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精霊の友として  作者: 北杜
七章 帝国公爵領編
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3 隠密行動

 次の日にオレ達はオーファンとベルリディアを部屋に置いてサクラの案内で詐欺師の所に行く。……詐欺師とはあの兄妹の金を騙し取り、殴り殺そうとした奴の事だ。

 ……そういえばオレも殴られそうになったんだよな。十発を百発にして殴らせろと言った奴だ。そいつはサクラが作った落とし穴に入ってどうなったっけ? 無事に這い上がったかな?

 ララーシャルは二人の護衛という名目で留守番をしている。ララーシャルがいるなら二人は安全だろう。

 オレはサクラの後を付いて行くとスラムのある家に着いた。


「この中に居るわ。他にも何人か居るわね。どうするの?」

「……情報収集の為に家に忍び込んで話を聞いてみよう。サクラ、昨日使った他の人間に認識されないようにする魔法を使ってオレも認識されないように出来る?」

「出来るわよ」


 サクラに頼んでオレも認識されないようになった。

 家に忍び込んで詐欺師達の話を聞く。どれどれ。


「あの兄妹は見つかったのか?」

「すいません。私も砂に埋もれてその後の事はわかりません」

「クソ、どうして地面が砂になって埋もれんだ。魔法か?」

「魔法でしょう。兄妹を庇った二人が魔法を使ったと思います」


 詐欺師が上司っぽい人間に話しているな。……しかし周りの人間も怖い顔の大人ばかりだな。ヤクザやマフィアとかの裏社会の人間か?


「魔法使いか……。手を出したらこっちが痛手を被る事になりそうだな。どうするか」

「私に任せてください。あの兄妹を人質に取れば簡単ですよ」

「その程度で簡単にモノが運ぶ訳がないだろう。相手は騎士なのだろう」

「ですが子供ですよ。簡単です」

「騎士か……、それもロックマイヤー公爵家に繋がりがある騎士だと言ったらしいな」

「私に任せてください。身分証が欲しかったのです。騎士の身分証は欲しがる者が多いので高値で売れます。この件が上手くいったら褒美として身分証を私に下さい」


 ……オレもターゲットにされたようだ。身分証が狙われているな。詐欺師の近くに居た男がボスに言う。


「大丈夫です。私の手の者がその兄妹の居場所を掴んでいます。いつでも狙う事が出来ます」

「ほう、流石だな」

「騎士と名乗る子供の行方が分かりませんが、子供の知り合いの娘と兄妹は一緒にいるようです」


 ……居場所が知られていたか。ヤバいかな? でもララーシャルが居れば大丈夫だろう。でもやりすぎて部屋破壊ではなく宿屋破壊とかしなければ良いけど。


「……子供の知り合いの娘を人質に取って兄妹から手紙を回収しろ。バーンはローツと協力して兄妹から手紙のありかを聞き出せ!」

「わかりました」


 ……バーンとローツとその配下の人間が部屋から出る。詐欺師の名前はバーンなのか? ローツなのか?


「しかし手紙の件ですが。事実なのでしょうか?」

「依頼主はファーレンフォール伯爵の兄妹が持っているだろうと睨んでいる。その手紙がロックマイヤー公爵に渡る事を恐れている。探していた兄妹がうちの者に騙されて死にそうだったとは。……なんとも間抜けな話だな」

「どうでしょうか、その子供の騎士に金を掴ませて手紙のありかを聞き出させるのは?」

「その事も考えた。しかし子供の騎士と一緒に居る娘の正体が気になる。娘はどこかの貴族の令嬢で、子供はその娘の護衛ではないのか? しかし子供騎士だけに護衛を任せるなんて普通はしない。影から他の護衛が守っているはずだ。今回の件は娘の護衛を炙り出す事も考えている。だから囮にバーン達を使ったのだ」

「なるほど。流石ですね」


 ……あの兄妹がファーレンフォール伯爵令息・令嬢で大事な手紙を持っている。そしてその手紙を欲しがっている人間が居て、それを奪おうとしている者がこいつら。ララーシャルを貴族と勘違いして、近くに居ると思われる護衛を炙り出す為に手下を囮にした。

 ツッコミどころ満載だな。頭痛いよ。情報収集は上手く出来たから次はどうするべきか。最初の目的は兄妹の金を取り返す事だったのに、話が大きくなったな。


「どうするべきかな?」

「決まっているでしょう。こいつらを簀巻きにして川に流すのが一番よ! それか簀巻きにして海に流しても良いわね」


 簀巻きにするのか?ロープで縛るだけじゃ駄目なのか?川や海に流すのはオレに害がなければ別にどうでも良いけど、本当にそれで良いのかな?兄妹を探している依頼主の事を尋問……ではなく聞いた方が良いのではないかな?サクラはどう思う?


「私だったら半殺し……ではなく尋問して依頼主の記憶を読んで、その関係者を洗いざらい半殺し……ではなく無力化して、簀巻きにして山に返すわ」

 

 どっちにしても簀巻きは確定なんだな。……しかし今回は兄妹の奪われたお金を取り戻す為に来たんだ。こいつらを簀巻きにする事じゃない。


「一度、戻ろうか。詐欺師がララーシャル達を狙っているようだし。そいつらを殴って簀巻きにして金を回収しよう」

「こいつらはどうするの?」

「……ララーシャルと相談しよう。オーファンとベルリディアがファーレンフォール伯爵家の子供という事で今後の行動を考えないといけないし。ララーシャルならファーレンフォール伯爵の事を知っているはずだ。……三十年以上前の情報だけど」

「……そう? じゃあいったん戻りましょうか。もうすぐ敵が宿屋に着く頃だしね。タイミングが良ければ私達も闘いに参加できるわ」


 面倒な事になったな。戻ろうと思ったときにボスらしき男が言った。


「そういえば王国の密偵は何か喋ったか?」

「いえ、拷問しても何も言いません」


 王国の密偵? もう少し情報収集をしよう。


「……仕方がない。殺すか」

「分かりました。そのようにします」


 え? 他に情報はないの? 殺す前にオレに情報を教えてくれよ! 

 しかし王国の密偵か……。助けだそう。オレも王国出身の人間だからな。恩を売ってクレイン様かレオナルド様にオレの生存を伝える事が出来るかもしれない。


「サクラ、王国の密偵を助けるから手を貸して」

「良いわよ」


 ボスの側近らしき男が指示を出している。数人が部屋を出て行く。こいつ等の後を追跡すれば王国の密偵が捕まっている場所に辿り着くだろう。

 外に出て他の家に入り地下に続く階段を下りる。地下室には牢屋が並んでいて何人もの人間が牢屋の中に居る。これ全員王国の密偵? そんな訳ないよな。


「確かこいつだな。お前達は殺して川にでも投げ捨てておけ」


 牢屋の扉を開けて密偵を殺そうとする。


「サクラ、無力化してくれ」

「了解」


 バタバタと倒れる男達。……サクラが居ると楽だな。それは良いとして、密偵の怪我が酷いな。回復魔法で治す。


「誰だ? お前は?」

「オレの名はトルク・フォウ・バルム。訳あって帝国にいる。助けるからウィール男爵家のクレイン様か、バルム伯爵家のサムデイル様にオレの生存を伝えてくれ」

「バルム伯爵家の騎士がどうして此処に居る」

「バルム砦にいて捕虜として捕まったが逃げだした。詳しい事は牢屋を出てからだ。回復しただろう」


 密偵の男は体を見て傷が無い事を驚く。そしてオレを見て言った。


「驚いたな、その年で回復魔法が使えるなんて」

「そのせいでバルム砦に行ったんだよ。そして捕虜になった」

「出来れば手錠の鍵を持っているか?持っているなら外してくれ」


 手錠の鍵? そんなモノ無いよ。……どうしよう?

 考えていると密偵の男が気絶した男達の懐を探り、鍵を取り出してそれを使って手錠を外した。


「感謝する。他にも仲間がいるので手を貸してくれ」

「分かった」


 オレは密偵の男と一緒に捕まっている人を助けた。怪我をしている者には回復魔法を使って治す。三人を助け出して王国の密偵達は全員助け出す事が出来た。そして地下室を脱出ようとするが牢屋から声をかけられる。


「頼む! 私も出してくれ! お願いだ!」

「オレも頼む!」

「私も出してください!」


 ……どうすれば良いかな? 密偵の人を見る。


「トルク殿の判断に従う」


 オレに丸投げかよ! ……他の人も助けよう。恨まれそうだし。

 牢屋にいた男女合わせて八人を牢屋から出して、怪我をしている人には回復魔法を使う。

 これでやっと脱獄出来る。地下牢を脱出してスラムの人目につかない場所に移動する。息を吐いて緊張を解いた。どうして脱獄劇なんかを演じてしまったのだろう?捕まっていた人達から感謝を述べられる。……別に感謝とかはどうでも良いよ。


「騎士トルク、感謝する。私達は隠れ家に行って王国に戻るが、君はどうする?」


 最初に助けた密偵がオレに聞いてくる。


「すまないが帝国でやる事がある。それが終わらないと王国に戻る事が出来ないんだよ。今も……」


 ヤバい! ララーシャル達の事を忘れていた! ララーシャルがやりすぎて宿屋を更地にしているかもしれない!


「すまん。急用が出来た! クレイン様とサムデイル様に伝言を頼む!」


 急いで宿屋に戻る。後ろで何か言っているが、それよりも宿屋の方が心配だよ。すっかり忘れていた!


「サクラ! 宿屋は無事?」

「無事ではないわね。建物は半壊しているわ。でもトルクの荷物は無事よ」


 ……失敗した。先にララーシャルの方に行けば良かった。

 宿屋に着くと確かに建物らしき物があった。局地的なハリケーンの被害に遭ったような跡だ。事後処理をどうすればいいのかな?

 あれ? ララーシャル達は?


「あの子達なら近くに隠れているわよ。案内するわ」


 案内された場所は高級宿屋のポニータ亭。どうして此処に? ロビーで三人と合流した。全員無傷だが兄妹は放心状態だ。何か凄い出来事があったのだろう。


「お帰りなさい、どうだった? お金は取り戻せた?」


 ララーシャルが明るく出迎えるが、宿屋の惨劇を見た後では……。怒るべきか、それとも兄妹を守った事を褒めるべきか。


「ただいま、無事にお金は取り戻せたわ。でも騙されたお金がいくらだったか聞くのを忘れたから、あるだけ持ってきたわ。そっちは大丈夫だった?」


 サクラがオレの代わりにララーシャルに応える。……ちょっと待て! 有り金全部持ってきた? いつの間に! サクラの足元にはオレの頭くらいの袋が置いてある。それ全部お金? 中身を見ると銀貨が多いな……、金貨も混ざっている。


「大丈夫よ。マナーを知らない不審者が来たくらいね。その人達から身を守る為にこの宿屋に来たの。ここなら安全で不審者も来ないから安心よ」


 ……安心って。ここは高い宿屋なんだよ! 破壊した宿屋の十倍だよ、十倍。お金も……、お金はあるな。サクラが頂戴してきた金がある。迷惑料として貰っておくか。

 後はララーシャル達がここに来た経緯を聞いておこう。どうして泊まっていた宿屋が半壊して高級宿屋に居るのかを。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精やり過ぎですが、妖精ですから仕方ないですね 宿屋破壊がヤバイです ここにきて密偵がどんなキーワードになるのか気になるところです 更新ありがとうございます!
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