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精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
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5 老人と精霊の印

御使い?老人はオレを見て言った。何のことだ?


「その顔の印が御使いの印だ!」


……顔の印。あの精霊達の付けた印か!家族も見えない印だぞ?見える奴は精霊しかいなかった。それが見える老人。


「見えるのか!」


誰も気が付かないから精霊にしか見えないものだと思っていた。現にオレも鏡を見ても顔には何も付いていなかったから気にしていなかった。


「どうして見える!オレも印を付けたと言われるまで気付かなかったぞ!」

「昔、御使い様に仕えておってな。印の事も知っているし、見る為の修行をした。しかしワシは才能が無くて印がうっすらとしか見る事が出来ん。

お主は誰に……ウグゥ!」

「爺さん!大丈夫か!」


大丈夫と言いならが頭を押さえる。オレは少し離れた所に爺さんを移動する。


「爺さん、御使いって奴は何だ?精霊の事か?顔の印は精霊に付けられた!」

「そう、精霊に認められた印だ。それでお主は誰の御使い様の後継者じゃ?」


後継者?なんだそれ?


「後継者とはなんだ?周りに精霊と話せる人間なんて居ないぞ?」

「お主は初代か!初めて見たぞ!」


……今度は初代か。聞いた事ない単語が増えてきたな。

しかし今は怪我人の為に水を出す作業をしないといけない。「後で詳しく話を聞きたい」と言って作業に戻った。

落石現場はだいぶ落ち着いてきた。看守達が現場を確認して「仕事に戻れ!」と言いながら鞭で叩く。怪我人の治療する時間もなく動ける者達は仕事に戻った。

何人もの囚人が怪我をして重傷の者も居れば死んでいる者達もいる。

看守は死んでいる者達の手首足首を切り落として手錠足錠を取り外した。何度も見たが嫌な光景だ。人を人だと思わない行為だ!吐き気がする!

助けた爺さんを連れてオレは部屋に戻った。


「爺さん、大丈夫か?水いるか?」

「大丈夫だ。お主は働かないで良いのか?」

「魔法で鎖を外す事を頼まれているから、少しくらいは大丈夫だ」

「……魔封じの腕輪をはめながら鎖を外すなど、出来るのか?」

「まだ無理だな。鎖を壊す事も出来ない。壊すためにいろいろと考え中だ」

「ワシも長いこと、此処に居るが誰も鎖を壊した者はいない。鉄石で壊そうとしても無理だった」


……本当にこの鎖は鉄で出来ているのか?魔鉄とか固い金属を使っているのではないだろうか?


「魔法で鎖を壊すか……。あのお方なら出来そうだな」

「……あのお方って奴が爺さんの主だった御使いか?」

「そうだ、精霊に認めてもらった方の事を御使いと呼ぶ。あの方なら腕輪を壊せるだろう……」


やはり精霊か。しかし御使いなんて言葉は初めて知った。帝国だけの言葉なのか?


「精霊を知っている奴は他にもいるのか?帝国には御使いが何人も居るのか?」

「昔は王族や上級貴族の一部しか知らんはずだ。御使い様もワシは一人しか知らん。帝国で精霊と心を通わせることが出来る者はワシの知る限りではあの方しか知らぬ。御使いになるには才能が必要でワシは才能が無かった。印を見る事は出来ても精霊と心を通わせることは出来なかった」

「精霊を見る事は?」

「精霊を見る事も声を聞く事も出来なかった。御使い様から才能が無いと言われたものだ」


……精霊を見る事が出来る才能か。最初は頭を打ったからくま〇んに似ていた精霊達を見る事が出来た。頭のネジがゆるんだせいだろうと思っていたがそれだけではないと思う。

声が聞こえたり、姿が見えたりするのは魔力が関係していると思う。精霊から魔力が薄いと言われた事があるからな。


「魔力が薄いか。……ワシもあの方から言われた。ワシは魔力が薄いから精霊達の声が聞こえないと」


精霊を見る為には魔力を濃くする方法が必要なのか。そんな方法は知らん。それよりも聞きたい事はある。


「……次の質問だがそれで初代とはなんだ?」

「御使いは精霊を後継者に譲り、精霊が認めたら次代の御使いとなる。初代とは最初に精霊に認めてもらった御使いの事だ」


なるほど。御使いとは代々精霊を継承する人の事で、初代が最初に精霊に認めてもらった人の事をいうのか。でもオレは御使いという奴ではないだろう。精霊を使役する又は呼び出す事なんて出来ないのだから。


「……悪いがオレは御使いという奴ではないな。精霊は見た事があるが認めてもらった事はないし、使役もしていない」

「初代だからだろう。認めてもらっても側に居ないだけだと思う。それから使役という言葉はいかんな。精霊と御使いは同等の立場なのだから」


……それは嘘だ!あいつ等と同等の立場?熊モドキの精霊達、其の一・其の二・其の三は勝手に顔に印を付けて、勝手な事を喋り、勝手にモノを食べる。オレを玩具と勘違いしている奴らだぞ!あいつ等が同等の立場?

……居ない精霊の話なんてどうでも良い。それよりも魔封じの腕輪を壊す方が大事だ!


「爺さん。この腕輪を壊す方法って知っているか?壊せれば魔法が使えるのだけど」


腕輪を爺さんに見せながら言う。爺さんは腕輪を触りながら言った。


「ワシには無理だな。壊せん。例え魔法が使えても壊せんだろう。魔封じの腕輪は鉄よりも固い。壊す方法なんてそれこそ御使いしか出来ないだろう」

「無理か。なら精霊に協力を求めればどうだ?」

「それも無理だろう。今のお主は精霊を見えないだろう。それは魔封じの腕輪を付けているからだ。認めてもらった精霊なら見えると思うが、腕輪を付けたままでは精霊の方が見えないだろう」


やはり腕輪をどうにかしないと無理か。


「それでお主はどのような精霊に認めてもらったのだ?」

「……認めてもらったかは知らんが顔に印を付けた精霊は、確か風の精霊と光の精霊と壺の精霊だったかな。それから川の精霊と木の精霊の声は聞いた事ある。待てよ、男爵家の畑の声の主も精霊なのか?」

「ほう、凄いな!その歳でそれだけの精霊と話をしているとは。やはり初代は違うの」

「爺さんの知っている人は違うのか?」

「ワシの知っている御使いは一人だけだ。その方は一人の精霊に認められている。素晴らしい方だった」


素晴らしい方だった。……過去形という事は死んでいるのかな?


「ワシが子供の頃に魔獣に襲われて死を覚悟したときに颯爽と現れて魔獣を退治してくれた。その後、ワシは御使い様の側に仕えた。素晴らしい日々だった。しかし御使い様はお亡くなりになり、ワシは後継者の方に仕えようとしたのだが……」


……断られたのか?


「男子禁制の後宮に入られて、男のワシにはどうする事も出来なかった。忍び込もうとしたのだが……」

「後宮に入ろうとして見つかって拿捕されて、此処に入れられた?」

「そんな事あるか!ワシもそこまで無謀ではない!ワシは帝都で暮らしておったが御使い様が何かしらの陰謀に巻き込まれたらしく顔見知りであるワシは捕り此処にいる。かれこれ……何年だろうな?三・四十年くらいいるだろう」


そんなに此処に居るのかよ!脱走とか考えなかったか?


「御使い様の為だ。後悔はない。それにこの腕では脱走は無理だな。それでお主は何処から来たのだ?」


片腕はその時に無くなったのだろうか?腕が無いのにそれをどうでも良いと思っている様だ。オレも片目を潰されて片方しか見えないが将来、そんな風に思う事が出来るのだろうか?


「王国出身だ。戦争に負けて此処に入れられた」

「そうか……。幼いのに苦労しているのだな。ワシに出来る事があるなら言ってくれ。出来る限りの事はしよう」

「出来る事か……。爺さんは帝国の地理には詳しいか?オレは王国出身だから詳しくない。帝国の事を教えてくれ」


脱出した後、帝国の地理が分からなかったらどうしようもない。帝国人の常識を知らないと他人からおかしいと思われるだろう。脱走までの時間は少ないがオレは爺さんに帝国の事を学ぶ事にした。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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