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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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9 砦での日常②

夜間の戦闘は少ない時間で終わり朝を迎えた。

怪我人も少なく軽傷者だけで回復魔法を使う必要はほとんどなかった。

でも我儘な怪我人はいるものだ。


「怪我をしたぞ!早く治療しろ!」


そう叫んでいるのはオレと一緒に騎爵位を貰ったブレインさん。


「私が誰か知っているのか!ドドバン子爵の者だぞ!早く怪我を癒せ!」


……何処を負傷しているのか分からないのだけど。


「全く!礼儀を知らぬ平民め!由緒ある貴族を優先して治さなくてどうする!早く治せ!」


……だから傷の場所は?


「ここだ!早く治せ!痛くてかなわん!」


あ、ここね。かすり傷だね。これなら薬で治るね。薬を塗って包帯を巻いて終わりだよ。


「無学の平民が作った薬など塗って怪我が悪化したらどうする!早く魔法を使え!」


魔法は重症の人達に使うから、かすり傷相手には使わないよ。

他の医師が魔法を使ってくれと頼むから仕方なく回復魔法を施す。


「フン!この程度の魔法で騎爵位を持てるとは貴族の質も落ちたものだ!私を治療させてやったのだ。ありがたく思うんだな!」


はいはい、ありがとうございました。お帰りはあちらです。

周りの人達に聞いたら王都から来た騎士や貴族はあのような感じらしい。

平民を見下し、王都に住んでいる者が偉くて、王都から離れている領地の人達は田舎者として馬鹿にされる。

王都の学校でエイルド様やポアラ様は苦労しているだろうな。

アルさんも苦労したのかな?


「王都の学校では派閥があり、私は派閥の者達と仲良くしていました。王都に住んでいる貴族達と王都から離れた領地持ちの貴族達と、二つに分かれています」


貴族内でも派閥、学校でも派閥、大変だね。

だったらアルさんは領地持ちの貴族派かな?


「姉が辺境伯の御息女の側近だったので私もいつの間にかそちらに入っていました」


おや?お姉さんがいるの?


「兄は学校を卒業して、姉は在学中です。将来は姉や母を守る騎士になるのです!」

「そう言えば学校か?基本的に貴族は学校に行くものだと聞いていたけど?」

「……謹慎を受けて王都にいられなくなって父上のいる砦に来ました」


謹慎って何をしたの?聞いてはいけない事を聞いたかな。

オレに似ている貴族が姉に危害を加えたから殴り、謹慎を受けたって言っていたな。

そういえばオレに似ている貴族って父親の血縁者かな?

オレに似ている貴族がいるなんてエイルド様やポアラ様は母親の事情は知らないはずだからその馬鹿貴族に変な事を言わなければいいのだけど。その事を知らせる為に手紙を書いておこう。

……しまった!手紙を書いていない!母やレオナルド様やクレイン様達に書くのを忘れていた!

状況報告と今までの出来事とオレに似た貴族の事を手紙に書いて送ろう!

その後、病院で怪我人を治療して昼食をとり訓練場で訓練をする。

……今日の訓練場は人が少ないな。

理由を聞いてみると昨日の夜の戦闘で休みを取っている騎士や兵が多く、その為、訓練場に居るのは夜戦に参加しなかった者だけだ。

朝まで城壁にいたらしいからな。徹夜で今は寝ている人が多いそうだ。

オレもいつものように訓練に参加して模擬戦をする。


「やあ、騎士トルク。ひとつ手合わせをしようか」


ブレインさんも訓練場にいたのか。怪我の具合は大丈夫?承諾をして模擬戦をする場所に行ことするが。


「危ない!」


アルさんの声で振り向くと木刀が当たりそうになっているのであわてて躱す。


「どうした?模擬戦は始まっているぞ!」


木刀を振り続けるブレインさん。躱し、受け、反らしながら体勢を立て直した。


「いきなり後ろから切りつけるなんて、何をしているのですか!」


アルさんがブレインさんを非難している。他の騎士達も非難をしている。


「模擬戦だぞ!相手に後ろを見せたこいつが悪い!従者のくせに騎士の戦い方を口出しするな!」


確かにいつもの模擬戦の場所に移動しようとして後ろを向いたけどいきなり木刀で殴りつけるなんて、全くブレインさんは何を考えている?


「ほら稽古をつけてやるよ!」


木刀を振り回しオレを攻めるが……エイルド様の方が早くて力強い!

ブレインさんは手加減をしているのか?

振り回してスキだらけなんだけど……。罠か?


「どうしたサウルのように逃げ回っていないで反撃していいぞ!」


ブレインさんの攻めるスキをついて木刀を軽く当てた。


「グゥ!」


倒れるブレインさん。おかしいな?軽く当てたつもりなんだけど……。何故か痛がる騎士ブレイン。オレが打ったところは腕で胸ではないよ。


「騎士ブレイン!大丈夫ですか?お怪我は?」


従者の少年がブレインさんに近寄りオレを責めた。


「騎士ブレインは昨日戦闘で怪我をされているのですよ!それなのになんて酷い事を!」


あれ?オレって責められているの?昨日の怪我はかすり傷だよね?それをわざわざ回復魔法で治したんだよ。怪我は無いよ。


「そこの兵よ!騎士ブレインを病院に運べ!」


近くにいた訓練をしていた人達に命じるが。


「どうして従者がここに居る人達に命令をしている!自分で連れて行きなさい!」


アルさんがブレインさんの従者に怒りだす。それはそうだな。従者は兵達より身分は低い。上から騎士・上級兵と続いて従者は下級兵や徴兵された兵と同じ身分だ。

そしてここに居る兵は上級兵以上の者達。下級の兵達を指示するランクの高い兵達だ。

そんな人達に命令をする従者。切り捨てられはしないが罰則はありそうだ。


「私の父は男爵だぞ!その命令に従わないのか!」

「私の父は子爵です。身分から言って私の方が上ですよ!それでもあなたは私に命令をするのですか!」

「女が口を出すな!子供のしょんべん騎士の従者のくせに!」


……しょんべん騎士ってオレの事だよな?子供の騎士……小さい騎士……ちび騎士……ちびり騎士……しょんべん騎士。

なるほどだいぶ捻っているな。直ぐには分からなかったよ。


「なんて無礼な!決闘を申し込みます。騎士トルクの名誉のために!」


いつの間にか周りに人が集まり二人は決闘する事になった。


「ではルールは模擬戦でのルールを使用するが剣のみで気絶するか相手が参ったと言うかだ。負けた従者は勝った従者と騎士に謝罪し、勝った従者

の命令を聞く事。そして負けた従者には私達からの罰も待っているからな」


木刀を構える従者二人。どっちが勝つのかは見れば分かるな。

腰の引けているブレインさんの従者と殺す気満々で相手を睨んでいるオレの従者。


「では試合開始!」


……勝負は直ぐに付いた。

ブレインさんの従者がアルさんに上段から木刀を放つが、アルさんはそれを避けて腕を掴み一本背負いで地面に叩きつけた。

受け身に失敗したブレインさんの従者は 背中から落ちて頭は打っていないが背中と尻を強打して叫んでいる。


「痛い!痛い!病院に連れて行ってくれ!」

「この勝負は従者アルーネの勝ちとする。アルーネ、負けた者に何を命ずる?」

「騎士トルクの名誉を回復させる為に変なあだ名を無くす事です!」

「わかった!では敗者は騎士トルクと従者アルーネに謝罪とあだ名を言わない、言わせないようにする事。」

「痛い、背中が!尻が!」

「そして敗者の罰として今日は私達の訓練に参加するように!従者としての心構えを教えてやろう!」

「何をする!放せ!」

「騎士として従者の心得を教えてやる」


……ブレインさんの従者が命令をした者達は騎士の人達だったんだよね。

ちなみに騎士ブレインはいつの間にか訓練場からいなくなっていた。

一人で病院に行ったのだろう。

その後、オレは部隊の者達と一緒に訓練をする。

魔力を感じる訓練にはオレ達の部隊の他にアルさんや他の兵達も混ざって訓練をしているが、魔力を感じる事が出来る人はまだ居ない。

出来れば孤児の者達にも教えたいがアーノルド様との話し合いで魔力を感じる者が出るまで様子を見る事になった。

その後、魔法が使える者達が孤児や兵達に魔法を教える事になる。

オレが全員に教える事はない。他の者を使うのが騎士や貴族の考え方だと教えてもらった。

早く魔力を感知できるようにオレも頑張らないと。

それから魔法の使い方のマニュアルでも作っておくか。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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