7 労働施設占拠と町へ出発
……いつの間にか投稿して二年経っていた。
亀更新に付き合ってくれている皆様に感謝!
その日は朝からうるさかった。
偽善や馬鹿力達の気合の入った声。
看守達がオレ達を罵倒する声や鞭の音。
騒がしくてオレは石運びをしながら考えていた。「みんな元気だな」と。
昼過ぎ、石運びの最中にスレインの取り巻きの一人に声をかけられた。
「トルクだったな。スレイン様が呼んでいるので来い!」
「石運びが終わったらで良いか?」
「そんな事よりも早く来い!此処を占拠したのだぞ!」
……占拠した?暴動は終わったのか?いつの間に?早くね?あっという間に占拠したね。気づかなかったよ……。
てっきり暴動の最中にオレを害すると思っていたのに……。考えすぎだったのかな?
「急げ!スレイン様を待たせるな!」
スレインの部下の後について行き、囚人が入れない看守達が待機している場所に向かった。
捕まった看守達は牢屋などの一ヶ所に纏められており、偽善や馬鹿力などの囚人達が見張っている。怪我をしている囚人も少なく、看守達も怪我などはしていない。
しかし何故か床を掃除している者達が居る。それに何か変なにおいがする。しいて言うならバキュームカーの匂い?トイレが近い場所にあるからなのか?
スレインは周りに指示を出しており、オレを見ると言った。
「この場所は占拠した。次の作戦に入る。今度は看守達と協力して町で手錠のカギを入手する。お前も連れて行く予定だから準備しろ!」
「……どうしてオレも行くんだ?」
「魔法が使える人間はお前しかいない。何かあれば頼む事になる」
「魔封じの腕輪のせいで魔法がほとんど使えないぞ」
「火や水を出せるだろう。野営するときに楽でいいし、飲料水の心配をしないで済む」
オレをマッチや水筒がわりに使う予定なのか?まあ良い、オレもこの場所から出たいからな。早く手錠を取って魔封じの腕輪を取りたい。
承諾してオレも施設を出る準備をする。とはいえ持ち物は無いから周りの人達の手伝いをしようとしたが「邪魔するな!」と言われ大人しくする。
スレインは仲間の看守と部下達に指示を出して町に向かう準備をしている。
オレはボケーとその光景を眺めている。馬車に物を積む囚人、町に行く用意をする囚人、施設の看守達を見張る者、カギが来るまで待機している者。囚人のリーダー格の者達は看守達を見張り、囚人達のまとめ役になり、スレインや部下達、仲間の看守や町に詳しい囚人、腕の立つ囚人は町に行く事になった。
準備に一日をかけて施設を出発する予定だ。だから今日は看守達が食べている肉が入った食事や酒が振舞われた。さすがに酒は全員分となると量が少なくなるから最初の一杯だけだ。乾杯をして久しぶりの美味い食事を食べて明日の事を考えて早々と寝る事になった。
そのとき、ベッドの取り合いでケンカが始まってリーダー格の囚人が仲介に入った。
オレは床で寝ながらその騒動を聞いていた。
早朝、屋根付きの馬車の中でオレ達は手錠を付けているから隠れるように町へ目指す。
その町に向かう人の中には爺さんもいる。なんでも町に詳しいそうだ。
「昔、町に行った事があってな。知り合いも居るぞ」
「……その知り合いは生きているのか?」
「それは行ってみないとわからんな」
三・四十年間も囚人だった爺さんの知り合いなら隠居している老人、もしくは墓の下だろう?大丈夫なのか?
オレ達はスレインの指示で馬車に乗り町に向かう。町まで五日くらいかかる移動だ。十分な食糧や飲料水を持って出発する。
味方の看守や囚人達、スレインとその部下と地獄の労働施設を発った。
久しぶりの自由な空の下で囚人達は喜び叫んでいる。爺さんも空を見て泣いている様な表情で空を見ている。オレの場合は数ケ月ぶりの自由な空だが嬉しくなり空気を一杯吸って「シャバの空気だ」とつぶやいた。
これで手錠と鎖と魔封じの腕輪がなければ良かったのだけど……。
途中の野営地で食事を食べて休みを取る。久しぶりの野宿でクレイン様達の事を思い出した。
男爵家族達と一緒に野営をしてご飯を作った事だ。あの時はバーベキューみたいだったな……。エイルド様たちがオレが料理をしている所を見て、かまどの近くまで来て危なかったよな。急いで土魔法でテーブルを作って見物出来るようにしたっけ……。
懐かしいな……。クレイン様達は何をしているのだろうか?バルム領地は大丈夫なのかな?バルム砦が落ちたから帝国と戦争をしているのかな?
それにオレはどういう風にみんなに伝わっているのかな?捕虜になって捕まった事は知っているのだろうか?母親が聞いたら気絶しそうだけどマリーがいるなら大丈夫と思いたい。
エイルド様やポアラ様も心配してくれているかな?なんとかオレの無事を伝えたいが……、手紙を送れるかな?しかし帝国から王国に手紙なんて無理だろう。
送れたとしてもスパイ容疑もしくは偽物だとおもわれそうだ……。
そんな事を考えているうちにいつの間にか眠りについた。
町に向かう道中、何事も無く残り一日の距離まで来た。この野営地で一泊したら昼くらいに町に着くそうだ。
オレは魔法を使って飲料水や火を熾しているため野営地での見張りは免除されているから朝までゆっくり寝られる。
魔法で火を熾して、飲み水の補充をする。食事も済んで寝るだけだ。旅の疲れか眠くて仕方がない。
子供だから体力が周りの大人よりも少ないんだ!仕方ないだろう!
寝ようとしたら誰かがオレを呼んでいる。
「トルク、話したいことがある。少し良いか?」
スレインの部下の一人だ。何の用だ?首を横に振り歩き出したのでオレは後について行く。
何の用だ?ローランドの件か?ダニエルの件か?それともスレインの部下になる事か?
野営地を離れ、木が茂る森の入り口まで来た。一体どこまで行くんだ?他の人には話せない事なのか?
「なあ、何処まで行くんだ?野営地からだいぶ離れたぞ?」
「……そうだな、この辺りでいいか……」
オレの方を向いてジッとオレを見る。暗くて表情が見えない。なんだ?
「……クリスハルト様の件だが。お前の言った事は真実か?」
……どうしてそんな事を聞く?今更こんな所で?嫌な予感がする!
後ろで手錠の鎖の音がした!振り向く前に鎖で首を絞められる!指で鎖を取ろうと……痛くて鎖を触るくらいしか出来ない!
「スレイン様の為!ローランド様の為!お前の存在は見過ごせん!」
ローランド様?やっぱりこいつらはローランドの事を知っているのか!
「スレイン様の弟君のローランド様と王国の捕虜。どちらを信じるのかと言われるのならローランド様を信じるしかないだろう!」
……スレインの弟がローランドだと。だからローランドの事を濁していたのか!
「お前の事は不憫に思う。子供なのに捕虜になってこんな所で人生を終わるなんて……。悪く思わないでくれ。苦しませずに殺すから」
男が手に刃物を持って近づいてくる……意識が……こんな所で……母さん……。
意識を失いかけたとき、後ろから衝撃が入り鎖が緩んだ!鎖に手を入れて息を吸い込む!後ろから悲鳴が聞こえ、鎖を首から外された!何が起こった?
「坊主!大丈夫か!」
その声は爺さんか?まだ苦しくて喋れない!
「何をする!邪魔するな!こいつは此処で殺さなければならないのだ!」
「ふざけた事言うな!そんな事などさせるか!」
爺さんを殴り飛ばそうとするが男の腕を取って投げ飛ばす。丁度、オレの首を絞めていた奴に当たって二人共倒れこむ。
「まだまだ若造には負けん!坊主!大丈夫か!」
ゼイゼイ言って首を触りながら頷く。この爺さん強いな。オレを殺そうとした奴らは騎士だぞ?
「こっちだ!背負うぞ!」
「待て!逃がすか!」
オレをお姫様抱っこで走る爺さん。暗闇の森を素早く走る爺さん。お姫様抱っこじゃなくて背負ってくれよ……。
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