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精霊の友として  作者: 北杜
一章 村人編
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閑話 祖父の後悔1

この辺境の村でワシ等は生きていた。

ワシ等夫婦と長男、次男、長女、次女の六人家族。

ここオルコット王国バルム領辺境の村は帝国領に近くよく戦争に巻き込まれる。

長男も徴兵されて戦争に行った。

長男は帝国との戦いで亡くなったと聞いたときワシ等夫婦は泣き崩れた。

次男は帝国との戦いの前に怪我をして徴兵されなかった事は幸運だった。徴兵された村人達の大半は故郷の村へは帰ってこなかったからだ。

そして長女のリリアは貴族に目を付けられ誘拐同然にさらわれた。


「娘を差し出さなければこの村を蹂躙するぞ」

「今だったら、帝国兵がこの村を滅ぼした事に出来る」


と脅されリリアを差し出した。言われたときにはリリアはさらわれてこの村にはいないのだ。ワシにはどうすることも出来ない。

その後も貴族はワシに言った。


「もうこの村にこの娘の居場所は無い。娘の心配はするな、こいつは貴族の女になるのだからな」


意味は娘の事は忘れろ、戻ってきても何もするな、追い返せ。という意味だろうか。


「これをくれてやる、ありがたく思え」


と言い銀貨を投げつけられた。

同じ人間とはいえ何故平民はこの扱いなのだろうか。戦争で長男は死に、娘は貴族にさらわれる。

村の男手も減り、不作続きで年貢の心配もしないといけない。

今年は餓死者が出るかもしれない。

貴族にさらわれた長女の事は子減らしの様に考えないといけないのか。

村人に今回の事、これからの事を相談しなければならない。

そして今回の事で次女は町で奉公をすると言っている。

口減らしと少しでもお金を稼ぐためにこの村から出て行くそうだ。




あれから、数年が過ぎた。

次男は結婚して子供が生まれた。しかし次男の嫁は出産後に体調を崩して亡くなった。

孫のマリーには強く生きてほしいと願うばかりじゃ。

年々の不作続きで子減らしの為に子供を下人に渡す家族も増えているようだった。食糧が少ないこの村で生活するよりも食料が食べれる下人の方が良いと思う村人が増えているようだ。

今度は王国の方から帝国に戦争をすると行商人から聞いた。また、不幸な家族が増えると思うと悲しくなる。

そしてこの行商人はこの村に来るのを減らすと言っている。知り合いの行商人が賊に襲われて亡くなったそうだ。この周辺の村は賊が居るので危険だから村に来る回数を減らすと言っている。何とかお願いしてもらったが駄目だった。この村は少しずつ滅びの道を歩んでいる。

次女からの手紙が来たのでワシは手紙を読む。元気に働いているという知らせが届くのが何よりの喜びだ。

奉公先でも幸せに生活している次女を思いうれしく思う。

そしてさらわれた長女を思う。長女はワシの父から魔法を教わっていて明るくて優しい子だったのだがどうしてあの子は貴族に目を付けられたのだろうか。優秀で目立つ子は貴族や賊に狙われやすいのだろうか?




数年がたち孫のマリーが五歳になったとき長女が村に帰ってきた。

次男から訳を聞けば貴族から捨てられたそうじゃ。

長女とその子供がこの村に帰ってきた事をあの貴族が聞けば村が滅ぼされるかもしれない。

長女を村から遠い所の家に住ませて村人全員で隠せないだろうか?

この村には長女と子供はいないことにして貴族から隠せないだろうか?

そのために、村人全員で長女家族を無視する、村にいない者とする。

出来るだろうか?

出来なければ今度こそ村が貴族に滅ぼされるだろう。

村人の為にまた娘を犠牲にする。

長女が帰ってきたらコップを投げつけて罵詈雑言を叩きつける。

なぜ、この村に帰ってきたのじゃ、この村は不作続きで生活は大変だ。お前にはここに住んでもらいたくないのに。

今からでも遅くはない、他の土地に行った方がお前の為なのに。

言いたくない事を言う。とてもつらい事だ。

それでも長女は村に住む事になった。なんてことじゃ。

長女の子供、トルクが「おじいちゃん」と言ってきたので睨み付ける。

狩りの為に作った村から一番遠い小屋を次男に案内をさせて一息つく。

村人に娘と子供を無視する様に説得をしなければならない。

村人からは「追い返せ」「村に住ませるな」とか言われるかもしれないが説得をしてみよう。

ダメなら家族全員でこの村を離れ次女の住む町に行こう。

話し合いの結果、村人達から許可をもらった。

長女はこの村に住んで良いと。

長女とその子供は貴族から隠し、我々も居ない者とする事、親子を無視すると約束してくれた。

村人達も随分と考えたが長女を不幸だと思ったのだろう。ワシは村人から言われた。「最後に村長を頼ったのだ。我々も何とかしたいと思う」

それを言われて涙が出た。村人達に感謝をする。

しかし、これから先を考えると不安で仕方がない。

また、あの貴族がこの村に来るかもしれない。

長女があの貴族に見つかったら村が滅ぶかもしれない。

そんな思いをしながら日々が過ぎていく。




長女と孫が村に来てから一ヶ月くらいたった。

長女は旅の苦労と精神的苦労が重なって病気で寝込んでいる様だ。

これなら、あの貴族が来てもなんとか言い訳ができるだろう。

次男は差別などしないと言って娘を助けている。

あの貴族の事を話したが「後の事は後で考える」と言い放った。

次男が長女を助けてくれるのはありがたいがマリーに迷惑をかけないように言わないといけない。

トルクは狩りでサウルを捕ったり、文字の勉強、魔法の勉強をしている。

長女を助けるためにと家事も進んで働いている。

あの貴族の血を引いているとは思えないような事をしている。

父親に外見は似ているが内面は全く違うようだ。

村の子供達から石や泥を投げつけられたりしているが、本人はあまり気にしていない。

本当に貴族の子供として教育を受けていたのか疑問に思って次男に聞いてみたが、

「毎日、魔法や文字の勉強、狩りをしたり、薬草を採ったり、家の掃除をやっているな。食事に文句は言っていないし着る物にも何も言わない。あまり貴族としての生活をしていなかったんじゃないかな?」

ワシの知っている貴族の子供とは違うようだ。

昔の記憶だが我儘でうるさく身分ある人間には礼儀正しく平民は物のような扱いが多い貴族の子供を見た事があるが、トルクは少し違うようだ。

村の為とはいえ長女と孫には酷いことをしていると自覚をしている。

なぜ、長女はこの村に帰ってきたのか。

ワシはその事は怖くて聞けない。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 村長視点必要ある?本当は良い人なんですよーってアピール今更されても……。蛇足では?
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