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精霊の友として  作者: 北杜
五章 伯爵家騎士編
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閑話 バルム砦責任者の愚痴②

兄を見送り、その後トルクと話をする。

そして本当に回復魔法が使えるのか確かめる為に怪我人を用意した。

ヴィッツ ルウ デンキンス。私の信頼できる部下で部隊の隊長を務めている。

先日の戦争で頭と腕を怪我した。特に腕の怪我が重傷で腕が動かせないと言われたほどだ。

トルクに治療させてみる。

……治った。

本当に回復魔法を使ってヴィッツの腕と頭の怪我を治した。

前に見た王都にいる他の回復魔法の使い手よりも早く治した。

あの重体患者をあっという間に治した。

ヴィッツがトルクの手を取って感謝している。私の分も感謝してくれ!

その後、従者の話をする。

従者はアルに任せようと思う。

ヴィッツの次女で騎士になる為にこの砦に来たじゃじゃ馬娘だ。他の騎士の従者にするとまた乱暴される可能性もあるからヴィッツの下にいたが、同じ子供なら問題ないだろう。


「お断りします。どうして私が子供の従者にならないといけないのですか!」


この子は前に他の騎士の従者だったが、騎士に襲われそうになったが自身の力で撃退をした子だ。

話を聞いたとき襲った騎士に激怒したが、撃退した方法を聞いたときは同情した。

男として使い物にならないだろう。

その騎士は放逐になり故郷に帰った。騎士がただでさえ少ないのに馬鹿な行為で更に少なくなった。

その事もあり他の騎士はアルを従者にせず、同じ従者の子供達から馬鹿にされてケンカになり勝利した。子供にも急所を狙い一人犠牲者がでたらしい。

その後についたあだ名がクラッシャー。子爵家の女性に捻りのないあだ名がついた。

ヴィッツが何とか説得をしてトルクの案内役を頼む。

部屋から出た後にアルの大きな声が聞こえる。


「貴方なんかの従者になるなんて!迷惑この上ないわ!早く居なくなって頂戴!そしたらまた父上の所の従者になれるわ!」


……他の従者の方が良かったかもしれん。


「ヴィッツよ。騎士トルクはバルム伯爵の孫のポアラと婚約をしている。そして私の恩人の子だ。くれぐれも戦死させないように。これは命令だ。ワシは個人的にも砦の責任者としてもアルーネの命よりもトルクの命の方を優先する。アルーネがトルクを害したらアルーネには処罰を与えるつもりだからな」

「……そのときはわたしも一緒に処罰を受ける所存です。恩を仇で返す事はしません。これ以上騎士トルクを害したり、傷つけたら領地へ帰還させます。騎士トルクが従者の変更を願い出ても罰して領地に帰還させます」


……アルーネを従者にしたのは失敗だったかもしれん。しかし他に従者になれそうな者はいないからな。

いやトルクがアルーネを変えてくれるかもしれない。淡い期待だがアルーネの事はトルクに任せてみよう。

アルーネが罪を犯したらデンキンス領に戻らせればよい。

さて、砦の責任者として書類仕事をするか。

……鐘の音が聞こえる。

帝国軍が攻めてくる警報の鐘がなり、直後、騎士の一人が部屋に入り帝国が攻めて来た事を伝えに来た。

騎士に帝国の戦力を聞く。

前は二万以上居たが今回はどのくらいの戦力で攻めて来たか?

二千人くらいか……。このくらいの戦力で砦を攻めるのは数日に一回くらいのペースでやってくる挨拶みたいなものだ。

ヴィッツは怪我の治療済みとはいえ無理はさせないで待機させて他の者に任せるか。

伝令を騎士に任せ、次の訪問者を部屋に入れる。

騎士トルクが指示を求めに来たか。

なかなか行動が早いな。後ろにいる副隊長の指示か?どちらにせよ二人共よい関係の様だ。


「トルクには城壁近くの病院で待機してもらう。戦闘が始まれば怪我人が来るから対処してくれ」

「わかりました。では病院に参ります」

「うむ、兵達を頼んだぞ!」

「了解しました!」


良い返事だ。

しかし今回の戦闘は早く終わるかもしれんな。

今が昼過ぎだ。基本的に夕方には戦闘は終わる。

怪我人の量が少ないと思うが騎士トルクがどのくらい兵を治療できるのか今日の戦争でわかるはずだ。

病院での出来事を聞く為に誰かに見てもらうか……。

いや後で私が行こう。兵達のねぎらいもかねて。




今回の城壁で戦った者から被害状況を聞く。


「今回の戦闘の被害状況ですが、死人が二人のみ、徴兵で来た者達です」


死人が二人だけ?


「死者は二名、重傷者無しです。軽傷者はかすり傷程度の者ですから数にいれていません」


……聞き間違いではない様だ。


「いつもの様に矢合戦から始まり、それが夕方まで続いたので今回は白兵戦での戦闘はありませんでした。明日の朝に矢の補充をします」


重傷者がいない?


「すまぬが被害は死者が二名だけか?」

「はい、死者が二名だけです」

「重傷者は?」

「いません。騎士トルクが回復魔法で直ぐに治療してくれましたから」


そうか!トルクが兵達を助けてくれたのだな。流石は兄が認めた子供だ!

病院で怪我人を治してくれたのか。


「騎士トルクは城壁で怪我をした兵達をその場で治してくれました。治療中は敵の矢が飛び交う中で大盾を周りの者に持たせ怪我を治してくれました。重傷者が出ると駆け付けその場で治療をしてくれて、兵達も感謝しています」


……待て、城壁で治療?何のことだ?


「今回の戦闘での騎士トルクが治した兵達の数は三百人くらいと思われます」

「すまない。トルクは何処で治療をしたのだ?」


不思議そうに私を見る騎士。どうしてそんな顔をする?


「最前線の城壁で兵達を治療しておりました。アーノルド様の指示でしょう?」


血の気が引く。兄からくれぐれも頼まれた恩人の子がどうして最前線の城壁で兵達の治療をしているのだ!

それも私が指示した事になっている!そんな指示はしておらん!


「病院に行く!いやトルクの所に行くぞ!」


直ぐに席を立ち部屋を出てトルクにどうしてこの様な事になったのか聞く。こんな事が兄に聞かれたらどうなるか、考えたくない!


「騎士トルクは現在宿舎で休みをとられています。魔法の使い過ぎで体調不良との事です」


……待て!普通の魔法使いは火魔法の下級の火の玉を十発撃てば疲れて、二十発撃てば気分が悪くなり、三十発撃てば体調を崩す。原因は魔力を使いすぎるからだ。

その十倍使って体調不良で休む?

おかしくないか?

子供は大人よりも魔力が少ない。

特に回復魔法は他の魔法よりも魔力を消費する。

三百人くらいを回復魔法で治した?

どうして?どうやって?どのようにして?どんな方法で?どのようなやり方で?

部屋に戻り席に座り考えを纏める。

アルーネは騎士トルクと一緒に行動しているはずだ。

アルーネに事の次第を聞いてみるか。

従者にアルーネを呼ぶように手配する前にアルとヴィッツ、そしてトルクの部下のケビンが部屋にやってきた。

三人から順に話を聞くが、アルは警報の鐘が鳴ったのを聞いたからトルクをその場に置いてヴィッツに指示を仰ぎに来た。

ヴィッツは従者のアルが騎士トルクと別行動をしている事を叱りつけ、アルからトルクが病院にいると聞いたのでトルクを探していたのだが見つからず、そのまま病院の中で待機していたとの事。

アルがトルクを探している時には城壁の上で怪我人の治療をしており、戦闘後は体調不良で宿舎で休んでいる。部屋のドアの前にはトルクの部下が付いており護衛をしている。

ヴィッツも戦闘後にトルクが城壁にいる事を知り、急いでトルクの所に向かったが、トルクはケビンに背負われており話せる状態ではないから、トルクを宿舎の部屋に休ませてからケビンに事の次第を聞く。

なんでも病院では厄介者扱いをされ「騎士なら最前線の城壁に行け!」と言われて静かにキレていたトルクが城壁で治療を行う暴挙に出たそうだ。

その途中、ヴィッツは娘のアルーネの事を聞いたが「従者の子供は敵襲の鐘が鳴ってから別行動になって見てはいない」と言われる。

頭を抱えるヴィッツが目に浮かぶ。

アルは戦闘が終わった後も病院にいたが待っていても来なかったのでヴィッツを探していると、ケビンと話しているヴィッツを見つけてトルクが病院に来ないで逃げ出したと文句を言った途端、ヴィッツが手を挙げてアルーネを殴ろうとしたが寸でのところでケビンに止められる。

アルーネは何で怒られるのか分からず、現在ヴィッツと一緒に私の部屋にいる。

……まずは騎士トルクを厄介払いした病院の責任者に罪を負わせる。

次に騎士トルクに対してアルーネは従者としてあるまじき行動をとり続けた罪。

そしてその父親であるヴィッツ。


「私の事は気にしないでください。娘は放逐し、私は次の戦争で戦死します」


罪の内容にしては重過ぎる贖罪だ。

アルーネを領地へ戻すだけでは駄目なのか?

ただでさえ騎士が少ないのにお前まで戦死したらどうする?せっかくトルクに回復してもらったのだろう?

説得しても父親として責任を取ると言って譲歩しない。

アルーネの罪は騎士トルクと話し合いをする事でその場を収める。

この事を兄にはどう説明をするか。

考える事が増える。

騎士トルクの回復を待って判断するか……。

しかしトルクは三日間体調を崩し休み続け、四日後にして回復をする。

その間、兵達や騎士達から回復魔法を使う子供騎士の対応に追われ、トルクがどうして三百人もの怪我人に回復魔法を使えるのかを聞くのを忘れてしまった。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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