表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
二章 下人編
17/275

4

こんにちはトルクです。現在勉強から逃げ出したエイルド様を探している最中です。私だけではなく他の使用人達と一緒に探しています。使用人さんの話では勉強の時間までに捕まえたらおとなしく勉強をしてくれるらしい。オレの初めての勉強時間が人探しの時間になっています。

エイルド様は一体どこにいるのやら。やっとの思いでエイルド様を発見したが、当の本人は裏庭で木刀を振っている。


「エイルド様、お探ししました。勉強に戻りましょう」

「勉強は嫌いなんだよ。体を使った剣の稽古の方が楽しいだろう。一緒に剣の稽古をしようぜ」


と言って木刀をオレの方に投げてきた。慌てて木刀をキャッチするといきなりエイルド様が襲い掛かってきたので慌てて木刀で受け止める。


「ちょ、ちょっと待ってください、エイルド様。私は剣の稽古をした事がありません」

「安心をしろ、オレが教えてやるよ」

「待ってください、教えるなら基礎から教えて下さい。素振りから教えて下さい。いきなり実践稽古は無理です」

「大丈夫だ、何とかなる」


なるかボケ。前世の学校の授業で剣道を習っていたが、今世では何も習っていないから体が上手く動かない。何とか防御をして攻撃を受け止めたり避けたりするが当たるのは時間の問題だ。何とか稽古を止めさせないといけない。


「なかなか上手く防御出来るじゃないか。これならどうだ」


エイルド様の攻撃の鋭さが増している。このままでは当たるぞ。素人にそんな鋭い攻撃をしないでくれ。


「エイルド様、今は学問の時間ですよ。剣術の勉強は後でして授業に参加をしましょう」

「学問よりも剣術の勉強の方が楽しいだろう。頭を使うよりも体を動かした方が楽しいだろう」


このガキは脳筋だ。今のうちに矯正をしないとバカになるぞ。しかし段々と攻撃が鋭くなりこのままでは防御が間に合わなくなる。どうにかして剣の勉強を止めてもらって頭を使う勉強に変えないと。


「エイルド様、私が一本を取ったら学問の勉強をして下さい」


苦肉の策だが仕方がない。しかし脳筋には効果はあるはずだ。


「いいだろう、素人相手に負ける鍛錬はしてないつもりだからな。一本取ったら勉強をしてやるぞ」


脳筋に効果的な方法を取ってみたが、案の定オレの勝負を受けてくれた。さすがは脳筋候補生。後はオレが勝てばこの鍛錬は終わりだ。

しかし、どうやって勝つかが問題だな。エイルド様は訓練をしているから鋭い攻めでオレに襲ってくる。だけどフェイント等はしないで真っ直ぐの攻撃だから何とか持ちこたえている。さすがは一直線の脳筋だ。

とはいえオレの能力・経験からいって勝つことは難しい。だからからめ手を使うしかない。

なんとか防御に徹底をして隙をうかがう。攻撃を受けるだけではだめだ、はじき返さないと。横からの攻撃を受けてこっちがよろけそうになるが耐えて次の攻撃を受け止める。今度は上段からの攻撃だがこちらも攻めて上手くはじく事が出来た。エイルド様が少しバランスを崩した時がチャンスだ。足元に土魔法で足場を柔くしてバランスを崩させる。その瞬間に体当たりをして二人とも倒れるが何とか木刀をエイルド様の首筋に当てた。


「私の勝ちでよろしいでしょうか?」

「魔法を使うなんて卑怯ではないのか?」

「エイルド様も勉強をすれば魔法を使えますよ。私の勝ちですから学問の勉強をしてもらいますよ」

「……分かった、今回はオレの負けだ。次は勝つからな」


……今回という事は勉強をするたびに勝負をするの?


「せめて、勝負は一週間に一回にしましょう」

「お前が負けたら一週間は勉強をしないで良いのか?」


クソガキめ。どうにかして勉強に興味を持ってもらわないと。毎日勉強から逃げ出して剣の勝負はさすがにきついぞ。


「勉強をしたら物事を多く覚えます。その結果、魔法も覚えるでしょう。歴史を勉強すると歴史上の剣術の強い人物の事が分かります。その人の事が分かると剣術が強くなりますよ。計算もする事で相手の攻撃のパターンが分かったりして攻撃の際に有利になります。地理を勉強する事でその土地の強い人がいる場所が分かりますし、礼儀作法を習うことによって剣術の大会でも有利になるかもしれません。ダンスを習うことによって足運びが上手くなりますよ」


オレは全部の勉強を剣術が上手くなる為と言い切った。全部が本当ではないが嘘ではないはずだ。


「なるほど、勉強をすれば剣が上手くなるのか?」

「なりますよ。勉強をする事で頭の回転が速くなり瞬時に攻撃の対応が出来るようになり、反応も早くなるでしょう。考えることにより攻撃のパターンも増えますし相手を圧倒できます。先人の剣の達人も頭が良く勉強が出来ていました。今が大変ですが剣の達人になる為には勉強をしないといけません。勉強すればエイルド様は立派な剣士になれますよ」


頭が良ければ強くなる。嘘八百、言い切ってやったぞ。


「なるほど、お前は勉強が出来たから素人でも強かったのか。分かったぞ、オレは世界で一番の剣士になる為に勉強をしてやろう」


よし、言いくるめは成功したようだ。あとエイルド様、あなたの将来は剣士ではなく次期男爵です。


「それでは勉強に戻りましょう。教師がまっています」

「よし、勉強をしてやろう。トルク、お前も剣術の稽古を一緒にするぞ。二人で世界一を目指すんだ」


何処にツッコミを入れていいか分からんが勉強をしてくれるならそれで良い。

やっと教師の所に戻ってきた。疲れた、農園で仕事するよりも疲れたよ。


「遅くなってすいません、ただいま戻りました」

「今戻ったぞ、さあ剣術の為に勉強を始めるか」


エイルド様の言った言葉に教師とポアラ様は驚いていた。それはそうだろう。いつも勉強が嫌いで逃げていたエイルド様が勉強をすると言ってきたのだ。驚きもするだろう。

やっと勉強が始まる。今は算数の様だ。教師から紙を貰って問題を解く。エイルド様もポアラ様も一生懸命問題を解いている。オレは問題を解き終わって隣を見たらエイルド様が寝ている。やはりやる気はあっても体はついていかない様だ。教師の人に問題が終わったからエイルド様の勉強を見ていいか聞く。教師もオレにエイルド様を任せた様だ。


「エイルド様、起きて下さい。勉強中ですよ」

「トルク、ダメだ。文字を見ると眠くなる」

「エイルド様、一流の剣士になる為の試練です。頑張りましょう。私もついていますから」

「しかし計算が分からん」


問題は一桁の足し算と引き算なんだけど、子供には難しいのか?


「ではこの問題ですが、私が五回、木刀を振りました。エイルド様が三回振りました。合計は何回でしょうか?」

「八回だ」


瞬時に答えが返ってきた。


「私が四回、エイルド様が六回木刀を振りました。何回でしょうか?」

「十回だ」

「エイルド様が八回、私に木刀を当てました。私が三回、エイルド様に当てましたがその差は何回でしょうか?」

「五回だ」


引き算も瞬時に答えた。


「エイルド様が十四回、木刀を振りました。私が十一回、木刀を振りました。何回でしょうか?」

「二十五回だ」


二桁の足し算も出来てますよ。教師を見ると目を開いて驚いていた。


「エイルド様は七回一セットの素振りを七セットしました。素振りは何回でしょうか?」

「四十九回だ」


教師を見ると現在オレが出した問題の計算をしている。……まだ時間がかかりそうだ。

今回の問題でエイルド様は剣術に結び付ければ頭が良くなる事が判明した。教師の人と相談して脳筋用に授業内容を変更した方が良いな。

午前中の授業が終わった。農園の仕事よりも大変だった。

昼食を食べるためにエイルド様とポアラ様と別れて使用人の食堂で昼食をとる。知っている人が食事をとっているか見て回ってみたが今はいないみたいだ。一人で食事を済ませて午後の授業に臨む。次の授業はダンスの勉強らしい。貴族だからダンスは必須なのかな?

指定の場所に向かい、待っているとエイルド様が入ってきた。


「おう、早かったな」

「食事が早く終わったので早めに来ました。次はダンスの授業ですがダンスは出来るのでしょうか?」

「ダンスは苦手ではないぞ、体を使うから。ダンスが上手くなると剣術も上手くなるのだろう?剣術の為に頑張らないと」


そういえば習い事は全部、剣術の為にしてたんだ。


「そうですね、他の国では踊りの真似をした武術も有るらしいですよ」

「よし、剣の達人になる為に頑張るか」


そんな話をしているとダンスの先生が入ってきた。


「それでは授業をはじめますが、ポアラ様は?」

「逃げ出した」


エイルド様が言い切った。

……またオレが探さないといけないのか。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ