表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
127/276

4 帝国の貴族②

「話を戻すが、お前はオレの部下にならないか?」


結構話が戻ったな。この帝国貴族がどんな奴なのか知らないがどうしてオレを部下に欲しいんだ?ハッキリ言って怪しいだけだ。

オレが王国出身の者だと分かっていて部下に誘うなんて。捨て石にでもするのか?それとも囮に使うのか?王国の事情でも聴きたいのか?


「そうだな。自己紹介をしよう。オレの名前はスレイン。帝国貴族で政敵にハメられて罪人となってしまいこの場所にいる。こんな所に居るが帝都の貴族で爵位を受け継いでいる。オレの主が王国の捕虜になり、助ける為に動いていたら冤罪を着せられてしまったのだ。オレの部下達と一緒にな」

「そうかい。それは災難だったな」

「我が主、ロックマイヤー公爵の御子息の為に動いていたが力及ばず……」


……ロックマイヤー公爵?クリスハルトの事か?こいつの主がクリスハルトなのか?だったらクリスハルトの側に居たローランドの事を知っているかもしれない。知っているのならローランドの情報が掴める!

いや待て、クリスハルトが主とは言っていない。まずはその事を聞いて確認するべきだ!


「……バルム砦で捕虜になっていた奴はクリスハルトと言う名前か?確かロックマイヤー公爵と聞いた事がある」


クリスハルトの事を言って良いのか分からないが少しでも情報が欲しい。ローランドの事やダニエルの事を知りたい。知らなければ何も出来ないからな。こいつから聞き出せれば良いのだが……。


「お前!クリスハルト様の事を知っているのか?」

「……知っている。アイツの願いでオレは帝国の怪我人の手当てをした」


回復魔法を使って癒したとは言わない。言ったら変な事に巻き込まれる可能性があるからな。医者の真似事で治療したと誤魔化す!


「クリスハルト様は御無事か?」

「無事だったぞ。バルム砦が落ちたから捕虜から解放されたと思う。その後のことは知らない」

「……そうか御無事か」


感動しているが、今の状況をどう考える。お前は辺境の労働施設に居るんだぞ!


「ならば今後の為にオレも動かないといけないな。教えてくれて感謝する。そして改めて言おう。オレの部下になれ!」

「……あんたはオレの為に薬をくれたと偽善から聞いた。恩を返したいがオレにはやる事がある。だから部下になるのは難しい」

「やる事とはなんだ?オレが手伝えるのなら手伝おう」

「……クリスハルトの副官のローランドとダニエルと言う帝国人を探している。オレを地獄に落とした奴らだ。あいつ等の情報が欲しい」


二人のせいでオレはこの場所にいる。あいつらの情報を教えてくれて、復讐に力を貸してくれるなら、少しくらいなら期限付きで部下にでも下人にでもなってやる。

オレの話を聞いたスレインは少し考えて言った。


「クリスハルト様の部下のローランドの事は知っている。アイツも王国の捕虜になっていた事も。お前はローランドに何をした?アイツは王国を憎んでいたが子供にまで危害を与えるとは考えられん」

「だがオレはローランドに憎まれてこの場所に来た。ダニエルと言う帝国人から目を潰され、腕を折られ、剣で切られた。この場所に来たときは死んでもおかしくない状態だった。オレはアイツらに復讐をする!それが出来るならオレはお前の部下になってもいい!」

「……お前がどうしてその二人を憎むのか最初から教えてくれ」


オレはスレインにクリスハルトとの出会いから話した。そして帝国兵の怪我の治療をしていたが、治療が終わった後でローランドに人質に取られようとした事。その後、上司に捕虜の怪我を治している事を知られて、和平を考えるクリスハルトと話し合いをしようと牢屋から出した時に、ローランドが今度はオレの従者を人質に取った事。オレが魔法を使って従者を助けたが、ローランドはその件でクリスハルトからの信頼を失った。その後は砦が落ちた日に逃げようとしたがローランドに見つかり捕虜にされて、ダニエルから暴力を受けながら此処に来た事を話した。


「……子供や従者を人質にした結果、クリスハルトに信頼されなくなった。その腹いせにオレをこの場所に連れて来た!」


……スレインは考え込んでいる。何を考えているのかは知らないが、こいつはローランドと親しい間柄だったのだろうか?それならローランドの居場所を知っているかもしれない。


「ローランドの居場所を知っているか?奴の家族や友人でも良い。アイツの事を知っている奴を教えてくれ!」

「……知ってどうする?復讐するのか?」

「復讐する!」

「クリスハルト様が和平を考えているのに、お前は復讐をするのか?」

「それとこれとは別問題だ。クリスハルトの事は関係ない」

「……少し待ってくれ。ローランドの事とダニエルの事だな。周りの者達にも知っているか聞いてみる」


そう言って出て行った。知り合いなのか?隠しているがおそらく知り合いなのだろう。奴や奴の取り巻きに聞けば分かるはずだ。

オレは運が良い。復讐相手のローランドの事を知る人間がこの場所に居るとは……。

……こんな所に居る時点で運が良いとは思わない方が良いか。




その後、スレインに会おうとしたのだが用事が有ると言われて面会を拒否された。

スレインの取り巻きにローランドとダニエルの事を聞いたが知らないとしか言わない。

……口止めされたのか?スレインもその部下達も知っているようだが箝口令を敷かれたようだ。

スレインはクリスハルトの部下なのだからローランドの事を知っているはずなのに。

そしてオレが奴らを殺害する事を言ってしまったので口を閉じたのか……。

しかしどうして口を閉じただけなのだろうか?普通なら知り合いを殺害すると言った者をそのままにしておくだろうか?

オレが相手なら無知な平民として殺すと思うが……。

スレイン達はオレを殺すだろうか?近い将来、それも暴動の最中に混乱に乗じてオレを殺すのだろうか?

……王国の敵よりも帝国の味方を助けるのは当たり前だ。ここでは味方は居ないと思った方が良いな。偽善や馬鹿力達も貴族達に何か言われているだろう。誰も味方が居ないとはキツイな。どうするべきか……。


「おい!」


呼ばれて振り向くと馬鹿力から呼ばれた。


「どうだ?鎖は切れそうか?」

「難しいかもしれない」


現在、鎖を切る方法を考えているが方法は見つからない。魔封じの腕輪も壊せず八方塞がりだ。

何か方法がないのか考え中だが思いつかない。

両足から火魔法で温度を上げて溶かしてみようと思ったが温度が上がらず鎖が溶けない。

片足で火魔法、片足で風魔法を使い火力が上がるかやってみたが無理だった。

他にも土魔法を使って石礫で鎖を壊すことが出来るかやってみたがそれも無理だった。

石礫を回転させて勢いを持つことは出来たが発射するスピードが遅い。飛ばすよりも落とすといった方が良いだろう。

だから今は魔法の質を上げる訓練をしている。

火魔法の火玉の温度が鉄を溶かす温度にまで上がるように訓練をしているのだが上手くいかない。

他に方法はないのか考えつつも一番良い方法が火魔法で鉄を溶かす方法だ。

前世では金切のこぎりとかグラインダーとかで鉄なんて切れるのに……。

……無い物ねだりは止めて訓練でもするか。


「どれ、試してみよう」


馬鹿力が鎖を持って引っ張る。そんなことしても切れないって……。


「ハアハア、もう少しだな」


そんな訳あるか!全然変わってないぞ!

全く、なにも進展せずに行き詰っているのに……。もう少し勉強しておけば良かった。きっとググれば鉄を壊す方法なんて一発で分かるのに。

……何か騒々しいか?

鉱山の方で何かあった様だ。看守と囚人の声がする。


「魔鉄が出た!」

「本当か!」

「魔鉄だと!」


……鉄石ではなく魔鉄を掘りあてたようだ。魔鉄って鉄とかと一緒で地中に埋まっていたんだな。初めて知ったよ。

そんな事はどうでも良いか。オレがする事は火魔法で鎖を溶かす事だ。

両足から火魔法の火玉を発生、それを圧縮して熱を高める、鎖に火玉を当てて鉄を溶かす。

……少しは鎖が赤くなったが火玉が消えてしまった。これ以上は火玉を発動できない。

周りが本当にうるさくなってきたな。今度はなんだ?


「落石だ!」

「誰かが岩の下敷きになっているぞ!」

「助けろ!急げ!」


助けに行かなければならないだろうか?でもオレが行っても救助の邪魔になるだけだろう。


「手伝いに行くぞ!」


……偽善がオレを誘うので付いて行った。ガキのオレが行って何か出来るのだろうか?

落石現場に行くと砂埃が凄い、岩に当たっただろうか怪我人が血を流して倒れている。中には岩の下敷きになって手しか見えない。

今は二次災害に気を付けているのか近くの怪我人を運ぶ事しかしていない。奥に行くのをみんな躊躇っている。


「何をしている!行くぞ!」


そう言って奥の方に行くのは馬鹿と馬鹿二世だった。あの二人のあだ名は猪突猛進で後先考えないからつけられたのだろうか?そんな事を考えている間に二人は奥から怪我人を運び出した。

他の者達も恐る恐る奥まで言って怪我人を運び出す。

オレも何かする為に水魔法で水桶に水を入れて怪我人に飲ませたり、傷を洗ったりした。


「助かった、ありがとう、坊主」


頭や肩に岩が落ちてきて怪我した囚人だ。そいつに水を飲ませる。


「しかし器用な事をするな。足から魔法を発動させるなんて」

「魔封じの腕輪をはめているからな。足からしか魔法が発動はしない」

「腕輪をはめて魔法が使えるとは……」


腕輪を見ながらつぶやく老人。あれ?この老人、片腕が無い!腕を落盤で失くしたのか?


「この腕はここに来る前に無くなった。気にせんでも良い。それよりお主、御使いだな?」


御使い?何のことだ?



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ