者席に座らせて残りは荷物と一緒に中に座る予定だ」

「護衛や侍女は確かに必要だな」


 野菜のスープがしょっぱい! クリスハルトは何とも思わないのか普通に飲んでいる。王国と味付けがかなり違うようだ。


「今日の夜に出発する予定だから母上も準備を進めている。……どうしたトルク、そんな顔をして? スープは口に合わなかったか?」

「ちょっとしょっぱいな。王国と帝国では味付けが違うみたいだな」


 クリスハルトはオレの飲んでいたスープを見てスプーンですくって飲む。顔をしかめて侍女を見た。侍女は何事かという表情だ。今度は何も言わずにクリスハルトはオレの肉を少し食べてペッと地面に吐き出す。


「トルク、朝食は何を食べた?」

「吐き出すなよ、汚いな。ちゃんと拾えよ。朝はパンだな」

「昨日の夕食は?」

「パンとお菓子だ。お菓子は精霊達にやったから食べてないよ」

「昨日の昼食は?」

「パンだな」

「こっちに来てからパンしか食べていなかったのか?」

「自分の荷物の中に干し肉があるからそれを食べていたぞ。ちなみに昨日の朝食もパンだぞ。しかし公爵家のパンは美味いな。毎日食べても飽きないし。料理人に作り方を習いたいくらいだ」


 どうしたクリスハルト? 公爵家の料理を褒めているのに何怒っている?


「トルク、少し用事が出来た。そのスープと肉料理はトルクに出す予定の料理ではなかったようだ。すぐに昼食の準備をするから食事は少し待っていてくれ」


 クリスハルトは侍女さんに片づけを命令して走って屋敷に戻った。どういう事なのか侍女さんに聞いてみる。


「申し訳ありません。トルク様の料理には他の者が細工をして不味い料理にしていたようです。今まで食べていた食事に関してもパンしか渡していなかった事にクリスハルト様は大層お冠でいらっしゃいます。公爵家で働いている者が御客人に無礼を働いた事をお許しください」


 深々と頭を下げる侍女さん。……要するにオレに出された食事には悪意が働いていたのか。パンは鉱山で食べていたモノよりも美味かったし特に問題なかったんだけどな。

 ちょっと待って! 侍女さん。料理を全部片づけないで! パンは美味しいよ。食べられるよ!


「申し訳ありません。いったん料理を片付けて新しい料理をお持ちしますので」


 美味しいパンも片付けてテーブルには料理がなくなる。せめてパンだけでも残しておいても良かったのに。

 侍女さんが片付けた料理を持って屋敷に戻った。……吸魔術でもして時間を潰そう。

 ……良い匂いがする。美味しそうな匂いだ! 目を開けると公爵さんとフローラさんが昼食とともにやって来た。凄く美味しそうな匂いだな。


「この度は公爵家の者が御使い様に不愉快な事をして誠に申し訳ない」

「本当に申し訳ありません」


 それよりも美味しそうな匂いが気になるんだけど。


「問い詰めた結果、クリスハルトにタメ口で話をしたトルク殿が気に入らないので、食事にパンしか与えない嫌がらせをしたとの事で」

「本当に申し訳ありません。私達が罰を与えますので許してください」


 そんな事よりも侍女さんがテーブルに準備している昼食の方が気になるのだけど。


「今日の夕食は私達と一緒に食べるのはどうかな? ラスカル領に行く事も話さないといけないし」

「そうですね。今日の夕食は豪華にしましょうか。公爵家の料理人も名誉挽回の機会を与えないといけませんね」

「そうですね、楽しみにしています」


 テーブルに準備された料理が美味しそう。……焼き立てのパンか! 良い匂いがする。

 何故か公爵さんとフローラさんの三人で昼食を取る事になった。今までで一番うまい昼食だ。特にパンが美味い! 焼き立てのパンがこんなに美味いとは! 


「いかがですか? 公爵家の料理人の料理は」

「とても美味しいです。特にパンが美味しいですね。どうやって作っているのか習いたいくらいです」

「そ、そうですか。パンを作った料理人に伝えておきますね」


 フローラさんの質問に答えたんだけど、合格の答えじゃなかったようだ。……やはり習いたいという答えが間違っていたのかな? 純粋に味を評価するべきだったか……。


「この小羊の肉は公爵領の名産でな。なかなかの味だぞ」

「確かに美味しいですね。匂いもハーブで消えていますし。肉にソースも合って美味しいです。ワインとこの甘みは……はちみつかな?」

「そ、その通りだ。ハーブで匂いを消して味を深くしている。流石は御使い様だ、良く気付いたな」


 料理の感想に御使いは関係ないと思うが……。でも本当に美味いな。……美味しそうな匂いに周りの精霊達が集まってくる。でもオレは無視して昼食を食べる。


「明日には空を飛んでラスカル領に行く事が出来るとは。フローラから空を飛んだ事があると聞いて、私も空の旅をしてみたかったのだよ。長年の夢が叶いそうだ。トルク殿はラスカル領から空を飛んで来たのだろう? 何か気を付ける事はないかな?」


 公爵さんが空を飛ぶ時に気を付ける事を聞く。ララーシャルの空を飛ぶ技術は上がったが、十人くらい乗れる馬車を制御する事は出来るかな? ……必要な物は命綱かな?


「念のために馬車から落ちないようにひもで体を結んでおいた方が良いかもしれません。それから空は寒いですから厚手の服を用意した方が良いかも」

「厚手の服は準備していますよ。私も昔、空を飛んだときは寒くて大変でしたから」


 フローラさんは経験者だからいろいろと用意をしているようだな。念の為に精霊達に必要な物を準備してもらうかな? ジュゲムや他の精霊達に渡すお菓子や酒を準備してもらおう。その事をフローラさんに伝える。


「わかりました、お菓子とお酒を用意しますね。ジュゲム様に渡すお酒は珍しいモノを送りましょうか」

「よろしくお願いします」


 最後に食べ物の好き嫌いを聞かれたけどなんでも食べられると答えて昼食会は終わった。美味しい料理だった。夕食も美味しいのだろうな……。食べて少し眠くなるよ。公爵さん達と別れてオレは魔力を濃くする為に瞑想をする。

 ……途中で眠ってしまい精霊に体を奪われそうになった。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] コントロール不能な公爵様の配下達がとても危ういですよ しかし精霊さん達の野生っぷりも公爵様の配下もそれぞれ意思が半分しか通じなくて面白いです それぞれやりたいようにやってるのですから…
[一言] 書籍化おめでとうございます。 読む用。保存用。布教用で3冊アマゾンします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ