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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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16 大規模戦闘

大規模戦闘。

いつもの千人単位の挨拶の様な戦いではなく、本格的にバルム砦を落とす為に帝国が本気で攻める。

数ヶ月前、オレが砦に来る前にも大きな戦闘があり、その時は城壁での白兵戦がおこり、城門が開きそうになったらしい。

そのとき最前線で指揮をしていた王国側の騎士のヴィッツさんは怪我をして、帝国側の貴族のロックマイヤー達が捕虜となった。

死者も怪我人も多く町の者達にも対応してもらい手伝ってもらったそうだ。

その大規模な戦闘がもうすぐ始まる。

アーノルド様がすぐに城壁に指示を出し、騎士達を集めて軍議をおこなう。

こちらの兵力は五千人から六千人ほどで敵の兵力は三万位。

帝国側の兵力は魔法使いも多く、指揮する騎士達も多く、兵の数もバルム砦の五倍以上。

バルム砦側は魔法使いも少なく、指揮する騎士達も少ない、兵の数も徴兵された平民が多い。


「今年で二回目の大規模戦闘だ。向こうは数だけはそろえているようだな。兵の大半は徴兵された農民や平民だろう。いつも通りにやれば問題ない。敵を城壁から矢で倒し、城壁に上がってくる敵兵を落とす。帝国の魔法使いが放つ魔法に気を付ける。もしも城壁に上られても少数の敵を大人数で倒せばよい。敵の数に恐れるな!向こうには物資の補給が必要だが、砦で戦うワシらには物資の補給はいらない。砦には食料もあり武器もそろっている。怪我人を治療する事も出来る。今回は回復魔法の使い手もおるのだ。この前よりも楽に戦えるだろう」


バルム砦の責任者であるアーノルド様が騎士達に言い放つ。


「この砦を守る為に一致団結して帝国兵を追い返すぞ!」


アーノルド様の言葉に騎士達が返事をして指定の場所に行く。

オレは病院で怪我人の治療だ。怪我人がくるまで待つのが仕事だ。そしてアーノルド様に言われた言葉がある。


「お主の回復魔法は回復の見込みがある重傷者の者に使ってくれ。軽い怪我人・死にそうな怪我を負った者には使わなくて良い」


……軽い怪我人は病院の医師が、重い症状の怪我人にはオレが回復魔法を使い治す。死にそうな怪我を負った者には命に別条がない最低限の治療をする事をアーノルド様に要望した。

難しい顔をしていたが、ムレオンさんも説得をしてくれて許可を貰った。


「説得してもらいありがとうございました」

「戦死者を減らす為だ。騎士トルクも怪我人の治療を頼んだぞ!」


背中を叩かれ気合を入れられた。

今回はオレだけではなくダヤンさんも回復魔法が使える。オレよりも治癒速度が遅くて使える回数も少ないが大丈夫。

ケビンさん達にも補佐を頼み病院で待機する。

ほどなくして城壁の方で怒声と悲鳴が聞こえ戦闘が開始したのが分かった。

その後、怪我人が病院に届き治療を開始する。

軽い怪我人は城壁で痛みに耐えながら頑張っており、重傷者が病院に来る。

オレの出番だな。……治療開始。魔力量を少なくするために最低限の治療をする。

何人もの怪我人を回復魔法で治したから、ある程度分かった気がする。

この程度の傷にはこのくらいって感じだ。後は医者に任せて次の患者を待つ。次が来た!死にそうな重患者だな。回復魔法で命に別条がないくらいに治療で医者に渡す。

次はうるさい騎士か。かすり傷で病院に来るな!とっとと治して城壁に行け!回復魔法を使ってほしかったら千人くらい敵を倒してこい!

……昼になり、夕方になり、夜中まで戦闘が続く。帝国は丸一日中戦い、戦闘を止めない。

兵力がこちらの方が少ないから疲労を誘って体力を奪う作戦なのか?

まだ一日目だから大丈夫だが三日目・四日目となるとキツイ。

アーノルド様も交代制で兵を休ませて疲労を癒させる。

町の人達も協力して食事や傷の手当ても手伝ってくれた。

オレもダヤンさんも回復魔法を使い魔力を回復するために横になる。ケビンさん達は万が一の場合にそなえて交代で休みをとる。




二日目。

敵の勢いは昨日と同じで、砦の兵達は疲れが出てきているのか怪我人も少しずつ増えてきている。

戦死者も出てきている。当たり所が悪く即死の者。病院に運ばれる最中に亡くなった者。

戦死者は町の人達に預けて一ヶ所に集めているそうだ。

怪我を負い、病院で医師に治療をされてすぐに最前線に戻る兵達。

ベッドにいる重体患者がオレに治療を求め、戦いに行こうとする兵達。

……すまない。怪我人を選ばないといけないんだ。オレの魔力も余裕がない。ギリギリなんだよ。

敵の猛攻は激しく、最前線の城壁では敵兵が城壁に登り白兵戦になったそうだ。切り傷を負った兵が病院で言った。

だがムレオンさんの部隊が敵を倒して阻止した。

オレが出来る事はないのか?魔法を使える者を城壁に上げるか?そんな事を考えていたが。


「まだ戦闘は続きます。落ち着きましょう」


ケビンさんが落ち着かせてくれた。

……そうだ、まだ二日目だ。オレが出来る事は魔力の温存だ。

オレは怪我人がいないときは瞑想して少しでも魔力を温存する。ダヤンさんもオレに習い瞑想をする。少しの時間でも魔力が増えるように呼吸を整えて瞑想をした。

他の者達には見つからないように個室でダヤンさんと一緒に瞑想をする。サボっているように見えるからな。

怪我人を癒し、瞑想をする。

そんな事をしていると二日目が終わった。




三日目。

兵に疲れが出て来た。

味方の怪我人が増える。重傷者も増えてきた。重傷者だけ魔法で癒し、軽傷者は医師に任せる。

ダヤンさんは魔力を使い切り、フラフラの状態だ。現在、個室で休んでいる。

彼は気絶する寸前まで回復魔法を使い味方の治療をしていた。もう少し気づくのが遅れていたら本当に気絶していたかもしれない。

オレも魔力がなくなりそうだ。どうして初日は数百人もの怪我人を癒せたのだ!そのときの魔力が欲しい!

剣の切り傷が多く、敵が城壁に登って白兵戦をする事が増えているようだ。

だが騎士達が守っている。砦は大丈夫だ!

そして気づいた事がある。瞑想によって魔力が回復する。鐘一回分(約二時間)くらいで二回魔法が使える事が分かった。

ダヤンさんは鐘一回分で一回魔法が使える。

この差はなんだろうか?時間があるときに調べたい。

今日も夜中まで戦闘が続きみんなの疲労が溜まる。兵達も休みながら交代で戦っているが段々と疲労していく。

そして戦える人間が少しずつ少なくなっている。

アーノルド様は町の人達にも応援を頼んだ。

町の人達も城壁に登り弓を取り敵に放つ。剣を取って城壁に登る。

砦の町の人達は戦闘経験がある人達だ。これで少しは楽になるはずだ。




四日目。

昼の鐘が鳴るとき城壁で白兵戦をしている敵兵が階段をおりて広場に着いた!城門に向かっている。

ヤバい!城門の周りにも兵が守っているが砦の兵達は疲れ切っている。

帝国兵は精鋭部隊なのか武器も防具も違う。城門を守っている兵達がどんどん倒れる。

増援の兵も城門の近くに行けない。ケビンさんどうする?


「帝国兵の守りを突破して城門近くの敵兵を倒すのは難しいです。遠距離から弓を放つか……、矢が届かない。城壁から下に撃つ……、敵が守っている」


……遠距離からの魔法攻撃はどうだ?


「ここから結構離れていますよ。味方に当たるかもしれません」


……ならば、広場にいる敵兵の数を減らすのはどうだ?


「敵が強くて私達でも難しいです」


……敵が身動きできない様にすればどうだ?

「……あれですか?」

「あれだ!敵の鎧は重そうだ。上手くすれば簡単に倒せるぞ!」

「しかしアーノルド様の許可が……」

「事後報告!」


全員!応援に行くぞ!

広場に行き魔法の準備をする。

タイミングが大事だ!動かない敵を狙って……今だ!土魔法の土壁、細長バージョン!足の間に発生させて急所を狙う禁じ手!


「そっちですか!てっきり落とし穴だと!」

「こっちの方が魔力の消費がすくないんだよ」

「えげつない方法を……。こんな魔法を使うのは隊長だけですよ」

「ダヤンやアルさんにも教えているぞ?そのうち使うはずだ」


相手を見定めて……今だ!次……。


「……敵に同情します」

「戦争とは非情だな」


何度も土魔法で使い、敵の数が少しずつ減り味方の数が増えた。広場を守っていた敵兵を突破してなんとか城門の死守に成功したようだ。

股間を強打されて倒れた敵兵や白兵戦で倒れた敵兵は捕虜として武装を解除して牢獄に移動させる。

次は広場の味方の怪我の治療だ!重傷者の怪我人はこっちに来い!あと五回くらい回復魔法が使えるはずだ!


「トルク、どうしてこんな所で怪我人を癒している?」

「城門が危なかったので援軍にきました」

「……いきなり敵が倒れたというのは、お前の魔法の仕業か?」

「土魔法の土壁を作って敵を倒しました」

「いきなり敵が股間を強打されて倒れたと。見ると土壁の様なものが刺さっていた報告を受けた。そんな魔法が使える者はこの砦ではお前だけだ」


……良いカンしてますね!


「敵に同情するぞ。お前は二代目クラッシャーの名を継ぐか?」

「辞退します。ですが初代は誰ですか?」

「アルーネだ」


……アルさん何をしたんだ?貴族の女子がなにをしたんだ?


「そしてトルクよ。病院の方は?」

「怪我人が増えています。重傷者も少なくはありませんが、ギリギリの治療をしているので時間がかかるけど治ります」

「……トルクのおかげで戦死者を減らせることが出来た。お主に感謝しなければな。とはいえあと数ヶ月でお前も王都に行かなければならぬ。どうしたものやら」


砦にいる期間は最短で半年、長くて一年だ。その後はどうするのか?騎士や兵も減って砦を維持する事が困難になってきている。

現に城門を落とされそうになり危なかった。


「サムデイル様から手紙は?」

「ここ数日来ておらん」


本当にどうにかしないと危ないぞ。この砦は。


「お前のおかげで窮地は脱出したようだ。礼を言う。明日で五日目だ。味方の疲労がピークだろう。連日連夜戦える帝国の兵力が羨ましい」


城壁の方では敵が後退しているようだ。なんとか危機は免れたが油断しているとまた攻められるだろう。本当に敵はしつこいな。

オレも疲労で倒れそうだ。瞑想しつつ休むか。




五日目。

連日連夜で砦の防衛中の昼過ぎに変化が起きた。

敵が戦闘を中止して矢の射程範囲外まで下がり戦闘を中断した。

その後、数十人の人間を連れてきて言った。


「アイローン砦は帝国の手に落ちた。第二王子や貴族や騎士などは捕虜となっている。捕虜たちを返してほしければバルム砦と交換だ」


第二王子が誰かは分からないが、口と腕を縛られているサムデイル様の姿が見えた。

城壁の騎士や兵達が混乱する。

アイローン砦が落ちて王族たちが捕虜になった?

その後、王都からも使者がバルム砦に来て、アイローン砦にいた第二王子と貴族と騎士達を助ける為に、バルム砦と騎士・兵達が身代わりとなって捕虜になる事が決定した。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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