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精霊の友として  作者: 北杜
六章 帝国領囚人編
124/276

1 帝国領の労働施設

この場所に、労働施設に来てからどのくらい日数が経ったのか分からない。オレは奇跡的に生き延びている。

バルム砦が落とされて捕虜となり、オレだけ他の施設に入る事になって、道中には帝国の奴から殴られ、切られ、蹴られた。

殴られて目が潰れ、殴られ蹴られて体のいたる所に打撲、剣で切りつけられて切り傷、そのうえ腕の骨にヒビが入っていた様だ。

それでも生き残れた。

施設の人達のおかげで生き残れた。

怪我のせいで熱が出て朦朧として死ぬ寸前だったようだが、誰かが薬をくれた。

栄養が足りないから食事を分けてくれた。

ヒビの入った腕も固定してくれた。

みんな自分の仕事があるのにオレの為に一生懸命治療してくれて感謝している。

だけどオレには出来る事がない。子供のオレには何も出来ない。魔封じの腕輪のせいで魔法も使えないのだ。


「子供が気にするな」


そう言って笑う人達。過酷な環境でもオレを助けてくれた人達。

オレは助けてくれた人たちの為に恩返しを考えた。オレに出来る事は魔法が使える事だけだ。

しかし魔封じの腕輪をはめているから魔法が使えない。どんなに頑張っても無理だった。

手から魔法が使えないのだったら足の裏はどうだと考えて試行錯誤した結果、足の裏から水魔法の水玉を出すことに成功した。

これで水には困らないだろう!

周りの人達も喜んでくれた!少しは恩を返せたと思った!

しかし足から魔法を使うのはとても集中しないと発動しない上に水玉の量も少ない。

そして回復魔法は使えなかった。魔封じの腕輪が魔力の変換を邪魔して回復魔法に必要な魔力を生命力に変える事が出来なかった。

魔封じの腕輪から最も遠い足からなら魔力を変換する事が出来たのだから、回復魔法も出来るだろうと思って訓練したが出来なかった。

それでも魔法が使えるようになったので、少しでもみんなに恩を返せたら良いと思う。

怪我が良くなり体力が多少は戻ったからオレもみんなと混ざって労働をする事にした。

鉱山で取れた鉄石を運ぶ作業だ。

片目が見えなくて距離感がずれて認識しづらく、片腕が治療中の為にそんなに重い物は持てないが鉄石をかごに入れて運ぶ。

途中で看守から鞭で打たれ痛みで倒れた。かごから鉄石を落とす。落としたら再度鞭で打たれた。


「貴様のせいで賭けに負けた!」


八つ当たりされて痛みでうずくまる。怪我した腕を庇いながら何度も何度も打たれ傷が増える。やっと看守が何処かに行き痛みをこらえながら鉄石を運び終えた。鞭で叩いていた看守を見ると他の者を叩いている。その隙に他の囚人達がオレとかごに入った鉱石を看守の居ない場所まで運んでくれた。


「大丈夫だったか?アイツにはあまり近寄るな」


忠告を聞きその日は何度も鉱石を運び続けた。

仕事が終わり食事を食べる。食事の量は子供のオレなら普通だが大人なら少ない。その量をオレに食べさせてくれたのか……。

食事を取り少しでも体を休める。鞭で叩かれた傷が痛い。ベッドなどは無くゴザみたいな物を地面に敷いた所で横になる。

最悪な職場だ。こんな職場は体験した事がないよ。唯一の救いは周りの人達が優しい事だな。

休憩を終えてオレは水魔法で水玉を出しで水桶に入れる。

みんなに感謝されて嬉しかった。




数日が過ぎて周りの人達から情報収集をする。

この場所は帝国領の辺境の鉱山で犯罪者達の労働施設らしい。殺人犯や窃盗犯、政治犯や思想犯などがこの場所に捕まっている。他にも冤罪者や王国の捕虜などもいるらしい。

王国の捕虜の人達を聞いてみたが誰も教えてくれない。知らないのか何か理由があるのか分からないが深く聞かなかった。

そして誰がどんな罪で捕まったのかは知らない。というか教えないのが暗黙のルールなのだろうか?聞いても誰も教えてくれなかった。

此処には男の大人しかいなく、女や子供は居ない。他の場所にいるのか子供はオレしかいなかった。

鉱山の周辺に人里は無く、一番近くの村や町まで徒歩で最低五日くらいかかるそうだ。

脱走しても食べ物無しでは空腹で力尽きて看守に捕まるか、獣に襲われて死ぬ。

周りは岩山で森なども離れた所にあるらしい。

川は少し行ったところに有るらしいが崖の下に流れており激流らしい。昔に誰かが脱走して川に落ちて死んだそうだ。

帝国の首都や主要な街からもだいぶ離れており、王国からどのくらい距離があるのかも分からない。

他にも看守は遊びでオレ達を叩くのが好きで、毎日誰かが被害に遭っている。

看守の数は多くないが全員武器を持っていて両手両足が不自由な罪人たちは太刀打ちできない。

みんな大人しく看守の目に留まらないように労働している。


「大丈夫か?」


石を運びながらオレに声をかける人。囚人のリーダー格の一人でオレの傷を手当てしてくれた人である。


「……なんとか」


無理して強がる。鉱石を運んでいるだけなのだが子供の体力では気絶してもおかしくはない労働だと思う。


「無理はするな。お前は魔法が使える。水を出せる事で何人もの人達が助かっているんだ」


そういってオレが運んでいる石をかごから少し取る。ほんの少しだけ軽くなった。


「それでどうだ?この場所には慣れたか?」

「こんな場所で働く奴の気が知れないね。一生働いても慣れないよ」

「まったくだ。それで魔法の方はどうだ?」


この場所ではオレしか魔法が使えず魔法で水を出したり、火を出したりする事が出来るオレは重宝されていた。


「まだ下級以下の初心者レベルの魔法しか出せない。魔封じの腕輪が無ければ中級レベルなんだが……」


腕輪のせいでいつものように魔法が使えず難儀している。水玉を足から出して水桶に入れる姿はシュールだ。


「今夜、集会がある。お前を連れて行くつもりだ」


何の集会なんだ?ガキを連れて行っても良いのか?


「お前が魔法を使えるからな。周りにも教えておいた方が良い。特に魔法で水が出せる事を知らせないとな」

「……わかった。しかし身の安全は保障できるのか?」

「大丈夫だ」


そう言って別れてオレ達は作業に戻った。何処かで悲鳴と鞭で打たれる音が聞こえる。

オレには何も出来ない。その場所には近寄らずに黙々と石を運んだ。

労働が終わり、少ない食事を取り、魔法で水桶に水を入れて、魔法の訓練をするのが日課になっている。

少しでも水の量を増やす為に訓練をする。

火魔法の火はマッチの火レベル、風魔法の風もそよ風レベル、土魔法に至っては魔法が発動しない、水魔法で二リットルくらいの水を出すくらいにはなったがまだ足りない。

生きていくためにももっと水を出さないと。


「そろそろ行くぞ!」


声の方を向くと仕事中に会ったリーダー格の男性。

オレは訓練を止めて後について行った。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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