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精霊の友として  作者: 北杜
二章 下人編
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お久しぶりです、村人トルクから下人トルクになりました。

下人になり一週間が過ぎました。朝起きたら瓶いっぱい水を汲んでこなくてはならない。それが終われば食事の用意だ。上の人間が食事を食べたら下人の俺たちも食事だ。食事が終われば今度は畑仕事が待っている。朝から夕方までずっと畑仕事だ。昼御飯はなし、一日二食の生活。

水汲みくらい水魔法で汲ませろよ、なにが「井戸の水が美味いから井戸から汲め」だ。水の味が分からない人間のくせに。

朝食は「新人は一番最後に食べろ」だと。オレが準備をしたんだぞ。

一番遠い農園がオレの担当の畑だと?畑ではなく荒地だぞ。この荒地を「この畑を一週間で種を撒ける状態にしろ」だと、八歳のガキに何を言っている。

偉そうな奴に「昼飯は?」と聞いたら殴られて「新人のガキには昼飯は無い、昼飯が欲しければ自分でどうにかしろ」だってさ。

夕方になり畑仕事が終わり、晩飯の準備をして晩飯も最後に食べ食器を洗う。そして泥のように寝る。

この農園はブラックだ。

八歳にさせる仕事ではないぞ。文官さんのレオナルドさんも農園に来てから会ってないし。農園責任者のゴランさんも最初の一日しか会っていない。ゴランさんに農園の案内をしてもらい、ルールを教えてもらい、仕事内容を教えてもらった。後は、古株の下人達から仕事を押し付けられている。

労働基準法は無いのか、弁護士にTELだ、社会は何をやっている、チクショー。幼児虐待で訴えるぞ。


一日目はゴランさんについて回って農園の事を教えてもらった。

二日目からゴランさんの代わりに農園の生活を教えてくれる古株の下人達に仕事を押し付けられた。

朝、たたき起こされ「新人だから水汲みをしろ」と言われて水魔法で瓶に水を入れると殴られ「井戸の水で瓶をいっぱいにするんだよ、魔法の水はまずいだろう」ニヤニヤしながら言われて仕方なく井戸から水を汲む。瓶に水を入れるときに水魔法で水を入れてごまかしている。


「やっぱり井戸の水は冷たくてうまいよなー」


井戸水と魔法水のブレンドだよ。

農園の班ごとに分かれていて十人で一区画を担当するらしい。一番下っ端が班の人達の朝飯の準備をしないといけないらしい。だから十人分の食事の用意をして朝食を食べようとするが「下っ端は最後に飯を食べるんだよ」と言われ殴られた。最後に朝食にありついて食べ終わったら十人分の食器を洗う。

それから畑仕事にむかうがオレが案内された場所は農園から一番遠い所にある荒地で石や草が生えている所だった。


「畑の実りが約束されている新人には勿体ない畑だぞ、1週間で種を撒ける状態にしろよ、出来なければ飯抜きだ」


と新人担当の人はそれだけ言って去っていった。

昼飯時になり他の人間が昼飯と食べているがオレには昼飯が無い。


「新人は昼飯無しだ、自分で昼飯はどうにかしろ」


昼飯は無しかよ。腹減ったから水魔法で水を出して腹を膨らませた。

夕方になり畑仕事が終わったへとへとになっていたが朝と同じようにみんなの晩飯の準備をしないといけない。みんなが食べた後に食事をして食器を洗ってベッドに横になる。ベッドで寝れて良かった。ベッドではなく床に直接寝ろとか言われなくてよかった。

疲れをとるために回復魔法で体の調子を整えながら泥のように寝る。

それを一週間繰り返しています。新人にはつらい職場です。どうすれば退職できるか考えています。


そして現在、オレは元荒地の畑の前にいます。この荒地を畑にするのはマジで大変だった。

まず土魔法で雑草と根以外の土を下げて草を取る、これで草が取れる。石は土魔法で穴を掘ってその下に放り込んだ。雑草は火魔法で燃やして灰は周りにバラまいた。あと森から腐葉土を持ってきて畑に撒き土魔法でかき混ぜて立派な畑の出来上がり。子供一人ではできない作業だぞ、マジで魔法万歳。

昼食時よりも少し時間がたった時にゴランさんがオレの様子を見に来てくれたので。


「命令通り一週間で畑にしました。だから昼飯をください」

「……二つ聞くが誰が一週間でこの荒地を畑にしろと言った?もう一つは誰が昼飯抜きと言った?」

「うちの班の人達ですけど……」

「……分かった」


その後、オレは別の班に変わった。

今度の班はみんなで食事の用意をして昼飯も食べられる。水汲みも水魔法を使ってよいとの事。

因みに前の班の人達は他の荒地を畑にする作業をするそうだ。頑張れ。ざまみろ。因果応報だ。

それからは班のみんなで楽しく畑仕事をしたり、森から出てくるサウル(ウサギもどき)を捕ってみんなで食べたり、夜には班の人達が「文字を教えて欲しい」と言ってきたのでオレが文字と算数を教えている。今の職場は明るく楽しいな。休日が無いのが悲しいがみんなと楽しく生活をしている。

二ヶ月くらい畑仕事をして過ごして今はゴランさんの手伝いをしている。ゴランさんと一緒に畑仕事をしたり出来た野菜をまとめて町に持っていく段取り、農園の管理のやり方等々を横で見て手伝っていた。文字が読めて計算が出来て魔法が使えるから重用してくれているのかな?




畑仕事に追われる日々が過ぎていく中、現在オレは畑の近くで少し休憩をしていた。日差しも温かく風も心地よい良い天気だ。

疲れが溜まっているから少し横になる、温かく風が心地よくてスグに眠ってしまいそうだ。目をつぶって横になっていると女の人の声が聞こえてきた。


「あらら、この場所は良い土地ね。みんなも嬉しそうに笑っているわ」

「だろう、みんな頑張っているからね」

「あらら、聞こえたかしら。土地を良くしてくれてありがとう。みんな喜んでいるわ」

「お礼は豊作になるように祈ってくれよ」


寝ぼけながらでもキチンと返事は出来るもんだな。眠くなってきたから寝ようかな。


「だったら精霊が喜ぶような踊りでもしたらどうかしら?精霊は踊る事が大好きだからね」


喜ぶような踊りね……、踊る……。

精霊?

バッと起きあがり周りを見たがオレの周りには誰もいない。確かに女の人の声が聞こえたが……。寝ぼけていたかな?

しかし目が覚めてしまったな。女の人?が言うには精霊は踊る事が大好きだから踊ったら豊作になるか……。

踊りか。踊ったら豊作になるのだったら踊ってやろう。しかしオレはこの国の踊りは知らないな。

村の祭も参加してなかったから踊りは知らないし。

そういえばゴランさんは何処に行ったんだ?

周りを見ているとゴランさんを見つけたが変な事をしている。桶を両手で持って腰を落とし下から上に汲み上げるような動作をする。

何をしているんだ?オレはゴランさんの近くに行く。


「ゴランさん、桶を持って何をしているんですか?踊っているように見えますけど」

「おお、トルクか。この踊りは昔からの言い伝えの踊りでな、豊作祈願の土壌救いだ」


土壌救い……どじょうすくい……ドジョウすくいの事か?なんでドジョウすくいなんだよ。

「よしトルク。一緒に踊るぞ。豊作祈願だ」

そして大人と子供二人で桶を持って踊る。

……はたから見たら怖い光景だな。あれ?畑の様子が……。


「……ゴランさん、質問があります。畑の様子がおかしい気がします」

「……なあトルク。畑の様子がおかしい気がするが……」


きっと同じ内容の質問だな。


「畑の野菜が成長している気がする」

「畑の野菜が成長している気がします」

「四日前に植えた野菜だよな……。成長をしている気が……。」

「豊作祈願の踊りをしたら野菜が成長するのですか?」

「いや、こんな事は初めてだ」


どうしようか。この出鱈目な出来事は。

畑の野菜が成長している。踊ったせいか?二人で滑稽な踊りをすれば野菜が成長するのか?オレはファンタジー舐めていた。


「四日前に植えた野菜だよな……」

「ゴランさん、畑仕事をしましょう。そうだ次の畑の種まきですけど……」


強制的に会話を変えてこの畑で起こった事は忘れよう……。

しかし、あの女性の声は何だったんだ?

まさか精霊なのか?


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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